第86話 微睡みに沈んだ者達の救出作業【スズside】
ブックマークありがとうございます。
久々の投稿です。
二刻目の夜、スズはテント広場の近くに生えている木の上で座り込み、月を見上げていた。
ただ何をするでもなく、眠るでもなく、只々夜空に浮かぶ立待月を見つめていた。
(俺が精霊鏡から解放されて四ノ月経つのか。
時間が経つのも早いなぁ……)
そんな事を思いながら、今はただこれまでの事やこれからの事を考えずボーッとしていたいという気持ちの方が強かった。
そうやって何も考えず立待月を見つめていると、突然異変を感じた。
「ん、なんだ? 変な動きをしてる連中がいる……?
というかこの生命力、昨日の盗賊達だよな⁇
あれ? でも盗賊って全員牢馬車に放り込まれてたよな⁇」
偶然自分の生命探査に盗賊達の生命力が引っかかったため、スズは何かが可笑しいと思った。
スズの生命探査で感じた盗賊達の動きは自由に動き回っており、到底牢馬車に閉じ込められているとは思えない状態だった。
「(何かが可笑しい、牢馬車に放り込まれてるならこんな動きをする筈がない)
急いでテント広場に戻ろう、嫌な予感がする……」
生命探査で読み取った盗賊達の動きに違和感を覚え、妙な胸騒ぎを感じたスズは木の上から飛び降り、急いでテント広場に向かう。
その間にも生命探査で盗賊達の動きを把握する。
(この動き、やっぱり盗賊達は牢馬車から出てる。
確かスキルはキールが∮チェック・ダ・ロック∮で封じてたのを見たから、使えないのは変わらない筈、となると別の事が原因か?)
盗賊達が牢馬車から脱走した原因を考えながら、テント広場に向かうスズ。
あと三五mという所で、行く数人分の盗賊達の生命力がテント広場に辿り着いた事を感知した。
「(何人かテント広場に着いた!
ちょっと待てよ、この生命力の波長と流れは……)
これはマズイ!」
とある生命力を感じたスズは、顔を青ざめさせながら一気に残りの距離を走り切る。
そしてテント広場に辿り着いた瞬間、目の前にテントの一つを放火しようとする盗賊を目撃した。
「何するんだ!」
「グヘッ⁉」
すんでの所で盗賊に飛びかかり、そのまま腹部を殴って気絶させて事なきを得たものの、周囲ではスズが気絶させた盗賊同様にテントに放火しようとする盗賊の姿が行くともあった。
「このままじゃ火事になって死人が出る。
それだったら、はぁっ!」
スズは生命探知でテントを放火しようとしている盗賊達を見分け、地面に向かって風を起こす。
スズが起こした風は一気に放火しようとする盗賊達の元まで流れ、上空へと放り投げる。
「わぁーっ!」
「なんだーっ⁉」
「あーれーっ!」
上空に放り投げられた盗賊達は、そのまま地面に投げ出され激突したが、死にはせず気絶しただけで済んだ。
火種の方もスズの風に煽られた影響で鎮火されていたため、火事になるような事はなかった。
火事にこそならなかったものの、放火する気がない盗賊達は近くの置いてあった木の棒や地面に転がる石の礫を手にとってテント広場で暴れており、その影響でテントが幾つか倒壊していた。
「クソッ! 放火は防げたけどそれ以外が間に合わなかった!
急いでリースを回収しないと……」
倒壊されたテントを目の当たりにしたスズは、急いでリースがいるテントに向かう。
スズが焦っているのには、テント広場に戻る途中に行った生命探知にあった。
「ここだ! 良かった、まだ倒壊してなかった。
リース、リース何処にいる⁉」
そのままテントの内部に入ると、中はほぼもぬけの殻だった。
ただ一つ違うとすれば、テントの中央でリースがぐっすりと眠っていた。
リースを見つけたとすぐさま駆け寄り、リースの体をゆすり起こそうとするが、どういう訳か目覚める気配がない。
テント広場が襲撃されたにも関わらず、リースだけ
(どういう事だ?
周りがこれだけ騒がしいのに起きないなんて可笑しい。
リースの身に何か起きてるのか?
ケイがいれば何か分かるんだろうけど、今はリースを連れ出さないと……)
スズはリースの枕元に置いてある護符の束を懐に入れ、中剣と眠り続けるリースを抱きかかえるとテントから飛び出した。
外はスズがテント広場に着いた頃よりも荒れており、周囲では逃げ遅れた非戦闘員達が逃げ惑っていた。
「これは酷い。予想はしていたけどかなり荒らされてる。
(それに逃げ遅れた人達の波長、何かしらの精神攻撃を受けてる感じがする。
やっぱりリースにも何か起きてるんだ)」
逃げ惑う非戦闘員達の魂の波長から、精神攻撃の可能性を受けている事に気付いたスズ。
その事から、リースが目を覚まさない事にも何か理由があると感づいた。
「(一先ず風で逃げ遅れた人達を避難させないと!)
風よ、頼む、逃げ遅れた人達を避難させくれ!」
スズはスキルを発動させ、逃げ惑う非戦闘員達に向けて放つ。
スズの起こした風が非戦闘員達の体に纏われ、そのまま離れる事なく一定の方向に向かって吹き始め、非戦闘員達を動かし始めた。
「あ、あれ? なんだ、体が勝手に……⁉」
「皆同じ方向に移動してる、あっちに逃げたら良いのかしら?」
最初は何が起きているのか分かっていなかったが、周囲の非戦闘員が自分と同じ方向に移動している様子を見た事で安堵を覚え、そのまま避難を開始した。
(これでここにいる人達の避難は大丈夫そうだな、問題はリースをどうやって起こすかだ)
視界に入る非戦闘員を避難させたスズは、眠り続けるリースをどうやって起こすかを考えていると、覚えのある生命力が二つ近付いてくる事に気付いた。
幸いな事に、二つの生命力は自分の方に向かって来ている。
状況整理のために一時離脱の意味を含め、近くに誰もいない事を確認するとスズはリースを抱えて二つの生命力の方に向かった。
「(もう少しで合流できそうだ……、見つけた!)
おーい、おーい! こっちだーっ!」
目の前に二つの人影を確認したスズは、声を上げて自分の居場所を告げた。
すると人影の内の一つが長弓を構え、スズ目掛けて矢を射た。
その行動を見て何かを察したらしく、スズはリースを抱えたまま素早くしゃがみ込んだ。
矢はスズの頭上を通り過ぎ、その背後から着いてきたと思われる盗賊の肩に刺さった。
「ぐぁっ! な、なんでバレたんだ……⁉」
「悪いけど、俺は索敵は得意な方なんだよ!」
スズをこっそりと追跡していた筈が、何故かバレていた事に困惑した盗賊は矢が刺さった肩を押さえながらその場に蹲る。
スズが盗賊と対話していると、前方にいた二つの人影がスズの元に到着した。
「そこの人、無事でございやしょうか?」
「ありがとうございます、追いかけられてるのでどうしたものかと悩んでいたので助かりました」
「む? バン、いつの間にこちらに来たんだ?」
「俺は人間のバン・レイフォンじゃなくて、ウィアグラウツのスズ・ベストフレンドですよ。
鷹獅子の西風のソーンさんとゴンスケさん」
スズの元にやって来たのは、現在ヨキのグループが所属している冒険者パーティ、鷹獅子の西風の盾士ソーンと弓士ゴンスケだった。
二人とは一刻目の時にバンが錬金術で錬金石を作り出した際、口止めのために一度あっている。
そのため、スズは二人の生命力の波長を覚えていた。
「二人が来てくれたおかげで助かりました、リースが起きなくて困っていたんです」
「ナイスタイミングでさぁ、オイラ達もテントに置いてきた弟君を迎えに来たんですよ」
「だが、起きないのは妙だな。
少し見せてくれ」
スズからリースが起きないと聞いたソーンは、近付いてリースの様子を確認した。
頬を軽く叩いても起きる気配がなく、周りに人がいないとはいえ盗賊達が暴れている事で少なからず騒がしいのに微動だにしない。
明らかにリースの様子が可笑しいと感じたソーンは、腰のポシェットから一つの小瓶を取り出すと、蓋を開けて瓶の口をリースの鼻に近付けた。
その数拍後、眠っているリースは顔をしかめ、次の瞬間咳き込み始めた。
「ゲホッゲホッ!
な、なんですかこの鼻にくる匂いは……⁉」
どうやら小瓶の中身は気付け薬だったらしく、気付け薬の匂いを嗅いだリースは困惑しながら目を覚ました。
「リース! 良かった、やっと目を覚ました!」
「あれ? どうしたんですか兄さん?
それにどうして僕は外にいるのでしょう⁇」
「バンじゃなくてスズだよ。
外にいるのは、脱走した盗賊達の一部がテント広場で暴れていて、寝ているリースを俺が連れ出したんだ」
「トウゾク達がダッソウしたんですか⁉
それだけの騒ぎになっているならすぐ起きれた筈なのに、ごめんなさい!」
盗賊達が脱走して暴れている最中、スズが眠りこけた自分を連れ出してくれたと聞いたリースは、非常時に足手まといになるような事になってしまった事にショックを受けていた。
リースはスズに謝罪するが、スズは苦笑しながらリースを下ろした。
「そんなに気にする必要はないよ。
外部から何かしら干渉を受けてたんだ、仕方がないよ」
「外部から干渉? ソイツはぁどういう事ですかい?」
「俺もついさっき気付いた事だけど、逃げ遅れた人達の波長が精神攻撃を受けてる状態になってました。
異常系統の耐性が低い人達に集中して、精神攻撃を仕掛けた可能性があります」
「精神攻撃だと?
盗賊達はスキルを封じられている筈……、一体どういう事だ」
スズから非戦闘員達が精神攻撃を受けたと聞かされたソーンは、何故精神攻撃が行われたのか疑問に思った。
だが今は、精神攻撃の出所を探っているどころではない。
今こうして話している間にも、盗賊達は暴れ回っているのだ。
「アッシも気になる所ではありやすが、今は非戦闘員の避難を優先しやしょう。
まだ逃げ遅れた人達がいる筈ですぜ」
「確かにそうだな、テント広場を見て回って逃げ遅れた者達を逃がさなければ」
「あの、もしかするとなんですけど、僕みたいにソウドウに気付かず眠ったままの人もいるかもしれません」
「リースの言う通りかも、ちょっと探してみる!」
そう言うとスズは生命探査の範囲を広げ、先程までのリースと同じように眠ったままの者がいないかを探し始めた。
そしてリースが危惧していた通り、騒動の中で眠り続けている者の魂の波長を数十人分感じ取った。
「やっぱりいた。しかも三〇人以上もいる」
「三〇人以上⁉ 多すぎる!」
三〇人以上眠ったままの者達がいると聞かされたソーンは、その人数の多さに驚きを隠せなかった。
「マズいですぜ、三〇人以上も眠りこけてるとなりゃあ、何処かしら人手が足りてない筈」
「それだけじゃありません、場所によっては大ケガではすまなくなります!」
「こうなったら逃げ遅れた人達を避難させながら、眠ってる人達を起こして保護するしかない。
気付け薬はそれだけですか?」
そう判断したスズは、ソーンとゴンスケに気付け薬の所持数を確認した。
ソーンはリースに使った気付け薬を見ながら、所持数を告げた。
「気付け薬は俺とゴンスケが持っている者を合わせて二つだ。
後は牢馬車に向かったリンダが持っているが、取りに戻っている時間はない。
今持っている分で起こすしかない」
「だったら俺が索敵で逃遅れた人達と眠ったままの人達の居場所を特定します。
大変な作業になるけど、すぐにでも行動しないと」
「そうとなりゃあすぐ行動に移しやしょう」
「そうだリース、これ返しておくよ」
スズはリースを連れ出す際に持ち出したリースの中剣と護符を返却した。
「ありがとうございます、スズさん」
リースはスズから中剣と護符を受け取ると、素早く装備する。
その間にスズは生命探査で逃げ遅れた非戦闘員と眠っている者達の居場所を把握する。
「テント広場に隠れている人達が一四人、眠ってる人達は三三人で合計四七人。
眠ってる人達は皆テントの中っぽいです」
「リース君、アッシの気付け薬をお貸ししやしょう。
代わりに盗賊達の相手は引き受け支えていただきやす」
「わかりました、お願いします」
リースがゴンスケから気付け薬を受け取った事を確認すると、盾士のソーンを前衛にし非戦闘員と眠っている者達の保護に向かう。
再び戻ってきたテント広場では、起きている冒険者達がバラバラの場所で盗賊の対処に当たっていた。
「かなり乱戦になっているみたいですねぇ。
ベストフレンド君、非戦闘員と眠っている人の居場所は?」
「そこの木箱の影に一人、逃げ遅れた人がいます。
その隣のテントに眠っている人達が二人」
スズは指を指しながら逃げ遅れた非戦闘員と眠っている者達の居場所を伝える。
ソーンは盾を構えながら木箱に近付き、後ろの方を確認すると逃げ遅れたと思われる使用人の女を見つけた。
「非戦闘員を一人見つけたぞ!」
「ヒッ! あ、貴方は?」
「護衛任務を引き受けた者だ、もう大丈夫だ」
ソーンからその事を聞いた使用人の女は、味方が来たという安堵からその場で泣き始めた。
中剣を手にしながらテントの中に入ったリースも、気付け薬を手にしながら中にいた二人を引き連れて出てきた。
「こちらも二人見つけました!
冒険者の方々です!」
「は、鼻がつらい……」
「なんだ? 俺達が眠ってる間に何が起きたんだ⁈」
「盗賊達が脱走しやした、今他の冒険者が対応していやすがいかんせん人手が足りやせん。
寝起きで申し訳ありやせんが、こちらの女性を安全な場所まで避難させてくれやせんかね?」
気付け薬で起こされた二人の冒険者は、鼻を押さえながら何が起きているのかと騒いでいた。
長弓で盗賊達を射抜きながら状況を説明し、ゴンスケは二人の冒険者に使用人の女を避難させるように言った。
状況を把握しきれていないものの、ゴンスケの説明を聞いた二人の冒険者は使用人の女を連れて離脱した。
次に二m先で逃げ惑っている二人の商人をスズが風で自分達のもとに誘導し、素早く保護する。
「冒険者です! 今からお二人を保護します!」
「助かった、恩に着るよ!」
「なんで盗賊達が牢馬車から逃げてるんだ⁉」
「そちらの調査はまだだ、今から安全な場所まで誘導する、着いてきてくれ」
ソーンは二人の商人を落ち着かせながら、二人の護衛に回る。
スズ達もその周囲を囲うようにして立ち位置を変え、移動を開始した。
その途中、眠っている者の反応が三人、近くのテントから感じたため、すぐさまリースが突入し気付け薬で叩き起こした。
「ごめんなさい、今起きました!」
「非常事態に申し訳ない!」
「今どういう状況⁉」
「僕達は今、眠っている人達を起こしながら逃げおくれた人達のホゴを行っています!
起きたばかりでもうし訳ないですが、こちらのお二人を安全な場所までひなんさせて下さりませんか?」
「喜んで引き受けさせてもらうわ!
今から私達がそちらの方々の護衛を引き受けます!」
今度もリースに起こされた三人は、また冒険者だったようだ。
状況を把握した三人の冒険者達は、二人の護衛を引き継ぐとすぐさま安全な場所まで避難を開始した。
「誰かーっ! 誰か助けてーっ!」
「向こうから逃げ遅れた人の声が、その近くに眠ってる人の反応が二人!」
「ソーン、退いてくだせぇ!」
ゴンスケは助けを求める声が聞こえて来た方向に長弓を構え、矢を射抜く。
そして射抜かれた矢は助けを求めたであろう身なりの良い娘に近付いていた盗賊の二の腕に刺さり、それと同時にソーンが盾を構えた状態で突撃し、盗賊を吹っ飛ばす。
「大丈夫か⁉ 助けに来た!」
「冒険者の方ですか? 助けて下さい!
何度も呼びかけても、友人達が目を覚まさないんです!」
そう言いながら娘は、地面に倒れ伏しながら眠る二人の異変を告げる。
一人は短剣を、もう一人は短剣と少盾を身に着けている事から、冒険者である事がわかった。
またしても眠っているのが冒険者であり、不可解に思いながらもソーンは二人に気付け薬を嗅がせて叩き起こした。
「う、ん……、あれ、俺、なんで寝てたんだ?」
「ねぇ二人共大丈夫? 体はなんともない⁉」
「お前達二人は、冒険者か?」
「確かにそうだけど、これ、どういう状況??」
目を覚ました二人の冒険者は、娘に心配されながら何が起きているのか理解できていなかった。
だが、自分達を心配する娘の用から、只事ではないという事だけはわかった。
「盗賊達が脱走した。
できれば我々の代わりに、彼女を安全な所へ避難させてほしい」
「わかった、俺達も彼女を避難させたら盗賊達の制圧に向かうよ」
「心配かけたのは悪かったから泣き止んで、早く移動しよう?
ね?」
「グスン、うん……」
二人の冒険者は立ち上がると、未だに嗚咽を漏らす娘を連れてその場から離脱する。
離脱した三人の様子を見届けると、ソーンはスズ達にある事を告げた。
「これまで眠っていたのは、全員冒険者だ。
これは一体、どういう事だ?」
「言われてみれば、確かにそうですね」
「え? たまたま起こした人達全員が冒険者だっただけじゃあ……?」
今まで起こしてきた全員が冒険者である事に気付いたソーンは、今起きている事に疑問を抱いた。
スズはたまたまそういう流れであっただけではないかと考えたが、リースも少し不審に思ったようだ。
「偶然か必然かは、これから起こしていく人達で判断しても遅くはないでしょう。
今は残りの非戦闘員の保護と、眠ってる連中を起こす事を優先するべきですねぇ」
「今まであった人数からして、逃げ遅れた人達は残り一〇人、眠ってる人達は残り二五人。
逃げ遅れた人達は皆一箇所に固まっていて、ディルカとカトレアの反応があるから冒険者に守られてるから問題ないと思う」
「それなら僕達は、眠っている人達を起こして回りましょう!」
逃げ遅れた残りの非戦闘員達が別行動中のディモルフォセカとカトレアを含めた冒険者達に守られているとわかり、スズ達は残りの眠っている者達を起こして回る事になった。
幸か不幸か眠っている者達は皆、数人ごとに集まってテントの中におり、障害物もない事から簡単に気付け薬を嗅がせて起こす事ができた。
そしてソーンが気付いた通り、起こした者達は皆冒険者ばかりだ。
ここまでくると流石のスズも不審に思い、誰かが意図的に冒険者達を眠らせたとしか思えなかった。
それだけではなく、盗賊達の脱走に関しても似たような感覚になった。
(どう考えても誰かが意図的に起こしたとしか思えない。
一体誰が、何のために?)
「……という訳なんでさぁ。
申し訳ねぇですが、盗賊達の制圧を手伝ってくれやしませんか?」
「分かった、俺達はすぐそっちに向かう!」
「起こしてくれてありがとう!」
「これで二六人起こした事になりますね。
スズさん、あと起きていない人達は何処にいますか?」
「ここから引く東方面のテントに全員いるよ。
幸いその事に気付いた他の冒険者が守ってくれてるみたいだ」
スズは生命探査でその様子を伝えながら、リース達の誘導を開始した。
生命探査でわかった事だが、そこにはヒエンとレイアの二人もいる事がわかった。
それと同時に、ある違和感に気付いた。
「あれ?」
「どうした、スズ?」
「いやちょっと、ヒエンっていう俺達の仲間が向かってる場所で戦ってるんだけど、なんか様子が可笑しいんだ」
生命探査でヒエン達の様子を確認していたのだが、ヒエンの生命力の波長に違和感を感じたスズ。
集中してヒエンの波長を確認すると、とんでもない事がわかった。
「マズいぞ、ヒエンの奴眠りそうになってる!」
「ヒエンがですか⁉」
リースは信じられないといった様子でスズに詰め寄る。
無論、それはスズもだった。
過ごした時間はまだ短いが、ヒエンの性格上周りに迷惑を掛けるような事態を起こすとは思ってはいない。
こうなったからには、偶然起きたとは思えなかった。
「ここまで来ると、この事態は意図的に起こされたとしか考えられん」
「誰がどうやって起こした勝手言うのは気になりやすが、今は弟君とベストフレンド君のお仲間を助けに向かいやしょう。
眠り掛けてるって言うんだったら、逆に他の冒険者の迷惑になっちまってるかもしれやせん」
「ゴンスケさんの言う通りです。
ヒエンは元々一人行動を好んでいましたから、そのなごりでムリに参加してるカノウセイがあります!」
「それなら急いで向かわなきゃ!」
何者かによって故意に起こされたかもしれない盗賊達の脱走に身の毛をよだたせながらも、スズ達はヒエン達がいるテントへと急ぎ向かった。
ご覧いただきありがとうございます。
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