15話 侵入開始
アジトである工場の入り口までやってきた所で違和感を覚えた。
「見張りが誰もいない?」
入り口には誰も立っておらず、そのまま入ることができそうだった。監視カメラの類も見受けられない。
「罠…でしょうか」
ルーティが不安そうに声を出した。
「その可能性はあるが確かなことは言えない。見張りと言ってもお粗末な質の連中だったし、ただ杜撰なだけかもしれない…だがどちらにせよ敵の中に飛び込むことに変わりはない。罠があることは考慮に入れて先へと進もう」
「わかりました…」
ゴクリと喉を鳴らしていた。
「行くよ」
一歩、足を踏み入れた。
ぞわっ
全身の毛が逆立つような気持ち悪い感覚が全身を包む。明らかに外とは空気が変わった。生臭い異臭を感じる。
半グレたちのアジトが不衛生に使っているから、だけでは説明がつかない。
空気だけでなく足で踏みしめている床に力を入れるとぐにゃりとわずかに沈む嫌な弾性がある。
壁に手を触れるとドクン、ドクン脈打つような響きと温かさを感じる。後ろを振り返ると入ってきたはずの入り口はなくなっている。
ルーティと2人顔を見合わせる。
「これは……アジトが異界化しているな…予想していたよりも悪い状況かもしれない」
「異界ってどういうことですか?」
「土地そのものが力を持った時に偶発的に発生、あるいは強力な力を持った妖が意図的に作る既存の物理法則が通じなくなった地域のことだよ」
「そんな、こんな場所をアジトにしているなんて彼らは平気なんでしょうか?」
まず敵の心配をするあたりが彼女らしい。
「少なくともヒューミリエが調べた時は異界化していなかった。異界をアジトにしたのでなく、アジトを異界化させたんだろう」
「そんなこと可能なんですか!?」
「意図的な異界化は可能ではある。ただしそれ相応の力や知識は必要になる」
「それって、つまりここは」
やはり彼女は頭がいいすぐに事態の問題に気付いたようだ。
「たかが半グレがそんな力持ってるはずがない。それを与えた強力な存在がいるはずだ」
「!!」
ルーティは唾をごくりと飲み込んでいた。しまった、脅かし過ぎたか。
「まあそこまで怯えないで、核を破壊すれば元に戻るはずだから」
「あまり、マガツさんもご無理をなさらないでくださいね。」
心配させてしまったようだ。人を勇気づけることはやはり僕には荷が重い。
ぐちゅるぐちゅるぐちゅる
「!!!!」
「!!」
ルーティを庇うように僕の背中に隠れさせた。
突然床が肉のようなピンク色となってせり上がってきたからだ。先が口の形になっている。
「よ~~~~~いらっしゃい、暴威のアジトへようこそ!ただいまオープンサービス中につき入場料は無料となっております。心行くまでお楽しみください。」
先から軽薄な声が聞こえてきたが、内心のイラつきがこちらに伝わってくるほど怒気を感じる。
「お前がボスか?」
「ああ~お客様見事正解!!正解者にはこちらをプレゼント!!」
天井がぐちゃりと開き中から鉄球が何個も落ちてくる。
「なあっ」
「きゃああっ!!」
ルーティを抱きながらその場から回避し、肉でできた口を睨む。
「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ま~マジでせっかく来たんだ色々アトラクションを用意してやってるから楽しめよ!お前らのせいで出た損失分は新アジトの実験体になってもらうことでチャラにしてやるからよ~、つまりここで死んどけやカス共」
「………………やる前から営業停止間違いなしの場所だとわかってるんだけどね」
最後に肉でできた口はげらげら下品な笑い声を立てながら床へと沈んでいった。
「………あの人が、私の、敵なんですね」
悪意の塊の声にどうやらショックを受けたようだ。無理もない。
「いい情報が一つ手に入った。どうやら僕達の敵は手加減を考えてやる必要のない相手ってことだ」
クスリとルーティが笑ったことを確認し。
「家主の許可が下りたんだ。ささっと進んでアトラクションのダメだしにでも行こう。」
そう肩をすくめて進行を促した。




