12 出立
前話から間が空いてしまい申し訳ありません。
そして最終話となります。
状況整理を終えた私たちは、この場を出立する準備をすることにした。
森に囲まれたこの場所は、何かの力が働いているらしく安全なうえ、池の水も飲んでも問題がないことが判明した。
そこで、この安全圏から出る前に、現状できることを各々が確認したところ以下のことが分かった。
私は亜空間を作り出す力。これは夢で見た空間破りに通じるものである。空間内の時間の流れはそのままに、空間内の広さもそれほどではなかった。
大地は地面を隆起させたり、逆に凹ませたりでき、植物の成長促進などもできた。
神楽ちゃんは火を出すことができ、ある程度操ることもできた。
「やっぱり前世に比べれば弱体化が著しいな……。神だったころの力が百だとすれば、今は一あるかどうかだな」
大地の言うとおり、私たち三人ともに神だったころに比べて能力の弱体化が著しく、できることも限られている。
「でも、ないよりはいいよね。ちょっと前まではまったく使えなかったし」
「そうねぇ、自覚がなかっただけで、もしかしたら使えたのかもしれないけど……なんとなくそれはない気がするわ」
感覚的にそんな気がするのだ。記憶を思い出す前は、力の片鱗とかそういうものがまったくといってなかった。付け加えると加護に関しても同じで、こちらに来てから効果が発現している。
「経験を積んで力が馴染めば、完全にとはいかないだろうけど、ある程度は力を取り戻せるかもしれない。いろいろと試しながら行こう」
「ええ(うん)」
大地の言葉に私と神楽ちゃんは頷く。
そして、薄暗くなってきていたことから、私たちは安全なこの場で一夜過ごし、早朝に出立することにした。
「よし! 準備はいいわね!?」
「いや、良くないだろ。亜空間に水しか入れられないってがっかりだぞ」
「大地兄ちゃん、容器を作れなかったボクたちにも原因はあるんだし、水を確保できるだけでもありがたいと思おうよ」
早朝、出立の直前に食糧を私の亜空間に入れようとしたが、分別ができないことが判明した。水と木の実を入れて取り出してみたところ、木の実は水浸しになってしまったのだ。
便利な力ではあるものの、弱体化の影響で融通が利かなくなってしまっているのが悩ましい。
また、神楽ちゃんの言うとおり容器に水を入れられればよかったのだけど、そんな都合のいいものはないし、作ることもできなかった。大地と神楽ちゃんなら力が戻ってくれば容器を作るぐらい訳はないのだが。
そんなこんなで、今、私の亜空間内には水だけがそのまま入れられている。水道の蛇口を捻る要領で少量を取り出せるので、飲み水にはとりあえずは困らないし無駄にはならないだろう。
ちょっとしたトラブルはあったものの、私たち三人はこの場を出立することになったのだった。
――――――――かつて、この世界には多くの神々が存在していた。
しかし、あるときを境に勢力が二つに分裂し互いに相争うようになった。
それは地上に高度な知的生命体が誕生し、その数を次第に増やしていったことが発端となった。
世界に干渉するのはほどほどに見守っていこうとする勢力。これを守護神。
それとは相反する、世界に干渉し支配しようとする勢力。これを支配神。
争いは次第に激しさを増し、次々に神々は力尽きていく。
そして、それぞれの勢力の最後の一柱が互いに相打ちとなり、神の時代は終わりを告げる。
しかし、それで終わりという訳ではなかった。神々の争いは星の環境を一変させたのだ。
支配神は各々倒れる際に呪いを地上にばら撒いた。それにより普通の生物とは異なる凶暴な魔物が生み出された。
それに対し守護神は抗う術をばら撒いた。地上にも疎らだが魔物の入り込めないような場所ができあがった。
それから長い時を経て――――――――
「……森の雰囲気はそんな変わらないけど、この先は明らかに空気が違うわね」
「うーん、道らしきとこから外れちゃうけど、迂回してみる?」
「いや、それはやめておこう。無暗に外れると迷う可能性がある。それに迂回しても同じような気がする」
出立してから森の中をしばらく歩いていると、これまでの穏やかな空気が一変するような雰囲気を感じ取った。
神楽ちゃんが迂回する案を出してみるも、大地はそれに反対する。私も大地の意見に賛成だ。例え迂回しても変わらないような感覚が私もするのだ。ならば道のりに沿っていったほうがいいだろう。
「この先、何が起きてもおかしくなさそうね。気を引き締めて行こう」
「「ああ(うん)」」
私たちは互いに頷き合うと一歩を踏み出す。何が待ち受けていようと、私たち三人なら乗り越えていけると信じて。
最後までお読みいただきありがとうございます。
なかなか続きを書くことができず、今話にて完結とさせていただきました。
こんな拙作ではありますが、楽しみにしてくれていた方には大変申し訳ございません。
読者に楽しんでもらえるような作品を執筆できるよう、今後とも邁進していきます。
また別の作品でお会いできましたら、その時はよろしくお願いいたします。




