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第66話 ウェポンマスターの素質

「ヨキが持っている素質は、ウェポンマスターの素質だ」


 ウェポンマスター、その言葉を聞いた仲間達は聞き慣れないその名前に少々困惑していたが、その言葉を聞いたフィービィーは驚いた表情をしていた。


「ウェポンマスター⁈ それ間違いないの⁉」


「どないしたんやフィービィー? そんな驚いて…」


「驚くよ! だってウェポンマスターってかなり希少な素質で、種類問わずに色んな武器を使えて武器の性能を引き出せる、凄い素質だよ⁉

最後に現れたのは三〇〇年前のファンタジア大陸にいた(オーガ)族だってキールが言ってた!」


「そんなにすごいそしつなんですか⁉」


「素質と言うよりもはや才能の域ね」


 フィービィーが驚いた様子でウェポンマスターの素質がいかに凄いかを仲間達に説明する。

 ウェポンマスターの素質が武器の性能を引き出す事ができると聞いたマリは、七年前の桜季(おうき)頃に起きた盗賊の襲撃でヨキが無事でいられた理由を理解した。


「武器の性能を引き出すって、もしかして七年前、ヨキが納屋に盗賊が逃げ込んで着たにも関わらず無傷でいられたのは…」


「間違いない、ヨキは無自覚に(すき)を武器として扱って返り討ちにしたんだ」


「それなら納得です。そのしょうこにヨキさんは扱いがむずかしいスレッジハンマー(大型戦鎚)を当たり前のように扱えるはずないですから」


 当時のヨキが無事でいられたのは、農具である鋤を武器として扱い、盗賊を返り討ちにしたからだという事が判明した。

 そしてバンが言った事が正しい事を証明するように、ニルヴァとの戦闘を続けるヨキは自分の背丈と打撃部分が頭部と同じくらいあるスレッジハンマーを当たり前のように振るっている。


 スレッジハンマーを当たり前のように振るうヨキを見た観客席の冒険者達は、感心したようにヨキの姿を見ていた。

 ヨキがウェポンマスターの素質があると言う事には、ニルヴァとの練習試合を後押ししたキールも気付いていた。


(ありとあらゆる武器を使いこなし、性能を引き出すウェポンマスター。

 素人がいきなり武器を扱ったとしても簡単に扱える、熟練者が扱えば武器の性能を最大限に引き出せる。

 オイラが喉から手が出る程欲しかった人材だ。

 まさか身近にいたとは思わなかった!)


 キールはヨキがウェポンマスターの素質を持っている事に関して完全に想定外だったようだが、キールにとっては嬉しい誤算だった。

 マリが攻撃系の法術が使えないため、現時点での戦力をどのように底上げするか考えていたが、ヨキがウェポンマスターの素質を持っていると分かれば、話は別だ。


 あとはヨキのウェポンマスターの素質をどのようにして引き出すかが鍵となるため、キールは練習試合の様子をじっくりと観察する。

 自分がウェポンマスターの素質を持っているとは全く知らないヨキは、自分が纏う風を利用してスレッジハンマーを振るう速度を上げ、攻撃を繰り出していた。


(ウィンドゥ・ウィンドゥのおかげでこのハンマーを素早く振るう事ができる。

 これなら攻撃した反動を心配しなくても攻撃を続けられるけど、問題はニルヴァさんだ。

 ニルヴァさんがこのままやられっぱなしでいるはずない、警戒しなくちゃ!)


(よりにもよってスレッジハンマーで攻撃してきやがったか。

 一発でも食らえばかなりの深手になる、そうなると選ぶべきは遠距離かつ重い攻撃を与えられる武器!)


 スレッジハンマーを手に自分に向かってくるヨキに対抗するべく、ニルヴァは視線のみを動かしスレッジハンマーに対抗できる武器を探す。

 そして目に入ったのは、フレイル(連接棍)型のモーニングスター(星球武器)だ。


 フレイル型のモーニングスターを見つけたニルヴァは、すぐさまモーニングスターを取りに向かう。

 それに対し自分が考えていた通りに行動を起こしたニルヴァの姿を見たヨキは、ニルヴァの行動を妨害するべくニルヴァに向かってヴォルテ・ヴォルテを発動させる。


 発動したヴォルテ・ヴォルテの竜巻は、ニルヴァの行動を妨害する。

 思わぬ妨害を受けたニルヴァは、ヴォルテ・ヴォルテの竜巻に引き込まれないようにその場でしゃがみ、必死に耐える。


「(これだけの強風ならニルヴァさんはそう簡単には動けない! 逆に発動させた僕自身は自由に動く事ができる!)

 これなら、行ける!」


 竜巻に引き寄せられないように耐えるニルヴァの姿を見たヨキは、そのままニルヴァの元へと走り出す。

 しかし、ニルヴァもやられたままではいなかった。

 ヴォルテ・ヴォルテの竜巻によって引き寄せられたナイフを素早く手に取ると、それをフレイル型のモーニングスターに向けて投げた。


 ニルヴァが投げたナイフはフレイル型のモーニングスターに当たり、その衝撃でフレイル型のモーニングスターはバランスを崩して倒れた。

 そしてそのままヴォルテ・ヴォルテの竜巻に引き寄せられる形で、フレイル型のモーニングスターはニルヴァの元に転がる。


 フレイル型のモーニングスターが自分の近くまで転がってきた事を確認すると、勢いよく動いてフレイル型のモーニングスターの柄を掴み、腕を大きく横に振って鉄球部分をヨキに向けて叩き付ける。


 ニルヴァが攻撃してきた事に気付いたヨキは、長槍の時と同じように棒高跳びの応用で打撃部分による攻撃を(かわ)した。

 その様子を見ていた観客席の冒険者達は驚いていた。


「長槍の時と同じようにスレッジハンマーで躱しやがった!

 なんて身のこなしだ!」


「ラッド族の彼も凄いわ、あの状況下で動けないにも関わらず、破壊力の高い武器を手に入れたのよ!」


「スレッジハンマーもモーニングスターも破壊力が高い武器だ、この試合どうなるか分からないぞ!」


「うおーっ! 盛り上がってきたーっ!」


 観客席にいる冒険者達が白熱するヨキとニルヴァの練習試合を見て盛り上がる中、仲間達は内心ヒヤヒヤしていた。


「あっぶねーっ! 今のは普通に危なかったで!」


「あの時スレッジハンマーの柄の長さを利用して躱してなかったら、直撃して重傷になってたかもしれないわ。

 当たり所が悪ければ致命傷か即死よ⁉」


「え、ニルヴァさんがもってるぶき、すごくこわい…」


「ヨキさんがぼうがい目的で発動させたたつまきを逆に利用して、ぶきを入手したんです。

 おまけにえんきょりこうげきがかのう、ぶきの相性で言うならヨキさんの方が不利です」


「何か方法を考えないと、確実にやばいぞヨキ…」


 フレイル型のモーニングスターの特徴と使用法から、スレッジハンマーを使用するヨキの方が不利だとかんじた仲間達は、何かしらの打開策がなければヨキは勝てないと思っていた、

 その事に関してはヨキ自身も気付いており、スレッジハンマーを構えながら、どう対抗するべきか考えていた。


(妨害するつもりが逆に利用された!

 バンやリース君が言った通り、僕の風を利用してあの武器を手に入れる方法に変えたんだ。

 一度でもあの鉄球に当たったらひとたまりもないよ!)


「(一撃が凄まじい破壊力、おまけに遠距離攻撃が可能、これなら俺の方が有利だ)

 今度はこっちから仕掛けさせてもらうぜ!」


 フレイル型のモーニングスターを手にしたニルヴァは、その場を動かず腕を大きく振るい、ヨキに向かって鉄球部分を叩き付けた。

 ヨキはフレイル型のモーニングスターによるニルヴァの攻撃を躱しながら、付けいる隙を伺う。


(一度懐に入り込む事ができれば、反撃のチャンスはある!

 けど、一歩タイミングを間違えれば逆に僕の方が危険だ、絶対に間違えるなんてできない!)


 ヨキはフレイル型のモーニングスターの特徴を確認しながら、鉄球部分を躱して接近するチャンスを伺う。

 それと同時にタイミングを間違えれば鉄球部分の餌食になる危険もあるため、すぐには実行に移せない。


 右太もものレッグポーチにあるレイアの投げナイフを使おうかとも考えたが、はじき落とされるのが落だろうと思い諦めた。

 他に方法はないかと考えていると、目の前に鉄球部分が迫ってきた。


「ヨキ危ない!」


「よけてーっ!」


(ダメだ、回避もベール・ベールも間に合わない…!)


 すぐそこまで迫ってきている鉄球部分を見つめ、回避もベール・ベールも間に合わないとかんじたヨキは、驚くべき行動に出る。

 スレッジハンマーを構え勢いよく振るい、打撃部分を鉄球部分に意図的に当てる。


 打撃部分に直撃した鉄球部分は、そのまま使い手であるニルヴァに向かって跳ね返った。

 自分に向かって跳ね返ってきた鉄球部分を見たニルヴァは、すぐにフレイル型のモーニングスターの柄を左に振るい、鉄球部分を違う方向へ移動させる。

 軌道がずれた鉄球は、ニルヴァの隣に落ちた。


「なんだ? 今何が起きたんだ⁈」


「ねぇ、今跳ね返ったわよね? 鉄球部分…」


「その前に風使いの男の子の行動、今の動きって…」


「ヨキの野郎、防御するどころかスレッジハンマーで鉄球を打ち返しやがった!」


 観客席にいる冒険者達が皆困惑する中、キールはヨキが何をしたかを理解した。

 ヨキはスレッジハンマーで自分に迫る鉄球部分を打ち返したのだ。

 誰もが予想だにしなかった方法で危機を脱したヨキは、スレッジハンマーを握り直すと、そのままニルヴァとの間合いを詰め始めた。


 そうはさせまいと、ニルヴァはフレイル型のモーニングスターを大きく振るい、武器の特徴をフル活用してヨキに攻撃を仕掛ける。

 フレイル型のモーニングスターの鉄球部分が飛んでくるたび、ヨキはスレッジハンマーで鉄球部分を跳ね返し、ニルヴァとの間合いを少しずつ縮めていく。


「嘘でしょう⁉ ヨキったらスレッジハンマーで鉄球を跳ね返しちゃったわ!」


「はね返したんじゃなくて、うち返したんだよ!

ふつうあんな危ない方法で相手のこうげきを防ぐなんてしないぞ!」


「普通ならな、でもヨキは普通じゃない。

 さっきも言ったけど、ヨキにはウェポンマスターの素質がある。

 武器の特徴を理解し逆に利用する事ができれば、今みたいな反撃方法だってできるんだ」


「これがウェポンマスター…」


 観客席で見守る仲間達は、ヨキがスレッジハンマーでフレイル型のモーニングスターの鉄球部分を打ち返した事に驚いていた。

 ヨキにウェポンマスターの素質があると理解したバンは、それほど驚く事はなくヨキが鉄球部分を打ち返した事に納得していた。


 ヨキは何度も鉄球部分をスレッジハンマーで打ち返し、反撃のチャンスを伺う。

 ニルヴァは角度を変えながら、鉄球部分をヨキ目掛けて何度も投げつけ、攻撃を仕掛ける。


 両者ともに一歩も引く事ない攻防戦が繰り広げられる中、ヨキは鉄球部分を後方に弾くと同時に間合いを詰めるべく、一気に走り出した。


「これなら一気に行ける!」


「馬鹿が! 後ろがガラ空きなんだよ!」


 ヨキが一気に間合いを詰めるために走り出したのを見たニルヴァは、フレイル型のモーニングスターの連結部分を掴むと勢いよく自分の方に引っ張る。

 ニルヴァが連結部分を引っ張ると、ヨキの後方にあった鉄球部分が引き寄せられ、そのままヨキの背後に迫った。


 ニルヴァが連結部分を引っ張る姿を見たヨキは、一度立ち止まると振り返ると同時にスレッジハンマーで背後に迫る鉄球部分を打ち返した。

 鉄球部分を打ち返すと同時にヨキはニルヴァに向かって再び走り出す。


「…っ! クソッ!」


 予想外の形で攻撃を防がれ、フレイル型のモーニングスターの柄を離しそうになったニルヴァはすぐに横に振るう。

 すると連結部分がスレッジハンマーに触れ、それを見たヨキはスレッジハンマーから手を離し、とっさにスライディングで連結部分を回避する。


 それと同時にニルヴァも完全にフレイル型のモーニングスターを手放した。

 スレッジハンマーはフレイル型のモーニングスターと絡まり合い、そのまま観客席側に向かって飛んでいき、キールのベール・ベールで張り巡らされた藤の花(ウィスティリア)のカーテンに直撃した。


「うわぁっ! 今度はこっちに飛んできた⁉」


「破壊力の高い武器二つってしゃれにならないぞ⁉」


「この藤の花のカーテン、凄く頑丈だな…」


「確かにそうだけど、今は試合の方に注目するべきでしょう⁉」


 スレッジハンマーとフレイル型のモーニングスターが飛んできたにも関わらず、見事に耐え抜いたキールのベール・ベールに一部の冒険者が感心する中、他の冒険者達は戦い続けるヨキとニルヴァに注目していた。


 何度も至近距離での戦いを繰り返す内、ヨキの体力は減り息切れを起こしていた。

 それはニルヴァも同じだったが、ヨキほど息切れはしておらず、流石はラッド族と言うべきだ。


(また丸腰の状態になっちゃった、ずっと動いてるせいか、ちょっと疲れてきたな…。

 少し趣向を変えて攻撃してみよう!)


 そう考えたヨキはすぐ近くに落ちていた短弓と矢筒を拾い装備すると、ニルヴァに向かって矢を射始めた。

 短弓によるヨキの攻撃を受け始めたニルヴァは、自分に向かって飛んでくる矢を躱しながら、背後にあった木の盾を手に取り、矢を防ぎ始める。


「(ニルヴァさんは防御に徹してる、このままこっちに来られたらやっかいだ。それなら…)

 スマッシュ・スマッシュ!」


 木の盾で矢を防がれている状況はまずいと感じたヨキは、矢を射ると同時にスマッシュ・スマッシュを唱える。

 するとヨキが射た矢に風が纏い、練習試合会場の地面を削りながらニルヴァが射る方向に飛んでいく。


 その様子を見ていたニルヴァはこれはまずいと感じ、木の盾では受け止めず横に躱す。

 ニルヴァに躱された矢はそのまま並んでいる武器に突っ込み、周囲にあった武器は吹っ飛ばされてしまった。


 その威力を目の当たりにしたニルヴァは、少々焦っていた。


「おいおいなんの冗談だよ⁉ 流石の俺でもあれを受けたらひとたまりもないぞ!」


「よっ予想以上の威力がでちゃった…」


 スマッシュ・スマッシュをかけて射た矢が、自分が予想していた以上の威力がでたため、目を見開いて驚くヨキ。

 それはニルヴァも同じだったが、先程の攻撃で吹っ飛ばされた武器の中から、バトルアックス(戦斧)を手に取るとヨキの方に向き直る。


「覚悟は良いか? 黄昏」


「負けません、絶対に!」


 木の盾とバトルアックスを手にしたニルヴァを見据えながら、ヨキは短弓を構える。

 ヨキは矢を射ると素早く矢筒に手をかけ、次々に矢を射る形で攻撃を仕掛ける。

 それに対しニルヴァはバトルアックスで矢を切り落とし、木の盾で防ぎながらヨキに接近する。


 ヨキは後方に下がりながら、時折スマッシュ・スマッシュをかけた矢を射ながら牽制するが、ニルヴァは防ぐのは容易ではないと分かっているのか、風を纏った矢を観察しながら躱していく。


「(スマッシュ・スマッシュをかけた矢を観察されてる、見切られるのも時間の問題。

それに矢ももうすぐなくなる、体力もそんなに回復していない事を考えると次に持ち替えた武器で限界かも…)

 最後に使う武器を決めないと…」


 体力の限界を感じたヨキは、短弓の矢が尽きる前に自分が最後に使う武器を視線で探し始める。

 周囲には最初にスマッシュ・スマッシュをかけた矢で吹っ飛んだ武器が散乱している。

 背後の武器を確認しようにも、確認する余裕はない。

 どの武器を使うかで悩んでいると、とある武器が目に入った。


 その武器を見つけたヨキは残りの矢を矢筒から取り出し、全て短弓に引っかけてニルヴァに射た。

 自分に向かって飛んできた矢を見たニルヴァは、次々と躱していき、最後の一本は盾を使いヨキに向かってはじき返す。


 だが、全ての矢を使い切った時点でヨキは短弓を捨て、最後の武器を取りに向かっていたため跳ね返ってきた脂当たる事はなかった。


「逃がすかよ!」


「ベール・ベール!」


 武器を取りに向かうヨキの姿を見たニルヴァは、持っていたバトルアックスをヨキに向かって投げるが、ヨキはベール・ベールを発動させて冷静に対処する。

 バトルアックスがヨキのベール・ベールで張り巡らされた風の障壁に弾かれたのを見たニルヴァも、木の盾を投げ捨て近くに落ちていたハルバード(斧槍)を拾い上げる。

 そしてヨキが最後に手にしたのは、驚くべき武器だった。


「ちょっちょっと待って! ヨキが持ってるのって…⁉」


「えぇーっ⁉」


「嘘でしょう⁈」


「どうしてそのぶきなんですか⁉」


「あれは、ニルヴァのロングソード(長剣)!」


 そう、ヨキが選んだ最後の武器はニルヴァが手放したロングソード。

 ヨキはニルヴァのロングソードを構えながら、ハルバードを構えるニルヴァを見据える。


 お互いに息切れを起こしており、体力の限界は間違いなく近い。

 現在持っている武器が最後に使用できるものであり、これが最後のチャンスだと言う事を自然と悟った。


「ここまで来たんだ、絶対に負けられない…!」


「勝つのは俺だ!」


 ヨキは体力の限界までニルヴァに食らいついた事、ニルヴァは自分より弱いはずのヨキには負けられないという思いから、絶対に負けられないと思った。

 そして二人は同時に走り出した。


 お互いが持っている武器がぶつかり合い、火花を散らす。

 ヨキは体を大きく捻りながらロングソードを器用に振り回し、ニルヴァは穂先を時に向けて素早くハルバード突き刺す。

 どちらの攻撃も躱すか防ぐか、時折体をかすめるかといった工程を繰り返す。


 ヨキが右斜めからロングソードを振り下ろしたところを、ニルヴァがハルバードで弾き、ニルヴァがハルバードによる斬撃を繰り出せば、ヨキは片手でロングソードを持ってそのまま体を仰け反らせて躱す。

 お互いに譲れぬ思いが、誇りが、激しい斬撃の二重奏(デュエット)を奏でていた。


(最初は自分の杖をなくして動揺しきっていたが、今では俺の武器を当たり前のように使ってやがる!

 少しでも気を抜けばこっちがやられる!)


(レイア君から借りた投げナイフは後三本残ってる。

 タイミングを見て法術を使って投げれば、一気にチャンスができるかもしれない…!)


 ヨキもニルヴァも一歩も引く事はなく、攻防は続く。

 練習試合が始まってから既に三〇(きざ)みが経過、誰もがすぐに終わるだろうと思っていた練習試合は予想以上に長引き、どちらが勝つか分からなくなっていた。


「いけいけーっ! そこだーっ!」


「右、右! いや違う、左!」


「体力はもうそんなに残ってない、これが最後になるわ!」


「ヨキさーん、がんばってーっ!」


 観客席に射る仲間達も冒険者達も、ヨキとニルヴァが繰り広げる攻防に夢中になっている。

 そして繰り広げられる攻防に終始主が打たれた。

 ニルヴァがハルバードで縦向きの斬撃を繰り出すと、ヨキはバク転の形で後方に下がり、レッグポーチに入っている残るレイアの投げナイフを全て取り出す。


「(チャンスは今しかない!) ゲイル・ゲイル!」


 ヨキは投げナイフ全てにスマッシュ・スマッシュではなく、ゲイル・ゲイルを掛け、ニルヴァに向けて投げつける。

 ゲイル・ゲイルを掛けられた投げナイフは短弓の矢の時とは違う風力の風を纏い、ニルヴァに迫る。


 ニルヴァは瞬時に後方に下がり、ワンテンポずつ迫ってくるゲイル・ゲイルを掛けられた投げナイフを躱す。

 ゲイル・ゲイルを掛けられた投げナイフは地面に突き刺さり、激しい砂埃をあげた。


「凄い威力だ! 今地響きがしたぞ!」


「何がどうなったの⁈」


「砂埃のせいで様子が見えないぞ⁉」


「流石のラッド族でもあれを受けたらひとたまりもないだろう…」


 砂埃でヨキとニルヴァの様子が分からなくなった冒険者達は、決着が付いたのか、まだ続いているのか判定できないため、困惑した。

 それは観客席で見守っていた仲間達も同様だ。


「ヨキ? ヨキはどうなったの⁈」


「分からないよ、さいごに僕の投げナイフにホウジュツをかけて使ったみたいだから…」


「ニルヴァさんは投げナイフが向かってくるのを見て後方に下がっていました。

 ホウジュツがかけられた投げナイフのちょくげきは、おそらくさけてはいるはずです」


「ってか、砂埃のせいでほんまに見えへん! 試合はどうなったんや!」


(いまだに砂埃が舞っているのを見ると、ヨキは法術を発動せず自然に収まるのを待ってるみたいだな。

 砂埃が収まり始めた瞬間、決着が付くな)


 観客席の冒険者や仲間達とは違い、一人練習試合会場を静観するキールは砂埃が収まり始めた瞬間に決着が付くと判断した。

 一方砂埃に見舞われたニルヴァは、折れたハルバードを手にヨキの追撃を警戒していた。


(危なかった、直撃した訳でもないのに風圧でハルバードの柄が真っ二つに折れやがった!

 この砂埃じゃあ周りがよく見えねぇ、一体どこから来る?)


 ニルヴァは折れたハルバードを構えながら、ヨキが何処から攻撃を仕掛けてくるか警戒し続ける。

 そして砂埃が収まり始め、ニルヴァの視界が開ける。


 それと同時に、警戒していたヨキの姿があらわになる。

 ヨキはロングソードの先端をニルヴァに向ける形で構えた状態で、ニルヴァのすぐ目の前に立っていた。


 自分の目の前に経っているとは予想していなかったニルヴァは、完全に想定外だったらしく驚いていた。

 ヨキは砂埃が収まり始めた瞬間、一気にニルヴァニ向かって走り出した。

 ニルヴァはハルバードの斧部分ヨキに向かって投げつけるが、ヨキは瞬時に躱して走り続ける。



 ヨキがニルヴァの目の前まで近付くと、一気に踏み込んで懐に入り込みロングソードを突き刺した。


「いっけぇえええええーっ!」


「っさせるかよ!」


 ニルヴァはギリギリの所でヨキの攻撃を躱し、持っていたピック部分をヨキの背中に叩き込む。

 直撃を受けたヨキは思わず倒れそうになるが、なんとか踏みとどまり、柔軟な体を姫利無理矢理方向転換をして斬撃を繰り出そうとするが、ニルヴァが開いた方のガントレットを装着した手でヨキの腹部に一撃を食らわす。


 その一撃を食らったヨキはそのまま吹っ飛び、地面に倒れた。

 倒れたヨキは腹部を押さえながら立ち上がろうとするが、かなりダメージが入り、加えて体力の限界を迎えたようで立ち上がる事ができない。

 ヨキのその様子を見ていたミザールは、高らかに宣言する。


「勝負あり! 勝者、ファナ=ニルヴァ!」


 ミザールが観客席にいる者達全員に、練習試合の勝者がニルヴァである事を告げる。

 その宣言を聞いた観客席から、歓声の声が湧き上がる。

 制限時間なしの練習試合は、ラッド族であり実力者でもある、ニルヴァの勝利に終わった。

 ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんにちは、mystery様。御作を読みました。  残念、勝利はできなかったか。  でも、どんな武器でも扱える異能があっても、本人がどれだけ威力を出せるか把握できていなかったり、身体能力…
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