第76話 動き出す事態
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ギョルシル村に着いてから五刻目、収穫作業最終日。
最終日と言う事もあり、護衛以外の冒険者全員がエナジーフルーツの収穫作業に参加していた。
その中にはヨキ達の姿もあったが、やはりヨキが現場を翻弄していた。
「ヨキーッ! 本当にお願いだから収穫するスピード落として、検品と籠の供給が間に合わないから!」
「ごっごめんさい! どうしても加減が出来ないんです!」
「おーい、こっちに籠持ってきてくれーっ」
「この籠空いたから、他の所に持って行って!」
やはりヨキの収穫ペースが速く、早々に空の籠が足りなくなり始めていた。
ディモルフォセカは溜まらずヨキに収穫速度を落とすように頼むが、ヨキ自身はどうしても収穫速度を落とす事が出来ないようだ。
そんなヨキの失態をフォローするかのように、先刻目覚めたケイが混乱する現場を取り仕切っていた。
「その籠はあっちの検品作業グループの方に持って行ってくれ、そっちはまだ検品前のが結構残っているから、持って行くとしたらあっちの方だ!
そこの人、ここに空の籠が十籠あるから向こうで作業してる人達のとこに持って行ってくれ!
ヨキ、お前は直接マリがいる検品作業の方に運べ、空籠はこっちに取りに来い!」
ヨキが収穫したエナジーフルーツで溢れかえりそうになる検品作業現場が混乱しないよう、収穫されたエナジーフルーツを比較的余裕のある検品作業中のグループを把握し、空になった籠は籠が埋まりそうな冒険者の元に運ぶよう指定し、収穫ペースが速いヨキには収穫したエナジーフルーツを直接マリがいる検品作業現場に持って行き、空籠は自分の元に取りに来るように指示を出す事で現場を翻弄しないように制御していた。
ヨキが収穫したエナジーフルーツを検品作業のペースが速いマリに渡す事で、エナジーフルーツが溢れかえる事も空籠が足りなくなる事もない。
ケイの指示のおかげか、収穫作業が滞りなく進んでおり、次第に落ち着きを取り戻していった。
そんなケイの見事な手腕を見た他の仲間達は、少し呆気にとられていた。
「すごいですね、ケイさんが指示を出し始めたとたんに作業がスームズに進み始めましたよ」
「本当だな、普段はかなりマイペースな気がするのに」
「いや、ケイの場合はマイペースではなくて我が道を行くが正しいでごじゃるよ」
「そうやな、普段から自分のやりたいように悪戯実行してるさかいな。
ワイらもよう被害に遭うとったさかいな、最終的にカトレアに怒られとったけど」
「そこはいつも通りの展開なんだな」
合流する前からケイの性格を知っているヒバリとニヤトは、普段のケイの様子を知っているた呆気にとられる事はなかった少し呆れた感じではあった。
悪戯に関してはマリの代わりにカトレアが叱っていたようだ。
とは言っても以前マリが氷の古文書を入手した町で医療機関が機能を失っていた際にも、ケイが病院勤務の医者に変わり的確に指示を出していたのを見ていたため、ヒバリとニヤトは特に驚く事はなかった。
一方でカトレアも体幹を生かし、ヨキのようにエナジーフルーツの木の枝の上でバランスをとり、収穫に適した物を選び、手際よく収穫して行っている。
とはいえ、ヨキほどではないため収穫ペースはやや遅めではある。
コツコツと収穫していたため、カトレアが使っている籠がエナジーフルーツで一杯になった。
「籠が一杯になったわね。新しい籠を取りに行かないと……」
「ねえさーん、新しいカゴをおもちしました」
カトレアが空籠を取りに行こうとしたところ、運搬作業を担当していたラヴァーズが空籠を携えてやってきた。
ラヴァーズは自分が持っている内の空籠の一つをカトレアに渡すと、中身が入った籠をカトレアから受け取った。
「ありがとうラヴァーズ。おかげで下に降りる手間が省けたわ」
「はい! とびながらウンパンしてたら、他の人たちもみんなよろこんでくれるんです!」
「ねぇ誰か新しい籠ちょうだーい」
「今新しいカゴをお持ちしますね! それじゃあねえさん、またあとで!」
「えぇ、ラヴァーズも頑張って」
そう言うとラヴァーズはカトレアの元を離れ、近くにいた若い女冒険者の元に空の籠を届けに行った。
女冒険者の間では癒やし要員になったラヴァーズは、女冒険者の元に行く度に頭を撫でられ、すっかり人気者になっていた。
(周りに馴染むだけじゃなく女性の心も鷲掴みにするとは、流石私の弟ね!)
その様子を見ていたカトレアも、何処か誇らしげな様子でエナジーフルーツの収穫作業を再開させた。
そしてラヴァーズとは違い、足の速さを生かして運搬作業を行っていたフィービィーもエナジーフルーツが入った籠を幾つか器用に持ち運び、検品作業場まで運んでいた。
「次のエナジーフルーツ持ってきたよーっ!」
「ありがとうフィービィー、そこに置いて。
こっちに新しく空いた籠が置いてあるから、また他の人の所への運搬頼むよ」
「OK任せといて! ちゃちゃっと行ってパパッと持ってくるから♪」
検品作業に勤しんでいたスズから空籠の場所を教えられたフィービィーは、回収したエナジーフルーツの籠を指定された場所に置くと、空籠を手に取ると再び収穫作業を担当している冒険者の元に走って行く。
空籠を渡しては一杯になった籠を回収し、エナジーフルーツの果樹畑を駆け巡る。
そして一定の数を集めると、再び検品作業場まで運ぶ。
「ホイッ。次に検品するエナジーフルーツ持ってきたよ」
「もう⁉ 流石に早いから向こうの方に持って行ってくれ。
こっちはまださっき持ってきてくれたエナジーフルーツの検品が終わってないんだ」
「ありゃ? そうだったの、ゴメンゴメン。
ところでキール知らない? 宿出てから全然見かけてないんだけど?」
「それなら広場にいるみたいだぞ? なんか動きからして、誰かと戦ってるっぽいけど……」
フィービィーにキールが今何処にいるかを尋ねられたスズは、生命力を探知してキールの現在地と様子をフィービィーに伝えた。
何故キールが戦っているのか分からないでいると、検品用のエナジーフルーツを取りに来たレイアがやってきたため、フィービィーはレイアに声をかけた。
「レイア、今キールが広場にいるっぽいんだけど何かしらない?」
「それだったら、キールのハイチバショを考えてるみたいだぞ。
昨日はキールのハイチバショだけ決まらなかったみたいだからな」
「なんだ、そうだったのか」
「うーん、決まらなかっただけかなぁ……?」
レイアからオリソンティエラまでのキールの配置場所を考えていると聞かされたスズは、たいした問題ではないと思った。
それに対しキールの実力を知っているフィービィーは、本当にそれだけなのかという疑問を抱いていた。
*****
そしてスズが言っていたように広場では、キールがミザールの専属護衛数名と戦っていた。
ある者はサーベルを胴体に定めて切り上げ、ある者は二本のダガーナイフを器用に使い喉元を狙い、またある者はエスコットの特徴を生かして防御をかいくぐろうと試みた。
標的は皆、子供であるキール。
だが、キールは子供ならではの小柄な体格を生かし、子供とは思えぬような動きで次々と攻撃を躱しミザールの専属護衛を圧倒していく。
ミザールの専属護衛達も負けじと奮闘するが、キールの短槍《樹の礎》捌きの前に攻撃は届かない。
胴体を狙ってきたサーベルは短槍を斜めに傾け斬撃を受け止め、喉元々を狙ってきた二本のダガーナイフを穂先近くまで柄を掴み直し、ダガーナイフを弾く。
そしてエスコットの突攻撃は短槍をバトンの如く手前で振り回し、完全に防いだ。
(流石は専属、冒険者の階級だけなら緑階級、もしくは青階級の実力はあるみたいだな。
これなら仮にフォルシュトレッカーが一人くらい襲撃してきたり、貴族が何人か混じっていても問題なく対応できそうだ)
キールは法術を使う事なく自分よりも背が高い大人数人を相手にしながらも、まだまだ余裕があった。
キールからすれば大人数人と戦う事は、二百近くのヘルシャフトに襲われた時よりもマシなのだ。
そのため余裕を持って相手の動きを観察する事が出来るのだろう。
結果、ミザールの専属護衛全員の実力を把握する事が出来た。
全員の実力を把握し終えたキールは、ミザールの専属護衛全員と距離をとると戦闘を中断するように呼びかけ、自分が感じた感想をミザールに伝えた。
「護衛全員の実力は全く問題ない。
これなら通常のヘルシャフトに襲撃されても、問題なく対応できるレベルだ」
「そうか、それは何よりだ。それでは何人と組む?」
何人の護衛と組むかを尋ねられたキールは、しばらく考え込むと問題ないように自分と組む護衛を名指しした。
「まずははグラディウスを使うカプリース。大胆なように見えて冷静な動きが出来ていた事から盾役も兼ねて動ける」
「おう! どんと任せとけ!」
最初に名指しされたカプリースはやる気に満ち溢れており、右手に持ったグラディウスを高く掲げた。
「次にエスコットを使うクレア。怒濤の刺突攻撃と狙いはかなり的確、何より防がれたとしても瞬時に出来た隙に素早く反応して次の攻撃を繰り出す。
余程防御が固い奴に当たらなければかなり強力だ」
「任せて。反応速度には自信があるし、私よりも強い相手に遭遇しても対応できる策はあるの」
次に名指しされたクレアは、自前のエスコットを鞘に戻すと反応速度に自信があるらしく、自分よりも強い相手が現れたとしても対応できるよう、何か考えがあるようだ。
「最後にスレッジハンマーを使うオルゴーリョ。
豪快な動きではあるが魔物の群れが襲ってきても一気に蹴散らせるし、一体が相手なら確実に仕留められるだけでなくクレアとは違った意味で防御力も貫通できる筈だ。
ただし、隙が出来やすいからその辺が注意点だな」
「パワーは俺の自慢だ、守りの堅い奴が来たら任せろ」
「というか、そのスレッジハンマーお前のだったのか……」
最後に名指しされたオルゴーリョは、自前のスレッジハンマーを横に構えながら攻撃力に自信があるようだ。
そしてキールが驚いていたのは、先刻ヨキがニルヴァとの練習試合で使用したスレッジハンマーの持ち主だった事だ。
様々な冒険者から武器を借りてはいたが、どうやら専属護衛側からも貸し出されていたようだ。
「一先ず、これでロワイヤル君が組むメンバーが決まった訳だが、先刻の会議で出来なかった質問をしても良いだろうか?」
「なんだ?」
「君達が最も警戒しているフォルシュトレッカーとは、それ程までに強いのか?」
キールと組む専属護衛が決まった後、ミザールはキールにフォルシュトレッカーについて尋ねた。
キールとラピスがヘルシャフト以上に警戒していた様子が気になっていたらしく、フォルシュトレッカーが具体的にはどれだけ強いのかを把握しておきたいようだ。
「昨日も言ったが、ヘルシャフトが鍛え上げたヘルシャフト以外のシュ僕で構成された精鋭部隊だ。
オイラ達も何度か対峙した事があるが、冒険者で言うならほとんどの連中が紫階級、もしくは以上の実力者と見て良い。
中にはオーガトロールを一撃で仕留めるような奴も存在する」
「オーガトロールを一撃⁉ オーガトロールは確か青階級の魔物じゃないか⁉」
「むしろ、それくらいの実力がなければフォルシュトレッカーにはなれないらしい。
徹底的にふるいにかけて選び抜き、その上で限界以上まで育て上げられた連中が十三人もいるんだ。
オイラ達が遭遇した事があるのは一人を除いて十二人。
全員と戦った訳じゃねぇが、実際に戦った事がある奴や目撃した奴から聞いた情報が正しいなら、本当に危険な連中だらけだ」
真剣な様子でフォルシュトレッカーの危険性を語るキールの様子から、下手をすればヘルシャフト以上に気をつけなければいけない相手なのではないかと思った。
世間はヘルシャフトに対して警戒をしていたが、フォルシュトレッカーという存在が知られていない事を考えると、それだけ実力のある者達の集団だという事。
その事実だけは確かなものだ。
「ロワイヤル君、君から見た彼らはどのように映ったんだろうか?」
「そうだな、一言でいうなら〝狂信者〟かな?」
*****
その頃、ヘルシャフトの本拠地では、ヴィダーの指示で風神龍の大峡谷に向かうヨキ達を途中まで監視していたユングフラウがとあるヘルシャフトの前で跪いていた。
ユングフラウとヘルシャフトがいるのはとある建物で、二人が今いる部屋は威厳がありながらも、何処か厳かな雰囲気を漂わせていた。
「して、ソナタから見た彼奴等の様子はどうであった?」
「はい、私が離脱するまでの間で判明した事ですが、トゥーランドット、アイスアサシンは法術が使えない状況になっている様子でした」
「法術が使えないとは?」
「正確に言うのであれば、攻撃系の法術のみが使えない状況のようです」
ユングフラウは自分が見たマリの様子から、マリが攻撃系の法術が使えなくなっている事を報告した。
ユングフラウからその報告を聞いたヘルシャフトは、顎に手を当てて少し考える素振りを見せるとユングフラウに再び尋ねた。
「ふむ、では、それ以外で他の変化はあったかのう?」
「二百近くのあちら側の陣営の襲撃を受けた事により、全員が疲労困憊状態。
内、アクアシーフはこれまでの戦闘における疲労がたたり、急性霊力欠乏症を発症した模様。
私と入れ替わる形で監視の任務に就いたヴァーゲ(天秤座)からの報告によれば、スピリットシャーマン達はギョルシル村に向かったとの事です」
「溜まった疲労の改善とアクアシーフの体調を回復させるため、予定を変えたか。
ギョルシル村はエナジーフルーツの産地が一つ、摂取すれば多少なりとも一週間程度で回復するであろうな」
「その事で他に報告がございます。
一つ、ギョルシル村に向かう道中、現在我々が追跡しているキャラバンと遭遇、どうやら顔見知りがいたらしくそのまま合流しました。
二つ、合流したキャラバンに所属する商人から霊力回復薬を下級五つ、中級二つを購入した事が確認、更に一つをアクアシーフに使用した事から、既に回復している可能性があります。
三つ、ウィンドウセイジの転生者と思われる法術士にウェポンマスターの素質あり」
「なんと、クレープスと同じ素質を持った者がいたか……」
ユングフラウ経由でヴァーゲの報告を聞いたそのヘルシャフトは、ヨキがクレープスと同じウェポンマスターの素質を持っている事に対し、少々驚いていた。
どうやらキールやバン同様、ウェポンマスターの素質がいかに希少な者かを理解しているらしく、同じ時代に希少な素質を持つ者が二人現れた事は、どうやら想定外だったようだ。
けれどもそのヘルシャフトは二人目のウェポンマスターが現れたにも関わらず、大して驚く素振りは見せなかった。
二人目のウェポンマスターが現れようが、自分側に既にウェポンマスターがいるため、さほど問題はないと考えたのだろう。
「報告は以上か?」
「最後に一つ、スピリットシャーマン達はキャラバンに同行し、明日の早朝にギョルシル村を発ち、オリソンティエラへ向かうようです」
「あいわかった。ならばユングフラウよ、現地にいるヴァーゲを呼び戻し、タイミングを見てキャラバンを襲撃せよ。
人選はそちらに任せる」
「承知いたしました、主」
ユングフラウに主と呼ばれたヘルシャフトは、ユングフラウから聞かされた報告を聞き終えると、ユングフラウにオリソンティエラに向かうバーナードキャラバンを襲撃するよう命令を出した。
命令を受けたユングフラウは、そのまま素早く動き、室内から姿を消した。
室内からユングフラウが姿を消した事を確認した主と呼ばれるヘルシャフトは、軽くため息をつくと自らが座っている椅子の背もたれにもたれかかった。
「あらあら、トップがそんな気の抜けた態度をとって大丈夫ですの?」
「……少しくらいは良いだろう。
ここ最近、問題ばかりが起きているんだ、タイミングを見て息抜きをしないとこっちの身が持たない」
主と呼ばれたヘルシャフトが背もたれにもたれかかっていると、背後のカーテンからヴィダーが姿を現した。
主と呼ばれたヘルシャフトは、最初からヴィダーがカーテンに隠れていた事に気付いていたらしく、驚くよりも呆れていた。
先程のまでのユングフラウのとのやり取りよりも砕けた口調である事から、この二人は上司と部下ではあるが、主従関係と言うより気さくな関係にあるようだ。
ヴィダーはクスクスと笑いながら、そのまま喋り続けた。
「頂点に立つというのは本当に大変な事ね?」
「何言ってるんだ、お前も筆頭という立場である以上必然的に頂点だろう?」
「ワタクシはあくまで貴方の部下ですもの、気楽にやらせていただきますわ」
「はぁ、色々と問題を報告されるこっちの身にもなってほしいものだ。
それで、前々から頼んでいた事は順調か?」
「引き抜きの件に関しては今の所順調ですわ、まぁ、人数は少ないけれどもね。
それ例の遺跡だけれども、既に荒らされていた形跡がありましたわ。
最深部の方が特に酷く、かなり厳重に封印された形跡があった事から、恐らく〝当たり〟で間違いないと思われますわ」
「封印されていた物の行方は?」
「既に回収された後でしたわ。しかも回収方法がもう生臭くて生臭くて、嫌になりますわ」
ヴィダーからとある任務の結果報告を聞かされた主と呼ばれたヘルシャフトは、思わず頭を抱えた。
特に生臭いという言葉を聞いた時点で、かなり絶望的な結果だという事が嫌でも理解できた。
「なんちゅう方法で回収してくれてるんだ連中は……。
兎に角、キャラバンの方はユングフラウ達に任せるとして、お前は引き続き優秀な人材の引き抜きを頼む」
「あら、回収された物の行方は追わなくてもよろしいんですの?」
「これ以上追跡すれば、こちらの動きがバレるリスクの方が高いからな。
一度中断してくれ、追って沙汰を出す」
「かしこまりましたわ。それでは、ごきげんよう」
そう言うとヴィダーは軽やかな足取りで扉から出て行った。
部屋の外から少々騒ぎ声が聞こえては来たが、主と呼ばれたヘルシャフトは気にする事なくテーブルの上に置かれた資料を手に取った。
資料に記されているのは、これまでの報告や経済状況と言った内容ばかり。
その内容を見て主と呼ばれたヘルシャフトは、六翼の翼を広げながら窓の外に視線を向けるのだった。
*****
時は流れ、時刻は白辰時。冒険者が総出で収穫に参加した事で、エナジーフルーツの果樹畑に実る全てのエナジーフルーツを収穫する事が出来た。
その結果、収穫し終えたエナジーフルーツは凄まじい量になった。
「いやはや、今年は豊作ですな。村長」
「虫食いと傷んだ物を除けば、合計九九九六六〇粒になりましたな、園長」
「うわぁ、最終的に全部の取り頃のエナジーフルーツ収穫できちゃったのか……」
「過去最高記録らしいわよ、前は今回の半分も収穫できなかったらしいのに」
「ちょっとだけでも良いから分けてくれないかなぁ」
ヨキの収穫スピードも相まってか、結果的に過去最高記録の量を収穫する事が出来た。
その量は長年ギョルシル村で暮らす村の人々も見た事がないらしく、取引をしているバーナードキャラバンの商人達も驚いていた。
一方、エナジーフルーツの収穫作業を覆えたヨキ達は、キールに呼ばれ全員が集まっていた。
その中には護衛として収穫作業に参加していなかったラピスとヒエンの姿もあった。
キールは先刻の会議で自分達をバラバラに配置する事を伝えると、知らされたヨキ達の大半が困惑していた。
「「「バラバラの位置に配置する⁉」」」
「何でまたそんな事になったの?」
「仕方ねぇだろう、オイラ達だけがヘルシャフトに対しての有効打である以上、少しでも範囲を広げて他の冒険者達をフォローしねぇといけねぇんだ」
「普通の攻撃だと余程の高火力じゃなきゃヘルシャフトには通じないからね。
その事を考えれば妥当だわ」
キールの次にヘルシャフトとの戦闘経験があるディモルフォセカは、通常の攻撃ではヘルシャフトに通らない事を考えると、必然的にヨキ達を分散する必要があると納得した。
キールはズボンのポケットから数枚の紙を取り出すと、一枚一枚をそれぞれに渡した。
「今渡した紙にそれぞれの配置場所とグループを組むパーティを記しておいた。
明日黒辰時に広場に集合し、各々グループを組むパーティに合流した後、パーティリーダーの指示をに従うようにしろ。
マリ、お前は中央で他の商人達と一緒に行動するんだ。
敵が襲ってきたり流れ弾が飛んできたりした時にだけ法術を使えば良い」
「この中だと私が一番足手まといよね、ごめんなさい」
「その点に関しては仕方がねぇ。
どっちにしろ厳しい旅路になるんだ、今日は全員早めに寝て明日に備えろ。
出発はかなり早いからな」
キールの言葉を聞いたヨキ達は、いよいよ国境に向けて動き出すのだという事を感じ取った。
かなり予定を変更する事にはなったが、オリソンティエラへ向かうのだという緊張が全員に走った。
元々命を狙われる身であるのに加え、更にヘルシャフトに狙われるキャラバンと行動を共にするとなれば、より厳しい旅路になるだろう。
それぞれの目的が、それぞれの思惑が交差し、事態は動きつつあった。
ご覧いただきありがとうございます。
もしよろしければコメント、いいねお気軽にいただけたら幸いです。




