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10 神の陰謀論

更新が遅くなってしまい申し訳ありません。難航していました。

 大地が落ち着くのを待ち、私たちはこの状況の整理を再開した。


 まず、この状況に至ったこととして、偶然ということはないだろうと、三人の意見が一致した。

 普通に考えてみても、出来過ぎているしおかしいのだ。

 私たち三人揃って見知らぬ場所にいたというのは、故意にせよ事故にせよ一緒に行動していたし、それは分かる。

 しかし、三人ともに不思議な夢を見たことがきっかけで前世の記憶を思い出し、しかも前世が神だったなんて。


 それから、疑問に上がったのは私たちの人格についてだ。

 前世に引っ張られることはあれど、私たち三人とも人間として過ごしてきた今の人格を保っている。

 私は最初、人間として生きてきた中で人格が形成されたために、前世に影響を受けることはあっても今の人格を保っているのだと思っていた。

 しかし、考えてみるとそれは少しおかしいのだ。

 前世が同じ人間ならば問題ない。問題なのは前世が神だったということだ。

 神格と人格、両者を比較すると圧倒的に前者のほうが強く、人格は神格に呑まれる。

 つまり、前世の神だったころの記憶を思い出した時点で、今の人格は眠りにつくか最悪消失していただろう。

 さらに言ってしまえば、生まれたときから神の記憶と神格を持っているほうが理にかなっているし、こちらのほうが普通であるのだ。


 これはもう、私たち三人が人間として転生する以前から仕組まれていたと考えてもおかしくない。

 では誰に仕組まれたのかというと、神だろう。

 断定こそできないけれど、少なくとも関わっていそうな神なら推測はできる。

 ウラノスとクロノス、そしてカグツチの系譜にあたる現最高神であるゼウスとアマテラスである。

 しかもこの二神、ゼウスからしてみればウラノスとクロノスは祖父と父、アマテラスからしてみればカグツチは一応兄にあたる。

 これはいったいどういうことなのか。ゼウスとアマテラスの二柱(ふたり)に問い詰めたいところだが、今はかなわない。

 さらに、ゼウスとアマテラスからみて、私たちに共通するものとして、身内かつ強い力を持っていた神であり、身内に殺された神であるということ。最後のは考えすぎかもしれないけれど。


 極めつけは加護の存在だ。

 私たちには一柱(ひとり)の神の加護が備わっていた。

 ウラノスにはアフロディーテ、クロノスには時間神クロノス、カグツチにはタケミカヅチ。それぞれ縁のある? 神である。

 アフロディーテは言わずもがな、タケミカヅチはカグツチが死した際に飛び散った血から生まれた神である。

 時間神クロノスについては、推測だが同じ名前だからという理由なのでは? という半分冗談みたいな見解に落ち着いた。

 なんにせよ、前世が神であったとしても、ただの人間に意味もなく加護を与えるだろうか。


 あれこれ話し合った結果、この状況は成るべくしてなったことであり、さらに言ってしまえばここまでお膳立てする必要があったのではないかと結論付けた。

 この場所、いや、もうこの世界といってしまってもいいだろう。

 こちら側からこの世界に送ったというのなら、何か思惑があるのではと考えられる。

 しかし、その逆。もし、あちら側から誘拐する形でこの世界に送られたのだとしたら……。

 さらに、それを予測していたうえで、地球の神々が私たちをわざわざ用意したのだとしたら……。




 この世界は、もしかしたら私たちが思っているよりも、ハードモードなのかもしれない。

お読みいただきありがとうございます。


この10話を書くにあたり、当初は会話を織り交ぜながら帰結させようとしていました。

しかし、やたらと長くなってしまったり、しっくりこなかったので、いっそのこと会話文を廃して、この形式に落ち着きました。

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