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第51話 迫る危機への対策

 キールの目に映ったのは、じわじわと範囲を広げていく魔障溜(ましょうた)まり。

 まさか魔障溜まりが現段階で広がっていると思っていなかったキールは、範囲が広がっている魔障溜まりを見て驚いていた。


 キールの記憶にある魔障溜まりは、一か所にたまる魔素(エーテル)が一定量を超えると瘴気を発し人体に悪影響を与えるだけではなく、魔障溜まりから大量の魔物を発生させるスタンピードを引き起こす恐ろしい現象。

 その魔障溜まりがキールの目の前で広がり続けていた。


「どういう事だ? カトレア、魔障溜まりを見てる間何があった?」


「最初に観察し始めた時にゃあ気付かんかったんじゃけど、さっきの話に驚いて一瞬目を離してもっぺん観察したらあの靄の範囲が広がっとったの。

 広がる速度が緩やかじゃったけぇすぐにゃあ気付けんで、こりゃアタシの憶測だけど、最初に見つけた時点で広がり続けとった可能性があるわ」


 魔障溜まりを観察していたカトレアも動揺し切っており、言葉が(なま)ッた状態でキールに説明していた。

 自分達が見つけた時点で魔障溜まりが広がり続けていた可能性がある。


 そう聞いたキールは、他に魔障溜まりについて何か忘れている事はないか必死に思い出そうとした。

 キールの様子を見ていたヨキ達は、予想以上に深刻な事態に発展している事を悟ると同時にこれからどうするつもりかをキールに尋ねた。


「キール君! 早く魔障溜まりをなんとかしないと町にまで広がっちゃうよ!」


「それだけじゃない、このままだとスタンピードだって起こる危険わ。

 スタンピードが起これば私達だけじゃ対処しきれないわ」


「ラピス達も瘴気にやられて碌に動けない状態だぞ⁉」


「魔障溜まりって封印できるかな?」


「キール、魔障溜まりを消す事は出来ないのでごじゃるか?

 そうか消す事はできずとも食い止める方法は?」


「だぁーっ! そんないっぺんに喋んな!

 いっぺんに聞かれたら答えられる事も答えられねぇだろうが⁉」


 混乱するヨキ達に間髪入れず魔障溜まりをどうするべきか聞かれたキールは、たまらず怒鳴り声をあげてヨキ達を黙らせた。

 キールに怒鳴られたヨキ達はそのまま黙り、混乱したままではあるが先程よりも落ち着いた状態になった。

 キールは(樹の礎)の先端を魔障溜まりに向けると、観察を続けるカトレアに声を掛ける。


「カトレア、今から魔障溜まりに効果がある法術を使う。

 もしかすると、あの魔障溜まりは自然発生じゃない可能性がある。

 可能なら一発で消したいが、魔障溜まりが発生した原因がわかっていない以上消せないかもしれない。

 そのまま双眼鏡を使って魔障溜まりの様子を見てくれ」


「発生原因を見つけ出せばええのね?」


「念のため頼む。ピュアラファ・ピュアラファ!」


 キールは一度だけで魔障溜まりが消える事を祈りながら、ピュアラファ・ピュアラファという法術を唱えた。

 槍の先端からチェック・ダ・ロックとは違い緑色に光り輝く蔦ではなく、白い光を放つ木の葉が放出され魔障溜まりに向かって飛んでいく。


 白い光の木の葉は今もなお広がり続ける魔障溜まりを包み込み、白い輝きを放った。

 白い輝きが収まると、魔障溜まりは範囲を狭めていたがキールの願いは空しく、完全に消し去る事は出来なかった。

 魔障溜まりの建材を確認したキールは、顔をゆがめた。


「クソッ! やっぱり原因を叩かねぇと無理か…」


「キール、今の法術は何? 今まで、見た事ない法術、だったけど」


 ラピス達程ではないが、魔障溜まりから発せられる瘴気の悪影響を受けたフィービィーがキールの唱えた法術について尋ねた。

 瘴気の悪影響を受けているせいか、冷や汗は止まらず、途切れ途切れに話すのがやっとの様子だった。


「浄化効果のある法術だ。魔障溜まりと化した魔素は穢れた状態、その汚れを祓う事で魔素を元の状態に戻し、魔障溜まりを消し去る。

 オイラも前世で魔障溜まりを消す時にピュアラファ・ピュアラファを使っていたから、間違いなく消せる筈なんだ」


「筈って、どう見ても消えてねぇじゃんか!」


「でも、効いてないって訳でもなさそうだよ。最初よりも範囲は狭まって見えるし…ってあれ⁉」


 キールのピュアラファ・ピュアラファで魔障溜まりが消えなかった事を指摘するバンだったが、ヨキが魔障溜まりの範囲が狭まった事を伝えた。

 それもつかの間、ヨキが小さくなった魔障溜まりを見ている内に、魔障溜まりが再び広がり始めている事に気付いた。


「キール君、あの魔障溜まりまた広がってるよ⁉」


「嘘だろ、また広がってるのかよ⁉」


「広がって当然だ。あの魔障溜まり、間違いなく自然発生したもんじゃねぇ。

 広がる速度が遅いのが救いだが、自然発生とは別の原因を潰さねぇ限り、広がり続けた挙句スタンピードが起こる危険があるぞ!」


「カトレア、何か見えた?」


 魔障溜まりが広がり続けている事を知ったヨキ達に動揺が走った。

 キールは魔障たりが自然発生ではない事を確信し、一刻も早く原因を突き止めなければスタンピードが起こる事を危惧した。


 ディモルフォセカは、キールの指示のもと魔障溜まりの観察を続けるカトレアに何か見つけられたかを尋ねた。

 魔障溜まりを観察していたカトレアは、双眼鏡を確認しながらある事を伝えた。


「魔障溜まりが狭まった時に、一瞬だけ何か人工物的な物が見えたわ。

 もしかしたらそれが原因かも!」


「本当か! 形とか、何か特徴は⁉」


「一瞬見えただけじゃけぇはっきりとは、でも形は丸っこい感じじゃったわ」


「それなら俺の風で魔障溜まりの靄を吹き飛ばそうか?

 そうすれば見えるだろうし」


「馬鹿野郎そんな事してみろ!

 魔障溜まりが広がったらどうする気だゴラァ!」


 カトレアが魔障溜まりが発生した原因を見つけたが、一瞬見えただけではっきりとみる事ができなかったと証言すると、スズが風で魔障溜まりの靄を吹き飛ばす事を提案してきた。

 だが、それが原因で魔障溜まりが広がる可能性を危惧したキールが顔面蒼白になりながら止めた。

 風で吹き飛ばすと聞いたヨキは、少しの間考えると、カトレアに話し掛けた。


「カトレアさん、靄が張れればはっきり見えますか?」


「えぇ。一分、一分だけでええ。

 一分だけでも晴れてくれりゃあ、十分特徴を把握できる筈よ!」


「わかりました!」


 一分だけでも晴れれば特徴を把握できるとカトレアから聞いたヨキは、キールが経っている場所まで移動する。

 そして杖を魔障溜まりに向け、キールと同じようにピュアラファ・ピュアラファを唱えた。


「ピュアラファ・ピュアラファ!」


 ヨキがピュアラファ・ピュアラファを発動させると、杖から白い輝きを纏った風が吹き起こり、キールが発動させたピュアラファ・ピュアラファ同様に魔障溜まりを包み込む。

 やはり魔障溜まりは範囲を狭めただけで消える事はなかったが、魔障溜まりの靄が所々晴れた。


 スズが起こした風なら魔障溜まりが広がる危険があったが、ピュアラファ・ピュアラファを発動させて起こした自分の風ならば、魔障溜まりが広がる危険はないとヨキは考えたのだ。

 一時的に靄が晴れたのを確認したカトレアは、双眼鏡で魔障溜まりが発生した原因の姿を確認する。


「見えたわ!」


「本当か⁉」


「折れた巨木の枝の下の方! そこに金と緑で装飾された丸い奴があるの!

 多分あれが原因じゃ思うんじゃけど…」


 カトレアはキールに双眼鏡を渡し、原因の特徴と場所を伝える。

 双眼鏡を使い、カトレアから教えられた場所を確認したキールは、迷う溜まりが発生した原因の正体を知り愕然とした。


「あれは、成長の吸盤⁉」


 成長の吸盤と聞いたヨキは、先日のヘルシャフトとフォルシュトレッカーの襲撃の際にバンに着けられた円盤の事を思い出した。

 仲間達もそれを聞いて困惑し始めた。


「それって、バンに着けられて、黒い巨木が枯れた時に紛失したっていう?」


「キール、それ、間違いないの?」


「間違いない、あそこに転がってるのはバンに着けられてた成長の吸盤だ!

 外れた際に遠くに飛んでいったとばかり思ってだが、まさかこんな近くにあったとは…」


 魔障溜まりが発生した原因の正体は、バンがフォルシュトレッカー・シュタインボック(山羊座)によって着けられた成長の吸盤だと知ったキールは、完全に想定外という様子だった。

 バンの生命力の影響で何かしらの変化が起きているのではと危惧し、比較的動ける者達に捜索を依頼していたが、キールが危惧していた事が最悪な形で実現してしまっていたのだ。


「でも、成長の吸盤は確か植物を成長させる効果だった筈なんだけど…。

 それに成長の吸盤を作るのに使われているのは、確か樹属性(ソウル・ウッド)地属性(ソウル・アース)の精霊石だった筈だし」


「バンの生命力の影響で、元々の機能が魔素を異常なまでに集める機能に書き換えられちまったんだ!」


「あ~、これって俺が原因…?」


「間接的にはそうでごじゃるが、それよりも今はあれをどうするかでごじゃる。

 早く対処しなければ、魔障溜まりが広がってしまうでごじゃるぞ!」


 一刻も早く成長の吸盤をどう対処するべきか決めなければならないと主張するヒバリだったが、不用意に近づく事は出来ない。

 ヨキ達が魔障溜まりの原因となった成長の吸盤をどう対処したらいいかで悩んでいると、今まで黙っていたマリが小刻みに震えながらある事を告げた。


「ねぇ、話し合うのもいいけど、この気が可笑しくなりそうな感じが強くなってるのは私の気のせいでいいのよね⁉」


「皆、魔障溜まりの靄の量が増えて広がる速度が早うなっとる!」


 マリが魔障溜まりから発せられる瘴気の気配が強くなっている事を叫ぶように伝えると同時に、カトレアが魔障溜まりの広がる速度が速くなっている事を伝える。

 魔障溜まりがよく見える場所にいたヨキとキールは慌てて確認すると、カトレアが言った通り、先程自分達が確認した時よりも魔障溜まりの広がる速度が上がっていた。


「ほっ本当に広がってる! どうして⁉」


「オイラが予想してたよりも影響してたのか。こうなったら成長の吸盤を破壊するしかねぇ!」


「それなら壊すよりも、一度封印してからの方が安全じゃないの?

 その方が安全に壊せると思うんだけど…」


 魔障溜まりの広がる速度が上がった事により、これ以上放置するのは危険だと判断したキールは、魔障溜まりを発生させている成長の吸盤を破壊する事を決意。

 それを聞いたディモルフォセカは、このまま破壊するよりも、封印してから壊した方が安全なのではないかと提案したが、それに対しキールはある危険性をディモルフォセカに話した。


「あの成長の吸盤はオイラが知ってる代物じゃなくなってる。

 封印した後に壊したら、瘴気が溢れ出て逆にスタンピートが起こるかもしれねぇ」


「それじゃあ壊しても意味ねぇじゃん!」


「だから壊した後に魔障溜まりを完全に消すんだ。

 ヨキが一度魔障溜まりを祓い、その隙にスズが遠距離から成長の吸盤を破壊した後に三人のスピリットシャーマンで残った魔障溜まりを消す!

 最後の一人は万が一に備えて待機。

 この最後の一人はリンク・リンクが使えるケイかディモルフォセカのどっちかに任せたいが、どっちが待機する⁉」


 キールが考えた自分達の安全を確保しつつ、魔障溜まりを発生させている成長の吸盤を破壊する作戦を伝え、リンク・リンクを使う事ができるケイかディモルフォセカのどちらかに万が一に備えて待機しておく事を提案し、どちらが残るかを尋ねる。

 が、そこで全員が予想していなかった事態が発生した。


「ごめん俺とヒバリ無理! 今パニックになってるマリを落ち着かせるので精一杯!」


「落ち着くでごじゃるマリ殿! 今ここで暴れれば、余計に状況が悪化するでごじゃるよ!」


「ふざけんなよ! っていうかなんで混乱してんだよお前の従姉はぁ⁉」


「濃くなった瘴気に耐えられなくなったんだよ!

 マリ、落ち着け、深呼吸!」


 魔障溜まりの広がる速度が上がった事によって、魔障溜まりから発せられている瘴気も濃くなっているらしく、それが原因でマリは一人混乱しながら暴れていた。

 ケイとヒバリは暴れまわるマリを抑えるので精一杯になっていた。


 マリが瘴気の気配で混乱し、暴れまわると思っていなかったキールは想定外の事に頭を抱えてしまった。

 キールが考えた魔障溜まりを消す方法は、ヨキがピュアラファ・ピュアラファで一度魔障溜まりの靄を払い、晴れた隙にスズの風による遠距離攻撃で成長の吸盤を破壊。


最後に三人のスピリットシャーマンで魔障溜まりを消し、最後の一人が万が一に備えて待機するというもの。

 ケイとマリがいない状態ではこの方法を実行する事はできない。

 どうするべきかと悩んでいると、遠くの方から声が聞こえて来た。


「おーい」


「あれ? 声が聞こえなかったか?」


「町の方だわ。てっきり誰も戻ってこないとばかり思ってたけど…」


 ヨキ達を呼ぶ声は町の方から聞こえて来たため、魔障溜まりを見つけるまでの道中に体調を崩し離脱し、その離脱者に付き添う形で街に戻ったウィアグラウツが戻って来るとは思ってもみなかった。

 声が聞こえて来た方向を確認すると、そこにはルドゥウィンズ、セルク、リッツの三人の姿があった。


 そこでヨキ達が一番驚いたのは、セルクが体調を崩している様子が見られなかった事だ。

 瘴気の悪影響を受けて顔色を悪くしているルドゥウィンズとリッツに対し、セルクだけが瘴気の影響を受けていないように走ってきたのだ。


「え、えぇ⁉ セルクさんが凄く元気そうにしてる⁉

 なんで⁉」


「おい、お前。なんでお前だけそんな元気そうにしてるんだ⁉」


「え? なんでって言われても、君達も平気そうにしてるじゃないか」


「ちょっ大丈夫⁉」


「いや、かなり大丈夫では、ないな…」


「ルディ、お前って奴は本当に罪な男…うっぷ、吐きそう…」


 何故自分は瘴気の悪影響を受けていないかのように平然として言うのかを問われたセルクは、ヨキ達が驚いている理由が全く分からなかった。

 一方、ディモルフォセカは瘴気の影響を受けふらついているルドゥウィンズに駆け寄る。


 その隣にいたリッツは口元を抑えながら、吐きそうになるのを必死に抑えていた。

 ここまで来る道中も瘴気が漂っていた筈だが、セルクは兎も角、ルドゥウィンズとリッツがどうやって移動して来たのか気になったカトレアは自分の疑問をぶつけた。


「ちいと待って、彼は兎も角貴方達二人はどがぁしてここまで来たのよ⁉

 ここまでの道中瘴気が充満しとったじゃろう⁉」


「なっなんだって⁇」


「貴方達がどうやって来たのかを知りたがってるのよ。

 瘴気と呼ばれるもののせいで、ラピス達が動けなくなってしまって、けど、貴方達二人も顔色が悪いのにここまで来たから何か理由があるんじゃないかって」


 言葉が訛った状態のカトレアの話をうまく聞き取れず、ルドゥウィンズが困惑しているとディモルフォセカがわかりやすいに通訳した。

 確かにカトレアの言う通り、瘴気の悪影響を受けている筈のルドゥウィンズとリッツがどうやってここまで来たのかというのは全員の疑問だ。

 その疑問に答えたのは、リッツだった。


「それなら、セルクの羽を使ったんだよ。

 セルクの羽を使ったら気持ち悪さが軽減されて、ここまでこれたんだ。

 うっぷ、セルクわりぃ、もう一本羽くれ」


「セルクさん、早速使っちゃったんですか⁉」


「そういえば、セルクの羽は傷だけじゃなく疲れも吹っ飛ばせるんだった」


 リッツからセルクの羽を使って体調不良を紛らわし、魔障溜まりの対策を練っていたヨキ達の元まで来たと聞いたヨキは、忠告を破って羽を使っている事に驚いていた。

 バンに至っては、セルクの羽には傷を治すだけではなく疲れまでいやすほどの治癒力がある事をすっかり忘れていた。

 その事を聞いたキールは、どういう事なのか説明を求めた。


「おい、それはどういう事だ」


「今回の騒動前に自然エネルギーについて相談を受けてたんだよ。

 その際セルクの羽が他のウィアグラウツより治癒力があるって聞いて、ヨキで試してみたら傷だけじゃなく、溜まってた疲れまで吹っ飛んだんだ」


「下手したら、根こそぎ持って行かれるくらいの効果があると思うよ」


「それだけの効果が…。すまん、俺にも一本くれるか?」


 セルクの羽について説明を受けたキールは、何か思いついたのかセルクに羽を一本要求した。

 自分の羽を要求されたセルクは、リッツに羽を渡すために出していた翼から一本羽を抜き取ると、キールに羽を渡した。

 セルクから羽を受け取ったキールは、瘴気の悪影響を受けて冷や汗をかいているフィービィーの耳元に羽を刺した。


「キール、なんでフィービィーの耳元に羽刺したんだ?」


「見て! セルクの羽が!」


「嘘! フィービィーさんの耳元に刺さった途端に水色に光り始めた⁉」


「水色というより、青みのある銀色?」


 セルクの羽から青みのある銀色の光を放ち始めた事に驚くヨキ達。

 セルクの羽から放たれる光は、フィービィーの体全体を包み込むように広がって行き、フィービィーの体から流れていた冷や汗が止まった。

 その様子を確認したキールは、フィービィーに確認を取った。


「フィービィー、気分はどうだ?」


「あれ? さっきまで動くのがつらかったのに、体が軽くなってる…。なんで?」


 瘴気の悪影響を受けていた筈のフィービィーは、不思議そうに手足を動かしながら自分の体を確認する。

 フィービィーの状態が回復したのを見たヨキ達はとても驚いていたが、それを見たキールはある事を確信した。


「この蒼銀の光、間違いない、浄化の力だ!」


「「「浄化の力?」」」


「って確かピュアラファ・ピュアラファの効果だよな?」


 浄化の力と聞いたヨキ達が真っ先に思い浮かべたのは、ヨキとキールが魔障溜まりを消すために使った浄化効果のあるピュアラファ・ピュアラファだ。

 それこそが魔障溜まりを消す唯一の方法だからだ。

 セルクの羽から放たれる光を浄化の力と呼んだキールは、歓喜した。


「これならスピリットシャーマン全員じゃなくても、さっきの作戦が実行できる。

 確実に魔障溜まりを消せる!」


「キール、話の内容がよくわからないけど、ひょっとして何とかなるのか?」


「あぁ、コイツの協力があれば魔障溜まりを確実に消せる。間違いない」


「えっと、話の内容がわからないんだけど、何か問題でもあったのか?」


 先に瘴気の悪影響を受けた年少組やウィアグラウツ達に付き添う形で、一度町に戻っていたルドゥウィンズ、セルク、リッツの三人は、ヨキ達が何の話をしているのかわからないでいた。


 現在起きている魔障溜まりの事を理解してもらうべく、ディモルフォセカが魔障溜まりに着いて詳しく説明すると、三人は顔をしかめた。

 ルドゥウィンに至ってはマリが混乱し暴れまわっており、それをケイとヒバリが二人掛かりで必死に押さえなければならなくなった原因が魔障溜まりだと知って引いていた。


「とりあえず、今回の騒動の原因はわかったが、その魔障溜まりを消すのになぜセルクなんだ?」


「さっきも言ったが、セルクは浄化の力が使える。

 浄化の力っていうのはピュアラファ・ピュアラファと同じ穢れを祓う事ができる。

 だが、浄化の力そのものがかなり特殊で、浄化の力の保持者も数える程しか存在しないし、浄化の力を込めた道具を作る事ができたとしても大量生産は不可能な程だ。

 その代わり、その効果は確かなものだ」


「それってかなり激レアな能力じゃん!」


「私達の体調が回復したのも、この羽が一時的に道具としての役割を担ってくれてるからって事なんだね」


 フィービィーは自分の耳元に刺さっているセルクの羽に触れながら、キールの説明を聞いていた。

 フィービィーが言った通り、ルドゥウィンズとリッツも耳元にセルクの羽を刺している事で瘴気の悪影響を受けなくなっている。

 顔色も先程より良くなっている。


「その通りだ。セルクの持つ浄化の力があれば魔障溜まりを消す事ができる」


「それってつまり…」


「手順、人員を変更してさっきの作戦を実行する!

 まず、ヨキの風で魔障溜まりを消す役割を浄化の力を持つセルクに変更する。

 セルクが浄化の力で一度魔障溜まりを祓った後、スズが遠距離から成長の吸盤を破壊する工程にルドゥウィンズとリッツの補助を加えて攻撃の威力を高める。

 これは一撃で成長の吸盤を破壊する可能性を高めるためだ。

 その後、成長の吸盤が破壊された事で発生するであろう魔障溜まりを、ヨキとオイラがピュアラファ・ピュアラファで完全に消す!

 説明している間に魔障溜まりもかなり広がっている筈だ、予行練習なしでぶっつけ本番だ!」


 広がり続ける魔障溜まりを消し去る希望を見出したキールは、全員に聞こえるように作戦実行を宣言する。

 成長の吸盤を破壊し、魔障溜まりを消すための作戦が幕を開けた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、mystery様。御作を読みました。  シュタインボックの暗躍ぶりが、とどまりませんね!  予めパン君に仕込んでいたとは……。  浄化の力は強力ですが、セルクの羽が群がるように…
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