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虚ろな夕暮れ  作者: 白石平八郎
24/56

福岡 2

ー早晩、宿所となった旧陸上自衛隊春日基地から夜闇に紛れて黒い大型SUVが数台出て行った。


乗っているのは特殊戦略作戦室の要人救出及び突入戦に長けた数十名。


彼等に託された任務は解放軍に内通している疑いのある宮坂喜三郎の身柄を拘束する事。


経緯としては海軍独自のルートで彼の身辺調査を進めていたところ、複雑な暗号通信を使った連絡を何者かと取り合っている形跡が見られた事から統合軍は宮坂の行動ルートに人員を配置して動向を探っていた。


そして先日、呉を奪還した情報が統合軍参謀本部に入ってきて数時間後、宮坂が慌ただしく事務所に戻って間も無く、事務所から痕跡と同様の暗号通信が発された。


通信を拾い、情報局によって暗号を解読して内容を解析したところ、通話の相手は解放軍の幹部クラスとのやり取りというのが判明。


加えて日本領内の工作員と頻繁にやりとりを行い、便宜を図っていることもわかり、早急に対応を打つ必要が出てきた。


しかしながら、仮にも元官房長官である彼の信任は現在の臨時政府内でも厚い。


表立って拘束に踏み切れば、政府関係者からの圧力で即時釈放され、そのまま逃げおおせる事もありうる。


そうならない為にも秘密裏に拘束し、これ以上の情報漏洩を阻止、そして領内にいる工作員との連絡網を洗い出してまとめて叩く必要がある。


彼の事務所に少なくない人員の出入りを確認した事から、宮坂の掌握する護衛部隊が常駐ありとの判断を下し、作戦室きっての精鋭を投入している。


そして作戦室では取りこぼした際に備え、32特務中隊の篠田と何名かもバックアップとして控えさせていた。


ー突入部隊が春日基地を発してから遡ること数時間前、篠田は貨物を積載した大型トレーラーに乗って基地を後にしていた。


彼女にとってこういう仕事(・・・・・・)は本分ではない。


あくまで戦機兵乗りとして促成を受けて実戦に赴いている為、機体が撃破された後に味方部隊と合流する程度の歩兵訓練しか受けていない。


おまけに体格も小柄で、同世代の女性隊員の中でも身長は低い部類に入る。


もっとも、彼女が生身の兵士として戦う出番はまずないだろう。


後詰の役割で万に一つが起こった場合の備え、そう言って彼女は駆り出されている。


戦機兵パイロットとしては彼女は十二分に精鋭だ。


瞬間的な判断力及び迅速かつ的確な機体操作はもとより、戦機兵の脅威性を十分理解した戦術構築をわずか一年で急速に学び、特殊任務に長けた中隊の指揮を執って戦功を挙げてきた。


志願した促成の戦機兵搭乗要員の中では5本の指に入るであろう腕と目されているし、事実アグレッサーとして行う対戦機兵の模擬戦では単機で小隊を翻弄している。


最も得意とする殲滅戦や強襲作戦においてはともすれば統合軍内でも相当数の場数をこなし、戦機兵部隊の中でも最強と目される第一戦機兵師団の中隊長が務まる程の力量を誇る。


だが、あくまで戦闘部隊の隊長としての能力を鑑みれば、の話になる。


彼女の場合、戦闘中でも趣味(・・)に走る部分があり、単独突出が多く、とてもではないが通常部隊の隊長を任せられるものではない。


32特務中隊という問題児揃いの中で特殊な環境であるからこそ、彼女の采配の頭角が現れた部分がある。


その篠田は助手席に座り、軍曹に運転を任せて煙草を燻らせながら過ぎ去っていく風景を眺めていた。


「もう夏か」


「そうですね、相当暑くなってきました」


ぼんやりと呟いた言葉に軍曹が当たり障りのない返事をする。


彼女が戦機兵搭乗兵として実戦に参加したのは今日のような日照りの初夏だった。



仕事多忙につきかなり短めです、申し訳ない・・・。


ちまちま更新でも見て頂ける方々に感謝。

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