第49話 魂の属性(エレメント・ソウル)
今回は属性に関しての説明会です
ディモルフォセカ達が見た光景、それはテーブルや壁のあちこちから無数の枝と蔦が生えているという不可解な現象であった。
中にいるヨキ達の殆どは何故か放心状態で硬直しており、ディモルフォセカ達が入ってきた事に気付いていなかった。
「ちょっとこれどういう状況なんですか⁉」
「ちょっとキール、いくら話し合いが進まないからって借りてる小屋の中を滅茶苦茶にするのはどうかと思うわよ」
「否オイラじゃねぇよ! この状況にしたのはバンが犯人だ!」
「はぁ! どう言う事よ! だってバンは普通の人間の筈よ⁉」
ディモルフォセカは目の前で起きている不可解な現象の原因を認めたくなかったのか、すぐ近くにいたキールを犯人だと思い話しかけたが、キール本人はテーブルに触れているバンが原因だと主張した。
犯人だと指摘されたバン本人は、テーブルに触れたまま放心していた。
そこへ住人に知らされてきたケイとマリ、レイアの三人が合流し、小屋の中で起きている不可解な現象に驚いていた。
「うわっ! なんだこりゃ⁉」
「私達が診察したり傷薬を調合してる間に何が起きたの⁉ 誰か木の妖精でも怒らせたの⁉」
「んな訳ねぇだろ! ってかそれ以前になんだその訳の分からねぇ推理は⁉」
「それよりどうするんだよこの状況⁉ この小屋、借りものなんだぞ!」
小屋の中の不可解な現象を見たマリが訳の分からない事を言い出したため、放心していたヒエンは思わず反応し、そうではないと激しく否定した。
何故小屋の中がこうなったのかわからないため、どういった経緯でこのような状況になったのかを把握するべく、ケイは辛うじて意識を保っていたスズに説明を求めた。
「あ~、ヒエンの言い分は何となくわかるけど、とりあえずさ、この状況説明頼めるかスズ?」
「あっあぁ、うん」
*****
―――――約五刻み前
事の発端は、バンがヴァッサーマンの能力について上手く説明したのがきっかけだった。
バンの説明を聞いたヨキ達は、軽くパニック状態に陥っていた。
しかもその説明をしたバンは無意識に説明したらしく、それでカトレアだけじゃなくてラピスとヒエンまで驚いていた。
『だーかーらー、オイラが聞いてるのはいつ、何処で、それだけの知識を手に入れたのかって事だよ!』
『嫌だから本当にピーンと来ただけで勉強した訳じぇねぇよ!』
『いやいやいやいやそれはそれで逆に凄いよ! っていうかある意味天才だよ⁉』
『そうやで! カトレアも上手く説明できんかったんにそんなペラペラ説明できるもんちゃうやろ⁉』
『そうですよ兄さん! 本当の本当にどうしてそんな事できるようになっちゃったんですか⁉』
『だぁあああああああああああっ!
人の話聞けよお前らぁあああああああああっ!』
誰もバンの言い分を聞こうとしない状況、完全に質問責め状態になり、ラピス達も完全に驚いてるせいで止めようともしないで味方はほぼゼロ。
スズは一人ヨキ達を落ち着かせようとするが、質問攻めにあってるバンもバンでぶち切れ気味になっていた。
『皆落ち着け! とりあえず落ち着け!』
『落ち着いてられるか! オイラからすればコイツは出会った当初から酷い馬鹿だ!
いや違う、馬鹿の中の馬鹿だ! いや、もっとだぁ!
自分から巨木操作するとか自殺行為を言い出すとんでもない大馬鹿野郎だぁ!』
『どさくさに紛れて何バンの事ディスってんだよ⁉
それは流石に酷いぞキール!』
『お前ら、いい加減人を馬鹿にするのもやめやがれクソッタレーッ!』
どさくさに紛れてバンをディスったキールの態度を見て、遂に堪忍袋の緒が切れてしまい、ソファーから無理やり起こしてそのままテーブルを思いっきり叩くと同時に、テーブルと壁のあちこちから無数の蔦と枝が生えた。
今までバンを質問攻めにしてたヨキ達もそれを見て流石に黙り込み、実際に起こしたバンも黙り込んだ。
*****
「それで今に至るって事なんだよ」
「私達が知らない間にそんな事があったのね…」
「ラピスさえ放心状態になるくらいのビックリな展開だったんだなぁ。
とりあえず、ヨキ達の意識をこっちに呼び戻さないと。おーい皆戻ってこーい」
「っていうかこの中、どうやって戻すの?」
スズから自分達が知らない間に起きた事の経緯を聞いたケイ達は、未だに放心状態のヨキ達の意識を呼び戻す事にした。
そしてルドゥウィンズ達は、小屋周りに集まっている住人達を避難させていた。
放心状態から戻ったヨキ達は、小屋を破壊する危険性があるという事で急遽外に出て話の続きをする事にした。
「いやー、悪ぃ悪ぃ。まさかあんな事になるとは思ってもいなくて」
「そりゃ誰もあんな事になるとは思わないし、実際に起こしたバンのその軽さもどうかと思うよ?」
「それよりもバン、スズから話を聞いたけど、蔦を生やしたって本当なの?
だって貴方、無能力者な筈でしょう?」
「その筈なんだけど、俺もよくわからないんだよなぁ。
適正だってなかった筈だし…」
ディモルフォセカに指摘されたバンは、自分でも何故蔦を生やす事ができたのかわかっていないようだった。
それはヨキ達も同じで、バンが蔦を生やす事ができたのは何故としか言えなかった。
「俺達みたいに今になって開花したとか?
バン、もう一回蔦って生やせるか?」
「あのなぁ、仮にそうだとしてもそう簡単に…」
ケイは自分やヨキ、マリのように今まで法術が使えなかったがヘルシャフトとの戦いに巻き込まれた事で法術が使えるようになったように、バンも今回の襲撃によって能力が開花したのではないかと考えた。
ケイはバンにもう一度蔦を生やす事は出来るかと尋ねると、キールはケイの考えを否定しようとした時、キールが否定し切る前にバンは足元に落ちていた木の破片を手に取り、しばらく見つめた。
するとバンが手に取った木の破片が光り出し、あっという間に一本の木に成長してしまった。
「あっ、できた」
「できんのかよ! そして何故木が生えるんだ⁉
せめて苗木にしろよ!」
目の前でバンが気を生やした事に驚く仲間達。
突然町中に木が生えたため、町の住人達も外で手当てを受けていたウィアグラウツ達も何事かと再び集まってきた。
バンが簡単に木を生やしてしまったのを見たキールは、思わず頭を抱えた。
場所的には邪魔にならなかったため、ヨキ達は再度移動し話を続ける。
「どっちにしろ、お前らに魂の属性について説明してなかったオイラの監督不行きだからな、ラピス達の知恵も加えて今からお前らに説明してやるよ」
キールの言う魂の属性という聞いた事がない言葉に、首を傾げるヨキ達。
キールやラピス達は全ての生き物には魂の属性というものが存在しており、全部で二四属性存在している事を話し始めた。
魂の属性はソウルと呼ばれており、それらは六つの属性が一つのグループとなり、そのグループはロアと呼ばれている。
そしてロアは全部で四つに分かれて成り立っているのだそうだ。
*****
最初にスピリットシャーマンが主に保持しているライフ・ロア。
これは自然関連の力が働く事で成り立つもので主に炎属性、樹属性、風属性、地属性、氷属性、水属性の六つが存在する。
スピリットシャーマン以外にも様々な種族や魔物が保持している。
次にフリー・ロアと呼ばれるこのロアはラピス曰く、属している属性の様子から日常生活などが関わる事で成り立つ属性のように思われており、粒属性、雷属性、愛属性、美属性、音属性、環属性と呼ばれる六つの属性が存在する。
)を保持しているのは主に人間だそうだ。
三つ目のファンタジア・ロアと呼ばれるこのロアは、魔族と呼ばれる種族やある一定の部族が保持しているらしく、戦属性、盾属性、言属性、魔属性、光属性、闇属性と呼ばれる六つの属性で成り立っている。
ファンタジア・ロアの属性は皆、呼び名に反して戦闘に対して特化している面が強いのだそうだ。
最後のロアはというと、属している属性全てがかなり特殊な性質らしく、現在は調属性、消属性、陽属性の三つしか判明しておらず、残りは現在調査中。
呼び名についても不明なのだそうだ。
*****
「こういう感じでオイラ達の属性は決まっていて、何かしらの力があるかないかは生命力の強さの問題なんだ」
「その生命力って、俺達が法術を使うのに必要な霊力と同じなのか?」
「同じというよりかは個人で使う力の問題だな。
魔術師や魔法士と言った魔法使いなら魔力、法術士や呪術師といった霊術士なら霊力に変わるんだ。
ここら辺の説明はまた今度な」
「フォルシュトレッカー達も能力を使う際は理力と呼ばれる力を使っている。
私達ウィアグラウツやヘルシャフト、現人神と呼ばれる人種も利力を使うが、中には神力と呼ばれる力を使うものもいる。
何より生命力の量で保有する力の量も変わってくる」
キールとラピスから生命力と魂の属性の事を聞いたヨキ達は、自分達が知らなかった魂の属性に深く関心をした。つまりは相手の魂の属性がわかれば何かしらの対処ができるという事になるのだ。
ラピスは一部の属性について意外な説明をし始めた。
「なお、これらの属性の内風、愛、光と未だどのように成り立っているのかわからない第四のロアの属性は希少とされている」
「え? どういう事ですかそれ?」
「精霊石の場合はそれらができる場所の環境によるもので炎属性なら火山地帯でよくできてたりするけど、風属性は風そのものが吹いたり吹かなかったりするせいで上手くできないし、見つけるには風が常に吹いている場所を見つけるしかない。
愛属性は愛がこもった物からできたり、愛そのものが溢れている場所でできたりとで、特定の場所は不定で大きさも量も、他の属性に比べたら一番希少だ。
保持者については属性その物がかなり特殊なのが原因で十割中1割以下の代わりに、保持者の殆どは能力持ちになる」
ラピスの説明中にまたしてもバンが説明を始めたため、ヨキ達はさっきと同じような反応になりかけたのだが、今度はケイがいたためすぐに場が収まった。
ラピスの反応からして、今回の説明も当たっているらしくかなり驚いていた。
バンの説明を聞いていたキールは、試しに属性の上下関係と特徴についてバンに質問してみる事にした。
「バン、今からいう質問について聞くぞ。ライフ・ロアの氷属性の上下関係と特徴は?」
「氷属性の特徴は冷気を操る事によって凍らせたりできる。
植物は寒さに弱いため枯れて、水は氷ると流れが止まってしまうため樹属性と水属性に強い。
だけど風は氷を削りその冷たさを力に変えてしまい、炎の熱さによって溶かされ冷たさを失う事から風属性と炎属性には弱い」
「次にフリー・ロアの粒属性は雷属性と環属性には強い、それとは逆に音属性と愛属性には弱い。
その理由は?」
「粒属性は主に粒子を操る事ができるのが特徴で、粒子を結合したり分解したりできるから、雷はある意味静電気みたいなもので分解は可能、環境というのは天候がつきものになるけど、それらも粒子絡んでいる事が多いから雷属性と環属性に強い。
音属性と愛属性には粒子も形もないから分解不可、だから弱いんだ」
「ファンタジア・ロアの穢れからの浄化と解放される事により跡形もなく消える魔属性、戒律という束縛とも捉えられるため、その言葉も文字も意味をなさなくなる言属性には強いにも関わらず、力強い信念により上回るため攻属性と、強すぎる輝きを抑え込み封じられるため影属性に弱い光属性の特徴は?」
「光属性は光その物を操る事が可能で、勇気と希望の象徴とも取れるため魔を跳ね返し、悪しき力を打ち破る」
キールからの質問を迷う事無く全て答えたバンを見ていたヨキ達はすっかり感心しているのに対し、キールは隣にいるラピスの方を見て反応を伺うと、言葉を交わす事なくラピスはバンが言った事が全てあっていると伝えた。
それを知ったキールは最後の質問として、ウィアグラウツかヘルシャフトでなければ不可能な事とバンに尋ねた。
「最後の質問だ。オイラ達スピリットシャーマンとウィアグラウツ、そしてヨキ以外の今ここにいる連中全員の属性は?」
「えぇ⁉」
「そんなの分かりっこないよ!」
「一体何言ってるのキール君⁉」
「ちょっとキール、それ本気で言ってるの? バンにそんな事できないわよ!」
キールがバンに言った最後の質問、ヨキ、スピリットシャーマン、そしてウィアグラウツ以外の仲間達の属性を言い当てろというものであった。
今の所それが可能なのはウィアグラウツとヘルシャフトだけであって、バンにできる事ではない事はヨキ達でもわかっていた。
しかしバンは仲間達の様子を見て静かに言葉を紡いだ。
「……フィービーは音属性」
「えっ?」
「ニヤトは能力持ちじゃないけど希少属性の陽属性。
タメゴローは戦属性、カトレアとリースは美属性でリースは霊力持ち、ヒバリは環属性、そしてレイアは言属性でヒエンはディルカと同じ炎属性だ」
「お前ら、今バンが言った事はあってるのか⁉」
焦ったようにキールはラピス、ラヴァーズ、スズの三人に今言ったメンバーの属性があっているかを訪ねた。
三人は動揺しながら互いの顔を見合わせると、ヨキ達に答えを告げた。
「バンが言った事は全部合ってる。俺達さえ信じられない程に」
「ぼく、バンさんに言われるまでニヤトさんのエレメント・ソウルはソウル・フレイムだと思ってました」
「本来第四の法則の属性は王族でなければはっきり見分ける事ができないが、バンは全員の属性を言い当てたのだから、間違いはないと思う」
「凄いよバン! 皆の属性を言い当てちゃうなんて!」
バンが間違える事なく仲間達の属性を言い当てた事でキール達はかなり動揺していたが、ヨキはそんな事は気にする事なく純粋にバンを褒めていた。
そんな時、スズは深刻そうな顔でバンの属性について話し始めた。
「それより、バンの魂属性について話しておかないといけない事があるんだ。
昨日バンの生命力で出現した巨木から感じたのは樹属性と魔属性だった」
「待てスズ! それは確かなのか?
お前の間違いという事はないのだろうな⁉」
先日の黒い巨木から感じた生命力から、バンの魂の属性が樹属性と魔属性だと断言するような話し方をしたスズに対し、ラピスはかなり慌てた様子で話に割って入ってきた。
それを見たキールは、これはただ事ではないと感じ取り間髪入れずに二人に理由を尋ねた。
「どういう事だ⁉ それだとまるでバンの属性が違うみたいな喋り方だぞラピス!」
「私自身かなり混乱しているんだ!
今でもバンの属性は以前からのものと変わっていない!」
「なっなんや、大変な事になってきてへんか?」
「実際の所どうなのスズ君!」
「そっそれが、確かに昨日感じたのは樹属性と悪属性だけど今のバンの属性は、雷属性なんだ」
スズの口から、バンの属性は樹属性と悪属性ではなく雷属性だという驚くべき言葉を聞いたヨキ達は、信じられないという様子でかなり動揺していた。
魂の属性は生まれた時から決まっている物であって、何かしらの理由で属性が変わる事などないのだ。
仮に属性が変化したとしても体に異常が現れる筈なのだ。
「雷、属性。俺が?」
「ラヴァーズ、間違いないの?」
「わっわかんない。生命力を感じ取る事は出来ても、属性を識別できるのは十歳にならないとできないから……」
「ラピスはかなり混乱していたからちゃんと感じ取れてなかったんだろうけど、小屋の中で怪奇現象が起こった時もバンの属性が雷属性から樹属性に変わってすぐに戻ったんだ」
「その話しから察するに、バンの属性が変わったのは一時的であって、常にその状態という訳ではないのね?」
「カトレアの言う通りだと思うけど、なんでこんな事になったんだろう?」
突然バンの属性が一時的に別の属性に変わるようになってしまった事がわからないため、スズは思わず考え込んだが、そこでカトレアがある仮説を考えた。
「もしかすると、バンがシュタインボックに着けられたって言う成長の吸盤が原因じゃないかしら?」
「どういう事?」
「それをつけられた途端にバンを捕まえていた木が巨木になったんでしょ?
それだけ影響が出たって事はバンも何かしらの影響を受けていても可笑しくない筈よ」
「それだと説明がつきそうでごじゃるが…」
「そうじゃないかもしれない」
カトレアが言った仮説を聞いた仲間達は納得しそうになったのだが、不意にそれを否定するようにヨキが言葉を紡いだため、ニヤトは何故そのような事が言えるのかをヨキに尋ねた。
ニヤトに聞かれたヨキは、戸惑いながらも仲間達にある事を伝えた。
それはリルがいなくなった日の夜に、知らぬ間にヘルシャフトを全て封印した際周りが凍っていた時の事を話し、もしかするとその時にもバンの属性が変わっていた可能性が高いといったのだ。
「あの時マリはいなかったし、ラピスさんとは距離があったにしろ、その時のバンは何もされてなかったんだ」
「その話しが本当だとすると、バン君の属性は私と同じ氷属性に変化してたって事?」
「多分間違いないと思う。その時の記憶は全く残ってないし僕自身覚えがないから…」
リルがいなくなった日の夜の事に関しては、バン共々記憶の一部が抜け落ちているため、少々不安そうに答えるナキ。
ヨキの話を聞く限りでは、その時にバンの魂の属性が変化した可能性が高いのは確かだ。
「えーっとつまり、バンはラピスと同じ多重属性保持者って事になるのか?」
「おい、それだとスズの話と矛盾しないか? その多重属性保持者って奴なら、とっくに雷属性以外の属性を感知してる筈だろ?」
ヨキの話を聞いたキールは、バンがラピスと同じ多重属性保持者と呼ばれる存在ではないかと推測したのだが、レイアがキールの推測だと矛盾する部分があるのではないかという事を告げた。
その事を聞かされたヨキ達は一部を覗いて妙に納得してしまい、何よりも何故属性が一時的にではあるが、別の属性に変化する現象がバンに起きた理由は誰にも分からない。
バンの魂の属性が可笑しい事が判明してから、ありとあらゆる可能性を考えてはみたものの全くまとまらず、その日は解散しこの話はキールとラピスがまとめて報告する事になった。




