第79話 発想と工夫【ケイside】
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時間は少し遡り、中央に配置されたケイとヒバリの二人は、攻守バランスが取れた冒険者パーティ。翡翠の渡り鳥と共に周囲を警戒していた。
が、ケイは案の定マイペースを発揮し、ヒバリの外套に何処から仕入れたのか分からない花びらを飾るという悪戯を実行していた。
「ケイーッ! 出発早々に悪戯するとは何事じゃあっ!」
「アッハハハハッ! 良いじゃん今くらい、初っぱなから張り切ってたらバテちゃうだろう♪」
「だからと言ってセッシャの外套を花びらまみれにするでない!
この無礼、決して許さぬぞ!」
「ちょ、ここで刀出すなっ⁉」
いつもの如くケイの悪戯に遭ったヒバリは、激昂のあまり背中の刀を抜刀してケイに斬りかかろうとした。
その様子を目の当たりにしたケイは、先程までの余裕がなくなりヒバリをなだめ始めた。
そんな二人のやり取りに、とある人物が注意をした。
「そこ! 護衛任務中に騒がない、おふざけしない、刀振り回さない!」
「め、面目ないでごじゃる……」
「えぇ~、ジッとしてるだけってつまんねぇよ」
「文句を言わないの!」
そう言いながら近くにいたチェスのピジョップを模した鎚矛を肩に掛けた女性冒険者が、問答無用でケイの頭を叩いた。
ケイの頭を叩いたのは、翡翠の渡り鳥に属する女戦士のセレンだ。
セレンは翡翠の渡り鳥の中では比較的若い方ではあるが、頭はかなりキレる方だ。
そのため翡翠の渡り鳥の参謀役を担っており、問題がない時はこうやって悪戯好きなケイのお目付役を担っているのだ。
「ケイ君は現場を混乱させるような事はしない!
それからヒバリ君も、ケイ君の挑発に乗らない! わかった?」
「しょっ承知したでごじゃる! ほら、ケイも周囲の警戒に戻るでごじゃるよ」
「へ~い」
ヒバリとセレンに注意されたケイは、翡翠の渡り鳥と合流した際に渡された望遠鏡を覗き込みながら周囲の警戒を始めた。
特に問題はないと考えていたケイだったが、視界に緑色の何かが動くような光景が映った。
「ん?」
「どうした坊主? なんかあったか?」
「ん~、なんか動いてるような気が……」
翡翠の渡り鳥のリーダーである剣士の男冒険者、ガントゥがケイに声を掛けた。
ガントゥに声を掛けられたケイだったが、望遠鏡を覗き込んだ先が動いている事を伝えた後そのまま黙り込んでしまった。
しばらく黙り込んで観察している内に、ケイは動いている物の正体に既視感を抱いた。
「苔が生えた岩みたいで、ニョロニョロした感じで四足歩行といえば、グリーンロックリザード!
中央左、グリーンロックリザードの群れが出現! 注意お願いします!」
グリーンロックリザードの群れが近付いてきた事に気付いたケイは、すぐさま声を上げて周囲にいる冒険者達に注意喚起を促した。
アクセプト町の時もそうだったが、恵みの村にいた頃はよく畑で育てた作物を荒らされていたためその特徴を覚えていた。
そのため恵みの村に住む住民にとっては、グリーンロックリザードは天敵そのものなのだ。
「よく発見してくれた、数の方は分かるか?」
「一、二……七、八……十三、十四…………二十九、三十。
グリーンロックリザードの群れは合計三十体で編成されてるっぽい、見た感じ他に群れはいなさそうだ」
「全員聞いたな? 三十体のグリーンロックリザードの群れがこっちに接近してきている、知っての通りグリーンロックリザードの皮膚は硬い。
他の冒険者と連携しつつ、接近して攻撃する。
ただし馬車から離れすぎるな、良いな?」
「「「了解!」」」
ケイからグリーンロックリザードの個体数を聞いたガントゥは、すぐさま自分のパーティメンバーに指示を出した。
指示を出されたパーティメンバーはすぐさま戦闘態勢に入り、グリーンロックリザードの群れに備える。
ケイも斧を手に取り、ヒバリも刀を構える。
「グリーンロックリザードは皮膚が硬いでごじゃる、ケイは故郷にいた頃どのようにして倒していたでごじゃるか?」
「いつも大人達が総出でひっくり返して喉元をかっきってた。
でも畑を荒らしてたのはいつも一体だけだったから、村でのやり方は通用しないと思う」
ケイは恵みの村で実行されていたグリーンロックリザードの討伐方法は使えないと判断し、どうしようかと考えていた。
ここで無理に考えるよりも、自分なんかよりも討伐経験が多いであろう翡翠の渡り鳥のメンバーに聞いて見る事にした。
「一般の冒険者ってグリーンロックリザードはどうやって討伐してるんだ?」
「そうさな、坊主が言った通りグリーンロックリザードをひっくり返して柔らかい腹側をやるしかねぇ。
固い皮膚ごとやるってんなら、それなりの火力が必要になるな。
もしくは口が開いた瞬間に突き刺すか眼球に狙いを定めて突き刺すか、だな」
「どう転んでも刺突攻撃しかないでごじゃるな……」
「近くに大木とか岩があったら激突させて動きを鈍らせてる内にってできるだけど、馬車から離れる訳にもいかないわ。
どうぞエナジーフルーツ食べて下さいっていってるような物よ」
刺突攻撃と腹部側を攻撃する以外で決定打がないグリーンロックリザードの討伐法を聞いたケイは、何かしら工夫が必要だと考えた。
無論、ひっくり返して腹部を狙う事が出来れば良いのだろうが、純粋な力だけではそうもいかない。
グリーンロックリザードの気性の荒さは、ケイ自身もよく知っている。
だからこそ、それを逆手に取る事が出来る。
「(目当ての食べ物が手に入らないアイツらの気性の荒さはピカ一、けど一度気性が荒くなれば知性が一気に下がる)
オッちゃん、アイツらの気性の荒さを利用した罠を仕掛けたいんだけど、聞いてくれるか?」
「おう、何か考えがあるのか?」
「アイツらの足下にぬかるみを作って、バランスを崩させる事が着ればひっくり返す事が出来ると思うんだ。
問題はひっくり返す方法、かなり重いし暴れるから単身でひっくり返そうものなら一気に体力を持ってかれるんだ。
なんか良いアイディアない?」
地面にぬかるみを作り、バランスを崩した所をひっくり返す作戦を提案したケイだったが、問題としてグリーンロックリザードをひっくり返す方法が浮上した。
ケイは最初、恵みの村でやっていたグリーンロックリザードの足下にロープを引っかけ、同じ方向にロープを引っ張りひっくり返す方法を考えた。
しかし、足止めとして地面にぬかるみを作るため、こちら側の踏ん張りが難しくなってしまう。
それ以外の方法が思いつかないため、ひっくり返す案はないかとガントゥに訪ねたのだ。
ケイの作戦を聞いたガントゥは、顎に手を当てながら少し考え、前衛で臨戦態勢をとっている二人のパーティメンバーに声を掛けた。
「ラファ、シファ、お前達確かピラーの魔法を使えたよな?」
「えぇ、使えますけど、それが何か?」
「正確に言うと【造形】で作り出すだね、何か思いついた?」
「俺が合図したらグリーンロックリザードの脇腹目掛けてピラーをぶっ放せ」
「「了解!」」
ガントゥに指示を出されたラファとシファの兄弟は、サイド目の前を見てグリーンロックリザードの群れに備える。
そしてグリーンロックリザードの群れが半径三十五㎞まで接近してきたところで、ガントゥがケイに声を掛けた。
「坊主、水は出せるな?」
「勿論! ウォーター・ウォーター!」
そう言うとケイはグリーンロックリザードの群れの目の前目掛けウォーター・ウォーターを発動させ、地面を湿らせ始めた。
そして十分な範囲の地面を湿らせぬかるみが出来ると、ケイはウォーター・ウォーターを止めた。
「これくらい水浸しにすれば間違いなくぬかるんでる筈、どうだ?」
「上出来だ。ラファ、シファ、準備は良いな?」
「「勿論」」
グリーンロックリザードの群れの目の前の地面がぬかるんだのを確認すると、ガントゥはラファとシファに確認の声をかける。
ラファとシファの二人も準備は万端らしく、槍斧を構えていた。
「待てよ……、まだ待てよ……今だ!」
「「せーのっ!」」
グリーンロックリザードの群れがぬかるみに差し掛かった瞬間、ぬかるみに足を取られバランスを崩したのを確認したガントゥはラファとシファに合図を出した。
合図を受け取ったラファとシファは、右手を地面に付けた。
すると地面に着いたラファの手から紫の光が、シファの手から橙色の光が発光し、自然を伝ってグリーンロックリザードの群れに向かっていく。
そして二色の光がグリーンロックリザードの群れに辿り着いた瞬間、ぬかるみから氷と土の柱があちこちから飛び出してきた。
氷と土の柱はそれぞれ個別にグリーンロックリザードの脇腹をかすめていき、その反動で数体のグリーンロックリザードがひっくり返った。
その光景を見たガントゥはすぐに次の指示を出した。
「ラファは今のでひっくり返った個体を固定、シファはそれ以外の個体を移動させろ!
連中の戦力を分散して他のパーティが有利になるように進めるんだ!」
「わかりました!」
「動かしちゃうよ~っ!」
ガントゥの指示を受けたラファはひっくり返ったグリーンロックリザードをぬかるんだ地面越しに凍らせて拘束し、シファが地面を操ってひっくり返っていないグリーンロックリザードを左右に移動させる。
八:十二:八の割合で分散された事で、他の冒険者達も戦いやすくなった。
「グリーンロックリザードの群れが分散したぞ! 今のうちに畳みかけろぉ!」
「それぞれのパーティで一体ずつ対応しよう! 俺達は目の前に来た個体を倒すぞ!」
「それじゃあ私達のパーティはこっちね!」
グリーンロックリザードの群れが分散している内に、とある冒険者が一体ずつ対応するべきだという提案を受け入れた十六組のパーティが素早く行動し、一体ずつグリーンロックリザードを包囲して応戦し始めた。
ケイも今の内にひっくり返ったグリーンロックリザードを倒そうと考えるが、その前にガントゥに止められた。
「坊主達はそこで待ってろ、後方支援はいざって時に動いて貰わねぇと困るからな」
「えぇ、俺がひっくり返すの提案したのに動いちゃダメなのかよ」
「ケイはこの場では貴重な回復役、ケイがダウンすれば治療が出来る戦力が射なくなってしまうでごじゃる。
他の方向から敵が来ないか注意しておくべきでごじゃる」
「あぁ、ちょっとまずいかも……」
待機しているようガントゥに言われて不貞腐れているケイに対し、ヒバリが注意していると、セレンが困った表情で後方を見ていた。
ケイとヒバリもつられて後方を確認すると、体長三十㎝の蜂型の魔物の群れが迫ってきていた。
「なんだあれ⁉」
「あれは、フルーツビー⁉ まずい、奴らは熟れた果物やドライフルーツを狙ってくるでごじゃるよ」
「って事は、アイツらもエナジーフルーツ狙いかよ⁉」
「今は後方が抑えてくれてるから良いけど、フルーツビーはかなりの数の群れだから、第二陣が来ちゃうわ」
フルーツビーの大群を見たセレンは、その数を見てかなり焦っていた。
ただでさえグリーンロックリザードの群れを相手にしているというのに、そこに機動性に優れているであろうフルーツビーの大群まで来てしまったため、流石にヤバいと感じたのだろう。
「これって、早期決着付けないとヤバいんじゃないか……?」
「もしかしなくてもこのままではまずいでごじゃるよ⁉」
「リーダー! グリーンロックリザードの討伐急いで、流石にフルーツビーを相手取るのは無理よ!」
「今群れの半数を討伐したところだ! 一先ずお前等はフルーツビーがこっちに来たときに備えてくれ!」
熟した果物を好むフルーツビーの大群まで相手にしていられないと判断したガントゥは、ケイ、ヒバリ、セレンの三人にフルーツビーが来た時の対処を任せた。
だが、グリーンロックリザードの群れを相手取ったせいか、対処に当たった冒険者達は大分体力を消費していた。
更にはひっくり返った状態でラファの氷に拘束されていたグリーンロックリザードの一部が自力で脱出し、再び荷馬車に向かい出した。
このままではいけないと判断したケイは、斧の先端を冒険者達に向けると、ある回復系の法術を唱えた。
「タスミナ・タスミナ!」
ケイがタスミナ・タスミナと唱えると、ケイの斧から水色掛かった淡い黄色の光が溢れ出し、冒険者達の体を包み始めた。
光に包まれた冒険者達は最初こそ困惑していたが、とある変化に気付き始めた。
「あれ? さっきまで感じてた疲労感がなくなったわ!」
「こっちもだ!」
「俺の方も! これならまだ余裕を持って戦える!」
「タスミナ・タスミナで体力を回復させました!
だけど気をつけて!
タスミナ・タスミナは連続して掛けても効果がないから体力の減りに注意して!」
ケイのタスミナ・タスミナを掛けた事で、消耗した体力が回復しそのままグリーンロックリザードの群れを対処する冒険者達。
だがケイは冒険者達に対し、タスミナ・タスミナは連続して掛けても体力が回復しないという欠点がある事を伝え、体力の消費には注意するように促す。
「ありがとう、恩に着るよ!」
「一気に片を付けるぞ!」
「ラファは氷の弾幕で牽制、シファが土の力で拘束して動きを封じろ!」
「任せてください!」
「捕まえちゃうよ~っ!」
ケイの補佐によって冒険者達の体力が回復した事を確認したガントゥは、再度ラファとシファに指示を出し、グリーンロックリザードの群れの捕縛を試みる。
しかし、グリーンロックリザードの抵抗が思いのほか強いようで、、ラファの牽制もシファの拘束もあまり効いていないようだ。
「リーダー、僕らの攻撃が効いてません!」
「捕まえられないよ~」
「グリーンロックリザードの抵抗が強すぎるなら……」
「待つでごじゃる、むやみやたらに法術を連発したら、また急性霊力欠乏症を発症してしまうでごじゃるよ!」
ラファとシファが苦戦している様子を見たケイは、法術を発動させてアシストしようとするが、ヒバリに止められた。
考えもなしに法術を使えば、ケイが再び急性霊力欠乏症を発症してしまうのではないかと恐れたのだ。
ヒバリに止められてその事に気付いたケイは、どうすれば流れを変えられるのか考えていると、お目付役であるセインが慌てたように声を掛けてきた。
「二人とも伏せて!」
そう言われたケイとヒバリは素直に従い、とっさに身をかがめる。
直後、頭上で鈍い音がした。
直後足下に何か落ちたため、落下物を確認してみるとそこにはフルーツビーの亡骸が落ちていた。
「うおっ! ビックリした!」
「これはフルーツビーでごじゃる! 後方で対応されていた筈なのに……」
「討伐しそびれたフルーツビーがこっちに飛んできたみたい。
数はそれ程多くないけど、なるべく早くけりを付けないとフルーツビーまで対応する羽目になっちゃうわ」
後方の冒険者達が対応していたフルーツビーの内の数匹が、後方の防衛ラインを突破して中央の荷馬車に近付いてきてしまったようだ。
その内の一体がケイとヒバリに向かって来たため、セレンがとっさに鎚矛で殴り倒したのだ。
そして荷馬車の周囲では後方の防衛ラインを突破してきたフルーツビーを他の冒険者達が対応し始めた。
ケイとヒバリも応戦するが、やはり機動性はフルーツビーの方が高く、遠距離からの攻撃はあまり当たらない。
運良く接近する事が出来たとしても、その機動性ですぐに逃げられるか攻撃を躱されてしまう。
セレンも最初の攻撃以降、フルーツビーに攻撃を当てる事が出来ず苦戦しており、防戦一方になっていた。
「何度攻撃しても当たらない、これではジリ貧でごじゃる!」
「リーダー達がグリーンロックリザードの群れを討伐してくれるわ、もう少し持ち堪えて!」
「そう言われたってこのままじゃ防戦するのも結構イラッとくるんだけど~」
グリーンロックリザードの群れを完全討伐するまで持ち堪えてくれと頼まれたケイだったが、やられっぱなしな状態が気に食わないらしく、しかめっ面になっていた。
そんな時、一体のフルーツビーがケイに体当たりをし、ケイはそのままセレンの方に吹っ飛ばされてしまった。
「二人とも、大丈夫でごじゃるか⁉」
「ケイ君は無事よ、私は地味に無事じゃないけど……」
「って~、ゲッ⁉ なんか服がネバネバする!」
「フルーツビーの体にため込んでる果物の蜜ね。さっきの体当たりで着いたのよ」
「果物の蜜ってこんなネバネバするのかよ……ん? ネバネバに果物の蜜?」
フルーツビーに体当たりをされた拍子に服に付いた果物の蜜を見て、少しの間固まったかと思いきや、何かを思いついた表情をした。
「これなら使えるぞ!」
「ケイ、何か思い付いたでごじゃるか?」
「あぁ、セレンさん、鎚矛の先端をこっちに向けて貰って良いかな?」
「え? えぇ、これで良いの?」
ケイに言われて鎚矛の先端をケイに向けたセレン。
するとケイは右手をセレンの鎚矛の先端にかざすと、とある法術を唱えた。
「イラムス・イラムス!」
「うわぁっ! 何これ⁉」
「うぉよぉおなんでごじゃるかこの液体はぁ⁉」
ケイがイラムス・イラムスと唱えた途端、ケイの右掌から粘り気のある液体が出現しセレンの鎚矛の先端に絡みついたのだ。
それを見たヒバリとセレンは一瞬不快な気分になり、困惑の声を上げた。
それに対し、ケイは液体の正体を明かした。
「イラムス・イラムスは粘り気のある水を出す法術なんだ。
見て貰ったら分かるけど、取り持ちみたくネバネバしてるだろう?」
「それは分かるには分かるけど、なんでこんなの出したのよぉ?」
「まぁまぁそうケチケチすんなって、これをこうして、こうやって!」
イラムス・イラムスによって出現した液体に対してセレンは不快な気分しかなかったのだが、ケイも斧にイラムス・イラムスの液体を纏わせた。
それを振るうと近くまで接近していたフルーツビーが液体にくっつき、身動きが取れない状態になった。
「フルーツビーがくっついた!」
「ケイ、そのフルーツビーはどうするつもりでごじゃる?」
「あぁ、この捕まえたフルーツビーはこうするんだ!」
そう言うとケイはフルーツビーがくっついた斧をガントゥ達が対応しているグリーンロックリザードの群れに向かって振ると、振るった勢いによって液体にくっついていたフルーツビーが外れ飛んでいった。
投げ飛ばされたフルーツビーはそのままグリーンロックリザードに激突したと思いきや、ぶつかられたグリーンロックリザードが、フルーツビーに反応した。
するとどういう訳かグリーンロックリザードは、自分にぶつかってきたフルーツビーを追いかけ始めたのだ。
「あぁ、グリーンロックリザードがフルーツビーを追いかけて行くでごじゃるよ!」
「イラムス・イラムスでフルーツビーを捕まえてグリーンロックリザードに押しつけるんだ!
フルーツビーがため込んでる果物の蜜に反応して、エナジーフルーツよりあっちを優先するんじゃないかと思ったんだ!」
「成る程、そういう事ね! リーダー、ちょっとそこどいて!」
ケイの考えに賛同したセレンは、自分に近付いてきたフルーツビーを捕まえると、ケイと同じようにフルーツビーをグリーンロックリザードの群れに投げつけた。
セレンに投げられたフルーツビーも先程と同様にグリーンロックリザードに追いかけられ始めた。
「フルーツビーを囮にしたのか。後方! フルーツビーをこっちに投げてくれ!
ラファ、シファ、グリーンロックリザードを足止めしながら後退だ!」
「「了解!」」
フルーツビーを囮にするという意図を悟ったガントゥは、グリーンロックリザードを牽制しながらラファとシファに後退の指示を出した。
ラファとシファも指示に従い後方に後退し、その間にケイとセレンがフルーツビーを捕まえてはグリーンロックリザードの群れに投げつけていく。
ヒバリや他の冒険者も自分なりの方法で他のフルーツビーをグリーンロックリザードの群れに追いやり、遂に後衛の防衛ラインを突破してフルーツビーを荷馬車から引き離す事に成功した。
そしてグリーンロックリザードの群れを対応していたガントゥ達も荷馬車に戻り、状況を確認する。
「助かったぞセレン、他の状況はどうだ?」
「フルーツビーが来た時は苦戦したけど、ケイ君の法術と作戦のおかげでなんとかなったわ。
後は後衛が残りのフルーツビーをなんとかしてくれればいいんだけど……」
「フルーツビーの気が逸れた! 今の内にこの場から離脱するぞ!」
後方からその影声が聞こえてきたため、確認するとフルーツビーの群れが一本の木に群がっている様子が確認できた。
それを見たケイ達は、後衛の冒険者達が何かしたのだと分かった。
「ヨキ達がフルーツビーを対処したんだ!」
「リーダー、今なら逃げられるんじゃない?」
「そうだな、今なら逃げ切れる! すぐにでもこの場を離れるんだ!」
「わ、わかりました!」
今なら逃げられると考えたガントゥは、荷馬車を操作している商人に今すぐ離脱するように指示を出した。
商人も他の荷馬車を操作している商人達に指示を出し、グリーンロックリザードの群れとフルーツビーの大群に追われぬ内にその場から離脱した。
こうしてケイとヒバリは初の団体戦を乗り越えた。
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