第87話 眠気に苛まれながらの戦闘【ヒエンside】
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ヨキ達が鷹獅子の西風と共に盗賊達の脱走に気付いた頃、ヒエンもまた異変にいち早く気付き愛用の洋弓銃で対応していた。
既に脱走した盗賊達の脛部分を狙い、移動が出来ないよう制圧していく。
その周りではヒエン同様にこの事態にいち早く気付き、盗賊の制圧に乗り出した冒険者達が戦っていた。
「どっせい! これでどうだ⁉」
「これをこうしてこうやって、よしっ!
ここいらにいる盗賊達の捕縛は完了したよ!」
「こっちも捕縛完了だ!
様子からして、スキルは使えないままみたいだ!」
その場にいた冒険者達は、暴れる盗賊達の様子からスキルは封じられたままである事を把握した。
その証拠に、制圧された盗賊達の首元に茨の模様が刻まれている。
これはキールが盗賊達に対してチェック・ダ・ロックを発動しスキルの封印を施した証拠だ。
ヒエンも茨模様が消えていない事を確認し、制圧された盗賊の内一人の胸ぐらを掴むとどうやって脱走したかを問いただした。
「てめぇら、どうやって牢馬車から出てきた⁉」
「し、知らねぇよ、そんな事……」
「あ゛ぁ⁈」
「ヒィッ! ほっ本当に知らねぇんだよ!
気付いた時には扉が開いてて、俺達はそのまま出てきたんだ!」
「そんな筈ない!
昼間に鍵の確認したけど全部しまってた!
本当よ⁈」
ヒエンが持ち前の凶悪な人相を活かして問いただした結果、いつの間にか牢馬車が空いていたという盗賊の証言を得る事ができた。
昼間に牢馬車の見張りをしていた観測する三つ目の斥候である女冒険者が、慌てた様子で否定する。
だが、現に盗賊達は出てきているため、あまり信用されていない様子だ。
観測する三つ目の斥候は周りから疑いの目を向けられ、酷く落ち込んでいた。
「本当よ、本当に鍵は掛かっていたし、扉も開いていなかったの……」
「確認するのは後だ!
今は脱走した盗賊連中を制圧するのが先だ!」
このままでは埒が明かないと判断したヒエンは、洋弓銃にクォレルをセットしながら冒険者達に指示を出す。
ヒエンの言った事が意に的を得ている事は明白だったため、他の冒険者達もそれに従い盗賊の制圧に動き出した。
「いつまでもウジウジしてんじゃねぇ!
無実だってんなら行動で示して見せろ!」
「グスッわかったわよ……」
ヒエンに激励された観測する三つ目の斥候は涙目になりながらも、身の潔白を証明するために盗賊の制圧に動き出した。
ヒエン達がテント広場に移動すると、とあるテントの周囲で少数の冒険者達が盗賊達と戦っていた。
その中にはレイアの姿もあった。
「レイア、何やってるんだ⁉」
「ヒエン! ブジだったんだな⁉
こっちを手伝ってくれ! どういうワケかテントの中にいるボウケンシャが起きないんだ!」
「なんだと⁉」
レイアは激辛香辛料入りの煙玉を投げつけながら、テントに残っている冒険者達が目を覚まさない事を告げた。
ヒエンと行動していた冒険者二人がテントの中に入り、少ししてテントの中から慌てた様子で出て来た。
「その子の言った通り、中にいる連中全然起きないぞ!」
「体をゆすっても全然起きる気配がないの!」
「そんな馬鹿な、これだけ周りが騒がしいのに起きないなんて可笑しいぞ。
どれだけ眠りが深いんだ⁉」
テントで眠る冒険者達が全く起きる気配がないという事実に、ヒエンと行動を供にしていた冒険者達は困惑した。
盗賊達が逃げ出し暴れているというのに、起きないなんて事はあり得ない。
しかし、現に起きない冒険者達がおり、かと言って放って置くという訳にはいかない。
そのためレイアや他の冒険者達は眠っている冒険者達がいるテントを死守する必要があり、他の場所へ援軍を送る事が出来ないのだ。
「どっちにしても人手が足りない!
他の冒険者が援軍に来るかテントで寝てる連中が起きるまでの間、手を貸してくれ!」
「クソッ! とっとと制圧してテントで眠りこけてる連中を叩き起こすぞ!」
このまま放置という訳にはいかない以上、ヒエンは速攻で洋弓銃を構え眠る冒険者達を守るためにテントの防衛に参加した。
観測する三ツ目の斥候や他の冒険者も同様に武器を構え、テントに集まる盗賊達の制圧及び、テントの攻防戦が開始された。
「右側前方、木の棒を装備した盗賊が三名接近!
その後方から二名の盗賊による投擲攻撃を確認!」
「盾役は接近してくる連中を足止めしろ!」
「こうほうの奴らはまかせて!」
右側後方から投擲攻撃を行おうとしている盗賊に対し、レイアは煙玉を後方目掛けて投げつけ、投擲攻撃を行う盗賊は煙に混じる激辛香辛料に目と鼻をやられ、思わず怯む。
そして幸いな事に、風向きが盗賊達がいる方向に吹き、他の盗賊にもレイアの煙玉の被害に遭っていた。
「ゲッホゲッホッ! なんだこれ、目が痛ぇ!」
「目が、目が~っ! 痛くてなんも見えねぇよ~!」
「うぁあ、鼻がツーンとなって……」
「盗賊達が煙玉で怯んでる、一気に畳みかけるぞ!」
「あっ! ちょっと待って!
まだけむりが漂ってるのに今トツゲキしたら……」
激辛香辛料の煙にやられた盗賊達の姿を見た冒険者の一部が、これ幸いにと盗賊に接近しようとした。
それを見たレイアは慌てて止めようとしたが、時既に遅く、冒険者の一部が盗賊達のいる激辛香辛料の煙の中に突撃してしまった。
それから五拍秒も経たない内に、突撃した冒険者達が混乱しながら激辛香辛料の煙から出て来た。
「目が、目が痛ぇーっ!」
「ゴホッゴホッ! のっ喉がやられた……っ!」
「だいの大人が何やってんだよ!」
レイアの忠告も聞かずに激辛香辛料の煙に突撃した結果、逆に自分達がダメージを受けてしまった冒険者達。
自分が牽制のために投げた煙玉にやられた冒険者達を目の当たりにしたレイアは、思わず天を仰いだ。
それが原因で冒険者側の連携が僅かに乱れ、激辛香辛料の煙にやられなかった盗賊達に付けいられてしまう。
「冒険者連中が自爆したぞ!
野郎ども、今の内に連中を叩きのめすぞ!」
「全員近くにいる奴とペア、もしくはスリーマンセルを組め!
体勢を立て直すぞ!」
指揮系統を担っていた冒険者がすぐさま周りに指示を出し、体勢を立て直そうと試みる。
ヒエンとレイアも二人一組になり、盗賊達との戦闘に突入する。
接近して来た盗賊達に対し、ヒエンは容赦なくクォレルを打ち込み、動けないようにする。
レイアも激辛香辛料の煙玉だけではなく、投げナイフで盗賊達に攻撃し、隙あらば小柄な体型を利用して懐に潜り込み腹部に打撃を入れる。
他の冒険者達も、同じパーティ同士ではないとはいえ上手く連携していた。
このまま連携が回復し、順調に盗賊の制圧進むかのように思えたが、ここでヒエンがクォレルを外してしまった。
「! 一人外した、一番左の奴を拘束しろ!」
「〝大気に流れし魔素よ、我が敵をとらえ給え。バインド!〟」
ヒエンはすぐさま自分のミスで逃してしまった盗賊の位置を周囲に伝え、拘束するよう伝える。
近くにいた魔法士の魔法により、ヒエンが逃した盗賊はすぐに捕らえられた。
それからヒエンはすぐに攻撃を再開する。
先程のミスは単なる偶然かと思いきや、再びクォレルを外してしまい、近くにいた槍士の冒険者が襲いかかられた。
「キャアッ! 誰か手を貸して!」
「任せて!」
とっさに盗賊の攻撃を受け止めるも、態勢が悪く今にも押し倒されそうな槍士の冒険者に対し、観測する三ツ目の斥候が素早く助けに入る。
観測する三ツ目の斥候が体当たりをした事で盗賊は体勢を崩し、そのまま槍士の冒険者に返り討ちにされた。
それを見たヒエンは攻撃を続けるが、それから三度、四度とクォレルを外し、盗賊達に攻撃が当たらないというミスを連発する。
普段ならこれだけのミスを犯す事はないため、流石のヒエンも焦っていた。
(クソッ! 大体は当たってるがさっきからクォレルが何度か外れちまう!
洋弓銃の限界が近いか⁉)
度重なるヘルシャフトとの連戦により、洋弓銃の耐久性が限界に近いのではないかと考えたヒエン。
だが次の瞬間、ヒエンの意志とは裏腹に体のバランスが崩れた。
とっさに左手で地面に手を突き、転倒するのを免れたが、それを皮切りにヒエンに異変が起きた。
何故か体に力が入りづらく、立ち上がるまでに時間が掛かった。
なんとか立ち上がったまでは良かったが、力が入りづらくなった事で洋弓銃の引き金を力一杯引く必要があり、クォレルを補充する動作も遅くなっていた。
極めつけは、一瞬視界がぼやけたように見えた事だ。
「(なんだ? 何が起きてる?
体に力が入らない、視界がぼやける、瞼が妙に重い)
……クソが、そういう事かよ!」
ここに来て調子が悪いのは洋弓銃ではなく、自分自身だと気付いたヒエン。
盗賊達を牽制していたレイアも異変に気付き、すぐさまヒエンの元に駆け寄った。
「どうしたんだヒエン! なんか可笑しいぞ⁉」
「どこぞの馬の骨に薬を盛られた、症状からして睡眠薬の類いだ。
テントで眠ってる連中も俺と同じように睡眠薬を盛られて、眠らされたんだ!」
「スイミンヤクだって⁉」
ヒエンから睡眠薬を盛られたと聞かされたレイアは、信じられないという表情だった。
ヒエンは体に力が入りづらく、視界がぼやけたかと思った直後に瞼が重く感じた事から、自分が知らぬ間に睡眠薬を摂取した可能性に気付いた。
更にテントで眠る冒険者達がこの騒ぎの中目を覚まさないという状況も、自分と同じように睡眠薬を摂取してしまったからだと推測し、レイアにその事を伝えた。
「レイア、急いで周りの連中の中から気付け薬を所持してる奴、そうか状態異常を治せる奴を探せ。
この騒ぎで一向に起きない程眠りが深いとなれば、普通に起こすのはまず無理だ」
「そんな事いわれても、今お前からはなれたらダレがフォローするんだよ⁈」
「問題ねぇ、俺はまだ動ける、自分の身を守るくらい造作もねぇ。
だが薬の効果が出始めたとはいえ一人でおめおめと逃げるなんざゴメンだ!」
「あぁ、もうっ! この分からず屋!
後でマリに言いつけてやるからな!」
そう言い放つとレイアはすぐさま気付け薬を持つ冒険者、もしくは異常回復が使える冒険者捜しに向かう。
ヒエンは眠らないように必死に意識を保ち、盗賊達の動きを鈍らせようとする。
あえて急所は狙わず、神経のあるところをギリギリかすめる程度に当てる。
直撃させる事が出来ずとも、かすめるくらいならば出来なくはない。
そこまでは問題なかったが、次第に摂取してしまった睡眠薬の効果が次第に効き始め、ヒエンの意識を眠りへと誘おうとする。
(眠気が強くなり始めた、動き回った影響で睡眠薬が体全体に回り始めたか⁉)
ヒエンを襲う眠気は次第に強くなっていき、段々当たるクォレルの数も減っていく。
洋弓銃にクォレルを装填しようにも手に力が入らず、上手く装填する事が出来ない。
ついにはその場で片膝を突き、その場から動くのもままならなくなってしまった。
(マズい、体がまともに動かせねぇ。
しかもほとんどぼやけてやがる、レイアはまだか⁉)
睡眠薬が効力を発揮し、もはや眠らぬよう意識を保つ事で精一杯なヒエン。
もはや攻撃する気力も残されてはいなかった。
そして盗賊の一人がヒエンが動けない事に気付き、ゆっくりと近付いてきた。
「お前、“罪喰らいのヒエン”か?
キシシシッまさかこんな所で無防備状態の罪喰らいに出会えるとはなぁ?
今ここでお前を潰せば俺も界隈で有名人だな~」
「クソが、好き勝手いいやがって……」
自分の前に立ち好き勝手に言ってくる盗賊に対し、苛立ちを覚えるヒエン。
ヒエンとしてはすぐにでも殴り飛ばしたい所だが、睡眠薬の効果で意識を保つ事に必死でそれだけの余裕はない。
そんな時、テント広場の中央付近から爆発音とともに砂煙が上がった。
「なんだ⁉」
「中央付近の方からよ!」
(中央、だと? マズい、あそこにはマリがいる!)
中央と聞いたヒエンは、そこに法術が使えないマリがいる事に気付いた。
マリの性格上、逃げ遅れた非戦闘員の手助けをして自身も逃げ遅れていると考えたヒエンは、すぐに向かおうとするが、睡眠薬のせいで思うように動く事ができずもどかしく感じた。
「おぉ、あれは親分の付与武器か!
これは俺達の勝ち星確定だな」
「……回収した付与武器を、奪い返されたか!」
盗賊達の親玉が取り上げた付与武器を回収し、中央付近を強襲したのだわかっても、今のヒエンではどうする事もできない。
「それじゃあ俺の名声を上げるためにも、ここでくたばってくれや!」
(防御、間に合うか⁉)
目の前の盗賊が手に持っていた木の棒を大きく振り上げる。
ヒエンは力が入らない体を必死に動かし、防御態勢を取ろうとする。
その時、全く予想だにしていなかった助っ人が現れた。
「そうはさせるかボケェーッ!」
「グボハァッ⁉」
「大丈夫かヒエン、助けに来たで!」
ディモルフォセカと別れ、逃げ遅れた非戦闘員の避難を終えたニヤトがヒエンを助けに現れた。
どうやら他に逃遅れた物がいないか探し回っていたところ、偶然ここでの戦闘を発見し、ヒエンが動けなくなっている事に気付き助けに入ったのだ。
「どないしたんやヒエン、らしくないで⁈」
「どこぞの馬の骨に睡眠薬を盛られたんだ!
そのせいで体がまともに動かねぇし、テントで眠りこけてる冒険者共も起きねぇ状況だ!」
「睡眠薬やと⁉ なんでそんなもん飲んだんや⁉」
「さっき盛られたと言ったばかりだろう!」
睡眠薬を盛られたと説明したにも関わらず、理由をちゃんと理解していないニヤトに対し怒りを覚えるヒエン。
そこにレイアに先導されたスズ、リース、ソーン、ゴンスケの四人がやって来た。
「ヒエン、大丈夫か? まだ起きてるか⁉」
「お前は、スズの方か?」
「あぁ、合ってる。生命力の流れでお前が眠りそうになってるから急いできたんだ!」
生命探査でヒエンの危機に駆け付けたスズは、ヒエンの体を支えた。
護符を手に持ったリースがヒエンの目の前に立ち、呪術の発動準備に入る。
「そのままじっとしていて下さい、今呪術でイジョウ回復をおこないますから」
「詳しい詳細は聞きやした。
ここにはあと七人程眠ったままの冒険者がいる筈でさぁ、彼らは何処に?」
「そこのテントの中だ。
睡眠薬を盛られたせいで今も夢の中だ」
「ソーン」
「うむ」
ヒエンから眠り続けている冒険者達の居場所を聞いたソーンは、所持していた着付け薬を手にテントの中に入る。
そしてリースがヒエンの状態異常を治すべく、呪術を発動させた。
「〖眠覚夢終〗」
眠覚夢終と唱えると、リースが手にしていた護符に黄色の炎が灯ると同時に、黄色の炎がヒエンの周りを囲う。
それと同時にヒエンを襲う眠気と気怠さが消えて行く。
そして黄色の炎が消えると同時に、護符も燃え散ってしまった。
その頃には、睡眠薬の効果はさっぱり消え、ヒエンは完全復活を遂げた。
「恩に着る、これで反撃に出られる」
「こちらもテントにいた冒険者達を起こし終えたぞ!」
「おっしゃ反撃だーっ!」
「今すぐ出撃します!」
「怪我した人はいませんか?」
ヒエン達が守っていた冒険者達もソーンの気付け薬で目を覚まし、すぐさま合流して盗賊達の制圧に取り掛かる。
冒険者側に援軍が来た事で、盗賊達は一気に混乱する。
「マズいぞ、冒険者共の援軍だ!」
「どういう事だよ、奴ら連携できなかっただろう?!」
「やっやべぇよ、早く逃げよう……ギャアッ!」
「そうは問屋が、卸しませんぜ」
分が悪くなり逃げようとする盗賊に対し、ゴンスケが長弓で射撃し、逃げられないようにする。
攻撃を仕掛けてきた盗賊に対しては、ソーンが身を挺して守り、盾ごと体当りする形で反撃する。
「盗賊達の動き、鈍くなってきたよ!」
「相手の勢いが弱まってきている、今がチャンスだ!」
「もうひと踏ん張りや! 気張っていくで!」
そう言いながらニヤトが盗賊の一人に飛びかかり、問答無用で殴り倒す。
レイアも風を操るスズが来た事で味方陣営への被害を心配する必要がなくなり、安心して激辛香辛料の煙玉を盗賊達に向けて投げつける。
そして激辛香辛料の煙をスズが風で操り、盗賊達にまとわりつかせ視覚と嗅覚を使い物に出来ないようにする。
復活したヒエンも素早くクォレルを装填しながら、洋弓銃の引金を引き盗賊達の肩や脛を的確に狙っていく。
段々仲間の盗賊達がやられ、形勢逆転されると思った統率していた盗賊の男は、仲間を見捨て一人こっそりと逃げようとする。
だが振り向いた先の足下にはタメゴローが待ち構えており、般若のような形相で盗賊の男に飛びかかった。
「ミャァアオッ! ゥナァーウッ!」
「ギャアッ! なんだこの、や、やめろぉおーっ!」
一人逃げようとした盗賊の男に飛びかかり、タメゴローは盗賊の男の体をよじ登り、頭まで来ると後頭部から両前足を伸ばして爪でこめかみに固定し、頭部に思いっきり噛みつく。
猫であるタメゴローに攻撃されるとは思ってもみなかった盗賊の男は、タメゴローを必死に振り払おうとする。
だがタメゴローは両前足を爪でこめかみに固定しているため、振り落とされる事なく頭に噛みついたままだ。
そうやってタメゴローに意識を向けている内に、周囲で暴れ回っていた盗賊達はヒエン達に制圧され、自身の周りを冒険者に囲われていた。
「お巫山戯はそこまでにしてくれないかな?」
「もうとっくにこっちは終わってやすよ」
「あ? あ⁉ いつの間に⁉」
「アンタがタメゴローとカクトウしている間に他のレンチュウは拘束したよ」
そう言いながらスズ達は他の冒険者に拘束されている盗賊達を指さした。
別々のスキルが使われている事もあり、様々な方法で拘束されているが盗賊達は満身創痍な状態だった。
「もう諦めろ、我々の勝ちだ」
「く、クソ~」
制圧された仲間達を見た盗賊の男は戦意を喪失し、その場で崩れ落ちた。
そして観測する三ツ目の斥候にロープで体を縛られ、拘束された。
それを確認したかのようにタメゴローは盗賊の男から離れ、ニヤトの前まで移動する。
「この辺りで暴れていたのは、コイツで最後みたいよ」
「オッシャ! でかしたでタメゴロー!」
「ニャアオ」
ニヤトに褒められて上機嫌なタメゴローはニヤトの足下にすり寄る。
その間にヒエンは中央付近にいるマリの安否確認をスズに依頼した。
「スズ、至急中央付近の状況を確認してくれ。
中央には取り上げた付与武器を奪い返した盗賊の親玉がいる、近くにマリがいる筈だ」
「さっきの爆発の事だな?
分かった、すぐに確認してみる!」
そう言うとスズはすぐさま生命探査でテント広場の中央付近の様子を確認した。
生命探査に引っかかった生命力の中から、マリの生命力を発見する事は出来たが、その近くでジェイコブと盗賊達の親玉と思われる生命力があった。
「……マリを見つけた。
一応無事だけど、厄介な事になってる」
「厄介な状況?」
「すぐ近くに俺達を助けてくれたジェイコブさんと盗賊の親玉がいる。
距離感からしてジェイコブさんが人質になってるみたいだ」
スズの索敵結果を聞いたヒエンは、マリの無事を確認できたが別の問題が発生していると知り苦虫を噛んだような表情になった。
同じように報告を聞いていたリース達もざわついている。
「なんやと⁉ こうしちゃおられへん、ジェイコブのおっさんを助けに行くで!」
「ちょっと待って!」
恩人であるジェイコブを助けるべく、ニヤトはすぐにでも助けに行こうと中央に向かおうとする。
だがその前に生命探査で様子を伺っていたスズが待ったを掛ける。
「な、なんや、なんで止めるんやスズ⁉」
「マリの様子が可笑しい……」
「マリの様子が? どういう事だ⁉」
マリの様子が可笑しいという報告をスズから聞いたヒエンは、それがどういう事なのかとスズに詰め寄る。
スズは生命探査を続け、マリの動きを確認する。
すると次の瞬間、マリの生命力が元々の位置から消え、一気に盗賊の親玉との距離を詰めた。
更に次の瞬間、盗賊の親玉の生命威力が消えた。
その様子を確認したスズは、驚きを隠せなかった。
「……盗賊の親玉の生命力が、消えた」
「セイメイリョクが消えた?
それってつまり、死んだって、こと?」
「ジェイコブのおっさんは、ジェイコブのおっさんはどうなったんや?
無事なんか⁉」
「ジェイコブさんは無事だ、生命力を感じる!
消えたのは盗賊の親玉だけ、それ以外は皆無事だ!」
ジェイコブは無事だと聞いたレイアとニヤトは安心したものの、盗賊の親玉が死んだと聞かされたヒエンは、スズにある事を尋ねる。
「待て、だとしたら何故親玉は死んだ?
親玉を仕留めたのは誰だ⁉」
スズの話からして盗賊の親玉の近くにいたのはマリとジェイコブの二人だけ。
ならばヒエンが言った通り、誰が盗賊の親玉を仕留めたのか?
その答えを、スズは口にした。
「……盗賊の親玉を仕留めたのは、マリだ」
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