表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/112

第47話 夢と現実の約束と望み

 仲間達の協力のもと、何とか黒い巨木に侵入する事ができたヨキ、リース、キールの三人。

 十数分走り続けると、かなり開けた場所に出た。

 ヨキは実りの街に滞在していた時に出会った青年にかけられたまじないの風だけを頼りに、バンのもとへ向かい、リースとキールもヨキの後に続き走った。


 黒い巨木の中央部に辿り着いたらしく、ヨキは風が吹いている先に目をやるとその先には、黒い巨木の幹に囚われているバンの姿があった。


「見つけたーっ!」


「何! 何処にいるんだあのバカは⁉」


「一番中央の幹に捕まってる! なんか様子は可笑しいけど…」


「早く兄さんを助け出さなくては…っ。兄さん、今助け…」


「リース君危ない!」


 捕らわれているバンを見たリースは、助けに向かおうと走り出す直前にヨキに背後から押し倒された。 

 二人の頭上には先端が鋭く尖った枝が通っていた。

 もしヨキが押し倒していなければ、リースは背後から刺され死んでいたかもしれない。

 キールの方にも先端が尖った枝が襲って来たらしく、ジャンプでかわし枝の上に降り立つとリーフ・リーフを唱え、(樹の礎)の先端から何枚もの葉が一定の方向に向かって飛び出した。


 だがその先には誰もいなかったらしく、代わりにキールの背後にはシュタインボック(山羊座)の姿があり、その手にあった槌がキールに襲い掛かった。

 キールはとっさに槍を頭上に移動させ攻撃を受け止めた。


「へぇ、こんなにも視野が悪いにも関らず俺の攻撃を止められるんだな」


「ハッ! こんな攻撃、朝飯前だっつーのぉ!」


 そういうとキールは見た目とは全く想像がつかない力でシュタインボックの槌を押し返すと、そのまま横に振るようにして槍で攻撃したが、シュタインボックは簡単に攻撃を躱してしまった。

 キールはそのまま追撃してシュタインボックの足止めを試み始めた。


「お前ら! 早く中央の方に行ってあのバカ起こして来い! コイツはオイラがなんとかしてやる!」


「ありがとうキール君!」


「そんな簡単に行かせる訳ねぇだろうが!」


「行かせるんだよ、このクソ野郎が!」


 キールはヨキとリースの二人を先に行かせると、本格的にシュタインボックを足止めし始めた。そんな事はお構いなしにシュタインボックはキールに攻撃を仕掛ける。

 キールのおかげで何とかバンの元まで辿り着く事ができたヨキとリースは、バンに声を掛けたが、バンは無表情で二人の声に答えなかった。


 バンの目には完全に生気が宿っておらず、意識がない状況になっていたのだ。

 そんなバンの様子を見た二人は、バンの胸元についている円盤が原因だと感じ強引にでも外そうとしたが円盤はびくともせず、外れる気配はなかった。


「だめです、このエンバンぜんぜん外れそうにないありません!

 一体どうすればいいんでしょうか…」


「そんな……。バン! しっかりして、バン! バン‼」


 ヨキは諦める事なくバンに呼びかけた。そんな中、バンの意識は暗闇の中にあった。



*****



(………ここは、何処だ? 体、凄く痛いな。それに、なんか寒いし、暗いし。

 …………凄く、怖い)


 バンの意識は、暗闇の中で何故か感じる体中の痛みと原因不明の寒気に加え、何処までも続く闇の中で怯えていた。

 一人暗闇で彷徨いながら出口を探すが、どんなに進んでも暗闇が続くだけで全く出られる気配はなく、その場に(うずくま)り体を震わせた。


 不意に視界の端に小さな明かりが入り、バンはその方向を見た。

 ほんの僅かでありながらも、その先には小さな光が見えた。


(あそこにあるのは光? 出口じゃない感じがするけど、なんか、懐かしい…)


 その光は出口ではないと分かっていながらも、どこか懐かしさを感じたバンは迷う事無くその光に近付いた。

 光に辿り着くと、その光は水晶玉のような大きさをしており、不思議な光景が見えた。

 そこにはソービとしての自分がおり、周りが暗いがソービが土砂に埋もれているという事がわかった。


(これは、いつもの夢?)


『深サ、オヨソ二十五㎞範囲、空間ノ密度八十五,七%。救助及ビ脱出ハ、一〇〇%不可能…』


(不可能………助からないって、事なのか? 俺も、そうなのかもしれない……)


 ソービは冷静に自分の状況を判断し、自分が助かることが不可能だという結論を出したのを見たバンは自分もそうなのだと感じた。

 そんな時に、光の中の光景と暗闇の中から声が聞こえてきた。


『コ…エ…。イエ、コレハ幻聴。コノ状況ガ生ミ出シタニ過ギナイ』


『――――ィ。――――ビ…。―――ビィー…』


「―――ッ―――――ぃ…ょ」


(違ウ、コレハ……幻聴ジャない……?)


 光の中の光景と暗闇の中から僅かに聞こえてくる声を聞き取ったバンは、その声が幻聴ではない事に気付き慌てて周りを見回し始めた。

 そしてその声が自分の上から聞こえてきている事がわかると勢いをつけてジャンプし、声の方へと手を伸ばしたが下から黒い物体がバンの足を捕らえ、下へ下へと引っ張り出した。


 その物体を見たバンは酷く混乱し、振り払おうと暴れるが離れる気配はなく寧ろ黒言う物体はバンの体によりまとわりついていた。

 現実の方ではバンの体を捕らえている幹がバンを取り込もうとしていたため、ヨキとリースは急いで幹を取り除く作業に入った。


「物凄い勢いで、蔦が兄さんを取り込もうとしてる。このままじゃ助けられない…!」


「諦めちゃだめだよリース君! ゲイル・ゲイル! バン、しっかりしてよ! バン‼」


「ヨキー、リース!」


 二人が蔦の排除を行っている最中、1人この状況から戻って黒い巨木の方に向かっていたケイがやってきた。

 ケイはバンが幹から生えてきた蔦に取り込まれかけているのを見て、ヒュドール=オルニスですぐさま蔦を切り刻み始めた。


 だが蔦の本数が減る事はなく、一番太い蔦がケイとリースを吹き飛ばし、勢いを取り戻した蔦はそのままバンを取り込もうとした。

 精神世界のバンも、黒い物体に体のほとんどを取り込まれてしまっており、為す術がない状況に落ちいっていた。

 しかし、そんな状況でも自分を呼ぶ声は聞こえていた。


(この声、なんか、優しくて懐かしい…。そうだ、そうだった俺は)


『声ノ、振動ガ明ラカニ近ヅイテ来テイル?自分ニハワカル、自分ハ』


『「ソォオビィイイイイイイイイイッ/バァアアアアアアアアアンッ!」』


『「自分ハ/俺は、1人ジャナイ…!」』


 そう感じるとバンは最後の力を振り絞り、かろうじて動かす事が出来た右手を上へと伸ばすと、右手にぬくもりを感じた。

 その温もりを決して話さないように握りしめると、そのままバンは引っ張られる感覚を感じた。


 そして光が目に入った途端、一瞬だけ夢の中で出て来る少女の姿が見え、次の瞬間には傷だらけになったヨキの姿が目に入った。

 ヨキに右手はしっかりとバンの右手を掴み、取り込まれないように力いっぱい引っ張っていた。

 バンの意識が戻った事に気が付いたヨキは、喜びの表情を見せた。


「バン!」


「悪ぃ、意識飛ばしてた。で、今どういう状況なんだ?」


「そんな暢気な反応してる場合じゃないよ今ーっ! 物凄く大変な事になってるんだよーっ!」


「へっ? ……だぁあーっ! なんだよこれ⁉ そこらじゅう森じゃねぇか!

 なんか不気味だし」


 意識を取り戻したバンは、自分の周囲が黒い枝木に囲まれている事に驚き、困惑していた。

 自分の意識を失っている間に何が起きたのか混乱して知ると、シュタインボックと戦っているキールと、進行を邪魔する蔦に悪戦苦闘するケイから指摘を受けた。


「何言ってるんだバカ! これお前がやらかしたようなもんだぞ!」


「正確に言うと、その胸についてる成長の吸盤っていうのが原因っぽいぞ!」


「吸盤って、これかーっ! シュタインボックにつけられた変な奴!」


 キールとケイに指摘され、漸く胸につけられている成長の吸盤の存在を思い出したバンは、近くまで来たリースに声をかけ、成長の吸盤を外すように指示を出した。

 だがバンが意識を失っている間に成長の吸盤を外そうと試みていたため、全く外れる気配がないと伝えると今度はヨキがキールに外し方を訪ねた。


 だがキールはシュタインボックと戦っているため、説明する余裕は全くないといった様子であり、ヨキもバンが幹に取り込まれないよう、必死に引っ張る事がやっとだった。

 するとバンは、ある事を思いついた。


「なぁ、今の状況ってこの吸盤のせいで俺も原因に入ってるんだよな?」


「そうらしいけど、あわわわっ!」


「って事は、上手くいけばこの吸盤を通してこの森を操る事ができるって事だよな!」


「「ごめん今なんて言ったの/兄さん今なんて言いました⁉」」


「だから、この森全部を俺が操るんだよ!」


「「はッはぁああああああああっ!?」」


 バンがとんでもない発言をしたため、ヨキとリースは素っ頓狂な声で驚いた。

意識を失っていたという事もあり、バンは自分が今不気味な森にいると思い込んでいるが実際は巨木であるため、明らかに無理があった。


 何よりも簡単に操るといっているがラピス達のように自在に操れる訳ではないため、それを聞いたヨキとリースはバンが言っている事がむちゃくちゃだと思った。

 傍でヒュドール=オルニスを振り回し蔦を切り続けていたケイに至っては、その言葉は全く届いていないようであった。

 ヨキは驚いた様子でバンに話しかけた。


「バン、それ本気で言ってるの⁉ そんなの無茶すぎるよ!

 第一、ラピスさんやスズ君達みたいに自由に操れる訳ない!」


「仮にできたとしても、上手くコントロールできずに逆にひがいが大きくなるかのうせいもあるんですよ⁉」


「確かにそうかもしれねぇ。けど、不思議とできる気がするんだ」


 信じてくれ、というバンを見てリースは困惑していたが、ヨキに至っては信じてみようという気持ちになった。

 共に旅をしてきたからという訳ではないが、これまで何度も窮地を乗り越えてきたのだ。

 だからこそなのか、ヨキはバンの言葉を信じる事が出来た。


「わかった、僕はバンを信じるよ!」


「よっヨキさん⁉」


「でも、言ったからには絶対に成功させてね。町の人や僕達の運命はバンに託すようなものなんだから!」


「ヨキ……あぁ、任せろ!」


 ヨキの信頼を得たバンは自信に満ちた顔で返事をすると、握っていたヨキの右手を放し幹に取り込まれてしまった。

 バンが取り込まれてしまったのを見たリースは、酷く動揺したがヨキは静止して信じて待つように言った。


 幹に取り込まれたバンは巨木の中で落ち着いた様子でいた。

 今でも森だと思い込んでいるらしく、どれほどの広さなのかを把握すべく、バンは全体を感じ取るように集中した。


(この感じは森、じゃない……? これは、馬鹿でかい木⁉

 俺、こんなにデカいの生やしてたのか⁉

 それなら、逆に枯らす事ができるかもしれない、一度約束したからには…「絶対に成功させてみせる!」)


 実際は森では無く巨木にいるのだという事知りながらも、覚悟を決めたバンは吸盤に意識を集中させ始めた。

 バンは数分前にラヴァーズが言っていた生命力を操るという言葉を思い出し、その生命力というのは気のようなものではないかと考えていた。


 その予想通り、成長の吸盤はバンの意識に共鳴するかのように動きを合わせ始めた。

 その事を感じ取ったバンは、本格的に巨木の操作に掛かった。

現実の方ではシュタインボックの足止めをしているキールがやや不利になってきていた。


(やべぇ、エアプラントをかなり消費しちまった。

 アイツの方は花粉の影響はないみたいだし、このままじゃ息ができなくなるのも時間の問題だ)


「おいおいどうした偽英雄さんよぉ。息がだいぶ上がってんじゃねぇか?

 あの長髪も取り込まれちまったみたいだしさっさと死んでくんねぇかぁ!?」


「そう簡単に死ねる訳ねぇだろうが! スマッシュ・スマッシュ! ロング・ロング!」


 法術の連続使用で何とか流れを変えようと試みているが、黒い花粉の影響を受けていないシュタインボックに簡単に躱されてしまい、巨木の蔦を操っていた追撃にあってしまう。

 同じ属性同士だとしても差が徐々に出てきていた。


 そんな時、シュタインボックは自分が操っている蔦の動きが鈍くなっている事に気が付いた。

 強引に動かそうとしたが全く反応を示さず、その事にキールが気付き咄嗟に攻撃を仕掛けたが、シュタインボックは次いで槍の先端を叩いて軌道を変え、攻撃を免れた。

 するとキールは蔦を見てある事に気が付いた。


(蔦が、枯れてる⁉)


 先程までシュタインボックが操っていた蔦がなぜ枯れている事に驚き、周りを確認してみると、元々色が黒い為わかりにくかったが徐々に黒い巨木が枯れ始めている事がわかった。

 その証拠に、ヨキ達を襲っていた蔦も動きを止め、崩れるように枯れ始めていたのだ。


 その光景を見たケイは何が起きているのかわからず、周りをキョロキョロとしながら焦っており、幹の方にいたヨキとリースはバンが成功したのだと確信した様子で安堵していた。

 シュタインボックも葉が散り始めたのを見て、漸く黒い巨木が枯れ始めている事に気が付いた。


「何がどうなってんだよこれ、なんで枯れ始めてんだよ⁉」


「理由はよくわからねぇが、どうやら形勢逆転のようだな」


「ふざけんな! 俺は認めねぇぞ!」


「シュタインボック」


 黒い巨木が枯れ始めている事を信じられずにいるシュタインボックに、背後から声をかける者が現れたため、シュタインボックは後ろを向くとそこにはラピスとウィアグラウツと戦っていた筈のフィシュがいた。

 フィシュの姿を見たケイは何故ここにいるのかと驚いていたが、キールは最初にフィシュが瞬間移動をするのだという説明をしたであろうと文句を言った。


「ヘルシャフト殿達曰く、奴が巨木を支配下に置いたらしい。撤退するという指示が出た」


「あの長髪野郎が⁉」


「これバンの仕業か! すっげーなアイツ!」


「ここも時期に危険だ、レーヴェからの伝言。「駄々をこねずに引き上げろ」、との事だ」


「チっ……わーったよ!」


 フィシュから撤退命令が出たと聞いたシュタインボックは悔しそうな表情をしながら指笛を吹くと、ヨキ達に向かって恨みのこもった眼で睨みながらこう言った。


「これで勝ったと思うなよ、最後に勝つのは俺達だ!」


「はッ! 負け惜しみとはいい度胸だな!」


「あっ! あれリルだ!」


 話に水を差すように、リルが飛んできた事を指摘したケイの言う通り、フィービィーと戦っていたリルがシュタインボックとフィシュのそばまで飛んできていた。

 リルの体は傷だらけになっており、苦戦を強いられていたらしくそのままシュタインボックの隣に降り立つと、シュタインボックに優しく抱き寄せられる形で腕に収まった。


「あぁ、桜色の小鳥ちゃんもこんなにボロボロになっちゃって、帰ったら綺麗に手当てして新しい服を用意してやらないとね。

 フィシュ、先帰るからヴァッサーマンの回収頼むぞ」


「わかった」


「待て! 逃げるな!」


 キールは逃がさないためにアイヴィ・アイヴィで捕えようとしたが、黒い巨木が枯れ始めている影響で生やした蔦は枯れている状態になったしまい動きが鈍く、蔦は瞬間移動を行ったフィシュとリルに運ばれた状態のシュタインボックを捕らえる事は叶わなかった。

 その間にも黒い巨木は次第に枯れて行き、このままでは危険だと悟ったケイはヨキ達に声をかけて地上への脱出を目指しおり始めた。



*****



 そして巨木の中に取り込まれながらも黒い巨木の主導権を勝ち取り、枯らしているバンはただ枯らすだけではなく黒い巨木の花がまき散らした黒い花を吸い取り、空気の洗浄を行っていた。


(いつも夢であの人は言っていた。顔も名前も思い出す事はできないけど、なんとなくわかる)


『いい、ソービ? 全ての生き物には必ず命が宿っているのよ。

 動物にも、虫にも、魚にも、今目に見えている植物だってそう、それは私達にも言える事なの。

 生き物は皆、色んな命を貰って生きていてるの。

 だから、私達はその命を弄ぶような事はしてはダメ、それは全ての命を持つ者達に対しての裏切りになってしまうから。

 貴方はまだ、理解できないかもしれないけど、いつか分かってほしい、いつか教えてあげたい、命の重さと美しさを』


(無理矢理にとはいえ、俺はあの人が望まない事をやらかしちまった。

 あの人の望みを叶えるためにも、この地の環境をあるべき姿に戻してみせる)


 夢に出てきた少女の望みを叶えるため、バンは集中し黒い花粉を全て吸収し終えると、バンは覚悟を決めた。


「はぁあああああああああああああああああっ!(頼む、上手く行ってくれーっ!)」


 バンの望みが叶ったのか、巨木は全体にひびが入り始め、内側から爆発する形で一気に崩れた。



*****



 その様子は周りからもしっかりと確認ができた。無事に黒い巨木から脱出したヨキ達もその様子を見届けていた。


「上手く行った、んだよね? キール」


「みたいだな、問題はバンの奴だ。巨木が枯れ始めていたとはいえ、そのまま放置しちまったからどうなっちまたかわかんねぇし」


「! みなさんあそこ! あそこにいるのって兄さんですよね⁉」


 キールが生やしていた蔦の上で、空中で広がる黒い巨木の破片を見ていたリースは、その中に黒い巨木に取り込まれていたバンが空中に投げ出されている姿を見つけた。

 力を使い果たしたのか、バンはピクリとも動く気配がなかった。

 それは遠くにいたヨキ達にも十分わかった。


「やばいぞ!あの高さから落ちたらマジでやばいのにアイツまた気絶してやがる!」


「「えぇーっ⁉/嘘でしょーっ⁉」」


「助けに行く!」


「はぁ⁉ お前どうやって助けに行く気…」


「ウィンドゥ・ウィンドゥ!」


 ヨキはキールの言葉を無視してそのまま蔦から飛び降りると、ウィンドゥ・ウィンドゥを唱え空中に浮かび上がり、そのまま風を操り、落ちていくバンのもとに向かった。

 しかしそのままの高さを維持できる訳ではなく、次第に降下していた。

それでいてなお、ヨキはバンの方に右手を伸ばしバンの名前を叫んだ。


「バン、起きろぉおおおおおおおおっ!」


 ヨキは叫ぶようにバンの名前を呼ぶと、意識を取り戻したバンがヨキの右手を掴んだ。


「死んでねぇよ、バーカ♪」


「いや僕は起きろって言ったんだよ⁉ 何をどうやったら死ぬなになるの⁉ 

 ってかこんな非常事態にボケかますの本当にやめてよ!」


 すんでの所で意識を取り戻したバンは、しっかりとヨキの右手を掴みいつも通りのボケをかましながら笑って見せた。

 そんなバンに呆れながらも、バンの無事を確認したヨキは安心した。


 しかしそれも束の間、気が抜けた事によってヨキが自分を浮かばせていた風が消えてしまい、ヨキとバンはそのまま地面に向かって再び落下を開始した。


 二人は悲鳴を上げながら落下していたのだが、先に二人の真下まで移動していたキール達が無事に受け止めてくれたおかげで大事には至らなかった。

 こうして町は無事悪夢から解放され、ヨキ達は無事に光のある現実を取り戻す事が出来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、mystery様。御作を読みました。  パン君、大活躍でしたね。まさか浄化までやってのけるなんて……。  敵味方共に森を利用した地形攻撃が大迫力で、緊迫した戦闘シーンに見惚れま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ