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第78話 オリソンティエラまでの旅路【ヨキside】

 ブックマークありがとうございます。

 遂にギョルシル村を経ち、オリソンティエラに向けて進み始めたバーナードキャラバン。

 そしてそのバーナードキャラバンに護衛として同行する事となったヨキ達は、現在グループを分割し他の冒険者のパーティに配置された。

 現在ヨキ、バン、リース、ラピスの四人が配属されたのは、後衛に配置された鷹獅子(グリフォン)の西風だ。

 ヨキがウェポンマスターの素質持ちである事が判明したため、その特徴を生かすためにヨキを後方には位置するようラピスが提案したのだ。


「ふわぁ、ゔ〜、(ねみ)ぃ……」


黒卯(こくう)(どき)に起こされて黒辰(こくたつ)(どき)に出発したからね、かなり眠いと思うよ。

 現にリース君が凄く眠そうにしててメルビィさんに背中支えられてるよ、見て」


 早朝の時間に 出発したとう事もあり、年少であるリースは眠たそうな様子で歩いていた。

 その証拠にフラフラと歩いているため、ヨキやバン程眠気が取れていないのが見て取れた。

 フラフラと歩くリースを見かねた鷹獅子の西風の槍士メルビィが、歩幅を合わせやりを持っていない方の手でリースが倒れないように支えていた。


「やっぱ十歳の子供には酷でしたかねぇ?」


「体力の問題、は、ないから、心配ない、と思います。

 いつもより、起きる時間が早かったから、そのせいで眠いだけ、かと……」


「しばらく動いてたら目も覚めるだろうから、問題はないさ。

 何より俺の弟だしさ」


「君の弟君ってどんなスタイルで戦うの?

 見たところ中剣(ミドルソード)を両手剣の代わりに使ってるみたいだから、剣士かしら?」


「いや、ああ見えてリースは呪術師なんだ。

 攻撃は勿論、防御や支援もできるから俺達だけで旅をしてる間はかなり助けられてるんだ」


「って事は私と同じで付与に特化した役職になるわね」


 リースが呪術師として旅の間、自分達を支援してくれている事をバンから聞いて自分と同じように、付与による後衛の役割を担っていると判断したのは、鷹獅子の西風の魔法士であるリンダだ。

 オブリークネック状のアシメロングTシャツが目立つパンクファッションスタイルの服を着ているため、一見魔法士には見えないのだが、所々に魔女らしい要素が入っているのが特徴で、冒険者の中ではかなり目立つ存在だ。


 ヨキにとっては初めて出会った魔法使いであるため、童話での魔女のイメージの方が強く、接し方に困っていた。

 それに対しバンとラピスは何度か魔法使いと接触した事があるらしく、これといって困るような展開はなかったようだ。


「このスピードで進み続けた場合、何(とき)ぐらいでオリソンティエラに着くんだ?」


「通常なら魔物が出ても二週間で付ける筈。

小暮月(こぐれづき)の内に着く事が出来る筈だが、ヘルシャフトの事がある、もしかすると着くのは年を越した後になるかもしれないな」


「うへぇ、今日は雪待月(ゆきまちづき)の十五(こく)だってのに、国境に着く頃には二九九九年から三〇〇〇になってるなんてアッシは嫌ですねぇ。

 年末くらいのんびりと過ごしたいでさぁ」


「精霊歴もあっという間に三回目の一〇〇〇年目を迎えるのね、これはこれで新鮮だわ」


 鷹獅子の西風はオリソンティエラに着く頃には、年を越しているだろうという事を日常的に会話しているような感覚で話していた。

 冒険者の間では人がいる場所に着く前に、年を越してしまうのはよくある事のようだ。


 話の感じでは年を越す前に人がいる場所に辿り着く事が出来る事の方が珍しいらしく、なんだかんだで区切りが付いているように見えた。

 だが、そんな会話の途中でヨキが可笑しな事を言い始めた。


「え? 今って精霊暦二四〇〇ですよね?」


「え?」


「「え?」」


「「「え?」」」


 鷹獅子の西風が年越しの事で話をしていると、突然ヨキが今の精霊暦が二四〇〇年だという、突拍子もない事言い出したのだ。

  ヨキが現在の精霊歴を大幅に言い間違えるものだから、隣りにいたバンは勿論の事、寝ぼけ眼のリース以外全員、ワンテンポずつズレる形で驚きの声を上げていた。


 自分が突拍子もない事を言った事に気づいていないヨキは、バン達が驚いている理由を全く理解してらず、バン達とは違った意味で困惑していた。


「ヨキ、念の為聞くけど今月は何月か覚えてるか?」


「え? 雪待月だよね、現にエナジーフルーツ収穫できたし」


「ヨキ、確かに今月は雪待月だけど今は精霊歴二九九九年の雪待月なんだ」


「え、そうだっけ??」


 バンに今が精霊歴二九九九年だと指摘されたヨキは、ちゃんと理解はしていない様子だった。

 更に言うのであれば、いつの間に年代が変わったのだろうという表情をしていた。


「ちょっと、後ろの風の法術士の子大丈夫?」


「寝ぼけているだけだ、問題ない(どういう事だ? これまでヨキが今の年代を言い間違えるなんて事はなかった。

 記憶を少しずつ取り戻し始めた影響か?)」


「ふぁれ? どうしたんでしゅかラピスしゃん?」


「いや、なんでもない。

 それよりも、そろそろしっかり目を開けるんだリース。

 もう間もなく白巳時(はくみどき)に差し掛かる時間帯、魔物達が活発になる時間帯だ」


 記憶を取り戻し始めた事で変化が起こり始めたヨキの事は気になったが、まだ寝ぼけているせいで言葉の一部を噛みながらリースが話しかけてきたため、今ヨキの変化を気にしている暇はないと自覚したラピス。


 未だに寝ぼけているリースの頬を、氷の理力(フォース)を纏わせた左手で軽く叩き、しっかり目を覚ますようリースに促した。

 時刻はもう間もなく明るい時間帯になる。

 周りが明るくなれば、活動を停止していた魔物達が置き始める時間になるのだ。


 そして時間が経てば立つ程に、魔物の動きが活発になっていき、自分達やキャラバンを狙って行動を起こす魔物も現れても可笑しくはないのだ。

 そしてラピスが考えていた通り、前方から誰かが警告する声が聞こえてきた。


「中央左、グリーンロックリザードの群れが出現! 注意お願いします!」


 声の主はヨキ達とは別の冒険者パーティ、翡翠の渡り鳥(ミグラテール)に配置されたケイの声だった。

 ケイの声が聞こえてきたと同時に、バーナードキャラバンの左中央側からアクセプト町でも出現したグリーンロックリザードの群れが出現した。


 数は数えるくらいしかいなかったものの、グリーンロックリザードの群れは迷う事なく中央の荷馬車を目指し、進んでいた。

 グリーンロックリザードの行動パターンを見たヨキは、何故迷う事なく荷馬車に向かっているのかわからず、驚いていた。


「あのグリーンロックリザードの群れ、中央の荷馬車に向かってる!

 なんで⁉」


「グリーンロックリザードは歯ごたえのある物や甘い物を好む習性がある。

 特に人の手で育てられた果物なんかをよく好んで食べてるな」


「って事は、アイツらの狙いはエナジーフルーツか!」


 左中央から出現したグリーンロックリザードの群れが荷馬車に積まれているエナジーフルーツを狙っているとわかると、バンはすぐさま迎撃に向かおうと走り出そうとした。

 が、バンが走り出す前にラピスが腕で(さえぎ)り、バンの行動を制止した。


「何するんだよラピス?」


「馬鹿者。今の私達は後方の防衛を担っている護衛。

 その護衛が持ち場を離れるなど言語道断だ」


「全くもってその通りでさぁ。グリーンロックリザード以外の魔物もわらわらと出て来やしたぜ」


 そう言いながらゴンスケは背負っていた長弓(ロングボウ)を構え、矢をあてがうと(やじり)を斜め上に向けて構えた。

 ゴンスケの行動を見たヨキ達は、鏃が向けられている方向を確認する。

 次の瞬間、ヨキ達の目に映ったのは体長三十㎝はあるのではないかと思われる蜂型の魔物の群れが飛んでいた。


 その数は計三十体ぐらいのグリーンロックリザードの群れよりも遙かに上回っており、徐々に青く染まる朝焼けの空に不自然な点模様を作り上げていた。

 そんな大量の蜂型モンスターを目の当たりにしたヨキ達は、眼を見開いて驚いていた。

 先程まで寝ぼけていたリースもその数に驚き、寝ぼけ眼もすっかり覚めたようだ。


「う、うわぁ。大きな蜜蜂が沢山飛んできてる……」


「うげぇ、よりのもよってフルーツビーの群れかよ⁉」


「フルーツビー?」


「花の蜜の代わりに果物を集める虫系のモンスターだよ。

 アイツら食べ頃になった果物ばっかり狙うもんだから、結構面倒な奴らなんだよ。

実りの街でも結構な被害が出てたし……」


「場合によってはドライフルーツも持っていかれてしまうから、クダモノ農家の方々いとってはかなりの天敵なんです」


 空中に現れた蜂型のモンスター、フルーツビーがクダモノを好む虫系統のモンスターだとレイフォン兄弟から聞かされたヨキは、フルーツビー達の群れがグリーンロックリザードの群れ同様にエナジーフルーツを狙っているという事に気付いた。


 一気に二種類のモンスターの群れを引き寄せてしまう程の魅力を秘めたエナジーフルーツに感心したものの、今はそれどころではないと気付き、法術で対抗しようと杖を構えようとするが、現在物理による遠距離攻撃の手段を習得しろという指示が出ている事を思い出した。


(そうだ、オリソンティエラに着くまでの間は法術をセーブして中衛と後衛をしなきゃだから、長弓を使わないといけないんだ!)


その事を思い出したヨキは、空中を飛ぶフルーツビーを確実に倒すのであらば法術を発動させて一掃するのが一番。

 だが今回はそういう分けにはいかず、物理のみとなると厳しいのではないかと不安になり、ラピスに声をかけた。


「ラピスさん、フルーツビーは法術で倒した方が良いと思います!」


「ダメだ」


「そ、そんなぁ~」


「落ち着け、数は多いがフルーツビーはさほど強くない。

 幸いまだ距離はある、距離がある内に数を減らして近距離戦に鳴っても問題ないようにしておく必要があるな。

 リンダはゴンスケの矢に分裂と必中の付与、ゴンスケはフルーツビーが射程内距離に入った瞬間に間髪入れず矢を射て!」


 ラピスからフルーツビーの迎撃法として法術の使用を禁止されたヨキは、涙目になりながら長弓を構えていた。

 鷹獅子の西風のリーダーであるフェムがフルーツビーの特徴を伝えると、すぐさま後衛であるゴンスケとリンダに指示を飛ばす。


 フェムから指示を受けたリンダはすぐさま左手の甲に付けていた三つのリングとブレスレットが(チェーン)で繋がったパームカフに、それぞれ違う宝石が装飾された甲冑指輪(アーマーリング)を装着した。

 そして甲冑指輪を装着したパームカフをゴンスケが長弓にあてがっている矢に魔法をかけた。


「〝ディヴィション(分裂)〟、〝イネビタブル・リザルト(必然の結果)〟」


 ディヴィションとイネビタブル・リザルト、この二言を言うと同時に黄色の宝石が装飾された薬指の甲冑指輪が輝き、それと同時にゴンスケの矢も同じ色の輝きを発した。

 それを見たヨキは、何が起きたのかわからないでいるとリンダがフェムに報告した。


「リーダー、指定された付与魔法をかけ終えたわ。

 他にも付与魔法(エンチャント)はいる?」


「今の内に全員に防御力をあげる付与魔法の付与を」


「私にはかけなくて良い、体質上あまり効果が出ない可能性がある」


「了解、"ディフェンス(防御)〟」


 全員に防御力をあげる付与魔法をかける用途フェムが指示を出した際、ラピスはウィアグラウツの体質上、魔法が効きにくく付与魔法が効果が見込めないと断りを入れた。

 フェムの指示の下、リンダはラピス以外のメンバーに防御系統の付与魔法を付与する。


 青い宝石が装飾された甲冑指輪が輝き、ヨキ達の体全体を青い光が覆う。

 防御力を上げる付与魔法が付与された証拠のようだ。

 だがそこで、リンダが困惑の声を上げた。


「あら? 変ね、一人だけディフェンスが掛からないわ?」


「え? 僕⁇」


 どういう訳か、ヨキのみリンダが発動したディフェンスが付与されなかったのだ。

 同じようにディフェンスをかけられたバンや鷹獅子の西風のメンバーには、ディフェンスが付与された証拠に体全体が青い光の膜が覆っていた。

 何故ヨキだけディフェンスが掛からないのか困惑していたリンダだったが、今はそれどころではないと判断し、リースに声をかけた。


「君、確か呪術師だったわね? 私の代わりに防御力を上げる付与をかけて。

 この子には私の魔法が掛けられないみたい、同じ霊力を使う霊術使いなら付与できるかも」


「わ、わかりました。器守人(チーショウレイ)


 リンダに頼まれたリースは呪符を一枚取り出すと、防御力を上げる呪術を発動させた。

 すると呪符が青く光ると同時に霧散し、ヨキの体を覆う。

 リンダの読み通り、呪術による付与であらばヨキにも掛けられるようだ。

 ヨキへの防御力を上げる付与が間に合ったところで、他の冒険者が声を上げる。


「フルーツビーが来るぞぉ!」


「遠距離攻撃手段を持つ者は合図と共に攻撃!

ディフェンス型はアシスト型を守りながら追撃し、アタッカー型は遠距離攻撃で内漏らされたフルーツビーを積極的に倒してディフェンス型の負担を減らせ!

来るぞ、戦闘開始!」


 合図が出ると弓士と魔法士達による一斉射撃が始まり、後衛担当の冒険者達による戦闘が始まった。

 リンダの付与が施された矢をゴンスケが射ると、一定の距離を飛んでいった後に光を放ち、一本から二本、二本から四本と広範囲にわたり数を増やしていく。


 そうやって増殖した矢は全て命中し、かなりの数のフルーツビーを(ほうむ)った。

 ゴンスケは慣れた手つきで次の矢をあてがい、すぐさま射ると三度矢をあてがうというという工程を繰り返す。

 それだけでもかなりの数のフルーツビーを射貫いていくが、それでも内漏れというのはある。


 魔法使いの魔法と、ゴンスケ含む弓士達の放った矢が次々とフルーツビーを射貫いていく中、遠距離攻撃から逃れたフルーツビー達が特攻を開始した。

 剣類や槍類が届く距離までフルーツビーが接近してくると、地上で待ち構えていたアタッカー型の冒険者達が攻撃を開始した。


「射ち漏れたフルーツビーが来るぞ!」


「任せろ!」


「剣の錆にしてくれる!」


 近距離まで近付いて来たフルーツビーを最初に迎え撃つのは、剣を使う剣士とリーチを生かした槍を使う槍士系統のアタッカー型の冒険者達だ。

 剣士は自ら接近して三十㎝もあるフルーツイビーを一刀両断し、槍士は自分の持っている槍のリーチを活かしてフルーツビーを突き刺す。


 その後も冒険者達は次々襲いかかってくるフルーツビーを撃退するべく、各々の方法で戦い始め、現場は一気に戦場と化した。

 自分達以外の冒険者達が魔物と戦う姿を目の当たりにしたヨキは、その迫力に思わず萎縮していた。


「アワワワッ! あっという間に状況が変わっちゃったよ⁉」


「護衛ともなりゃあどうしてもこうなるが必然なだよなぁ。

 ヨキもそろそろ参加した方が良さそうだぞ、ラピスが恨めしそうにお前の事見てる」


「ピィッ! 頑張りますぅ!」


 現場の雰囲気い押されていたヨキだったが、フルーツビーを撃退しながらラピスが自分を睨みつけていると気付いたため、慌てて長弓を構えて空中を飛ぶフルーツビーの撃退に参加した。


 酷く気が動転していたものの、直撃こそしていないが羽を撃ち落としたりフルーツビーの体の一部をえぐったりはしていた。

 ウェポンマスターの素質を持っているおかげか、ヨキが放った矢は一度も外れることなくあたっていた。


「これ、このままで大丈夫? 数って減ってる⁉」


「大丈夫ですよヨキさん、ジュンチョウにフルーツビーを倒せてますから」


「リース君伏せて! ハァッ!」


「ぬん!」


 ヨキがフルーツビーを倒せているのか不安がる中、メルビィがリースの頭上に飛んできたフルーツビーを突き刺した。

 それと同時リンダに突撃しようとしたフルーツビーを盾役である重騎士のソーンが妨害し、ソーンにふっとばされたフルーツビーはそのまま絶命した。


「大丈夫かリース!」


「はい、メルビィさんのおかげでブジです!」


「フェム、おそらく第二陣が来る可能性が高い。なるべく早くこの場から離脱した方が良いぞ」


「違いない! ゴンスケ達アシスト型冒険者がかなりの数を撃ち落としている筈なのに、勢いが変わらないのがその証拠だ!」


「第二陣があるんですか⁉」


 現在襲ってきているフルーツビーだけでも厄介だというのに、第二陣のフルーツビーの群れがやって来る可能性が高い。

 フェムとソーンの会話を聞いていたヨキは、フルーツビーを撃ち落としながらも動揺していた。


 ただでさえ数が減る気配がないフルーツビーを相手にしているというのに、そこに援軍となる第二陣が合流してしまえばひとたまりもない。

 いち早く第二人の存在の可能性に気付いたソーンは、無理に相手にするよりも離脱した方が良いとフェムに提案した。


 フェムも同じ事を考えていたようだったが、エナジーフルーツを狙うフルーツビーをキャラバン全体で振り切るというのはそう簡単な事ではない。

 何か良い案はないかと考えている内に、数匹のフルーツビーが後衛を突破して中央の荷馬車に向かってしまった。


「フルーツビー数匹が荷馬車の方に向かったぞ!」


「大変! 急いで追撃しないと!」


 フルーツビーが荷馬車に向かう様子を目の当たりにしたヨキは、慌てて長弓を荷馬車の方に向けてフルーツビーの追撃を試みようとした。

 が、そこにフルーツビーを倒していたラピスが待ったをかけた。


「馬鹿者! 不用意に追撃するな!

 流れ弾が中衛の冒険者、もしくは商人に被弾したらどうする⁉」


「で、でも追撃しないと被害が拡大しちゃうし、中央にはグリーンロックリザードがいるし……」


「護衛に参加したのは全員緑階級(グリーンランク)以上だ、グリーンロックリザードもいまごろとうそうされているし、あの程度なら大丈夫だ。

 問題はどうやってフルーツビー達を引き離すかだ!」


 フェムが指摘した通り、今はどうやってフルーツビーを振り切るかが問題だった。

 このままでは第二陣が来てじり貧、体力を無駄に消費するだけになってしまう。

 そうならないためにもフルーツビーを全滅させるより、フルーツビーから逃れた方が効率は良いのだ。

 そこにリースを守りながら戦うメルビィがある提案をしてきた。


「リーダー、だったらフルーツビーの習性を利用しない?

 エナジーフルーツ以外の熟した果物とかドライフルーツで気を引く事が出来れば、なんとかなると思うのよ。

 意見を聞かせて!」


「それは良いアイディアだ。けど肝心の果物はどう用意する?」


「リンダ、魔法で果物を生やす事はできるか?」


「ゴメン無理! 植物系統の魔法は昔から苦手なの! 〝サンダー()〟!」


 メルビィの提案は良い考えではあったが、エナジーフルーツ以外の果物をどう用意するかという問題があった。

 ソーンはリンダに魔法で果物を生やせるかを確認したが、リンダ本人は自分では無理だと伝えた。

 そこに声を掛けてきたのは、体術でフルーツビーをなぎ払っているバンだった。


「果物作ればいいんだな? それならこれ使えるぜ、密林檎(ハニーアップル)の種を組み込んだ錬金石(アルケミストーン)

 ヨキ、コイツを七十m先の岩場目掛けて射て!」


 そう言ってバンがヨキに渡したのは、鏃を錬成石に付け替えた一本の矢だった。

 ヨキは手渡された矢を長弓当てがい、指定された岩場に鏃を向け弓を引く。

 だが、周囲で戦う冒険者とフルーツビーがいるせいで狙いを定められない。


(ダメだ、周りに人がいるせいで射つタイミングが掴めない! どうしよう……っ⁉)


「落ち着きなせぇタソガレ君。まっすぐ向けるのは良いけれど、それじゃあ当たりやせんよ?」


「でも、まっすぐ向けないと、岩場にさせません!」


「それじゃあアッシから一つアドバイスさせて頂きやしょう。

 矢と視線をほんの少し、斜め上に向けなせぇ、それから弓を持っている方の足をまっすぐ伸ばす形で肩幅を開いて体を傾けて中心の軸をずらしんさい。

 その後は、わかりやすね?」


(体の中心をずらす? 弓を持っている方にずらせば良いのかな?)


 ゴンスケからアドバイスを得たヨキは、言われた通りに長弓を構える。

 するとほんの少しだけではあるが、見渡しの良い空間が存在する事に気付いた。

 けれども確定したルートがある訳ではないため、すぐに矢を射る事は出来ず、ゴンスケが最後にいった言葉の意味を理解した。


(最後は僕次第、って事だ。最初はテンパっちゃったけど、バンやラピスさんが安全を確保してくれてるから落ち着いて見極められる!)


 バンとラピスがフルーツビーとの距離を保ってくれているという事を認識しているため、ヨキは落ち着いて狙いを定める事が出来た。

 そしてピンポイントで岩場を狙えるルートを見つけ、ヨキは迷わず矢を放った。

 先端に錬金石を付けられた矢は、そのまま弧を描き、けれどもまっすぐ岩場に向かって飛んでいく。


 そして錬金石が岩場に直撃すると同時に陣のような者が広がり、岩場に巨大な木が生えた。

 その枝には桃色の花が咲いては散り、次々に密林檎が実りだした。

 直後、冒険者と戦っていたフルーツビー達が密林檎の甘い香りに誘われ、そちらの方へと飛び始めた。


「フルーツビーの気が逸れた! 今の内にこの場から離脱するぞ!」


 そのかけ声と共に冒険者達は戦闘を中断し、フルーツビーとは反対の方向に走り出した。

 フルーツビーはバーナードキャラバンを気にとめる事なく、密林檎に夢中になっており、追いかけてくる気配はない。

 こうしてヨキ達は、初めての団体戦を脱した。 

 ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんにちは、mystery様。御作を読みました。  ヨキ君のウェポンマスターの特徴を活かした集団戦が興味深かったです。  主力が友人達ではなく、一般冒険者。勝利条件が敵を倒すだけにとどまら…
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