第55話 スキルの系統、種類、型
今回はヨキ達や敵が使用する能力の説明会です。
自分達の倍近くのヘルシャフトの襲撃を受けながらも、仲間同士で連携しながらヘルシャフトの襲撃を退けたヨキ達。
その時の戦いでは能力が開花したバンによる初の弾幕戦でもあったのだが、その戦いでバンはキールの予想を上回る結果を出した。
キールの予想では黒い巨木の魂の属性である樹属性か魔属性のどちらかの弾幕かと思いきや、まさかの美属性だった。
魂の属性通り、バンが出した美属性の弾幕は触れたものを宝石のように美しい鉱石の如く固めてしまい、その現象はヨキ達全員を混乱させるには十分だった。
更には形が定まっていない風をも固めてしまうのだから、完全にキールにとっては想定外過ぎる展開だったが、唯一の救いはバンの弾幕に触れた者が宝石のように固まる危険がないと言う事だろう。
その証拠にキールの法術で生えた足場となる木に、ディモルフォセカのミスで炎が付いてしまった時はケイ、ヒバリ、フィービィーの三人を巻き込む事なく鎮火した。
結果的には道端にあるには不自然なオブジェができあがってしまった。
「よし、今からあのアホに関する会議を始めるぞ」
「ほっ本当に兄さんが皆さんにごめいわくをおかけしてしまい、もうしわけありません…」
「仕方ないわ、あれは誰だって想定外よ…」
旅の道中、休憩するには問題のない場所に着いたため、ヨキ達はそこで昼食の準備に入っており、キールはリース、ディモルフォセカ、ラピスの三人を呼び集めてバンに関する話し合いをおこなっていた。
前回のヘルシャフトとの戦いでバンが披露した美属性の弾幕に関して、ではなく、バンの感覚について何かしら対策を練っておいた方が良いかもしれないとキールは考えたのだろう。
会議のお題として自分の兄であるバンが出て来た途端、弟であるリースは困った表情でキール達に謝罪していた。
そんなリースに対してディモルフォセカは仕方がないと言うが、ディモルフォセカとしてもバンの弾幕の扱い方に関しては見過ごしてはいけないと考えていた。
「確かに、魂の属性が変わるのもそうだが不安定な形でしかない風まで固めてしまう程の代物だ。
本来なら熟練者でもかなり難しい筈なんだが…」
「だろうな、本当だったらカトレアとヒエンも交えて会議を始めたかったが、そうするとストッパー役が完全にいなくなるからな」
「それはそれで大変な事になるわね…」
「今の兄さんならかくじつに何かしでかしますね…」
見張りをつけておかなければ不安だというキールの指摘に、リースとディモルフォセカは思わず反応した。
特にリースに至ってはバンの好奇心旺盛さを身をもって知っているため、バンが好奇心で木を生やしたり弾幕を作り出して遊び出すのではないかと気が気ではない。
そしてリースが危惧していた事態が発生した。
「「「うわぁーっ⁈」」」
「何⁉」
「あの野郎、早速やらかしやがった!」
突然会議に参加していなかったヨキ達の悲鳴が聞こえてきたため、キール達四人はヨキ達の様子を確認する。
キール達の目に映ったのは、ヨキ達を中心に幹の太い木が一本生えていた。
周りにいるヨキ達はほとんどが腰を抜かし、ヒエンは目を白目にしながら放心状態、ラヴァーズは衝撃のあまりカトレアに抱きつきながら顔を青ざめ、そしてカトレアはラヴァーズを抱きしめながら元凶であるバンを睨みながら説教をしていた。
「ちいとバン、あれほど勝手に能力を試すなって言うたじゃろう!
なんでこがいな幹の太い木生やしたんよ⁉」
「いや~、普段地べたに座って飯食うから、テーブルとか椅子かあったら便利かと思ったんだけど…」
「思いっきり失敗しとるじゃない!」
どうやらバンは昼食のために開花した能力でテーブルと椅子を用意できないか試そうとした結果、ヨキ達が囲んでいる幹の太い木を生やしてしまったようだ。
「びっびっくりした~っ! 何してるのバン⁉」
「そうやそうや! 心臓止まるか思たで!」
「な、なんの前触れもなく生やすのは遠慮してほしいでごじゃるよ!」
「この木、俺の斧で切り倒せるかなぁ?」
「だ、大丈夫だったレイア?」
ヨキ達は突然バンが生やした幹の太い木に驚いたヨキ達は、それぞれ驚きながらもやらかした本人にクレームを入れたり、いまだに腰を抜かして立てない仲間を気遣ったり、切り倒せないか思案したりしていた。
早速バンがやらかした光景を見たキール達は、思わず頭を抱えた。
「何してるんですか兄さん…」
「全然違う物を出してしまったのね…」
「出したんじゃなくて、生やしたの間違いだな…」
やらかしたバンの様子を見たキールはなんと言って良いのか分らず、本当に頭を抱えるしかなかった。
このまま悩んでいても仕方がないと判断したラピスは、キール達に会議を続ける事を提案した。
「会議を続けよう、私が見た感じでは弾幕の制御に関しては問題はなさそうだ」
「問題があるとすれば、バンの行動力の方向性だな」
「そうですね。僕が言うのもなんですが、兄さんのこうきしんはヘタをすると周りをまき込みかねません」
「でもバンの感覚の方もなんとかした方が良いかも。
見て、もう美属性のコツを掴んだのか、さっき生やした木を使ってテーブルと椅子を作り上げてる」
ディモルフォセカは指さしながらバンの方を見ていると、そこには先程の騒ぎのもとになった太い幹の木を美属性の能力で加工し、あっという間にテーブルと全員分の椅子を作り上げてしまった。
能力が開花したばかりの能力者は、そう簡単に自身の能力を使いこなす事ができず、その力に振り回されてしまう。
だがバンはなんの問題もなく開花した能力を使いこなし手いるため、バンの感覚が通常の能力者よりも研ぎ澄まされているのか、はたまたバン自身が可笑しいのか分らない。
どちらにしても、好奇心で能力を使われても困るのは自分達だ。
バンにはちゃんとした知識を与え、学ばせる必要があると思った。
「オイラ達でちゃんとした知識を叩き込んだ方が良いな…」
「確かに知識は必要だろうが、バンに関しては謎が多すぎる」
「前にシュタインボックが言っていた、バンが勝利の鍵だって事か?」
キールは前にシュタインボックと戦った時に聞いた、バンがヘルシャフトにとっての勝利の鍵という謎の事をラピスに問う。
バンがヘルシャフトにとっての勝利の鍵、その事が判明してから意味が分らずにいたが、前回の町でのヘルシャフトとフォルシュトレッカーの襲撃、同じタイミングで生えた黒い巨木、その後に開花した能力と唐突に身に覚えのない知識の披露、そして魂の属性の変化。
これらを踏まえると何故バンが勝利の鍵と呼ばれる理由がなんとなく分っては来たが、それでも謎が多いままだ。
現時点での第一目標は失われたヨキの記憶を取り戻すべく、クロノ地方の風神龍の大峡谷に存在するウィンドウセージの集落跡地に向かう事だが、バンに能力について学ばせるのも優先する必要があった。
「とりあえず、バンが使えるのは理力を消費する能力で間違いないとは思う」
「あとの問題はどっちの型かね…」
「あの、すみません。水をさすようでもうしわけないんですけど…」
「どうしたのリース、何か心配事?」
バンにどういった形で能力の使い方を教えるかで話し合っていると、リースが不安そうな様子で主張してきた。
不安そうなリースの様子を見たディモルフォセカは、リースに何か心配な事でもあるのかと尋ねた。
そこでリースが主張したのは、意外ながらもかなり重要な事だった。
「今更ながら気付いたんですけど、兄さんの魂の属性が変わるという事は属性があんていしていなくて、そのけっか兄さんの使えるスキルも安定ないのでは…?」
「「……そう来たか」」
「でも、流石にそれはないんじゃないかしら? 逆に珍しいくらいだし…」
リースが指摘したバンのスキルが安定していないという考えを聞いたキールとラピスの二人は、頭を押さえながらその可能性も危惧し始めた。
ディモルフォセカはその可能性を否定しようとしたが、リースの不安を肯定するかのようにそれは起きた。
「「「うわぁーっ⁈」」」
「また悲鳴⁉」
「あの馬鹿野郎、今度は何やらかしやがったんだ⁉」
再び聞こえてきたヨキ達の悲鳴を聞いたキール達は、再びバンが何かやらかしたのだといやでも悟った。
だが、今度は最初の時とは違いヨキ達の騒ぎ声が中々収まらない。
その事で胸騒ぎを覚えたキール達は、会議を中断してヨキ達のもとに駆け付けた。
「お前ら、今度は何があった⁈」
「あっ! キール大変だよ! あれ見てよあれ!」
「? …っ! なんだ、これは⁈」
フィービィーが興奮した様子で何かを指さしていたため、ラピスはその方向を確認すると、そこにはスタンピードで発生したグリーンロックリザードが槍を模した杭で串刺しになっていた。
それを見たキール達は、間違いなくバンがやらかしたのだと確信すると同時に、槍を模した杭を見て困惑した。
グリーンロックリザードに刺さっているのは一本ではなく、数本。
樹属性の法術を使えるキールは会議の主催者をしていたため、グリーンロックリザードを攻撃するのは不可能だ。
そうなると、キール以外に植物を操る事ができるのはバンだけだ。
「もしかしてだけど、これ、バンがやったの?」
「兄さんこんどは何したんですか⁈」
「そっそれが、お昼ご飯の準備中にグリーンロックリザードが出て来て…」
「それで僕達で追い払おうとしたんだけど、バンが植物を操る練習って言って、多分だけど、多分なんだけど本当は樹属性の弾幕を出そうとしたんだろうけど、弾幕じゃなくてなんか見た事のない文字を書き始めて直後に、あんな事に…」
グリーンロックリザードが無残な姿になった経緯を説明していたヨキとマリは、グリーンロックリザードとバンを交互に見ながら困惑していた。
実際にグリーンロックリザードを倒した本人であるバンも、流石に予想外だったのか驚いていたが、再びしでかしたためカトレアに説教されていた。
バンが見た事がない文字を書き始めた直後に、グリーンロックリザードが槍を模した杭が出現した事を聞いたキールは、串刺しになったグリーンロックリザードに近付き、杭の確認をし始めた。
グリーンロックリザードから杭を引き抜き確認すると、驚いた表情をしていた。
「コイツは、ツリー・ランスか!」
「キール、何か分ったのか?」
「この杭は間違いなくバンが出した弾幕の類いだ。
ただし、理力を使った弾幕じゃなく、魔力を使った弾幕だ」
「魔力、って事はこら魔法の槍って事なんかいな⁉」
グリーンロックリザードを串刺しにしている槍を模した杭の正体が、魔力を使った魔法の弾幕の類いだと聞いたヨキ達は酷く驚いていた。
バンがこれまで魔法を使うようなそぶりを見せなかったため、まさか魔法で作られた杭だとは思ってもみなかったのだろう。
「ちょっと待てよ! それってつまり、バンはのうりょくだけじゃなくてまほうもカイカしたって事なのか⁉」
「今すぐ確認した方が良さそうだな。カトレア、バンの説教は後回しだ。
バン、グリーンロックリザードを仕留めたこの杭、もう一回出せるか?」
「ちいとキール、今厳しゅう言うとかんと後々やらかして大変な事になるわよ!」
「あ、あぁ、普通に出せるぞ」
「いや普通に出されても困るんだけど…」
能力だけではなく魔法の適性まで開花させている可能性が出て来たため、キールはカトレアによるバンへの説教を中断させ、すぐさまバンに魔法の杭を出せるかを確認する。
バンへの説教を中断させられたカトレアは不服そうだったが、カトレアの説教を受けていたバンからすればありがたい申し出だった。
そしてバンは聞き手の指先を宙に指すと、そのままキールにとって見覚えのある文字を綴り始めた。
その文字を綴り終えると、その文字が光の粒子となって散り散りになったと思いきや、グリーンロックリザードを串刺しにしている杭と全く同じ形の杭が出現した。
バンは槍を模した杭を手に取ると、キールの目の前に突き出した。
「ほら、これで問題ないか?」
「「問題ありまくりだ馬鹿野郎/馬鹿者!」」
「……これはしっかり説明しないとダメですね」
「と、とりあえず、昼食を食べた後に説明しましょうか」
バンが当たり前のように杭を出したため、その様子を見たキールとラピスは間髪入れずに問題があると指摘した。
リースとディモルフォセカも、バンに自分がした事の重大さを自覚させる必要があると改めて感じた。
ともあれ既に昼食はできあがっていたため、先に昼食を取ってから説明する事にした。
しばらくして、全員昼食を食べ終えた事を確認するとキールは力を行使する際の説明を始めた。
「まず、さっきのバンが出した杭、もとい槍の正体はツリー・ランス。
樹属性の上級魔法だ」
「上級魔法って事は、かなり威力の高い魔法って事だよな?」
「それだけじゃない、習得するのだって難しい筈なんだ。
その事を少し踏まえながら、スキルの系統について説明を始める」
そしてキールはスキルの説明に入った。
最初にスキルというのは、『魔法』、『霊術』、『能力』の三つの能力の系統の総称。
それと同時に消費する力の源も使用する型も違ってくる。
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最初に今回の騒動の中心となった魔法の槍を作り出す源となった魔法。
魔法を発動するのに必要なのは魔力、そしてマナの源は魔素。
魔法とは何も存在しない場所から炎、水、雷などを生み出し、まるで世界を書き換えるかの如く発現する。
魔法を扱う事ができるのは魔力をその身に宿す魔力持ちであり、魔力持ちは四種類に分かれる。
体内の魔力を消費し、主に詠唱により魔法を発動させる事を得意とする『魔法士』。
体内の魔力と空中上の魔素を共鳴させて魔術文字と呼ばれる文字を綴り、スペルを刻む事で魔法を発動させる事を得意とする『魔術士』。
詠唱、魔術文字問わず魔法を発言させる事が可能な魔力持ちは、男性であれば『魔導師』、女性であれば『魔女』と呼ばれている。
これら魔法に関する力を扱う事ができる魔力持ちの事を、総合して『魔法使い』と呼ばれている。
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次にヨキやスピリットシャーマン達、リースが使う霊術。
霊術を発動するのに必要となるのは霊力、そしてその源となるのは自然エネルギー。
霊術とは魔法とは違い、周りにある自然に干渉する事で自然の力を引き出す事で発動する。
霊術を扱う事ができるのは霊力をその身に宿す霊力持ち、霊力持ちは三種類に分けられる。
ヨキやスピリットシャーマン達は『法術士』。
リースのように護符などを使い、呪いや戦闘に特化した『呪術士』。
現時点で見た事はないが能力と区別が付きにくい『巫術士』。
一見同じように見えるが、意外と違いがあったりする。
法術師は一つの属性に属し癒やしたり、封印する事に特化し、呪術師は媒体を使った戦術を得意とする。
一方で巫術士は個人で使える巫術が異なり、一定の条件を満たさなければ発動する事ができない。
そのため能力と区別が付きにくいのだ。
これら霊術に関する力を扱う事ができる霊力持ちの事を、総合して『霊術使い』と呼ばれている。
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最後にラピス達ウィアグラウツやヘルシャフト、フォルシュトレッカー達が使う能力。
能力を発動するのに必要なのは理力、そして霊力と同じで源となるのは自然エネルギー。
源が同じ自然エネルギーなためか、霊力を消費して発動する巫術を区別が付きにくい。
理力を扱う事ができるのは理力をその身に宿す理力持ち、理力持ちは一種類だけだ。
体内の理力を消費する事で能力を発動する『能力者』。
理力持ちは総じて能力者と呼ばれており、その理由は魔法や霊術と違って詠唱を必要とせず、自分が思い描いた形で発動するからだ。
そんな能力者には二つのタイプがある。
一つの能力で多くの能力を使う事ができる『多機能型』。
例えば炎属性であれば自分が思った場所に発火させるか爆発を起こさせる事ができたり、水属性であれば水の流れを変えたり水量を操る事ができる。
ラピスを含めたウィアグラウツやヘルシャフトのはこの部類に含まれる。
一つの事に関して大きく特化している『特化型』。
多機能型と違い多くの能力を発動させる事ができない代わりに、シュッツェの【千里眼】のように遠くを見渡す事や、クレープスの【瞬光】のように目にもとまらぬ早さでの移動が可能となる。
中にはかなり特殊な効果を持つ特化型も存在するのだ。
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魔法、霊術、能力、これらに共通する事があるとすれば、魂の属性に左右されやすいという事だ。
例えば魔力持ちであれば炎属性の魔法を使う場合、魂の属性が同じ炎属性であれば発動しやすいのに対し、魂の属性が水属性の者が炎属性の魔法を発動しようとした場合、本来以下の威力しか出ない。
そのため適性はあっても魂の属性との相性が悪いと魔法も、霊術も発動しにくい。
能力者の場合は多機能型の場合は特定の形が決まっていない事、特化型の場合は予想外の形で発動する場合があるため、しっかりと自分の能力の性質を把握しておく必要がある。
ラピスのように多重属性持ちで合った場合は同時に別の属性を操るのは難しく、異なる属性が組み合わさったような能力もあるためなおさら厄介だ。
もしも魂の属性に左右されないとすれば、神力と呼ばれる力を所持する者だけだろう。
その力の源は生命力であり、神力を持つのはその名の通り神と呼ばれる者達、神族のみ。
神族以外で神力を持つ者がいるとすれば、神の加護を持つ者達か生まれながらに神力を持つ神力持ちだけだ。
何より神力持ちの存在自体少ないため、非常に珍しい事である。
神力持ちであれば魔法、霊術、能力のどれかの適性があれば魂の属性に左右される事なく、力を振るう事ができるだろう。
そしてそれらを使えるかは個人に生命力がいかに強いかで決まるのだ。
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「……といった具合で、オイラ達が使えるスキルが決まってくるんだ。
今の説明で何か質問ある奴は挙手!」
「はいはーい! なんで俺はスキル使われへんのや?
一応珍しい属性なんやろ?」
「確かに、ニヤトは獣人である故人間であるセッシャらより生命力が強いと思うのでごじゃるが…」
スキルに関する説明を聞いた上で何か質問はないかキールが確認すると、ニヤトから何故珍しい魂の属性を持っている自分はスキルが使えないのかという質問が上がった。
その質問を聞いたヒバリも、人間よりも獣人の方が生命力が強くスキルが使えそうに思った。
ニヤトの質問に答えたのは、キール同様にスキルの説明をしていたラピスだ。
「それに対しては種族ごとによってスキルが使える生命力の基準が違うからだ」
「どういう事や?」
「魂の大きさをガラス瓶に、生命力を酒瓶の中身に例えて見ましょう。
人間の魂の大きさを十五㎝の、獣人の魂の大きさを二五㎝のガラス瓶に例えるとすると中身の量がどれだけあるかの問題だ。
人間の場合スキルを使うには生命力が三分の二以上入っていればスキルを使えるのに対し、獣人が同じ量の生命力が入っていたとしても魂の器の大きさが違うから生命力が足りず、スキルを使う事ができないんだ」
「つまりは獣人がスキルを使うには、獣人の魂の器にとっての三分の二以上の生命力が満たされていないと使えないのよ」
「そっか、同じりょうのセイメイリョクが入っていても、ビンの大きさがちがうからどうしても少なくなっちゃうんだ」
種族ごとによって魂の器の大きさと生命力の量が違う事により、スキルを発動できる人物が限られてしまうという事がわかり、全員が納得した。
その説明を受けたニヤトは残念そうに落ち込んでおり、テーブルの上に座っていたタメゴローがニヤトを慰めるように肩を叩いていた。
そして次にレイアがキール達に質問をした。
「さっきバンがまほうの槍を出してたけど、つまりはまりょくがあるって事だろう?
でもさっきみたいに木を生やしたり、加工したりしたって事はりりょくもあるって事になるし、おかしくないか?」
「それなら簡単だ。ごく稀にだが、魔法使いが能力を開花させる事があるんだ。
そういった場合は『理力混じり』って呼ばれるんだが…」
「兄さん何してるんですか⁈」
キールがレイアの質問に答えている途中、悲鳴に近いリースの声が聞こえてきたため全員何事かとリースが見ている方向に視線を向けた。
そこにいたのは焚き火の側にいるバンと、前回の戦い同様に宝石のように固まってしまった焚き火が合った。
それだけではなく、焚き火を中心に半径六十㎝内の植物まで固まっていた。
それをみたヨキ達は、自分達が話し込んでいる間にバンがやらかしたのだとすぐにわかり、それを見たカトレアがすぐさま立ち上がってバンを怒鳴り始めた。
「バ~ン~」
「いやぁ、ハハッ。失敗しちまった…」
「あれ程勝手な事はするなって言うたじゃろうが‼」
「なんで大事な話をしてる時にやらかすんだお前は⁈」
大切な事を話している時にバンがやらかした光景を目の当たりにしたキールは、このまま放置という訳にはいかないためカトレアと共にバンへの説教を開始。
やらかしたバン本人はその場で正座をさせられ、二人から説教を受け顔色を悪くしながら落ち込んだ表情になった。
三度やらかしたバンの姿を見たリースは頭痛を感じながら悩まされ、ディモルフォセカは固まってした植物をどう処分するべきかで悩まされ、ラピスはバンを今後どのように教育していくかで悩まされた。
そんな様子を見ていたヨキ達は、現在の自分達の状況がかなり大変な事になっているという事をなんとなく感じた。
その後、バンはキールから当分理力の弾幕以外の使用を禁止される事となった。




