三流なろう作家がノボルトに行ってきたお話
このエッセイをクリックした人の九割は、「ノボルトってなんだよ」って思った人だと自分は思う。野良コボルトの略じゃないよ。
ノボルトとは、福岡県福岡市にある商業施設「マリノアシティ」にある、国内最大級の屋内型スポーツ・アスレチック施設のことです。
アスレチックやボルダリングなどを楽しむことができ、特にスピードクライミングなど、西日本初上陸のアトラクションもちらほら。
「スポーツとエンタメの融合」を主なコンセプトとしており、ファミリー層からカップル、さらにはガチのアスリートさんまで、幅広く楽しむことができます。(公式サイト情報)
はい。
そんなノボルトに、この三流なろう作家が行ってきましたとも。
きっかけは、母の希望でした。
前々から気になっていたので、家族の休みが重なった今回、ぜひ行ってみたいと。
ちなみに、我が家の母は、御年60代。
そんなママンが、アスレチック施設に行きたいと言い出しました。
まだまだ元気そうで、息子としては一安心です。
実際、自分もノボルトは気になっておりました。
気になってはいたものの、家からけっこう距離があるので、なかなかタイミングを見出せず。
しかも、この施設、オープンからわずか数か月後に、例のコロナが蔓延し始めるという幸先の悪いスタートを切っており、今も無事かどうか心配しておりました。
だからこれは、自分としても良い機会だと思いました。
そんなわけで、母と、妹と、そして自分。
三人で行ってまいりましたよ、ノボルトに。
というワケで、このエッセイでは、日常生活ではなかなか味わえない、アスレチックを使った四次元的な動き、あとは高所からの飛び降りなどの体験記を記しております。これも創作のネタに使えると信じて、我が身をもって取材してきました。
当初はコロナ禍の不況を心配しておりましたが、いざ到着してみると、けっこう人がいました。
それに、やはりというか、若い人ばっかり。
ま、まだ自分だって若いし。いけるし。
なんならウチのママンは60代だし。
昨年の九月には二周年記念で新アトラクションもオープンしているそうで、普通に元気に営業しておりました。自分の心配は杞憂だったようです。
係員さんから施設の簡単な説明を受け、登録料代わりに専用の靴下を購入。
ロッカーに荷物をぶち込んで、いざ出陣。
まずは、ロッカールームから一番近い「トランポゾーン」へ。
その名の通り、トランポリンで遊ぶことができます。
ちなみに「トランポゾーン」で合ってます。
「リン」が抜けてるワケじゃないんですよ。not誤字。
トランポリンなんて、最後に遊んだのは何歳の頃でしょうか。
今の自分の身体能力で思いっきり跳べば、はたしてどれくらいまで跳べるのか。
結論から言うと、すごい跳びました。
ちょっと小さな人なら飛び越えられるくらい跳びました。
そして、さんざん跳んだあとでトランポリンを降りると、めちゃくちゃ地球の引力を感じます。
いやもう本当に、そう例えるしかないくらい、身体がズシンと重くなるのです。
飛んだり跳ねたりして戦う二次元のキャラクターたちも、着地の後にはこんな重みを感じていたりするのでしょうか。
最初のアトラクションから、すでに大きく体力を削られた自分たち。
次に向かったのは、ボルダリングコーナー。
母いわく、このボルダリングコーナーがお目当てだったとのこと。
一度、体験してみたかったらしいです。
で、自分も当然ながら挑戦してみたわけですが。
これがけっこう難しい。
テレビのボルダリング選手へのインタビューなどでもよく言われていますが、この競技、本当に、手と足を置く石ころ選びが重要でした。
大きくて掴みやすい、あるいは足を置きやすい石を選べば、割と簡単に登れます。
しかし、中には「これで誰が登れるんだ」みたいな、明らかに小さくて掴みにくい、あるいは足を置きにくい石もあったりするのです。
どの石が登りやすいかを即座に判断しつつ、登る。
プロの方々の動きを思い出し、彼らがいかに驚異的かを思い知りました。
それと、石に指をかけることができるスペースは、意外と狭いです。
これは比較的大きい石でも同じです。
鉄棒みたいに、手全体を使ってグッと握ることはできないワケです。
そのため、選手はほとんど指先の力だけで石ころを登っていかなければならないようです。身をもって知りました。
母はあえなく、途中で落下。
高いところまで登ると、怖くなってきたそうで。
妹は頑張って、一番上まで到達しました。偉い。
そして自分は、懸垂くらいならとりあえずできる程度には鍛えているので、しっかり登頂してきました。壁が反り立っているコースもクリアです。
家族三人の中で一番身体能力が優れている自分は、ここではまさに英雄でした。
高さ13メートルの「ロープマウンテン」も制覇し、二人で競争が楽しめる「ノボレース」も、およそ15秒で完走という輝かしい記録を残しましたとも。たぶん輝かしいはず。
「自慢話ばっかりでつまらねぇ」と思っている、そこのあなた。
お待たせしました、ここから自分が怖い目に遭った話ですよ。
待たないでくれそんな話。
ロープマウンテンから降りた自分は、その次に「スピードクライミング」へ向かいました。
壁の高さは、公式大会と同レベル。
登頂時間も測れるようでしたが、今回は時間は測らず、登るだけに。
頂上まで相当な高さだったので、時間経過などで焦って足を踏み外したら怖いなーと思ったのです。
コースは初級、中級とありましたが、用心して初級を選びました。
公式サイトの画像だと、石ころを伝って登っていますが、これは中級コース。初級は大きなはしごみたいなコースでした。
そしていざ、登頂開始。
やはり初級なだけあって、さすがに登りやすいです。
焦らないように、という心がけもどこへやら。グングン登っていきます。
そして無事、登頂に成功しました。
あとは、この頂上から飛び降りて、下へと帰還するだけです。
もちろん命綱を付けられているので、飛び降りてもゆっくり着地できます。
帰還するだけ……だったのですが。
じゃあ飛び降りようと思って、下を見たら。
「うわ、たっっっか!?」
思わず視線を、正面の壁へと戻しました。
あまりにエグい高さだったので、見ていられませんでした。
あの高さはヤバいです。たぶん学校の屋上とか、それくらい?
そこから飛び降りる光景を想像してみてください。悪夢でしょう?
それが、この時の自分の状況です。夢じゃなかった!
そしてこの瞬間、自分に付けられている命綱が、途端に信用ならなくなったのです。
「え? これちゃんとゆっくり降ろしてくれる? 自由落下の速度で地表に激突したりしない?」って感じで。
たとえば、テレビ番組などでバンジージャンプをやってる時、犠牲になる芸人などはイヤイヤ言っていて、そのたびに「命綱あるんだから死ぬわけじゃないだろ。早く跳べよ」と思った人もいると思います。自分もたぶん、そう思ったことあります。
今なら、芸人たちの気持ちが分かります。
これは命綱があっても、そう簡単に跳べるものじゃありません。
マジ怖い。
仕方ないので、登ってきたはしごをゆっくり降り始める自分。
下では妹と母が「飛び降りれるよー。早く飛び降りなさいー」と言ってきている。無茶言うなよこっちの気持ちも分からないで。
しかし、下で自分を待ってる係員さんも「飛び降りて大丈夫ですよ」と言ってきている。
しかも、周囲には順番待ちで並んでいる人たちもいる。
これは、さっさと飛び降りないと、皆様に迷惑をかけるパターン……。
ええい、ままよ!
せいぜい、この体験も創作のネタにしてくれるわー!!
意を決して、自分は跳びました。
たぶん、人生で一番高い場所からの飛び降りだったと思います。
命綱は、ちゃんと自分をゆっくり降ろしてくれました。
しかし、ほんの一秒にも満たない一瞬ですが、ゆっくりになるのが少し遅れました。
たぶん、普通にそういう仕様なのだと思いますが、自分はこの「ゆっくりじゃない一瞬」にめちゃくちゃ焦りました。やっぱり自由落下じゃん!! と。
そして下まで降りてくると、自分は先ほどの焦りで足腰が立たず、マットの上にどしゃりと崩れるように着地しました。もっと格好良く着地するはずだったのに、こんなはずでは……。
ちなみに、自分の次は、妹が同じスピードクライミングに挑戦。
一番上までは行かず、途中で降りてきました。
降りてきた妹が開口一番に言ったのは「飛び降りようと思ったら、命綱がちゃんと動いてくれるかどうか、すごい心配になった」とのことでした。ほら見ろ私の言った通りじゃないか。
しかしまぁ、一度飛び降りてしまえば慣れてしまうもので。
それから他にも、登った後に飛び降りるアトラクションを体験しましたが、他はけっこう躊躇なく跳ぶことができました。
それから最後に、家族三人で卓球を少しプレイして、今回のノボルト体験は終わりました。
まさに、ここでしか味わえない非日常的な体験の連続でした。
崖の登攀や、高所で不安定な足場を渡る心情など、ファンタジー小説の一場面などに大いに活用できそうです。
最も大きな収穫は、やはり「たとえ命綱をしていても、高所からの飛び降りは怖い」と知ることができたことでしょうか。
自分の現在のメイン小説に、ほぼ不死身の生命力を持つ主人公がいます。
この主人公が、高所からの飛び降りを迫られた時、「別に飛び降りても死なないから」と言って躊躇なく飛び降りるかどうか、少し分からなかったのです。
断言します。この主人公は絶対に飛び降りないでしょう。
死にはしないとはいえ、向こうは命綱なし、痛みは普通に感じるワケですし。
人質でも取られない限り、間違いなく飛び降りません。
世の中の物語の中には、命綱なしで、死ぬ覚悟で高所から飛び降りたキャラ達も多く存在します。
今回の体験で、彼らがどれほどの覚悟を持って飛び降りたかも、少しだけ触れることができたような気がします。
そして最後にもちろん、ノボルトは本当に楽しかったです。
自分も、妹も、そして六十代の母も、まさに童心に返ったかのごとく、夢中で遊びました。
自分たちは二時間コースを選択しましたが、それぞれのアトラクションに夢中になり過ぎて、全部は回れないほどでした。三時間コースにするべきだった……!
今回行けなかったアトラクションなどのためにも、是非またもう一度行きたいと思える場所でした。
まだまだコロナ終息の目途も立たない世の中ですが、たまには運動や外出もいかがでしょうか。そんなあなたにノボルトはオススメですよ。
そして今回の自分たちのように、我を忘れて夢中で遊びまくり、次の日に上腕三頭筋と指の筋肉、全部まとめて筋肉痛になるがいい……!
ちなみにその日の夕食は、母のたっての希望で、同じくマリノアシティにあるいきなりステーキに行きました。
60代になっても食欲は変わらないようで、息子としては一安心です。




