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伯爵令嬢レベッカ・ハートロックの恋のお悩み相談ラジオ!

作者: 小田次郎


チャットがかなり辛辣なのでご注意下さい(笑)


王都の貴族街にあるハートロック伯爵邸の一室。

伯爵家の末っ子レベッカ・ハートロックが過ごす部屋は週に1度、真夜中になると恋と愛で溢れる。



「さぁ!今週もはじまりましたわ!レニの〈恋のお悩み相談ラジオ〉今夜も張り切ってまいりましょう!」



5ヶ月前、生まれた時からの婚約者に浮気をされて婚約破棄を叩きつけたレベッカ・ハートロックは引きこもりになってしまった。

恋愛的な意味で好きだった訳ではないが幼馴染で信頼していた人だったので裏切られたのがかなり辛かったのだ。

引きこもるレベッカを心配してか仲のいいメイドが教えてくれたのが最近発売された新たな魔法具のラジオだった。


顔も見えない見知らぬ人の話を聞いたり、自分が話す側になることもできるラジオという魔法具。

レベッカは話す側に回ることにした。

あまりにも元婚約者にムカついていたので誰か知らない人に話を聞いてもらいたかったのだ。

ボイスチェンジも出来るらしくいくら愚痴を吐こうとも誰もレベッカだとは分からない大変優秀な魔法具だ。


最初はただ愚痴を言うだけの〈アンチ元婚約者ラジオ〉として活動していたのだが、ある日リスナーの彼氏に対する悩みを聞いてレベッカの考えを述べたところそれが胸に刺さったらしく、今では〈恋のお悩み相談ラジオ〉として有名になってしまった。



「今夜もリスナーの皆様からのお悩み相談お待ちしておりますわ。どしどし送ってきてくださいませ!」


そう言うとラジオと連携しているモニターにザッと大量の通知が届いた。



「早速1通目にいきますわね。えっと、ラジオネーム[王国騎士団所属アーノルド・シュバルツ]さんからのお便りですわ!これはまたストレートな名前ですね。偽物ならば名誉毀損にならないかしら?」



『先日婚約者の誕生日に花束を贈ったところ彼女が顔を顰めて「この花束って貴方が選んだの?」と聞かれたため花屋の店員に婚約者に贈ると伝えて選んでもらったと答えたのだが、その瞬間家から閉め出された。それから一向に会ってもらえない。恥ずかしながら何が原因で怒らせてしまったのか見当がつかず恋の悩みを聞いてくれると噂のこちらに送らせてもらった。いったい何が原因なのだろうか。ご教授願いたい』



「なるほど。婚約者様が怒っている理由が知りたいと」


モニターに映し出されたリスナーなら誰でも書き込めるチャットが高速で流れ始める。



《頑張れよw騎士団長www》

《文章硬すぎんかwww》

《フルネームとか死ぬんだが》

《私がみるに花屋の店員がクロよ!》

《絶対好きだよね騎士団長のこと》

《婚約破棄されたらまた来てくれよなww》



「ふむ。そうですわねぇ、私が考えるに花束に問題があったのではないかしら?注文するときに婚約者にって仰ったようだけど、[騎士団長]さんのことが好きな花屋の店員が婚約者との仲を裂こうと女性なら誰でも分かるような酷い花言葉の花を紛れ込ませたのではないのかしら?確認するべきですわね。もしそうだったら婚約者に土下座をしてでも許しを乞うべきですわ。というか花くらい花言葉でもなんでも調べて自分でお選びなさい!あと今後二度とその花屋には行かないで下さいませ!以上!」




「ふぅ。それでは次のお便りにいきますわね。ラジオネーム[億万長者になりたい]さんからですわ。願望がありありと現れるお名前ですわね」



『私は彼女と付き合って2年になるのですが自分の給料額に自信がなく中々プロポーズに踏み切れません。

女性はどのくらいの給料だと男性に安心して嫁ぐことができますか?それとも金より愛なんでしょうか?』



「なるほど。難しい問題ですわね」


チャットが先ほどよりも高速で流れ始める。チラッと見ると女性陣のリアルな声で溢れていた。



《いやww金より愛とか幻想だろwww》

《大体一軒家買えるくらい給料は欲しいよね》

《てか彼女にさりげなく聞けば良くね》

《ソッコーで昇進しろ》

《彼女もいつプロポーズしてくれるのか待ってるよ》

《分かる俺も同じ悩み》



「[億万長者になりたい]さん。持論ですが愛は微塵も役に立たないですわ。金よ金。大切なのは愛より金!愛で腹は満たされませんわっ!さっさと昇進してプロポーズなさい!それか潔く彼女に聞きましょう。リア充め!指輪はクロエの指輪がオススメですわよ!それと1人で決めないで彼女の希望の指輪を買いなさい!そして幸せになりなさい!以上!」



その後も『彼氏が浮気しているかもしれない』『遠距離恋愛についてどう思う?』『気になる彼にどうアプローチすればいい?』など色々なお悩み相談が続いた。


恋の相談を受けると大体説教じみてしまうのだが、リスナーはこれでいいのだろうか。それがレベッカの最近の悩みだ。




「さて今夜最後のお便りにいきますわね。ラジオネーム[元婚約者の弟]さんからですわ。複雑なご関係なのね」


元婚約者という言葉の限り婚約を解消したのだろう。

5ヶ月前にレベッカも経験したのでつい感情が入ってしまう。




『僕の好きな人は兄の元婚約者です。数ヶ月前兄が5股をかけていたことが発覚し彼女の家から婚約破棄されました。先先代当主同士の約束で彼女を20歳まで縛りつけたのにその結果が浮気三昧。結婚する前なら許されると思っていたそうです。本当に兄を切り刻んでやりたいです。実際に半殺しにはしましたが。

僕は幼馴染である彼女のことがずっと好きでした。一緒に庭で走り回ったのも、2人で市民街へ出て侍女の雷をくらったのも全て愛おしい思い出です。

一目惚れだったんです。大切にして一生守り抜く覚悟があった。けど僕は婚約者の弟。この気持ちを諦めようとここ数年は彼女の顔を見る事はありませんでした。

彼女を傷つけた元婚約者の弟という立場ではありますが、彼女にせめて好きだと伝えたいです。

僕はアプローチをしてもいいのでしょうか?レニさんのお考えを聞かせていただけると幸いです』




チャットは今日1番の盛り上がりを見せていた。流れが早すぎてリスナーでさえ画面を止めないと1つも読むことができない。



《行け!頑張れ弟!》

《兄半殺しにしたの最高すぎ》

《ていうか兄最低すぎじゃね?下半身だらしなすぎ》

《その彼女本当に別れて正解》

《弟!女の子を幸せにしてあげて!》

《泣けてきたんだが》

《大輪の薔薇の花束持ってけ!男みせろ!》

《…純愛》

《えっ小説のお話ですか?》



チャットが完全に[元婚約者の弟]さんの応援ムードになっている頃〈恋のお悩み相談ラジオ〉の主レベッカは大号泣していた。あまりにも自分に重なってしまって涙が止まらないのだ。


それでもラジオを続けなくてはと涙声でマイクに話し始める。



「もう泣けるじゃないっ!そうですわね。少し私の話をさせて下さい。それが答えになるはずなので」


レベッカは大きく深呼吸をして心を落ち着かせてから再びマイクに向かった。




「…私の最低最悪な元婚約者の話はこのラジオで何回もさせていただいていると思うのだけれど、元婚約者にも弟がいたの。弟君はそれはもう紳士的で優しくてカッコ良い人だったわ。実を言うとこのレニっていう名前も彼だけが呼ぶ名前なのよ。小さい頃2人で決めたの。私は当分恋人や婚約者は要らないと思っているけど、もし彼ぐらい素敵な人が現れて告白されたら頷いてしまうかもしれないわ。[元婚約者の弟]さん。貴方は人の痛みが分かる最高に素敵で優しい人よ。是非押せ押せでアプローチ頑張ってちょうだいな!私だったら嬉しいわ。あ!でも彼女が嫌がるようだったらやめてね。もし彼女が貴方に落ちたら報告よろしく!ですわっ!」




これで言いたいことは全て言い切った。[元婚約者の弟]に頑張れと思いつつ、こんな素敵な人に想われている女性が少し羨ましいなとも思った。



「それでは今夜のラジオはこれでお終い!リスナーの皆様また来週お会いいたしましょう!」



そう言って魔法具の電源を落とすと部屋には静寂が訪れる。




ベッドに仰向けに倒れたレベッカは目を瞑り、自分の元婚約者の弟のことを思い出していた。

黒髪に琥珀色の瞳。2歳年下の優しげな笑みを浮かべる人。初めて会った時末っ子のレベッカは弟に憧れていてどうしてもレベッカお姉様と呼ばせたかったのに舌足らずだった彼には「レベッカ」も「お姉様」も難しかったようで2人で適当に「レニ」と決めて呼ばせることにしたのだ。

今は騎士団にいるようだとお父様伝いに聞いた。

彼とも長らく会ってない。久々に顔が見たいわ。



子供の頃の懐かしく素敵な思い出が蘇って、その日は久しぶりによく眠ることができた。






数日後、王都の貴族街にあるロックハート伯爵邸のエントランス。

レベッカのもとに元婚約者の弟であるハイン・レッドフォード伯爵令息が大輪の薔薇の花束を持って訪れた。


「レニ」


いきなりのことに驚いて固まったレベッカの手を取り彼は最後にあった時と何一つ変わらない優しげな笑みを浮かべた。



[元婚約者の弟]ハインの猛アタックにレベッカが落ちるのもそう遠くない。


声が変わってても言葉の選び方とか間の取り方で分かる人は分かりますよね。



良かったら下の評価押してしていただけると嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました!


※誤字報告ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] 深夜ラジオリスナーなので、このノリ大好きです(*^^*) 弟君と上手く行ってもラジオ続けてほしいなぁ!笑
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