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第7話 水の都の鬼女

 その日、誰もが寝静まった真夜中の時間、その夜は雲一つなく満月が町並みを照らしていた。

そして、満月の光に照らされる橋で住人のヘルシャフトが、薄紫色を基調とした踊り子風の民族衣装を身に纏った一人の少女を相手に戦っていた。


 ヘルシャフト達に襲われている少女は、満月の光に照らされる橋を利用してヘルシャフトの攻撃を軽々と(かわ)し、自らの手にある炎を振るう。

 少女の炎に襲われたヘルシャフト達は、次々と炎に包まれ、そのまま宝石へと姿を変えて行った。

 そして、ヘルシャフト達と戦っていた少女は、宝石となったヘルシャフト達を詰めたい眼差しで見つめた。


*****


 ヨキとマリ、スピリットシャーマンを探すケイとヒバリは、レイトゥーンにやってきた。

 レイトューンは小さいながら水が美しい街として有名な町であり、別名『水の都』とも呼ばれているこの場所は、既にヘルシャフトに支配されているため、二人は気をつけなければならなかった。

 何故ならケイはスピリットシャーマン、アクアシーフの生まれ変わりであり、『水の礎』が形を変えた斧を持っていて、右腕にはスピリットシャーマンの印としての聖痕(スティグマ)がある。


「ケイ、聖痕はしっかり隠したでごじゃるか?」


「あぁ、右腕全体を覆う形で包帯を巻いてあるから心配ない。

 右腕に関して聞かれる事があれば、昔火事で大怪我して以来、肌が(ただ)れて人前では見せられないって答えるつもりさ」


「その方がよい。もしお主がアクアシーフの生まれ変わりである事がバレれば、戦闘は免れないでごじゃるからな」


 もしケイがシャーマンである事がばれれば間違いなくヘルシャフトに襲われてしまい、ケイはまだキャノンズ・キャノンズとチェック・ダ・ロック以外の法術が使えないため、襲われればまともに戦う事ができない。

 だが二人は覚悟の上でこの街に来た。

 何故ならここに、スピリットシャーマンがいるかもしれないからだ。


「ヘルシャフトを襲う鬼女。鬼女に襲われたヘルシャフトは皆、行方不明になっているでごじゃる」


「行方不明になって当然だ。封印されたらどうしようもない」


 レイトューンでは今、鬼女と呼ばれている正体不明の謎の女がヘルシャフトを襲っているという事件で不安に充ち溢れている。

 街の人々は圧倒的な力を持つヘルシャフトを襲う謎の女を嫌っていた。


 どれくらいの歳か、どのような顔なのか、そして何者なのかを知らない事もあり、解るのはその日に現れた夜、たまたま近くを通った男性の証言によって声が女で間違いないという事以外、何もわからないのだ。


 夜空橋と呼ばれる橋にその女は現れると言われていて、相手を倒そうとその橋に向かったヘルシャフトは帰ってこないそうだ。

いつしか人々はヘルシャフトを襲う正体不明のその女を『鬼女』と呼び、鬼女が現れて以来、ヘルシャフトの警戒心が強くなってしまったため、人々は生活に困り果ててしまったのだ。


「おぉーっ! すっげーっ! でかい街見んの初めてだから興奮する―っ‼」


 鬼女を探しに来たケイはレイトゥーンに足を踏み入れた途端、初めての街に興奮し何をしにきたのかを忘れてしまっているようである。

 そんなケイの様子を見かねたヒバリは、ケイを咎めるように注意した。


「ケイ、あんまりはしゃぐなでごじゃる。そんなにはしゃいでいたらお主の正体がばれるでごじゃるぞ」


 ケイの右腕は聖痕が見えないように包帯で巻かれ、(水の礎)は鞄と身体の間に隠していたが、ヒバリははしゃぎすぎるとヘルシャフト達に正体がバレてしまうと注意した。

が、ケイは全く気が付いていない。

ケイは街にあるもの全てに気を取られてしまっていたため、ヒバリは思い切って大声でソラの名前を呼んだ。


「ケイ! いい加減にするでごじゃる!」


 ヒバリに怒鳴られたおかげでケイはようやく我に返った。

 そんなケイの様子を見たヒバリは、呆れた様子で自分達がレイトゥーンに来た理由を覚えているかをケイに訊ねた。


「はしゃぎすぎでごじゃるぞ。セッシャ達の目的を忘れてはおらぬじゃろうな?」


「目的? …あっ、この街で騒いでる女弁慶探すんだよな?」


「女弁慶じゃなくて鬼女でごじゃる」


 はしゃぎすぎたせいで目的を忘れ、挙句の果てには鬼女の名前を間違えたケイに対し、今すぐにでも怒りたいヒバリはぐっと抑え、鬼女を探し始めた。

堂々と話せばヘルシャフトに存在がばれるかもしれないという事で、鬼女は怪奇現象ではないかという内容で調べる事にした。



*****



 レイトゥーンの住人達に鬼女について聞き込みをしている内に、現在のレイトゥーンの状況も把握する事ができた。

 圧倒的な力を持つヘルシャフトに対し、不満を持ったり、逆らう素振りがあれば容赦なく攻撃されるため、誰一人逆らおうとはせず、大人しくヘルシャフトに従っていた。


 そんな中でヘルシャフトを襲う鬼女の出現によってヘルシャフト達は、レイトゥーンの住人の中に自分達に逆らう者がいると考え、正体を暴き捕まえようと動き始めた。

 その結果、少しでも怪しい素振りを見せれば問答無用で捕まり、投獄されてしまうのだそうだ。


 レイトゥーンの住人が現場に居合わせる事も何度かあったが、その場に居合わせる事を許さないかのように鬼女は炎でレイトゥーンの住人を追い払ってしまうのだそうだ。

 幸い怪我人は出てないが、鬼女の存在はレイトゥーンの住人達にとって迷惑なものとなり、全員が疑心暗鬼になってしまっていた。


「それでレイトゥーンに来てから雰囲気が重い感じがしたのか」


「今でも鬼女は発見されず、ましてや被害が出続けているとは。これは怪奇現象かどうか怪しいでごじゃるな」


「だな。怪奇現象かどうか、はっきりさせた方が良いかもしれないな」


 鬼女の正体がやはりスピリットシャーマンではないかと考えたケイとヒバリは、できる限り鬼女に関する情報を集めた結果、鬼女は夜にしか現れず、毎晩いるという訳ではないようだ。

 それに襲われているのはやはりヘルシャフトだけで街の人間は襲われてはいないらしく、ケイとヒバリは事件現場である夜空橋に向かった。

 夜空橋についた二人は現場を見てはみたものの、あまり変わった様子はなかった。


「ん~、あんまり変わった様子はないなぁ。現場はここなんだよな?」


「その筈でごじゃるが、もう既にこの街を去ったのでごじゃろうか?」


「それはないと思うわよ?」


 急に後ろの方から声がしたためケイとヒバリは驚き、ヘルシャフトだと思い込んで思わず攻撃態勢になった。

だがそこにいたのはヘルシャフトではなく、体格を隠すような少しダボ着いた服を身に纏い、赤いポニーテールの髪をなびかせた一人の少女だった。


「きっ君は…?」


「私はディモルフォセカ、ディモルフォセカ・ガーネットよ。貴方達見かけない顔ね、旅の子達?」


「あっあぁ、俺は薬師ケイ。こっちは旅仲間の渡野(わたりの)ヒバリだ」


「初めましてでごじゃる。ディッディモらじゃなく、ディもにょっでもなくてえーっと」


「ディルカでいいわ。名前長いからね」


 ディモルフォセカことディルカと名乗った少女は、一見落ち着いた雰囲気ではあったが、どこか寂しいような面影があった。

ディモルフォセカはレイトゥーンに来たケイとヒバリに何をしにきたのかを聞いた。


「アンタ達、何しにここに来たの? 観光目的で来た訳じゃないみたいだし」


「俺達、この街にでる鬼女が怪奇現象じゃないかと思って確かめに来たんだ」


「鬼女? あぁ、今この街に出るっていう女の事。何も知らないわ、ヘルシャフトにでも恨みがあるんじゃない?」


「「⁉」」


 そう言ったディモルフォセカの顔は、ヘルシャフトを恨んでいるような顔をしていた。

 その事に気付いたケイとヒバリは、ディモルフォセカが何か知っているのではないかと考え、聞き出す事ができないか試みた。


「ディルカ殿は何故、鬼女がヘルシャフトを恨んでいると思うのでごじゃるか?」


「別に、ヘルシャフトを襲ってるなら恨みがあっても可笑しくはないでしょう?

 私だって詳しく知らないの」


「それにしては、鬼女に詳しいように見えるんだけどなぁ?」


「話はそれだけ? それならもう行くわ」


ケイとヒバリとの話を切り上げ、そのままディモルフォセカはいずこへと姿を消してしまった。

ディモルフォセカから詳しく聞き出せなかったケイとヒバリは、もう一度レイトゥーンで聞き込みをし、少しでも多く情報を集め鬼女の正体がスピリットシャーマンであるという証拠を探し続けた。


その夜、ケイとヒバリは今夜にでも鬼女が現れるかもしれないという可能性もあるため、少しでも早く事件現場である夜空橋に向かう事ができるように、夜空橋の近くにある宿に泊まる事にした。

 ケイは宿のベッドに寝転がり休んでいたが、ヒバリは今まで集めた情報をまとめていた。


「ヒバリ、何してんだ?」


「フム、今日の内に集めた情報をまとめているのじゃ。

情報をまとめる事で新しい手掛かりを見つける事ができるかもしれぬからな」


「鬼女が炎を出した、みたいな情報もあったし、もしスピリットシャーマンならファイヤーファントムの子孫じゃないか?」


「まだファイヤーファントムの子孫と決まった訳ではごじゃらんからな。

ヘルシャフトの眼がある以上ここからは慎重に動くべきでごじゃるよ」


そう言いながらヒバリは一人情報をまとめていたが、集めた情報に対して妙に引っ掛かる事があり、だがそれが何なのかはわからないままであった。


*****


その頃ディモルフォセカは自分が暮らすアパートの部屋で一人、外を見ていた。

外を見ていたディモルフォセカは何かを確信すると引き出しにしまっていた何かを取り出し、クローゼットの奥から薄紫色を基調とした踊り子風の民族衣装のような服を取り出して着替え始めた。


 服を脱いだディモルフォセカの体格は、ダボ着いた服からは予想もできないスレンダーな体格をしており、右腕には赤いトーチに炎が灯ったような痣があった。

 そして先程まで着ていた服とは違う、フィットした赤い炎の刺繍をあしらった丈の長いチョリと黒いレギンスの上から丈が膝下まであるスリッドが入ったスイングスカートが、ディモルフォセカのスレンダーな体格と凛とした雰囲気を引き立てる。


 ヒールの低いボーンサンダルを履くと、玄関からではなく二階の窓から外に出て、アパートの屋根に上った。

 ディモルフォセカの所持品は、ガラスのように透き通った何かでできた赤く短いトーチただ一つ。

 そして怪しく呟く。


「今夜は、三日月。さぁ、狩りの時間よ」


 そう呟くとディモルフォセカはアパートの屋根から隣の建物の屋根に飛び移り、そのまま他の建物の屋根に次々と飛び移る形で移動し始めた。

 外には誰の姿もなく、ディモルフォセカ自身も足音を最小限に抑えていたためレイトゥーンの住人達は誰一人、ディモルフォセカが屋根伝いに移動している事に気付く事はなかった。

 そしてディモルフォセカは一人ある場所へと向かった。


*****


 ヒバリは寝る間を惜しんで集めた情報をもとに鬼女の正体について考えていたが、やはり何かが引っ掛かり分からないままでいた。

するとベッドに寝転がっていたケイが、不意に思いついたかのように言いだした。


「そういやディルカの奴、なんであんな事言ってたんだろう?」


「どうしたでごじゃる、ケイ?」


「ん? あぁ、昼間に会ったディルカの事覚えてるか?

 アイツがなんであんな事言ったんだろって思ったんだ」


 ヒバリはディモルフォセカと話している間の事を思い出したが、やはり判らない。

 ケイが何故、ディモルフォセカの話について気になっているのか不思議に思ったヒバリは、ケイにディモルフォセカが何を言っていたのかを尋ねた。


「ディルカ殿は何か言ってたでごじゃるか?」


「ディルカは俺達が鬼女はもういないじゃって話してた時に「それはない」って言ったろ?

 って事は鬼女の事知ってるって事じゃん。

なのに鬼女について詳しく聞こうとした途端、「知らない」って答えたのってさ、なんか可笑しくねぇか?」


「言われてみれば確かに……」


「それに、レイトゥーンの人達に聞き込みをしてる時は鬼女の事件は怪奇現象じゃないって指摘してくれたのに、ディルカは指摘しなかったんだ。

 そうしたのはディルカにとって、その方が都合が良かったからじゃないかって思うんだ」


 ディモルフォセカとレイトゥーンの住人達の反応が違う事を指摘したケイは、何故ディモルフォセカが鬼女の事を知っているようで知らないといったのかが気になっていた。

 ケイの話を聞いたヒバリも、自分の中で引っかかっていた事がディルカの証言が原因だと分かり、ケイの考えを加えてまとめた情報を見直し始めた。


 しばらく考えている内に、鬼女がヘルシャフトに恨みがあるのではないかといったディモルフォセカの顔が、ヘルシャフトへの恨みで染まっていた事を思い出したケイとヒバリはある答えに辿り着き、ほぼ同じタイミングで声を上げた。


「「まさか⁉」」


ケイとヒバリがディモルフォセカが話していた話の意味について答えを出した、その時だった。


「ギャーッ!」


 外で叫び声が聞こえたのだ。ケイとヒバリは急いで飛び出して声が聞こえた方向へと向かった。

 夜遅くという事もあるが、鬼女の影響か大人の姿は一人もなく、外にいるのは上空を巡回しているヘルシャフトの姿のみ。

 そして付近を巡回していたヘルシャフトが夜空橋に向かって飛んでいくのを見たケイとヒバリは、鬼女が現れたのだと分かると、自分達も夜空橋に向かって走り出した。


*****


夜空橋では、橋の上には数十個程の宝石が落ちていて、上空にはボロボロのヘルシャフトが一人飛んでいた。

そこには炎が灯った赤いトーチを持った一人の少女がいた。


その少女こそ鬼女であった。

ヘルシャフトは鬼女に向かって水の塊を放ったが、鬼女は鞭を振るいヘルシャフトが放った水の塊をトーチの炎で弾き落とし、追撃した。


「スイング・スイング!」


 鬼女が言うとトーチの炎が大きくうねりだし、ヘルシャフトに大きなダメージを与える。

トーチの炎の攻撃が直撃したヘルシャフトは、空中での体制維持ができず地面に落ちた。

 そこへ近くを巡回していた二人のヘルシャフトが援軍として駆け付け、夜空橋に立つ鬼女に向かって一人が雷を纏わせた風、もう一人が氷の礫を放つ形で攻撃を仕掛けた。


 そんなヘルシャフトの攻撃を見透かしていたのか、鬼女は夜空橋に設置された街灯にトーチの炎を引っ掛け街灯に上り、街灯の高さを利用してヘルシャフトよりも高く飛ぶ事で攻撃を躱し、援軍に来た二人のヘルシャフトに向かってトーチの炎を鞭のように振るった。

 鬼女の反撃にあった二人のヘルシャフトはそれぞれの力で咄嗟に壁を作り攻撃を防いだが、風を解除した途端、目の前には鬼女が接近していた。


「なっ⁉」


「いつの間に⁉」


「チェック・ダ・ロック!」


 二人のヘルシャフトに接近した鬼女は間髪入れずにチェック・ダ・ロックを唱え、トーチの炎を振るった。

二人のヘルシャフトは鬼女の攻撃に対応できず、赤く輝く炎に包まれると同時に宝石になってしまった。

 鬼女は夜空橋に着地すると、先程の二人よりも先に戦っていたヘルシャフトに視線を向けた。


 援軍の二人が目の前でやられたのを見たヘルシャフトは、もう一度水の塊を鬼女に向けて放ったが、鬼女は水の塊を躱し、スイング・スイングと唱えるとトーチの炎は一人でに大きくうねり、ヘルシャフトの足首に巻き付き、鬼女はトーチを持つ手を大きく縦に振る。

 鬼女の動きに合わせるように炎の鞭も動き、容赦なくヘルシャフトを地面に叩き付けた。


「これで終わり、チェック・ダ・ロック!!」


 鬼女は鞭を大きく振るい、囲むようにヘルシャフトを捕えるとみるみる内にヘルシャフトは赤く輝くに包まれ、宝石になってしまった。

 鬼女は夜空橋付近に落ちている宝石をトーチの炎で拾い集め、そのまま去ろうとした。

 そこにヘルシャフトの叫び声を聞いたケイとヒバリが現れた。


「待てっ!」


鬼女はその声に反応して止まった。

ケイとヒバリは目の前にいる鬼女の姿を見ると、驚く事はなく、寧ろ、やはりそうかという様子で鬼女を見つめた。


「やはり鬼女の正体は其方でごじゃったか!」


「まさかとは思ったけど、やっぱりお前が俺達の探し人だったんだな、ディルカッ!」


 ケイとヒバリの目の前にいたのは昼間に出会った少女、ディモルフォセカ・ガーネット。

そう、ディモルフォセカこそ、今までレイトゥーンの住人達をも巻き込み、ヘルシャフトを襲う鬼女だったのだ。


「ディルカ! どうしてレイトゥーンの人達も巻き込んでまでヘルシャフトを襲ったんだ⁉」


「なんの事? 私はただこの橋を通って家に帰ろうとしただけよ」


 何故かディモルフォセカは自分がした事を認めようとしないどころか、何も見ていないような事を言うのだ。

 何処をどう見てもヘルシャフト襲撃事件の犯人はディモルフォセカでしかないというのに、何故しらを切るような事を言うのかわからなかったケイとヒバリは困惑した。

 真相を知るため、ヒバリは目の前にいるディモルフォセカに追求した。


「何を言っているでごじゃるか⁉ 今ここにいるのはせっしゃ達以外で、ディルカ殿しかいないでごじゃる!」


「しつこいわね。さっさと帰ったら? 鬼女に襲われるわよ?」


 ヒバリの問いに対し答える気がないディモルフォセカは、鞭として使っていたトーチから炎を消すと、そのまま去ろうとして後ろを振り返った際に再び言葉を発した。


「でも、鬼女の気持ち、少しはわかる気がするなぁ。

だって、小さい頃に大好きな家族を殺されちゃったからね」


 ディモルフォセカの言ったその言葉は、間違いなくヘルシャフトに対する怒りと憎しみが籠っていた。

 そこまで言うとディモルフォセカはそのまま夜空橋から去って行った。

 ケイとヒバリはそのまま立ちつくしたままディモルフォセカを止めようとはしなかった、否、止めようとは思えなかったのだ。

 ディモルフォセカの言葉が頭から離れなれず、その言葉に込められた怒りと憎しみの意味が分からなかった。

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[一言]  こんばんは、御作を読みました。  前回は失礼しました。  リース君がかなりヒロイン的な立ち位置にあったこと、あと有名なRPGヒロインに同名のキャラがいたことで、脳内で女性と映っていました。…
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