第85話 想定外のトラブル【ヨキsied】
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時刻は夕方、白辰時頃にヨキ達は鷹獅子の西風のメンバーと共に野営の準備をしていた。
……までは良かったが、ヨキは既に憔悴しきっていた。
「あ~、大丈夫かヨキ?」
「全然大丈夫じゃない、盗賊さん達怖い」
「コイツァ大分精神面を削られちまってますねぇ」
「無理もないわ、厳つい男達が大勢隣にいたら嫌でも精神面持ってかれるわよ」
ゴンスケとメルビィが言った通り、ナキが憔悴しきっていた理由は先刻襲ってきた盗賊達だ。
前衛と中衛右の冒険者達によって捕縛された盗賊達を、元々盗賊達が使う予定だった荷馬車を改造した即席の牢馬車に閉じ込めていたのだ。
オリソンティエラまで連れて移動するのは得策ではないという事で、最初の休憩地点であるルテラ砦に引き渡す事になった。
そのため後衛の冒険者が見張りながら移動していたのだが、かわりにヨキの精神が大打撃を受けた。
「盗賊さん達怖かった、明日は離れて移動しちゃ駄目なのかな?」
「気持ちはわかるけど、それは駄目よ。
誰かが見張ってなくちゃ何しでかすかわからないんだから」
改善されたとはいえ、元々人見知りだったヨキとしては翌刻にまた牢馬車の隣を歩くのがかなり嫌だった。
離れて移動したいと主張したが、リンダに拒否されたためかなり落ち込んでいた。
「まぁまぁ、即席とはいえトウゾク達はロウバシャに入れられていますから。
心配はないと思いますよ?」
「その言い方だとちょっと説得力がないよ、リース君……」
「お前はもう少し自信をつけろ、そんなナヨナヨした態度では相手にナメラられて標的にされるぞ」
「それはそれで困ります……」
もう少し自信を持てとラピスに指摘されたヨキだが、どのように自身を持てばよいのかわからないため絶妙な表情をしていた。
ただでさえ杖と法術の仕様を禁止されているというのに、これ以上課題を増やされても対処できる自信はなかった。
「とりあえず、野営の準備をしようぜ。
明日になればルテラ砦について盗賊を引き渡すんだから、それまでの辛抱だ」
「うぅ、頑張る……」
ルテラ砦に付けば盗賊達を引き渡す事ができる、それを考えればヨキとしてはまだ気が楽になった。
どう考えながらヨキはテントの組み立てに取り込んだ。
*****
時間が経過し、テントで仮眠を取っていたヨキだったが、悪夢にうなされていた。
夢の中で小さな少年の姿で逃げ回るが、突如目の前に黒く塗り潰された何者かが現れ、ヨキに向けられた右掌から電撃が発生する。
それをヨキに向けて放たれようとした瞬間、ヨキは悲鳴を上げながら目を覚ました。
「はぁ、はぁ、はぁ……あ、夢?」
ヨキは辺りを見渡してテントにいる事を思い出し、先程まで自分が悪夢を見ていたのだと自覚した。
もう一度眠ろうにも、悪夢の内容が頭から離れないため寝るに寝れなくなった。
「気分転換に外に出よう、少しは気が紛れるかも……」
悪夢のせいで植え付けられた恐怖心を紛らわそうと杖と長弓、矢筒を手に取るとそのままテントから出た。
外には仮眠を取っていない冒険者や見張りから戻ってきた冒険者、ヨキと同じように気分転換目的でいる非戦闘員達の姿があった。
(僕以外にも見張り以外で起きてる人って結構いるんだ、バンとリース君は流石に寝てたけど……)
そんな事を考えながらヨキはテント広場の中央で焚かれている焚き火に近寄り、空いている席に座る。
少しの間何も考えず焚き火を見つめていると、背後から突然声を掛けられた。
「テントにいないと思えばここにいたのか」
「ひゃうあっ⁉ あ、ラピス、それにフェムさんも。
僕が言えた事じゃないけど、こんな時間にどうしたんですか?」
背後からフェムと行動を共にしていたラピスに驚きながらも、自分を探していたようなのでどうしたのかと尋ねた。
「黄昏れてる所悪いが、俺達のパーティで見回りの時間なんだ」
「見回りですか? えっと、どの辺りの見回り、になるんですか?」
「盗賊共を放り込んだ牢馬車だ」
「……はえ? 今なんて⁇」
フェムから見回りの時間になった事を告げられた。
が、ラピスの口からヨキにとってかなり不都合な言葉が聞こえて来たため、ヨキは思わず聞き返した。
「盗賊共を放り込んだ牢馬車だ」
「なんでですか⁉ 僕達お昼間に見張ってましたよね⁉」
「残念ながら見張りに関しては既にまとめ役の方で決まっているんだ。
それに盗賊を連行する時のパターンも組み込まれているから、今はそちらの順番が適用されているんだ」
「そういう事だ。覚悟を決めろ」
「うわーん、嫌ですっ嫌ですーっ!」
悪夢の名で目が覚めテントの外に出た結果、盗賊の見張りに回される事になった為必死に拒絶するヨキだったが、ラピスに首根っこを掴まれそのまま連行されてしまった。
それと同じ理由でテントで休んでいたバンもリンダに連行されたらしく、欠伸をしていたのだが、年少であるリースは翌刻の移動に響いてはいけないという理由で起こされずテントで待機となった。
「う〜、見張り嫌だよ〜、盗賊さん達怖いよ〜」
「いやいや、そんなに怖がらなくても良いでしょ?」
「既に涙目になってまさぁ」
「リーダー、この子本当にラッド族と対等に渡り合った子であってるのよね?」
牢馬車の見張りを怯えながら嫌がるヨキの姿を見たリンダ、メルビィ、ゴンスケはニルヴァと戦った猛者と聞いていたため困惑していた。
ソーンに至っては気の毒そうな様子でヨキを見ていた。
「そんな怖がらなくても大丈夫だろうヨキ?
盗賊は全員スキルを使えない状態で牢馬車に放り込まれてるんだぜ?」
「無理だよ、目が合う度にガン飛ばされるもん。
何もしてないのに怒鳴ってくるもん」
「大半が気性が荒いからな〜、そこは割り切るしかないだろ?」
「割り切りたくない、割り切りたくないぃ〜」
盗賊達との接触がいやらしく、ヨキは牢馬車の見回りを拒んでいた。
途中でヨキ達と同様に牢馬車の見回りに向かういくつかの冒険者パーティと合流したため、その様子はかなり目立っていた。
もう少しで牢馬車に着く距離まで来た時、ソーンが何かに気付いた。
「止まってくれ」
「どうした、ソーン?」
「牢馬車方面の様子が可笑しい……」
険しい表情でそう告げるソーン。
ソーンの発言につられ、ヨキ達も牢馬車の方を見るが辺りが暗く様子を確認できない。
だが生命力による探査が行えるラピスも異変に気付き、状況を伝えた。
「武器を構えろ、盗賊共が牢馬車から脱走している!」
「えぇっ! 盗賊さん達が脱走しちゃったんですか⁉」
「全員戦闘準備! 周囲への連絡が可能なものはこの事を他の冒険者達に連絡してくれ!」
フェムはすかさず大声で他の冒険者にこの事を伝え、テント広場や荷馬車にいる者達に連絡するすべを持つ冒険者への協力を仰ぐ。
それを聞いた冒険者パーティの一組に所属する魔法使いがすぐさま杖を掲げ、伝達魔法を発動させた直後、野営地全体にいる者達全員に非常事態を告げた。
「敵襲、敵襲! 牢馬車にいた盗賊の一部が脱走、全員注意されたし!」
「急いで牢馬車に迎え! 一刻も早く制圧するんだ!」
「この時間帯に見張りについていた冒険者パーティはどうなってるの⁉」
魔法使いの男が警告を終えると、他のパーティは急いで現場に向かう。
ヨキ達も急いで向かおうとしたが、そこでバンがテント広場で眠っているリースの事を思い出した。
「やばい、リースがテントで眠ったままだ!」
「ゴンスケ、ソーンはテント広場に戻れ!
リースを叩き起こして非戦闘員達避難させるんだ!」
「待つんだフェム、俺が離れたら盾役がいなくなるぞ?」
ソーンが言った通り、ここでソーンが抜けてしまえば盾役がいなくなり、防御が手薄になってしまう。
そうなれば支援役を担うリンダに集中攻撃が行く危険があった。
そこでフェムは、ヨキを見ながらとんでもない解決策を提示してきた。
「今回だけヨキの立ち位置を前衛に変更、盾役を担わせる」
「僕が盾役⁉ 無理です、一度も盾役なんて、やった事ないです!」
非常事態という事でフェムは急遽ヨキを後衛から前衛、盾役に変更すると告げた。
自分が盾役になると聞かされたヨキは激しく拒否するが、フェムの提案を聞いたバンとラピスは問題はないと考えた。
「いや、ウェポンマスターの素質があるヨキなら案外いけるかもだぞ?」
「確かに、様々な武器が使えるという事は役職も役割も自由に変更できる。
その強みを生かせればソーンが抜けても問題ない筈、それを踏まえての提案だな?」
「あぁ、その認識で問題ない」
「嘘でしょう⁉ 最早確定待ったなし⁉」
自分が前衛及び盾役になる事が確定した流れに対し、酷く狼狽えるヨキ。
盾役など一度もやった事がないヨキにとって未知の経験である以上、自信がないのだ。
「いつ脱走したのか分からない上、人質に取られればこちらが不利だ。
避難誘導員には追撃出来る者と盾役は必須だ」
「そう考えてるとうかうかしてられやせんね。
ソーン、ここはリーダーの提案通り、アッシらはテント広場へ向かいやしょう」
「やむを得ん。あちらの方は任せる、無理はするな」
そう言うとソーンとゴンスケはすぐさま非戦闘員達と避難支えるべく、テント広場に引き返した。
そしてフェムはヨキの方に向き、話しかける。
「すまない、今回はかなり無茶を強いる」
「あの、今回は、仕方がないです。
盾役、本当にやった事ないけど、可能な限り頑張り、ます!」
フェムは申し訳なさそうな表情でヨキに謝罪の言葉を継げる。
やはり無茶な提案であるという事は分かっているようで、そんな様子のフェムを見れば、これはもう腹を括るしかないとヨキは覚悟を決める。
一方でバンは、ラピスにある頼み事をしていた。
「ラピス、氷と茨を出してくれ!」
「この程度で良いか? これらを使って何をする気だ?」
「即席でヨキが使う盾を作る! 弓と杖でも防御できない訳はないけど、盾役ともなれば仲間を守る必用が出てくる!
それに攻撃手段だって必要だ!」
ラピスから四〇㎝程の氷の塊とリース状に纏められた一二〇㎝程の茨を受け取ると、盾の制作に取り掛かろうとした。
だがそこに逃げ出した盗賊が投げたであろう石の礫がバンに向かって飛んできたが、メルビィがとっさに長槍で叩き落した。
「作るなら急いで、こうしてる間にも盗賊達が脱走してこっちに向かってきてる!」
「わかった!」
メルビィの助けもあり、バンはラピスから受け取った二つの素材を地面に置くと〖錬金術〗を発動して二つの素材を組み合わせる。
そして出来上がったのは、氷と茨をメインとした六芒星型の盾だ。
「ヨキ、これを装備するんだ!」
「あれ? この盾、鉄の部分もあるよ?」
「地中に混ざってる砂鉄も混ぜたんだ、その分頑丈にできた筈だから心配ない!」
「よし、ヨキはリンダの護衛をメインに盗賊達の攻撃を防げ!
残りのメンバーで盗賊達の制圧に向かうぞ!」
「「「「了解!」」」」
バンが作り出した盾をヨキが右腕に装着したのを確認すると、フェムは鷹獅子の西風メンバーを引き連れて牢馬車から脱走した盗賊達の制圧に向かう。
ヨキはフェムに指定された通り、リンダの護衛のため傍について移動していると、正面から石の礫が飛んできた。
「あっ危ない⁉」
驚いたヨキはとっさにリンダの前に躍り出て、装着した盾で飛んできた石の礫を弾き落とした。
「こっこわっ! あっリンダさ、だいっ大丈夫でっせか⁉」
「落ち着いて、私は大丈夫だから!
あと噛みすぎよ?」
「ごめんなさい! あの、その、びっくりしちゃって……っ!」
「反省は後よ、今は盗賊達を制圧する事だけ考えましょう!」
突然正面から飛んできた石の礫に驚いたヨキは、防いだにも関わらずなんども言葉を噛むほど動揺していた。
それに対し、リンダは反省するのは後だと言い先へと進む。
牢馬車まで辿り着くと、そこでは既に脱走したと思われる盗賊達と駆け付けた冒険者達による攻防戦が繰り広げられていた。
「予想以上に混戦状態になってるな」
「あそこ見て! 誰か倒れてるわ!」
混戦状態になっている現場に気を取られていると、リンダがとある方向を指さしながら誰かが倒れている事を伝えた。
ヨキ達はすぐさま倒れている人物のもとに駆け寄る。
「この人確か、私達と交代する筈だった冒険者よ」
「息はしてる、頭を殴られて気絶したみたい……」
ヨキは倒れている冒険者の頭をそっと抱えながら、負傷している部分を見せた。
傷自体は浅いため命に関わるような者ではないようだが、殴られた衝撃で気絶しただけのようだ。
リンダは緑の宝石が着いた甲冑指輪を左手のパームカフに装着し、気絶した冒険者にかざす。
「【回復】。これで応急処置は出来たわ」
「念のため、あそこの岩陰に、避難させましょう。
致命傷でないにしろ、頭にダメージを負ってるので、起こして動いて貰うのは、この人のためになりません」
ヨキは流れ星での経験から、冒険者を起こすべきではないと証言した。
フェムとバンの二人がかりで冒険者をすぐ近くの岩陰に避難させ、ラピスの能力で疑似茂みを作り冒険者を隠した。
そして周囲の警戒に当たっていたメルビィからある報告を受けた。
「リーダー! さっきの判断あながち間違いじゃなかったかも。
ここにいる盗賊達の数が少ないわ、牢馬車の中身もほとんどが空よ!」
「それだけじゃない、空になってる牢馬車は鍵が壊されてる!」
メルビィとリンダが言った通り、盗賊達が閉じ込められている筈の牢馬車大半が空の状態であり、未だに盗賊が入っているのは二、三本程度だった。
加えて、空の牢馬車に備え付けられている鍵が全て破壊されているという、質の悪い展開だ。
「クソッ! 牢馬車の鍵が壊れてるんじゃ盗賊達を制圧しても閉じ込める事ができないぞ⁉」
「壊れてるのは鍵だけか? 鍵だけなら〖錬金術〗ですぐ直せるぞ!」
「直せるの⁉ 凄いよ錬金術!」
「よし、それなら早急に鍵の修復に取りかかってくれ!
鍵の修復をしている間はメルビィが護衛に付くんだ。
ヨキはそのままリンダの護衛、俺とラピスを主軸に盗賊達を制圧するぞ!」
全員に指示を出し終えると、腰に掛けていた中剣を抜剣し盗賊達の制圧に取りかかる。
フェムとラピスが動くと同時に、素早くリンダが二人に魔法を掛ける。
「〝ディフェンス〟、〝ストロング〟、〝テクニックアップ〟!」
「リンダ、私の方にも付与をお願い!」
「任せて! 〝ディフェンス〟、〝ストロング〟!」
リンダはフェムとラピスの二人に付与魔法をかけ終えると、すぐさまバンの護衛に回っているメルビィにも付与魔法を掛ける。
リンダの付与魔法を受けたメルビィは、襲い掛かる盗賊達を次々薙ぎ倒し、飛んでくる石の礫をたたき落としていく。
そしてメルビィが盗賊達の相手をしている内に、バンが錬金術で牢馬車の鍵を修復していき、修復し終えると次の牢馬車に素早く移動し、その鍵の修復に入る。
そしてヨキも盾を手に必死に盗賊達の攻撃からリンダを守る。
「おいっ! コイツら強いぞ⁉」
「魔女を狙え! 付与魔法で他の連中を強化してやがる!」
「わわっ! 盗賊さん達がこっちに向かって来た⁉」
「ヨキ、リンダを守る事に集中しろ!
支援を担当する者がやられればこちらが不利になるぞ!」
リンダを戦闘不能にする事で鷹獅子の西風の弱体化を図り、自分達の方に向かって来た事に驚いたヨキだったが、ラピスに指示を飛ばされ、すぐに盾を身構える。
その瞬間、ヨキの真横を一陣の風が吹いたかと思いきや、目の前まで迫ってきた盗賊達がふっとばされた。
「ヨキ、大丈夫⁉」
「フィービィーさん! どうしてここに⁉」
「さっきの警告を聞いてこっちに来たんだよ!
援軍が来られても困るからこっちに来たけど、盗賊の数少なくない?」
「残念だけど、私達が駆け付けた時にはほとんどが脱走した後よ!
かなり前に脱走したみたいなの!」
魔法使いの報告を聞いたフィービィーは盗賊側の援軍が出て来ないよう、こちらに来たようだったが、残念ながらその機転は意味を為さなかったようだ。
「嘘っ! それじゃあ荷馬車とかテント広場に向かっちゃってるの⁉」
「多分そうだと思います! おまけに牢馬車の鍵が壊されちゃってて、今バンが修復してるんです!」
「ねぇ、問題なければ私達を手伝ってくれない?
今主戦力が抜けたり護衛に回ったりで、人手が足りないのよ!」
自分が来た意味がないと分かり軽くショックを受けるフィービィーだったが、バンの護衛に当たっているメルビィに自分達の手助けを頼んだ。
他の冒険者パーティもいるとはいえ、先に脱走した盗賊達と非戦闘員達の避難誘導に多くの冒険者が回っているようだ。
脱走した盗賊達を捕まえるためにも、今ここにいる盗賊達を制圧する必要がある。
そのためにも人手は必須だ。
ソーンとゴンスケを非戦闘員の避難誘導に向かわせている以上、フィービィーが来たのは渡りに船なのだ。
「ん〜、どっちみちコッチを制圧した方が良さそうだから、わかった!
それでどうしたら良い?」
「それなら動けなくなった盗賊達を牢馬車の中に戻していって!
こんな事になってるとは思ってなかったから、拘束できるものを持ってないの!」
そう言いながらメルビィは薙ぎ倒した盗賊の首根っこに長槍の穂先を引っ掛けると、鍵が修復された牢馬車目掛けて盗賊を投げ飛ばした。
盗賊が投げ飛ばされた牢馬車には、同じように戦闘不能にされて放り込まれた盗賊達がいた。
「なるほど、あんな感じで放り込めば良いんだね!」
「ヨキ、あの牢馬車にチェック・ダ・ロックを掛けるんだ!」
「うん! ∮チェック・ダ・ロック∮!」
ヨキはバンに言われるまま、盗賊達が放り込まれた牢馬車に目掛けチェック・ダ・ロックを発動する。
チェック・ダ・ロックを掛けられた牢馬車の扉は自然と閉まり、鍵を掛けられた。
「ほとんどの鍵は修復できた!
修復した牢馬車から盗賊達を放り込んでくれ!」
「鍵は僕が掛けます!」
「それじゃあ放り込んでいくね!」
やるべき事がはっきりとしたフィービィーは、五月雨の柄部分が前になるように持ち帰ると持ち前のスピードで盗賊達の腹部に一撃一撃を喰らわせる。
腹部に一撃を喰らった事で動きが鈍くなったのを確認すると、五月雨を器用に使い、先部分を盗賊の服に上手く引っかけてそのまま空いている牢馬車に放り投げる。
フェムは盗賊達が手にしていた木の棒を中剣で切り落とし、空いている方の手で顔面や腹部を殴り怯ませ、同じように盗賊の対応に当たっていたラピスが能力で蔦を生やし、それを器用に操り怯んだ盗賊を掴み上げ、牢馬車に放り込む。
一定人数が入った所で、ヨキがチェック・ダ・ロックで牢馬車に鍵をかけていく
(これで四本目、ここにいる盗賊さん達も大分捕まえられたよね?)
「ヨキ、オークみたいに太った盗賊がリンダさんに向かってる!」
「えっ⁉ うわぁっ⁉ あの人絶対近付けたらダメな人だ!」
バンの警告に反応してリンダの方を見ると、背後からオークの如く膨よかな体型の盗賊が近付いていた。
ヨキはすぐさま盾を構え、オーク体型の盗賊に体当たりをする。
「グヒッ! 邪魔するな小僧!」
(体格差のせいで微動だにしないどころか、こっちが押されてる!
それだったら、こっちからバランスを崩せば!)
そう考えたヨキは、勢いを弱めず体の体幹を右側に傾ける。
するとオーク体型の盗賊はバランスを崩し、ヨキはすかさず盾の側面で後頭部を殴りつけた。
「グヘェッ」
「……よし、これで近付いたら駄目な人は気絶したね」
「ヨキ、少し下がってて。〝フロウティション〟」
リンダはヨキが気絶させた盗賊をフロウティションで浮かせ、そのまま開いている牢馬車に放り込んだ。
それでも盗賊達はリンダを戦闘不能にしようと近付いて来るか投擲するかしてくるため、その度にヨキは盾を使って応戦する。
盗賊達との戦闘を続ける内に、段々と盾の使い方に慣れてきたのか防御しながらの攻撃も含め始めた。
近距離攻撃を仕掛けて来た盗賊に対しては、自分から盾越しに体当たりをし、バランスを崩した隙に盾の形を活かして脇腹を殴打。
真上に振りかざされた攻撃に対してはあえて身を屈め攻撃を受け止め、空いている左手を地面につけて軸とし、足払いで盗賊のバランスを崩し転倒させる。
「〝フロウティション〟。 向こうから投擲が来るわ!」
「タイミングを合わせて、それっ!」
リンダに言われヨキは飛んで来る石の礫の方向を確認し、タイミングを合わせて盾ではじき返した。
はじき返された石の礫は投擲した盗賊本人の額に直撃し、目を回している。
その背後から牢馬車の鍵の修復を終えたバンが腕を掴み、牢馬車の中に放り込んだ。
「これで最後だ! ヨキ!」
「うん! ∮チェック・ダ・ロック∮!」
最後の一人が牢馬車に投げ込まれたのを確認したヨキは、素早くチェック・ダ・ロックを発動して鍵をかけた。
これにて牢馬車周囲にいる盗賊達の制圧に制圧したが、これで終わった訳ではない。
ヨキ達は急いで各所で暴れている盗賊達の制圧に向かった。
だが、ヨキ達が援軍に向かう頃、テント広場ではマリが盗賊の頭を仕留めるという信じられない事をやってのけていたのだった。
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