第67話 試合終了後…
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滞在している村で行われたヨキとニルヴァの練習試合は、ニルヴァの勝利で幕を閉じた。
練習試合が終わった事を確認したマリは、キールのベール・ベールで展開していた藤の花のカーテンの隙間を通り、すぐさま観客席から飛び出してその場に倒れ伏すヨキに駆け寄る。
「ヨキ! ヨキ、大丈夫⁉」
「うぅ、お腹痛い…」
「そりゃあガントレットつけた状態で殴られたら痛いわな」
マリと同様に観客席から飛び出してきたバンが、ヨキがニルヴァに腹部を殴られた時の様子を思い出しながら、苦笑いをしていた。
その後も観客席から飛び出してきた仲間達がヨキのもとに駆け寄り、戦っていたヨキを気遣った。
そこへヨキに勝利したニルヴァがヨキ達のもとに歩み寄ってきた。
「最後の攻撃はヒヤヒヤしたぜ」
「あ、ニルヴァさん…」
「俺のロングソードを使うだけじゃなく、風を纏わせた投げナイフで舞い上がった砂埃を煙幕代わりにして別方向から攻撃を仕掛けてくるかと思いきや、真っ向勝負を仕掛けてくるとは思ってもみなかったぜ」
「さいごのさいごでヘマしてやられちゃったけどな」
「レイアさん、きびしいです」
ヨキに投げナイフを貸したレイアは、最後の方でヨキが負けてしまった事に対し、自分で作ったナイフが役に立たなかったような状況に見えたため、不機嫌になっていた。
一方でニルヴァは自分をここまで追い詰めたヨキに対し、扱いが難しいスレッジハンマーや自分のロングソードを簡単に扱っていた事に興味を抱いていた。
そこへ、仲間達から離れた場所で静観していたキールが、練習試合中に回収したヨキの杖を持ってきた。
「お疲れ様だな、ヨキ」
「キール君、ごめん、負けちゃった…、あぁ⁉ 僕の杖!」
「悪いな、お前の成長のためにも手放した直後に回収させてもらったぜ」
「キールも意地悪だね~。勝手に回収するなら最初から武器の持ち込み禁止にすれば良かったのに」
キールの意図をくみ取っていたフィービィーは呆れた様子で笑っていたが、杖を取り上げられたヨキ本人からすればたまったものではない。
結果的には、ヨキがウェポンマスターの素質を持っている事が判明したため、キールからすれば雷嫌いを克服させる事ができれば、現時点での戦力として一番期待できる存在だ。
「お前の意外な才能も判明したし、それなりに度胸も付いただろう?」
「度胸が付くとかの問題じゃないよ⁉ っていうか、意外な才能って⁇」
「その事については後で説明してやるよ。それよかインタビューの時間だぜ」
「え、インタビューって、今度は何する気ですか…」
「リベレー・リベレー」
リースが質問を言い切る前にキールはリベレー・リベレーを自分が発動させたベール・ベールに向けて発動する。
観客席と練習試合会場を隔てていたウィスティリアのカーテンは、リベレー・リベレーを掛けられた事で花びらを散らしながら解除された。
藤の花のカーテンが消えた途端、観客席にいた冒険者達が一斉にヨキ達のもとへと集まってきた。
「うわぁーっ! 一気に集まってきた⁉」
一斉に自分の周りに人が集まってきたため、ヨキは思わず叫ぶが、そんな事などお構いなしに冒険者達はヨキの周りを囲むようにして集り、ヨキの周りにいた仲間達も巻き込まれてしまった。
「凄いな坊主、戦闘民族なラッド族相手にあそこまで渡り合えるとはな!」
「鎖分銅がブロードソードの刀身に巻き付いた瞬間に速攻で手放したあの判断、やられた直後じゃすぐには実行できないぞ!」
「どうやったらスレッジハンマーをあんな軽々と振るう事ができるの⁉」
「お前さんの風、凄い威力だったな。名のある風使いか?」
「ハイキックを折れたレイピアのナックルガードで防ぐなんて、中々器用な事ができるんだな」
「私のレイピアもう少し丁寧に使って欲しかったわ」
「最後にファナ=ニルヴァのロングソードを手に取ったのを見た時は驚きものよね!」
「えっと、鎖分銅で刀身が巻き付いたのを見たらいやな予感がして、大きな金鎚はウィンドゥ・ウィンドゥでフォローして、僕それ程有名じゃなくて、というよりレイピアの人ごめんなさいーっ!」
ヨキの周りに集まった冒険者達は、何降りかまわず自分が思った事、感じた事をヨキに話すが、あまりの勢いにヨキはたじたじだ。
話しかけてくる冒険者達の質問に答えようとするヨキだったが、弾丸のごとく喋る冒険者の迫力にうまく受け答えができない状態だった。
ヨキの周りに集まった冒険者達に巻き込まれた仲間達は、これはひとたまりもないと思い冒険者の人混みから脱出していた。
体力自慢の冒険者達相手に脱出するのは容易ではなかったらしく、バン達は少々息切れを起こしていた。
キールや年少組に至っては小柄な体格を利用して隙間から脱出していたが、流石に驚いていた。
「あ~、びっくりした~」
「キールくんのベール・ベールがとけたちょくごにいっきに集まってきた時は、どうなる事かと思いましたよ」
「ラヴァーズ大丈夫?」
「ち、ちがういみでこわかった…」
「ヨキとマリの二人を置き去りにしてしまったけど、大丈夫かしら?」
バンとリースは一気に冒険者がヨキの周りに集まりだした事に対し、完全に予想外だったらしく焦っていた。
ラヴァーズに至っては巻き込まれる形とはいえ、初めて大勢の人に囲まれたため涙目で酷く怯えていたため、カトレアは怯えるラヴァーズをあやしていた。
ディモルフォセカは冒険者の人混みの中央にヨキとマリの二人を置いてきた事に気付き、心配そうに冒険者の人混みの方を見ていた。
取り残されたヨキはマリに支えられたままだったが、いまだに冒険者達から質問攻めに遭っているため目を回していた。
「…なんや、大丈夫やなさそうやな」
「元々酷い人見知りだったみたいだからね。
いきなりあんな大勢の人に囲まれたりしたら目も回っちゃうよ」
「なんだ、タソガレの奴人見知りする奴だったのか?」
バン達と同様に冒険者の人混みから脱出したニルヴァは、少し驚いた表情をしていた。
自分と対等に渡り合ったヨキが人見知りをする性格だと言う事が意外だったらしく、真偽をフィービィーに訪ねた。
「アタシも実際に見た訳じゃないけど、初対面の相手に話しかけられると誰かの後ろに隠れるんだって。
ね、キール?」
「そうだな、初対面の奴に話しかけた後はその反動でポンコツ化するぐらいだからな」
「かなり重症だったみたいだな」
「今はあんな状況だ、いやでも克服するだろうさ」
ヨキの人見知りがかなり酷いものだと聞いたニルヴァは、顔をしかめながらポンコツ化したヨキの様子を想像し、思わず対応するのが面倒くさそうだと思った。
キールは冒険者達に囲まれるヨキの様子を見ながら、良い成果を得られた事に満足していた。
そこに、バーナードキャラバンのリーダーであるミザールがキールに声を掛けてきた。
「素晴らしいものを見せてもらったよ。良い試合だった」
「おう、お眼鏡にかなったみたいで何よりだ。で、実際の感想は?」
「君が言っていた通り、タソガレ君の実力は本物のようだ。
あれだけの武器を用意したら混乱するのではないかと思ったが、状況に合った武器を的確に選んでファナ君と互角に戦っていたからね」
「それに関してはオイラも初めて認知した。
ヨキの奴がウェポンマスターの素質を持っているとは思っていなかったから、オイラとしても思わぬ収穫だ」
「はぁ⁉ タソガレの奴人見知りなのにウェポンマスターなのか⁉」
キールがヨキにはウェポンマスターの素質があると聞いたニルヴァは、信じられないという表情をしていた。
これにはミザールも驚いたらしく、いかにウェポンマスターの素質が希少であり、素晴らしいものなのかというのが分かる。
ウェポンマスターについてバンから聞いていたディモルフォセカ達は、ニルヴァとミザールの反応を見てようやくその価値を実感し、価値ある素質をヨキが持っている事に対して改めて信じられないという反応をした。
「ウェポンマスターの素質って本当に珍しいのね」
「ニルヴァとキャラバンのリーダーであるミザールさんが驚いてるんですもの、バンが言ってた事は本当みたいよ?」
「ウェポンマスターいがいにも、めずらしいソシツってあるんでしょうか?」
「さぁ? でも珍しいからこそ、世間に認知されてないだけで間違いなく存在しているでしょうね…」
「ほかの人たちも、すごいソシツをもってるのかな?」
ウェポンマスターの存在を知ったディモルフォセカ、カトレア、ラヴァーズの三人は、ウェポンマスター以外にも希少な素質が存在し、そしてヨキ以外にも珍しい素質を持っている人物はいるのかと小声で話し合っていた。
自分達が持っている素質が分かれば、その素質に合った特訓をすれば自分達の成長に繋がると考えたのだろう。
ヨキがウェポンマスターの素質を持っている事をニルヴァとミザールに暴露したキールは、ミザールとの会話を続ける。
「ヨキ自身まだ問題を抱えてはいるが、その問題を起こさせないようにし、尚且つ直す事ができれば現時点で最高の戦力になるのは間違いない。
冒険者達にしごかれれば、必然的に他の武器の技術も得られる事間違いなしだ」
「成る程、それは納得だ。
他の子達もかなり実力があるだろう、何よりヘルシャフトとの戦闘経験が豊富だ。
国境までの間、よろしく頼む」
「あぁ、こっちからすれば新参者のオイラ達を快く受け入れてくれた事、感謝する。
オイラはこれから練習試合を見ていなかったメンツに結果を報告しに行かせてもらう。
興味はないだろうが、ヨキの素質については報告する必要があるからな。
フィービィー、後でこの杖をヨキに返しといてくれ」
「OK♪」
ミザールとの話し合いが終わったキールは、ヨキの杖を布に包みフィービィーに預け、その足で練習試合を観戦していなかった仲間達に報告に向かった。
その間にもヨキとマリは冒険者達に囲まれたまま、凄まじい勢いで質問攻めに遭っていた。
「武器の扱いはどこで覚えたんだい?」
「他にも使える武器はある⁈」
「実はとっても凄い人?」
「ぶっ武器の扱いについては全部初見で、練習試合で使ったのは全部初めてで、僕そんなに凄い人じゃないんです⁉」
混乱しながらも必至に答えるヨキだったが、やはり冒険者達の勢いは止まらずますます勢いが増すばかりだ。
次第にヨキの返答は何故か疑問形になりつつある。
それでもなお、冒険者達はヨキへの質問を続けた。
「ガハハッ! そんな謙遜すんな坊主!」
「風を纏わせた状態で矢を射るのなら、短弓自体に風を纏わせる事をオススメするよ?」
「是非とも手合わせ願いたいものだ」
「ヒィ~ッ! 勘弁してくださいーっ‼」
「なんだかすっかり人気者になったわね」
練習試合での様子からアドバイスを受けたと思いきや、手合わせを願いたいという冒険者が現れたため、ヨキは顔面蒼白になりながら全力で断った。
ヨキと周りにいる冒険者達の様子を見ながら、マリは困りながらも楽しそうに笑っていた。
やはり周りが賑やかだと安心するのだろう。
「ヨキ、試しに受けてみたら?
さっきまで凄い戦いをしていたんだもの、以外に戦えるかもしれないわ」
「うわぁーんマリまで何言い出すのーっ⁉」
「うふふっ、冗談よ」
マリは冒険者達に囲まれながらも、ヨキと冗談を交えた会話を楽しんでいた。
ヨキは冗談とはいえ、マリがとんでもない提案をしてきたため更に混乱する。
冒険者達による質問攻めもいまだに終わりが見えないため、ヨキとマリの二人は当分解放はされなさそうだ。
*****
ヨキ達から離れたキールは、練習試合を観戦していなかったヒエンのもとに赴き、練習試合の結果とヨキの素質について報告をしていた。
「……てな感じでヨキを通じでオイラ達の実力に関しては問題なさそうだ」
「そうか、なら国境までの俺たちの立場に問題はないと言う事だな」
キールの報告を聞いたヒエンは淡々とクロスボウとクォレルの点検を進めた。
村にとどまっていられるのは今日を含めてあと三刻。
三刻後の早朝にはキャラバン全体が、ガイア地方のシャンテ国とクロノ地方のアルティマ国を隔てる国境の街に向けて移動を始めるため、ヒエンとしてはそれまでの間にヘルシャフトとの戦いで紛失したクォレルを補充しておく必要があった。
「そのクロスボウ、国境まで持つか?」
「前回みたく倍以上のヘルシャフト、もしくはフォルシュトレッカーの襲撃を受けなければ国境までは持ち堪えられる。
問題は国境に着くまでの間にどんな連中に襲われるかだ」
「確かにそうだな、ヘルシャフトやフォルシュトレッカーは勿論、キャラバンを襲ってくる敵は盗賊や魔物も含まれている。
人手が増えたとはいえ、警戒するに越した事はないな」
そう言いながらキールはヒエンの手の中にあるクロスボウを見つめた。
正気を失ったマリを追いかけ続けた事と、これまでのヘルシャフトとの戦いのせいか、ヒエンが愛用しているクロスボウはあちこちガタが来ていた。
自分とラピスに次ぐ実力者ではあるが、能力を持っていないためクロスボウを失えば対抗するすべはない。
どちらにしても、やはり武器の調達は必要だ。
「今回の国境までの旅路は、世間知らずなメンツにはいい経験になるだろうな」
「あぁ、それよりも聞きたい事がある」
「どうした? お前からオイラに質問とは珍しいな。
何が聞きたいんだ?」
「フォルシュトレッカーは確か、全員が黒系統の服を着ているんだったな?」
「あぁ、その通りだが、それがどうかしたのか?」
ヒエンがキールに尋ねてきたのは、フォルシュトレッカーについてだった。
フォルシュトレッカーは身に纏う服の種類こそ違うが、全員が黒系統で統一している。
ヒエンがフォルシュトレッカーの服装について確認をしてきたため、キールは少し不思議そうにしていたが、次にヒエンが言ったのはある意味貴重な情報だった。
「お前達と合流する前、それらしい奴と一度接触した事がある」
「なんだと⁉ 相手の特徴は分かるか⁉」
ヒエンから自分たちと合流する前にフォルシュトレッカーと接触した事があると聞いたキールは、ヒエンが接触したというフォルシュトレッカーの特徴を尋ねる。
ラピスのおかげで大体の構成員の事は把握できたが、まだ一番目と二番目のフォルシュトレッカーを把握できていない。
自分の知っているフォルシュトレッカーだった場合、どのように対策するべきかが問題になってくる。
そのためにも相手の特徴を少しでも把握する必要があるのだ。
自分が接触したフォルシュトレッカーの特徴を聞かれたヒエンは、その時の様子を思い出しながらキールの問いに答えた。
「確か一分袖状の漢服型の禅服両腕には手甲を着用、膝丈よりも短いズボンに脹脛まで覆うレッグガードを装着。
顔は逆光のせいで認識できていないが、髪型としては前髪を中央から分け赤いメッシュが入っていた。
背丈は二m近く、グレートソードを扱う男だった筈だ」
「どれも聞いた事がない特徴だな。
おそらく一番目か二番目のどちらか、尚且つグレートソードを扱う奴となると間違いなく攻撃に特化しているに違いないな。
他に特徴は?」
「他に特徴があるとすれば、ソイツはグレートソードを片手だけで扱っていた事ぐらいだ」
ヒエンが接触したフォルシュトレッカーは、片手だけでグレートソードを扱っていたと聞いたキールは愕然とした。
グレートソードは基本、刀身が二m近くありその重量も五㎏近くある。
そのため必然的に両手で扱う事が基本となる。
しかし、ヒエンが接触したというフォルシュトレッカーは、グレートソードを片手で扱っていた。
となると、必然的にフォルシュトレッカーの中で最も攻撃力があり、尚且つ実力の分からない要注意人物となる。
そのような要注意人物が敵勢力にいるとなると、やっかい極まりない。
「その時奴は青階級のオーガトロールと戦っていたが、奴自身は全くの無傷、更には一撃で仕留めていた。
俺の冒険者としての階級は黄緑階級、オーガトロールを一撃で倒した奴の実力は間違いなく紫階級以上の実力の持ち主だ。
一目見ただけで俺がかなう相手じゃねぇのは明白だ、レイアを連れて逃げ出すので精一杯だ」
「どう考えても厄介な敵だな。
国境に着くまでの間に襲われれば、いくら実力のある冒険者が集まったり、ヨキがウェポンマスターの素質を持っていたとしても勝てない可能性が高い。
オイラは今からラピスにその事を報告してくる」
明らかに自分達よりも強い相手であると言う事が分かった正体不明のフォルシュトレッカーの存在を知ったキールは、これはバーナードキャラバンの護衛に当たっている冒険者達では勝てない可能性が高いと判断した。
ヨキがウェポンマスターの素質を持っている事が判明したのはつい先程、とても勝てる相手ではない。
一刻も早くこの事をラピスに報告し、対策を考える必要があると感じたキールはそのままヒエンのもとを離れ、ラピスのもとヘを向かった。
そしてラピスはミザールの専属護衛と共に、ヘルシャフトが狙っていると思われる特殊素材ばかりが使われている積み荷を見張っていた。
前刻の内にキールから積み荷の中身の危険性を聞かされていたため、周囲を警戒していた。
「ラピス、ここにいたか」
「キールか。練習試合の結果はどうだった?」
「練習試合の結果に関しては朗報があるが、フォルシュトレッカーの事でヒエンから情報が入った。
その事に関して話がしたい」
深刻な様子で話しかけて来たキールの反応を見たラピスは、ただ事ではないと悟り、共に積み荷の見張りをしていたミザールの専属護衛に少しの間離れる事を伝えた。
ミザールの専属護衛も積み荷の中身の危険性を聞かされたのだろう、ラピスが積み荷から傍を離れるとラピスが離れた分だけ周囲の警戒に当たった。
人気が少ない場所に移動すると、キールは練習試合での一件とヒエンから聞いたフォルシュトレッカーの情報をラピスに伝えた。
キールの報告を聞いたラピスもまた、険しい表情になった。
「赤いメッシュを入れたフォルシュトレッカー、私の仮説が正しければヒエンが接触したのは二番目、スティアの可能性が高い」
「一番目と三番目同様、お前が一度も接触した事がないフォルシュトレッカーだな。戦闘スタイルとスキルの類いは分からないか?」
「すまない、一番目から三番目の情報は限られた上層部しか知らないんだ。
私個人で情報を集めた事もあったが、入手できたのはスティアの赤いメッシュという特徴だけ、それ以外の情報は全くといって良い程入手できなかった」
「そういやアクアシーフの集落跡で初めてツヴィリンゲと対面した時も、ディモルフォセカの弟だって事に驚いてたな…」
ラピスから上位のフォルシュトレッカーの情報が規制されている事を聞いたキールは、ケイ達のグループと合流した時のラピスの反応を思い出した。
情報が規制される程重要視されている人材となると、最後の一人を特定するのは難しい。
ヒエンからもたらされた情報だけでは、対策を練るのも難しい。
更にラピスから、予想外の情報がもたらされた。
「それよりもウェポンマスターの素質だが、ヨキ以外にもウェポンマスターの素質の持ち主がいるんだ」
「はぁ⁉ ウェポンマスターの素質持ちがもう一人だと⁈
ウェポンマスターの素質はかなり希少な素質だぞ!
その希少な素質がもう一人って、そのもう一人って誰なんだラピス⁉」
ヨキ以外にもウェポンマスターの素質を持つ人物がいる事を報されたキールは、同じ素質を持つ人物がもう一人いる事に驚きを隠せないでいた。
キールにもう一人のウェポンマスターの素質持ちが誰なのかを聞かれたラピスは、もう一人の名前を口にする。
「フォルシュトレッカー・クレープス、私が指導した執行人の一人だ」
「【瞬光】を使うつなぎの奴か。確か前にヒバリ、ニヤト、リース、スズの四人掛かりで戦っても翻弄されたとは聞いたが、他の武器を使ったとか言う報告はなかったぞ」
「おそらく他の武器を使う必要はないと判断したんだろう。
自らの手の内を割られるような事はするなと私自身教え込んでもいた、自分より実力の劣る相手に全力を出して手の内を晒す訳には行かないとも考えたんだろう」
実際にクレープスと戦った事がある仲間からそれらしい報告を受けていなかったキールは、少し違和感を感じたが、手の内を明かしていなかった可能性がある事をラピスに告げられ納得した。
自分より弱い相手に全力を出した結果、実力者相手に自分の情報が渡る事を危惧して手を抜いたのかもしれない。
もしもっと早くにその情報を得ていたのなら、何かしら対策を練る事はできていただろう。
「クレープスの指導に当たっている時、偶然気付いたんだ。
気付いた後は可能な限り武器の特徴、使い方を叩き込んだ、私が離反した後も実力をつけているのは間違いぞ」
「そうか。ラピス、悪いがヨキに武器の使い方と特徴を叩き込んでくれ。
間違いなく必要になる」
「あぁ、任せろ」
自分が思った以上にヘルシャフト側の戦力が高い事を実感したキールは、少しでも早くヨキのウェポンマスターの素質を完全に引き出すために、ラピスにヨキを鍛える事を依頼する。
ラピスもそれに了承し、積み荷の見張りに戻った。
(色々と想定が異な事が判明してきたな。
この事はミザールにも伝えた方が良いかもしれないな…)
今回判明したフォルシュトレッカーの戦力に対抗するためにも、キールは冒険者達の連携が重要になってくると考え、ミザールに報告する事にした。
国境までの道のりは間違いなく険しいものになる、必然的にその事を悟った。
ご覧いただきありがとうございます。
もしよろしければコメントなどお気軽にいただけたら幸いです。




