第88話 混迷化した原因
ブックマークありがとうございます。
盗賊達の脱走という想定外のトラブルが起こりながらも、ヨキ達やバーナードキャラバンの護衛として同行する冒険者達により、奇しくも盗賊達を制圧し事態を収拾する事に成功した。
それだけなら良かったのだが、そうはいかなかった。
盗賊達を制圧した後、ヨキ達は一度テント広場の中央に集まり、お互いの状況を確認し合った。
「……という訳なのよ」
「それって大丈夫なんですか⁈
マリは逮捕されちゃうんですか⁉」
ディモルフォセカからマリが盗賊の親玉を殺害した事を聞かされたヨキは、思わずディモルフォセカを問い詰めた。
その気はなかったとはいえ、人一人を殺したともなれば、只では済まないのが常識だ。
それはケイも同じで恵みの村にいた頃はそのような事はなかったため、不安を拭いきれずにいるのだ。
マリの身を案じる二人に対し、カトレアはラヴァーズを抱きしめながらヨキの問いに答えた。
「その点に関しては問題ないわ。
相手は付与武器を持っていたし、何よりジェイコブさんを人質にしていたから正当防衛が認められる筈よ。
それに盗賊の捕獲もしくは討伐した場合は報奨金が出たりするから、賞賛される可能性の方が高いから心配ないわ」
「じゃあ、マリさんがつかまるしんぱいはないんだね。
良かったぁ」
「問題はマリの精神面だよ。
正当防衛とはいえ殺すつもりはなかったんだ、内心修羅ばってる筈だ」
ケイが指摘した通り、盗賊を制圧した後もマリは動揺したままだった。
ヨキ達から少し離れた所で休んで入るものの、顔は青く体調は良くないように見える。
「でも、すぐ真後ろにいたとはいえどうして悟られなかったのかしら?
盗賊とはいえ相手はて誰だから、すぐ気づかれる筈なのに」
「確かに、無意識といえど行動に移すなんてそう簡単じゃないわ。
もう暴走状態じゃないし」
「それに関してはマリがアイスアサシンだからだ。
アイスアサシンは五感が常人より鋭い、おまけに名前通り隠密や戦闘に特化してる種族だ。
更に言えば盗賊達の脱走っつう極限状態、それも相まってアイスアサシン特有の力を発揮しちまったんだ」
スピリットシャーマンの中で戦闘に特化したアイスアサシンとしての力を発揮した事による行動だと説明を受けたヨキ達は、マリの方を見た。
話し合いをしているヨキ達の代わりに、姫紫君子蘭の壁のメンバーが付き添っている。
本当ならばヒエンかレイアが付き添うのだが、二人にはある確認を取らなければならなかった。
「今はそっとしておくしかない。
ところでヒエン、睡眠薬を盛られたって本当か?」
「あぁ、戦闘中に眠気と気怠さに襲われた。
症状からして間違いない」
「ヒエンが言ってる事は本当だと思う。
ソーンさんの気付け薬を嗅がせるまでリースも起きなかったんだ。
他の三三人も同じ理由じゃないかな?」
「僕だけじゃなくまさかヒエンもスイミンヤクをセッシュしていたなんて……」
知らず知らずの内に睡眠薬を摂取していた事に衝撃を受けたリースは、いつどのようにして摂取したのか思い当たらず、頭を悩ませていた。
ヒエンでさえ気付かなかったとなれば、かなり手が込んでいるという事になる。
だが睡眠薬だけを話題にする訳には行かなかった。
「睡眠薬だけじゃない、非戦闘員に至っては何かしらの精神攻撃を受けてる感じだった」
「精神攻撃だと⁉」
「そんな攻撃、受けてる感じはしなかったけど?」
「スキル持ちや実力者は元々効きにくいんだよ」
「でも、ジェイコブさんはヒナンユウドウできるくらいだいじょうぶそうでしたよ?」
ジェイコブがバーナードキャラバンの非戦闘員達を冷静に避難させていたというラヴァーズの証言を聞いたキールは、頭を悩ませた。
それが本当なら、精神攻撃の可能性は低い。
ジェイコブ以外にも混乱せずに行動していた商人達もいたため、精神攻撃はスズの勘違いではないかと悩んだ。
そこに、状況確認に行っていた翡翠の渡り鳥のラファとシファがやって来た。
「ケイ君、ヒバリ君、ここにいましたか」
「ラファ殿にシファ殿、いかがなされた?」
「二人に頼み事〜。
ちょっと面倒くさい事になってるから手伝って欲しんだぁ」
「ちょっとじゃないですシファ、今バーナード氏のテントで吊し上げが行われそうになってるんです。
リーダーとセレンがまとめ役のアンガスさんと一緒に他の冒険者達を宥めてるんですけど……」
「わかった、すぐ向かうよ。
皆も来てくれ、特に年少組がいれば抑制力になる筈だ。
カトレアは年少組に矛先が向かいそうになったら防波堤の役割を頼む」
バーナードキャラバンのリーダーであるミザールのテントの前で吊し上げが行われそうになっていると聞いたケイは、状況確認のためヨキ達原因とテント前に向かう事を提案。
吊し上げが行われそうになっているとなれば、止めない訳にはいかないと考えたのだろう。
ラファとシファに案内され、ヨキ達がミザールのテントに向かうと、そこではテントの前に集まった冒険者達による軽い騒動が起きていた。
冒険者達の視線の先には、翡翠の渡り鳥のりーだーであるガントゥとセレン、まとめ役のアンガスが誰かを庇う形で冒険者達を宥めていた。
三人に庇われているのは、観測する三つ目の斥候だった。
「なんでソイツを庇うんだよ!
元はと言えばソイツが原因だろう!」
「しっかり鍵が閉まってるか確認してくれてたら今回の騒動は起きなかった筈よ」
「いい加減にしろ!
昼間確認した時は牢馬車の鍵に異常はなかったと証言してるだろう⁉」
「そんなの責任逃れのために嘘ついてるに決まってるじゃないか!」
「その嘘に関しても裏付ける証拠がない。
彼女が本当の事しか言ってない可能性だってあるんだ、どうしてその可能性を考えようとしない?」
ガントゥとアンガスの二人は無実の可能性を主張するが、集まっている冒険者達は観測する三つ目の斥候を責め立てていた。
セレンに肩を抱えられている斥候も、俯きながら責め立てられる事に堪えていた。
「うわぁ、大変な事になってる……」
「これもう吊し上げ始まってるようなものじゃない!」
「君達を呼びに行ってる間に、状況が悪化したみたいです。
声量だけでも暴動レベルですよ……」
大勢の冒険者が一人に対して責め立てるという状況を目の当たりにしたヨキ達は、その迫力に思わず怯んでしまう。
このままでは本当に暴動にいなる危険があると考えたケイは、すぐに間に割って入った。
「ストップ、ストーップ!
ハイ一旦全員落ち着く、これ以上騒ぎ立てない!」
「なんだよ邪魔するんじゃねぇよ!」
「俺達はその女の無責任な行動について追求してるんだ!」
「証拠も根拠もない確証で一人を相手に責め立てない!
冤罪生むような行動取らない!
そんでもって小さな子供に悪影響な見苦しい事しない!
見ろ! 今のアンタら見てビビってんだぞ⁉」
騒ぎ立てる冒険者達に対し、ケイは大声を張り上げながら指を差す。
その先には冒険者達を現状を目の当たりにして動揺を隠しきれない年少組の姿があった。
普段なら冷静に状況を観察するリースとレイアは、冒険者達の剣幕に思わず傍にいた年長者の服の袖を掴んでおり、ラヴァーズに至ってはかなり怖かったのだろう、涙目でカトレアにしがみついていた。
「うるせぇっ! ガキは引っ込んでろ!」
「うぅ、ふぇ〜んっ」
「アンタの方こそ引っ込んでなさい!
あたしの弟を泣かせる奴は大人じゃろうが容赦せんわよ!」
興奮状態の冒険者の一人がヨキ達に怒鳴り散らした瞬間、カトレアに抱きついていたラヴァーズが現状に耐えきれず泣き出してしまった。
その直後にラヴァーズが泣かされた事に対し、カトレアが鈍り口調で冒険者に怒鳴り散らした。
その剣幕は怒鳴った冒険者以上の物だったため、必然的に他の冒険者達も巻き込まれる形でカトレアの怒鳴り声を聞いたため、思わずたじろぐ。
その様子を見たケイは話の主導権を握れると判断し、話を切り込む。
「少しは頭を冷やしたらどうだ?
今のアンタらの行動、あまりにも軽率で一方的すぎるぞ」
「そうは言うけど、彼女が確認を怠ったから盗賊達が脱走したのよ⁉」
「違う、本当に昼間確認した時にはちゃんと鍵がかかってたの、本当なの……」
一方的に周りから責められ、観測する三つ目の斥候は精神的に参っているようだった。
その証拠に、その声はかなり弱々しくかなり意識しないと聞き取れないほどだった。
傍にいたセレンは、このままでは無実の罪を認めてしまうかもしれない事を危惧し、もう一度冒険者達に落ち着くように進言した。
「ケイ君の言う通り、一度落ち着くべきよ。
一方的に責め立てられて、彼女凄く参ってるのよ」
「あ、あの……」
「そうは言うが危うくキャラバンから被害が出そうになったんだ!
その責任はどう取るつもりだ!」
「ちょっと……」
「軽症者とかは確かに出たが、結果的に犠牲者は出なかったんだ。
その事を考慮すれば罰する必要はない!」
「うるせぇ! いい加減そこをd…」
「ろっ牢馬車の鍵は、壊れてたんです!」
アンガス達と冒険者達の言い争いが再び起こりそうなになった時、ヨキが大声を上げた。
ヨキが大声で告げた内容を耳にした瞬間、その場にいた全員の視線が一気にヨキに集中した。
大勢の視線にさらされながら、思わず身をすくめるヨキ。
怯えながらも、牢馬車で自分が見た事を全員に伝え始めた。
「ぼ、僕が交代で牢馬車の見張りに行った時には、鍵は壊されてました。
それに夕方、野宿の準備に入るまで、牢馬車の見張りをしてたけど、鍵は外れてませんでした。
だから、その人に否は、ありません!」
「牢馬車の鍵が壊されてた⁉
そんなの初耳だぞ!」
「話す前にラファとシファが来たから話しそびれたんだよ。
アタシも盗賊の脱走阻止しようと牢馬車に行って壊れてるの見たから間違いないよ?」
「今は修復しちゃったから現物はないけど、俺も見たから間違いない。
どうしても信じられないっていうんなら牢馬車で戦った鷹獅子の西風や、冒険者パーティに聞いてくれても構わないぜ」
同じように牢馬車で盗賊達の対応をしていたフィービィーとバンも、同じように証言し観測する三つ目の斥候に否はない事を証言する。
ヨキ達の証言を聞いた冒険者達は、自分が間違っていたのではと困惑し始めた。
中にはヨキ達の証言を聞いても納得がいかず、ヨキ達に詰め寄ろうとする者もいた。
だがそうなる前に、騒ぎを聞きつけたミザールと数名の商人達がテントから出てきた。
「いい加減にしないか。
一方的に責め立て相手の言葉に耳を傾けないというのは、見過ごす事はできないぞ」
「バーナードさん、しかし……」
「これ以上騒ぎ立てるようなら次のルテラ砦で離脱してもらう。
無論、冒険者ギルドにもこの事を報告させてもらうぞ」
一方的に責め立てる冒険者達に対し、ミザールは冷徹に言い放った。
その判断は自分達の今後に大きく影響すると思った冒険者達は、一気に静まり返った。
「バーナード氏、助かりました」
「例には及ばない、それより盗賊達が脱走した原因が牢馬車の鍵が壊されてたと言うのは本当か?」
「バン、具体的にはどんな感じで壊されてたんだ?」
「正確に壊れていたのは扉に着いてた錠前の方。
錠前を修復する際に状態を確認したけど、あの壊れ方は“意図的に”壊された感じだった」
牢馬車の錠前が意図的に壊されたという新たな証言が飛び出たため、その場にいた全員に衝撃が走った。
意図的に壊されたという事については、ヨキも初耳だったためとても驚いた様子だった。
「バン、それ本当なの⁉」
「あぁ、自然に壊れたにしては綺麗すぎる壊れ方だったんだ」
「つまり、何者かが意図的に壊し、混乱を招いたという事か?」
「そういえば、俺が盗賊の一人に問い詰めた際にいつの間にか鍵は開いていたと言っていたな」
「それって、壊した犯人って相当な手練れって事だよね?
誰も気付かないのって、あり得ない気がするんだけど……?」
ヒエンが盗賊から聞き出した情報を聞いたシファは、そう呟いた。
シファが言った通り、これまでの証言を組み合わせていけば牢馬車の錠前を破壊した犯人はかなり手だれているという事になる。
牢馬車の見張りどころか、閉じ込められていた盗賊さえ気付いていない時点で相当な実力の持ち主という事になるのだ。
だがそれと同時に、理解不能な点もある。
「シファのいう事は一理あります。
仮にそうだとしても、何のために盗賊達を意図的に脱走させたのかという謎が残ります」
「ラファ殿の言う通りでごじゃる。
捕らえ損ねた盗賊が仲間を助けに来たというなら分かるでごじゃるが、盗賊達からそのような話は出ておらぬでごじゃるよ」
ヒバリとラファもその点に関しては疑問を持っていたようだったが、犯人の目的と利点まではわからなかったため分からずじまいのままのようだ。
そんな時、周囲の確認に言っていた鷹獅子の西風がやって来た。
「周囲の状況、確認し終えて来たよ」
「フェムさん皆さん、お帰りなさい。
周囲の様子は、どうでしたか?」
「ざっと見た感じ捕まえそびれはなさそうだった。
全ての盗賊を捕らえたと見て、安心して良いだろう。
ただ少し、気になる事はあった」
「気になる事?」
「それって一体……」
「非常事態だったにも関わらず、大勢の冒険者が眠りこけてた事でさぁ。
あまりにも不自然だったんで、眠りこけてた面子に聞き込みもしたんですよ。
その結果、コイツに行き着きやした」
そう言いながらゴンスケがヨキ達の前に再出したのは、何かの袋と茶葉が入った袋だった。
一見見れば普通の茶葉のようだが、リースを含めた冒険者達が起きなかった原因だという。
「それって、お茶の葉の袋?
袋に記載されてる名前からして、ブレンドされた香草茶みたいだけど」
「それ、確かヒエンが取った配ぜんされてる飲み物の中にもあったやつだ」
「僕もそのお茶を飲みました。
確かリラックス効果がある香草茶だと聞いて」
「やはりリース君も飲んでいたか」
「二人共、アッシらが助けた商人の娘さんの事は覚えてやすか?」
ゴンスケに質問されたスズとリースは、話の内容から避難する事なく眠りこけていた二人の冒険者の傍にいた商人の娘の事だと気付き、首を縦に振った。
「その娘さんからも詳しい話を聞いたんですが、前にも似たような事を経験していたらしいんでさぁ」
「えっ? そうだったんですか⁉」
「でもあの二人確か、リースと同じように寝てたよな……?」
自分達が助けた商人の娘と二人の冒険者が、似たような状況に遭遇していたと知ったリースとスズは、驚いていた。
似た状況を経験しているなら、自分達よりもどう行動するべきかわかっている事になる。
だが実際は冒険者二人は眠りこけており、そのため商人の娘は二人を心配して逃げ遅れてしまった。
実際に目の当たりにしているスズとリースは、その事に疑問を持っていた。
「その時も一緒にいた冒険者二人も先程までのように眠っていたが、その時はすぐに起きて戦闘に加わっていたらしい。
だが、今回に限って何故か起きなかったそうだ」
「アッシらが聴き込んだ際に娘さんも可笑しいと感じていたらしく、最後に二人が口にしたもんとしてコイツを渡してくれたんでさぁ」
「そういえばゴンスケさん、香草茶とは別の袋持ってますね?
なんですか?」
「コイツは娘さんから預かった、冒険者二人が飲んだ茶葉の飲みガラでさぁ」
そう言いながらゴンスケは袋から茶葉が入った飲みガラを取り出した。
取り出された飲み柄は、茶袋に入れられていた。
「二人に飲ませるために彼女自ら入れたらしい。
先刻も飲んだ事があるから問題ないと思ったそうだ」
「それならアタシとキールも飲んだよ。
でもリースみたいにぐっすり眠るなんて事にはならなかったけどなぁ?」
「言われてみれば、私も朝にその香草茶をいただいたけど眠気はなかったわね」
「その飲みガラと薬草茶の袋、ちょっと見せて」
商人の娘の証言、そしてフィービィーとメルビィの証言を聞いたケイは、ゴンスケから飲み柄の入った袋を受け取った。
その場に座り込むと、鞄から小皿とピンセットを取り出した。
それを使って茶袋を破いて飲みガラの内容を確認し始めた。
ハーブティーの袋に書かれている品目を確認しながら、ピンセットで当てはまるものを素早く探し当てていく。
そして飲みガラから全て当てはまる茶葉と薬草を探し当てた後に、ある事に気付いた。
(加密列が妙に多いな。
薬草茶とはいえ、いくらなんでも加密列多すぎる)
一種類の薬草だけ妙に多く入っている事に気付いたケイは、もう一枚小皿を取り出して加密列を中心に飲みガラを確認していく。
次にピンセットで取った加密列を確認した瞬間、目を見開きながら驚きの声を上げた。
「これ、”夢誘い“じゃないか!」
「えぇ! なんでそんな物が入ってるの⁉」
夢誘いとケイが驚きの声を上げた直後、ヨキもつられて驚きの声を上げた。
それを聞いたバン達や冒険者達は、聞き慣れない言葉に首を傾げたが、一部の冒険者と商人達は違った。
「夢誘い、正式名称は確か眠加密列だったかな?」
「菊系統の植物で珍しく鎮静効果が強い眠加密列が?
確か一般的に売るのは禁止されてる植物の筈よ」
「何でそんな物が?」
眠加密列の事を知る冒険者や商人達は、ハーブティーに紛れ込んでいる事にかなり動揺していた。
その様子から眠加密列がただの薬草ではないと悟ったヒバリは、薬草について一番詳しいであろうケイに説明を求めた。
「ケイ、眠加密列とはどういう薬草でごじゃるか?」
「さっきも出てきたけど、菊系統の植物では珍しく鎮静効果が強い薬草なんだ。
信じられない事に、もの凄く効果が強くて葉っぱ一枚口に含んだだけで丸一刻眠りこけるんだ。
なんだったら七歳くらいの雄猪に花頭三つを煮出した白湯を小鍋一杯分ぶっかけただけで眠らせれるくらいだ」
「そんなに強いでじゃるか⁉」
「あぁ、恵みの村で大人達が何度かその手を使ってた。
しかも一度摂取したら中々起きないから、覚醒効果のある薬を飲ませるか最上級の異常回復能力を使うしか起こす方法がない。
一番最悪なのは摂取量を間違えたら、昏睡状態に陥ってそのままぽっくり逝っちまうんだ」
「今回は他の薬草が邪魔したおかげで、効果が少し薄まって気付け薬で起こせた。
けど、一番厄介なのは普通の加密列と殆ど変わらない事なんだよ」
「どういう事?」
眠加密列と一般的な加密列がほとんど変わらないと聞いたメルビィは、思わずヨキに詰め寄る。
メルビィに詰め寄られたヨキはたじろくも、眠加密列の厄介性について話し始めた。
「眠加密列は、普通の加密列と、見た目、が変わらないんです。
見た目だけじゃなく、匂いも弱い、から知識のない人が、普通の加密列と間違えて、薬草茶にして、飲んで眠ってしまう、事故が多発するんです」
「見分け方がない訳じゃないけど、その方法がほんのり黄緑づいてるかどうかなんだ。
乾燥させたら尚の事分からりづらくなるから、取り扱い厳重注意で父さん達もめちゃくちゃ注意してたんだよ」
「知らず知らず、の内に口にして、眠って、しまう。
だから、夢誘い、という生薬名が、ついたんです」
「でもさぁ、なんでそんな危ない薬草が香草茶に入ってたの?
さっき聞いたけど、朝に飲んでも寝なかった人もいるよね?」
眠加密列の厄介性を聞いた全員が、その厄介性に恐怖した。
もしかすれば自分もそうやって眠ってしまい、一生起きなかったかもしれない。
それだけで眠加密列の恐ろしさを知る事ができる。
だが先程シファが言ったように、朝に同じ香草茶を飲んでも眠らなかった者達もいるため、その事に関してはどうするのかと指摘した。
「牢馬車の鍵同様に意図的に混入されたんだ」
「どういう事だ?」
「この薬草茶の袋、新品だよね?
この薬草茶の袋には眠加密列が入ってない、開封されてる薬草茶の袋に誰かが意図的に入れたんだ」
「意図的にってつまり……」
「言葉通りの意味だよ、俺達の戦力を弱体化するために眠加密列を意図的に混入させたんだ!」
ご覧いただきありがとうございます。
もしよろしければコメント、いいねお気軽にいただけたら幸いです。




