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第77話 国境への旅立ち

 ブックマークありがとうございます。

 オリソンティエラ出発当日、ヨキ達はジェイコブに紹介された宿の客室でぐっすりと眠っていた。

 時間はまだ早朝という事もあり、客室でぐっすりと眠っていた。

 だが、静寂漂う客室に突如けたたましい音が鳴り響いた。


「ひゃわっぷ⁉ 何々⁉」


「「なんだぁっ/なんでごじゃるか⁉」」


「全員構えろ、敵襲だ!」


 客室に鳴り響くけたたましい音が耳に入ってきたヨキ達は驚きのあまり飛び起き、キールに至ってはヘルシャフトによる敵襲だと思い短槍を構えた。

 そしてけたたましく鳴り響く音の発生源を確認すると、とある事が判明した。


「おう、目ぇ覚ましたな♪」


「「お前が犯人か!」」


「あ、やっぱりケイだったんだね」


 けたたましい音の発生源は一足先に目を覚まし、支度を済ませていたケイが持っている目覚まし時計だった。

 音の発生源がケイだと分かったバンとキースは、ケイの悪戯だと知り思わずツッコミを入れた。


 ヨキに至っては昔からケイの悪戯には慣れていたため、目を覚ました直後にもしやと思っていたが、案の定ケイの悪戯だったため、すぐに納得した。

 が、ヒバリはそうはいかず、鬼の形相をしていた。


「ケ~イ~。こんな早朝の時間帯にそこまでけたたましい音を出すとは何事でごじゃるかぁ!」


「いやいやいやいや目覚まし時計なんだから問題は何も問題ないだろう⁉」


「問答無用! 成敗してくれるわぁ!」


「わぁーっ! 朝から切り捨て御免はやめろぉおっ!」


 朝から悪戯を実行したケイに切れたヒバリは、すぐさま刀を取り出してケイに斬りかかった。

 そして今回やらかしたケイは、朝からヒバリに追いかけ回されるとは思っていなかったらしく、慌てて客室の中を逃げ回り始めた。


 ケイがヒバリから逃げ回っていると、客室の扉が叩かれる音を叩く音が聞こえてきたため、ヨキは扉を開けて来客に対応する事にした。

 扉を開けると、そこには他の客室で寝泊りをしているマリの姿があった。

 どうやらケイが悪戯に使った目覚まし時計の音に反応したらしく、様子を見に来たようだ。


「ねぇ大丈夫? さっきから凄い音が聞こえてきて、ラピスさんが剣を構えた状態になってるんだけど?」


「えっ? わひゃあっ! ラピスさん落ち着いて下さい、敵襲じゃないです⁉」


 自分達の泊まる客室に訪ねてきたマリから、ラピスが剣を構えていると聞かされたヨキは視界を動かすと、そこには臨戦態勢のラピスの姿があった。

 その姿を見たナキは思わず悲鳴を上げ、敵襲ではない事を伝えた。


 敵襲ではないというヨキの言葉を聞いたマリは、部屋の中から話し声が聞こえてきたため中を覗いてみると、目覚まし時計を持ったケイがヒバリに追いかけ回されている事から、全てを悟った。


「あぁ、ケイの悪戯だったのね……」


「うん、そう。それでヒバリ君が怒ってケイを追いかけ回してるんだ」


「ラピスさん、大丈夫。音の原因はケイの悪戯だったわ」


「悪戯だと? こんな大事な日に紛らわしい、こんな時にふざけるとは何事だ!」


 けたたましい音の発生源がケイの悪戯による物だと知ったラピスは、何を考えているんだと文句を言った。

 ラピスが文句を言うのも無理はない。


 何故なら今日はギョルシル村を出て、国境であるオリソンティエラへ向けて出発するからだ。

 そんな大切な日に襲撃と間違えるような悪戯をされては、たまったものではないのだろう。


 ケイが持っている目覚まし時計の音は本当にけたたましいらしく、宿中に目覚まし時計の音が鳴り響いているようだ。

 その証拠に他の客室に泊まっている仲間達や冒険者も集まり始めていた。


「なんやなんやこの音は⁉」


「地震? 雷? 火事? もしかして変なおじさん⁈」


「不審者でも出たのか?」


「ねぇこの音どうにかならない⁉ 凄く煩いんだけど⁈」


「ヨキさんおはようございます! 何かあったんですか⁉」


「非常事態が発生したのか⁉」


「すみません、従弟がやらかしたみたいなので黙らせてきます」


 ケイのせいで事が大きくなってしまったと感じたマリは、すぐさまヨキ達の客室に入るとヒバリから逃げ回るケイの首根っこを掴んで捕獲した。

 流石は長年供に過ごしてきただけの事はあり、マリにとってこれくらい朝飯前のようだ。


 ケイを捕獲したマリはヒバリに待ったをかけて刀を下ろすように進言し、代わりにハリセンでの制裁を頼んだ。

 ヒバリはマリの提案を受け入れ刀を鞘に収めると、何処からともなくハリセンを取り出してケイに制裁を加えた。


 その後、ケイから目覚まし時計を取り上げる事でようやく騒ぎが収まり、各々身支度を調えて宿の外に出た。

 外では既に元々いた冒険者達やバーナードキャラバンの行商人達が準備を始めていた。


「うわぁ、もう準備が出来てる」


「やっぱり色々と準備しないといけない事があるからね。

 少しでも統率が乱れると危険だから、なおのこと注意しておかないといけないのよ」


「よし、全員いるな? もう一度確認するが今からオリソンティエラに向かう。

 その道中魔物や盗賊は勿論、ヘルシャフトによる襲撃がある筈だ。

 ヘルシャフトに対しては通常の攻撃は通用しねぇ、その対策としてはオイラ達が分散する事でカバーする。

 昨日の内に渡しておいたメモはちゃんと持っているな?

 そこに描いてある場所に世話になるパーティがいる、そのパーティリーダーの指示を聞き、パーティの冒険者としっかり連携するんだ」


「でも、いきなり初対面の人達と連携するのって難しくないかな?」


 再度キールがオリソンティエラまでの行動パターンを説明していると、ヨキが初対面の相手との連携が難しいのではないかと異議を唱えた。

 マシになったとはいえ、元々は仲間の背後に隠れたり、初対面の相手と話した後に挙動不審に成る程人見知りだったのだ。


ヨキにとっては、慣れ親しんだ仲間の元を離れてほぼ初対面の相手と行動を共にするのは厳しいのだろう。

 そんなヨキの様子を見かねたキールは、自分が考えている事をはっきり伝えた。


「今回の件はオイラ達のとっても良い機会だ。

 これまでオイラ達は幾多の戦いを乗り越えてきた、だがそれは同じ相手に限る事であってそれ以外とはほとんど戦った事がない状況だ。

 その結果オイラ達の戦闘パターンは毎回同じ物になっちまっているんだ。

 毎回同じパターンで戦った場合、いずれどうなると思う」


「えっと、それは……」


「パターンの弱点に気付かれて、そこを突かれる事で瓦解し全滅する危険があるわね」


 キールの質問に答えられず、ヨキが口ごもっていると代わりにカトレアがキールの質問に答えた。

 これまでの戦いで戦い方がワンパターン化してしまった事で、その弱点を突かれてグループが全滅する危険がある。

 それを指摘された時、前回のヘルシャフトとの戦いで心当たりがあったようで全員黙り込んでしまった。


「今回を機に戦闘スタイルの改善と戦闘パターンを増やす。

 それからもしかすると今後他のスピリットシャーマンと合流して行動する可能性もあるんだ、そのためにも今の内にオイラ達以外の誰かとの連携出来るよう、慣れておく必要がある」


「戦闘スタイルに関しては私も賛成。

 一昨日丁度練習試合をしたんだけど、その時にスキルに頼りすぎだって指摘されたところなの」


「僕もさんせいだ。六刻前みたいに煙玉がタマ切れになりそうになるテンカイはさけたいからな」


「そうなるとケイも何かしら変えた方が良いでごじゃるな、また急性霊力欠乏症になられても小丸でごじゃるしな」


「ゔっ、今それを言われるのは辛い……」


 全員が共通の課題ということもあってか、誰もキールの提案に不満を抱くことはなく、最初こそ異議を唱えていたヨキも納得した。

 今のままでは風神龍の大峡谷に向かうのは極めて厳しい、少しでも対抗できるようにするためにも、何かしらの変化は必用だった。

 何よりヨキにはウェポンマスターの素質がある、それを生かさない手はないだろう。


「説明は以上だ。全員納得したな?

 それじゃあ各自指定した場所にいる冒険者パーティと合流するように!」


 説明を終えたキールは全員に号令をかけると、フィービィーを連れてそのまま荷馬車の方に向かった。

 キールの号令を皮切りに、ヨキ達もメモに記された場所に向かい始めた。

 一足先に荷馬車に向かったキールは、最終確認をしているミザールの元を訪れていた。


「待たせたな。最終チェックの方はどうだ?」


「やぁロワイヤル君、こちらは今し方確認が終わったところだよ」


「そうか。フィービィー、先に荷馬車の方に乗っててくれ」


「OK♪」


 先に荷馬車に乗るように言われたフィービィーは、特に気にする事もなくそのまま荷馬車の幌に乗り込んだ。

 フィービィーが荷馬車に乗り込んだことを確認すると、キールはミザールに封印箱の様子を尋ねた。


「例の箱の様子はどうだ? 封印が緩んだ形跡はなよな?」


「三(きざ)み程前にサブリナくんに確認してもらったが、今の所問題はないようだ。

 だが万が一の事もあるから慢心するのは良くないだろうと言われたよ」


「確かにその方が良い。いくら星族最高の封印術とはいえ、中身の事を考えるとオイラでも安心できねぇ……」


 ミザールからその報告を聞いたキールは、頭を抱えながら手を仰いだ。

 ヘルシャフトに狙われている封印箱の中身は、精霊戦争時に倒しきれず封印した禍津悪神の肉塊の一部、厄災の種なのだ。


 万一封印が解けて中身が出てこようものなら、本当に取り返しがつかないことになる。

 そのため禍津悪神がいかに危険な存在であるかを知るキールからすれば、厄介この上ないのだ。

 キールとしては警戒し続けなければならないのだ。


「どちらにしても、普通のスキル保持者じゃ攻撃が通らない。

 オイラ達のグループを分断するのは痛手だが、オリソンティエラまでの事を考えると分断して迎撃するしかない」


「何かしら対策が出来れば良いのだが、こればっかりはどうしようもない……」


「対策に関してはオリソンティエラに着くまで幾つか考えてはみる。

 お前は規制した情報が漏れないよう、気を付けてくれ」


 キールは厄災の種が封印された封印箱の情報が漏れないよう頼み込むと、キールは馬車の前方を見据えた。

 そしてこうも考えた、国境までの道のりは厳しい物になると。



*****



 仲間達の一部と別れ、バン、リース、ラピスの三人と供にメモに記された場所に着いたヨキは、場所と同様にメモに記されている冒険者パーティを探していた。


「え〜っと、確かこの辺りが指定された場所だったよね?」


「この辺りだと俺達は後方担当みたいだな。

 それでヨキ、俺達が一緒に行動するパーティってどんな冒険者の集まりなんだ?」


「僕達がお世話になるのは鷹獅子の西風っていうパーティの人達らしいよ」


鷹獅子グリフォンの西風ですか、確か攻守ともにバランスの取れたパーティですね」


 ヨキからパーティ名を聞いたリースは、鷹獅子の医師風が攻守バランスの取れたパーティだと告げた。

 どうやら事前に情報収集をしていたらしく、その際に鷹獅子の西風の情報も入手したようだ。

 リースはリースなりに、オリソンティエラまでの対策を考えていたようだ。


 話によれば、鷹獅子の西風は剣士と重騎士を前衛とし、槍士による中衛、弓士と魔法士の付与魔法による後衛で成り立っているのだそうだ。

 魔法士と聞いたヨキは、これまで魔法を使う人物を見た事がなかったため、どういった人物なのか興味を持った。


「これまで魔法使いの人には一度もあった事がないから、ちょっと想像つかないな。

 その魔法士の人ってどんな人?」


「僕が集めたじょうほうによると、ベテランの魔法士の女性で気が少し強い方のようです」


「え、女の人なの? どうしよう、絵本で言う怖い魔女のイメージがまっさきに浮かんじゃった……」


「いつの時代のイメージだよそれ。気が強いのは事実だろうけど怖くはないと思うぜ」


「気が強くて悪かったわね!」


 ヨキ達が鷹獅子の西風に所属する魔法士について話していると、後ろの方から女性の声が聞こえてきた。

 ヨキ達が振り向くと、そこにはとんがり帽を被ったパンクスタイルの若い娘が立っていた。

 容姿からして魔法使いのようだが、何故か機嫌が悪そうだった。


「えーっと、貴女は……?」


「鷹獅子の西風で魔法士してるリンダよ。

 気が強くて絵本に出てくる怖い魔女みたいなね」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」


「落ち着けヨキ!」


 噂をすればなんとやら、魔法士の話しをしていると鷹獅子の西風の魔法士、リンダ本人がヨキ達の前に現れた。

 おそらくヨキ達を迎えに来たのだろうが、自分の事を悪い魔女のイメージで話されていたせいで機嫌が悪くなっていた。


 機嫌の悪いリンダを見たヨキは顔面蒼白になりながら、リンダに謝罪した。

 完全に気が動転しているようで、同じ言葉を繰り返し早口言葉で喋っていた。

 バンが気が動転しているヨキを落ち着かせている間、ラピスがリンダのもとに進んだ。


「ウィアグラウツのラピス・ラズリーナだ。

 その様子からして、我々を迎えに来たという事で間違いだろうか?」


「その通りよ。リーダーの頼みで貴女達を迎えに来たのだけど、まさか悪い魔女と思われているとは思っても見なかったわ」


「その事に関しては申し訳ありません。

 僕が言葉足らずだったばかり、まちがった認しきで伝わってしまったみたいなんです」


 リンダが不機嫌になっている様子を見たリースは、自分の説明不足による認識の行き違いが起きてしまった事を謝罪した。

 リースから謝罪を受けたリンダは、仕方がないなと言いたげな表情でため息をつくと、少し困ったような様子で笑った。


「まぁ、途中からの参加だから私達のことを知らなのも無理はないわね。

 そこの君、怒ってないから落ち着いて」


「ふぁいっ!」


「まだ緊張してるな」


 突然リンダに話しかけられた事で、驚いたヨキは裏声で返事をした。

 ヨキが落ち着いたのを見計らい、リンダの案内のもと鷹獅子の西風が待つ場所へと移動を開始した。

 後方に進むに連れて、弓や連結武器といった遠距離攻撃向きの武器を持つ冒険者の数が多くなってきた。


 中にはリンダと同じ魔法士と思われる格好をした魔法使い達の姿も数名ほどおり、同じパーティのメンバーだけではなく、他のパーティとも話をしていた。

 団体移動という事もあり、少しでも連携できるよう配慮しているのだろう。

 それだけヘルシャフトの襲撃を警戒しているのだろう。


「皆さん、かなり念入りに話し合っていますね……」


「当然よ、最初は今より多くの冒険者がこの護衛依頼に参加していたんだけど、何度もヘルシャフトの襲撃を受けて応戦し続ける内に怪我人が続出したの」


「でも、応戦したって事は攻撃も防いでたって事じゃあ……」


「確かにそうなんだけど、アイツら防御力が高いだけじゃなく攻撃力も高くって防御障壁を簡単に破壊されちゃったのよ。

 上級の防御魔法でやっと防げる威力なものだから、燃費も悪いし魔法を講師する側としては溜まったもんじゃないわ。

 重症を負って離脱した冒険者もいれば、自身を喪失して辞退した冒険者も出たものだから、結果的に今の人数しか残ってないのよ」


「予想以上に大打撃を受けたんですね」


「でもリンダさんの言う通り、ヘルシャフトの特ちょうは厄介です。

 現にヨキさんたちの法術があって戦えるという事を、ここに来るまでの道のりで実感しましたから」


 リンダからギョルシル村に辿り着くまでの間に出たバーナードキャラバンの被害を聞いたリースは、その話を聞いて納得していた。

 二度もヘルシャフトに拐われた経験上、身を持って知っているのだ。


 百人近くの冒険者がいるにも関わらず、通用するのはスピリットシャーマンの法術だけとなるとかなり厳しい。

 それ以外でのヘルシャフトに対抗する方法を考えなければと考えていると、リンダが再びヨキ達に声をかけてきた。


「着いたわ。リーダーおまたせ、言われた通りに新入りの子達を連れてきたわ」


「ありがとうなリンダ。君達がバーナードさんが言っていた新入りだね」


「あの、黄昏ヨキ、です。一応、風の法術士、です」


「バン・レイフォンだ。こっちは弟のリース」


「始めまして、リース・レイフォンです」


「ラピス・ラズリーナだ」


 鷹獅子の西風のパーティリーダーに話しかけられたヨキ達は、それぞれの名前をパーティリーダーに告げた。

 パーティリーダーは周囲にいた仲間達に声をかけて集合させると、ヨキ達に対して自己紹介を行った。


「俺はリーダーをやっているフェム。

 見ての通り剣士だ。こっちは重騎士のソーンで、うちでは貴重な盾役だ」


「うむ、よろしく頼む」


「あっしは弓士のゴンスケでさぁ」


「メルビィよ。槍士で中衛を担っているわ」


 鷹獅子の西風がそれぞれ自己紹介を終えると、弓士のゴンスケがヨキに近づき、自分が持っていた長弓と矢筒をヨキに手渡してきた。

 長弓と矢筒を手渡されたヨキは、何故長弓と矢筒を手渡されたのかわからず混乱していると、ラピスがヨキにある課題を課した。


「ヨキ、これからオリソンティエラにつくまでの間、お前には後衛と中衛両方を担ってもらう」


「え、中衛と後衛ですか⁉」


 リースはヨキに中衛と後衛、両方をやれと言ってきたラピスの言葉に驚いていた。

 リースが何をそんなに驚いているのかとヨキが不思議がていると、いまいち内容を理解していないヨキに対し、バンが補足した。


「ラピスはお前に一人で二つのポジションをやれって言ってるんだ。

 わかりやすく言うなら一人で二役やれってことだ」


「一人で二役!? そんなの無理ですよ!」


「いや、これからのことを考えればこれがベストだ。

 これまでの戦いでは必然的に近距離での戦闘になっていたが、これを機に遠距離での攻撃手段を持つべきだ」


「法術での遠距離攻撃だけじゃダメなんですか?」


「ダメだ。これまで通りの戦い方を続けていれば、無駄に霊力を消費してケイのように急性霊力欠乏症を発症する危険がある。

 それを改善するためにも、お前にはオリソンティエラにつくまでの間、物理による遠距離攻撃を習得してもらう」


 ラピスがそう言い切った直後、中央からベルが鳴り響く音が聞こえてきた。

 最初は何事かと思っていたが、その答えはすぐに分かった。


「出発だぁーっ!」


「もうそんな時間⁉ 全然練習してないよ!」


「大丈夫でさぁ。弓の扱いに関してはアッシがお教えしやしょう」


「前回ラッド族と同等の戦いを見せたじゃないか、心配する事はないさ。

 自信を持っていい」


 バーナードキャラバンが出発する時間になったため、動揺するヨキだったが、ニルヴァとの練習試合を見ていた鷹獅子の西風は自身を持てと言ってきた。

 ゴンスケに至っては、弓の使い方が不安であれば自分が教えるとヨキに進言した。

 話し込んでいる内に全体での移動が始まったため、もう不満は言えないと悟ったヨキは、覚悟を決めると渡された長弓を背負い、矢筒を腰に装着する。


「大丈夫そうかヨキ?」


「すぅ、ふぅ、よし、大丈夫。

 どっちにしてもこれから厳しくなるなら、少しでも可能性の範囲は広げておかなくちゃ……」


 覚悟を決めたヨキは、移動し始めたバーナードキャラバンの動きに合わせて動き始めた。

 失われた記憶を取り戻すためにも、国境を越えて風神龍ふうじんりゅう大峡谷だいきょうこくに辿り着かなければならない。

 ここで立ち止まるような事があっては先には進めないと考えた。

 こうして、オリソンティエラまでの長い旅路が始まった。

 ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  ケイ、悪戯しとる場合かーっ。  と思いつつ、これがヨキ君達の日常だから、むしろ良かったのかも知れませんね。  やはり旅立ちのシーンはワクワクするものです。…
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