第46話 悪夢の巨木
突如襲って来たヘルシャフトとフォルシュトレッカー達と戦う事となったヨキ達だったが、町外れの草原にいたヨキとバン、ラヴァーズの三人の目の前に現れたのは、フォルシュトレッカー・シュタインボックと操られているリルだった。
リルが操られていると知ったバンは激怒しシュタインボックに襲いかかったがいとも簡単に捕まってしまい、更には胸に円盤のようなものを着けられて自分を捕えている樹木が禍々しい姿に変貌した。
それは住民達を避難させているマリ達にもその様子ははっきりとわかっていた。
「ヒエン見て! あそこに大きな木が……!!」
「なんだ、あれは…⁉」
「めちゃくちゃ黒いであのデカい木!」
「なんだよあのムダにくろくてデカい木⁉」
町の住民達を避難させていたマリ達は、突如現れた黒い巨木に驚き、避難していた住民達も何が起きたのかとざわついていた。
マリ達と同じように、町でヘルシャフトとフォルシュトレッカー・レーヴェ、フィシュと戦っているケイ達も黒い大木を見て困惑していた。
《あれって本当に植物なの? 今まで見た樹木や図鑑でも見た記憶は全くないわ!》
「カトレアも知らない事があるの?」
《そりゃ人間誰だって物知りって訳じゃないもの。
それよりあの方角、アタシの記憶が正しければラヴァーズがヨキを追いかけてった方角よ!》
《それだけではないでごじゃる! あそこにはバンもいるでごじゃるよ!》
「ヒバリ、話してる途中で悪いけどアイツ来るぞ!」
突然現れた黒い巨木を気にしながらも、ケイは何処からともなく現れてくるフィシュの攻撃を防ぎながら戦っていた。
だがフィシュには攻撃が一度も当たらず、ケイはフィシュが繰り出す二本の刀を辛うじて躱していたが、完全の躱す事はできず刀の先が掠れる程度に当たっていた。
そして黒い巨木を見たキールは、冷や汗をかきながら危機感を感じていた。
(なんだ、この禍々しい感じは⁉ 物凄く嫌な予感がする…!)
「キール避けて!」
キールは黒い巨木から放たれる禍々しさに気を取られていたため、背後からレーヴェが自分に攻撃しようとしている事に気付かずにいた。
だが、かろうじてフィービィーが反応した事により難を逃れ、自分もまたロング・ロングで攻撃をしたが素早く躱されてしまった。
そんな時に空中でウィアグラウツ達に指示を出しながら戦っていたラピスが声をかけていた。
「リース、キール、フィービィー! お前達はあそこの巨木に向かえ!」
「どうしたんだラピス! お前ら何か感じ取ったのか、あの禍々しい巨木から⁉」
「何かわかったの⁉」
「感じ取ったどころではない!
あの大木からは、バンの生命力以外何も感じ取れないんだ!」
「なっ何ぃい⁉」
「そんな、じゃああのまがまがしい巨木は兄さんだというんですか⁉」
「そうではないだろうが、バンに何かが起こったという事以外は何もわからんままだ!
他の連中も混乱してる!」
ラピスから大木からバンの生命力を感じると聞いた三人は、互いの顔を見て頷くと、すぐさま黒い巨木の方に向かった。
*****
黒い巨木の存在に気付きながらも、一人ケイ達から離れていたスズは、ウィアグラウツ側から被害を多数出し、ラヴァーズを狙撃しようとする謎のフォルシュトレッカーを探していた。
黒い大木が現れる前にラヴァーズが何者かに狙撃されている事を感じたため、謎のフォルシュトレッカーを探しに森の中に入ったのだ。
だが今では禍々しい巨木から感じるバンの膨大な生命力によって、上手く感じ取る事ができないでいた。
「確かこの辺りの筈なんだけど……(それにしてもこんなにバンの生命力って膨大だったかな?それにこの属性は悪属性と樹属性、でもバンの属性は…)」
そんな事を考えていると、スズの耳に破裂音のような音が聞こえて来た。
もしやと思ったスズはその音だけを頼りに破裂音がする場所を探した。
すると少し開けた場所に出て、周りを確認してみるとそこには黒いロングコートと灰色の制服を纏った黒いカチューシャの少女の姿があった。
スズはその少女の姿を見て確信したが、それと同時に驚いた。
少女の髪と瞳、そして肌の色が全てケイと同じ色をしており、スズはまさかと思い、思わず言葉を口にした。
「アクア、シーフ?」
「ん? あれはターゲット⁉
……いえ、半径二十五㎞先で大木が生えるのを確認できているため、こちらはそのそっくりさんという、堕天のようなのですね」
スズの声に気付いた少女は、最初はスズをバンと間違えたが大木を確認してスズが別人だという事を確認した。
スズは自分の周りに風の壁を作り少女からの攻撃を警戒した。
何より一番目立つのは目の前にいる少女よりも背丈のあるライフルを、少女自身が持っていたという事だ。
少女はなんの問題もないという様子でライフルの銃口をスズに向け、何のためらいもなくライフルを撃った。
少女を警戒していたため自分の周りに風の壁を作っていたが、スズの頬に少女が撃ったライフルの銃弾がかすめた。
「えっ、なんで…⁉」
「どうやら驚いているみたいなのですね。
ま、私にはその程度の壁なんか何の障害にもならないのです」
少女の銃弾が風の壁を通り抜け、自分の頬をかすめた事に驚くスズは思わず少女に問いただす。
「君は何者だ? 自分が何もなのかちゃんとわかっているのか⁉」
「理解はしているのです。その答えは、私はスピリットシャーマン、アクアシーフの生まれ変わりだという事なのですよね?」
「! なんでそれを…」
「でも私はそんな類の存在ではないのです」
「⁉」
少女は自分がアクアシーフの生まれ変わりだという事を知っていると分かったスズは、少女は自分がスピリットシャーマンである事を否定するような事を言ったため驚いていた。
それが示すのはスピリットシャーマンとしての使命を放棄していると同時に、少女自身が血に染まっているという事を示していた。
少女は笑いながらライフルの銃口をスズに向けたまま言った。
「私はフォルシュトレッカー・ヴァッサーマン。
十一番目にしてフォルシュトレッカーきってのスナイパーなのです。
それからひと言」
「?」
「私は、マダムなのです」
そういったヴァッサーマンは、知らぬ間にスズの目の前まで接近しており、驚いたスズは大慌てで後ろに後退したが、向けられたライフルの銃弾はいとも簡単に風の壁をすり抜け、スズの左肩を打ち抜いた。
その痛みでスズは作っていた風の風を解除してしまい、急いで近くの木に身を隠して髪を一本ちぎり、傷口に当てて治療し、ヴァッサーマンと戦い始めた。
*****
そして洗脳されたリルと戦っていたヨキは、突然目の前で起こった出来事にただ驚く事しかできないでいた。
「こっこれは、一体何が起きたの? バンはどうなっちゃったの⁉」
「ヨキさーん!」
「ラヴァーズ君! ってうわぁあ~っ!」
頭にタメゴローを乗せたラヴァーズの存在に気付いたヨキだったが、洗脳されたリルが何処からともなく大鎌を取り出して襲いかかって来た。
ヨキは大鎌など一度も見た事がなかったため、恐怖のあまり思わず逃げ出してしまった。
洗脳されたリルは無表情のままに大鎌を振り回し、ヨキを追いかけるがヴァッサーマンからの狙撃がなくなったラヴァーズは一瞬のタイミングでヨキの体を掴み、そのまま空中に避難した。
安心したのか、ヨキはラヴァーズに礼を言った。
「ありがとうラヴァーズ君、おかげで助かったよ」
「ゆだんしないで下さいヨキさん。リルさんだってそらをとぶことはできますし、何より今のもんだいはバンさんです!」
「そうだった! 一体何が起きてるの⁉」
「わかりません。ただバンさんのセイメイリョクが、あのくろいキョボクをちゅうしんにあふれ出しているということしか言えないんです」
「? よくわからないけど、リルさんをなんとかして近付いて、確かめる以外に方法はないって事だね…」
「ニガサナイ…」
「ヨキさんきます!」
ヨキはラヴァーズに抱えられたまま、飛んできたリルとの戦いに応戦する事となった。
*****
シュタインボックによって胸に円盤のような道具を着けられ、自分を捕えていた樹木を現在の禍々しい姿へ変えさせたバンはぐったりとしたまま大木の上部に捕われていた。
バンに円盤を着けさせた張本人であるシュタインボックは、バンを見下ろすように平然と木の枝に座っていた。
「いいねぇ! お前を捕まえるだけに生やした樹木をここまで成長させてくれるとは、中々期待に応えてくれじゃないか♪
ま、こんな気味悪い姿にしたんじゃそんなにセンスなさそうだけどな」
シュタインボックはバンを挑発するような発言をしたが、バン本人は全く反応をしなかった。
その様子を見たシュタインボックは木の枝から飛び降り、遠隔操作で木の蔦を操りバンの顔をあげさせて表情を確認できるようにした。
その瞳には光が宿っておらず、意志を宿していないように見えた。
そんなバンを見て余裕をかましているシュタインボックは、バンの目の前まで歩いて行き、そのまま頭を鷲掴みにした。
その時、シュタインボックに頭を掴まれたバンはそこで始めて反応を見せた。
「………っ!」
「んあ? なんだよお前、起きてたのか?」
「……は……な……せ……」
「あぁ? 言いたい事があるならはっきりと言えよ?」
「頭の、手、離せ……!」
かろうじて意識を保っていたバンは、自分の頭を掴んでいるシュタインボックに睨みつけ、精一杯の声で言い放った。
そんなバンの態度が気に入らなかったのか、シュタインボックはバンの顔を上げさせている蔦を操り、バンの首を締めあげた。
首を絞められたバンは体が動かせない状態のまま苦痛の表情をしていた。
シュタインボックは不機嫌そうな表情をしており、バンの頭を掴む手に力を込めた。
「お前、その態度ムカつくんだよ。自分の今の立場わかってんのか? あぁ?」
「………ぁ……ぅ………」
「このまま終わるんじゃつまんねぇや、主にはお前の様子がやばかったら中止しろって言われてるけど、その様子じゃまだ平気そうだしこのまま続行な」
「や……め……あぁああああああああああああああああああっ!!!!?」
シュタインボックはバンの頭から手を離すと、そのまま近くの幹に手を触れてそのまま遠隔操作を行った。
バンは自分の中から力が強引に吸い取られるような感覚に襲われ、悲痛な悲鳴を上げなが再びもがき苦しみ始めた。
シュタインボックが操作している大木は更に巨大化していき、遂には巨木となって枝一面に蕾を付け始め、次々と花を咲かせ始めた。
そしてその花は一つ一つから花粉を噴き出し、辺り一面にまき散らし始めた。
辺りは黒い花粉で一面黒一色になり、視界が悪くなり始めた。
被害が及ばぬようベール・ベールで町の住人達を守っているマリは、不気味な光景に恐怖していた。
植物自体枯れるような事はなかったが森に棲んでいた野生動物達が全ていなくなっており、確実に人体にも影響があると思った。
ベール・ベールで作った氷のドーム中にいたマリは、町の方で戦っているヨキ達が心配で仕方がなかった。
そんなマリの様子に気付いたのか、レイアがマリに話しかけてきた。
「どうしたんだよマリ? なんか心配なことでもあるのか?」
「レイア、 ヨキ達が心配なの。まだ昼間な筈なのに周りが暗くなるなんて、普通じゃありえない事なのに…」
「ヘルシャフトとフォル何とかの仕業なんだろ? ヨキ達があの変な巨木を何とかしてくれる筈さ」
「そいつはどうだかな」
マリとレイアが話をしている途中、ヒエンが話に入ってきた。
ヒエンの話し方は何か意味ありげそうな感じがしていたため、二人はどういう事なのか一度お互いの顔を合わせると、ヒエンの方を見た。
「一体どういうことだよヒエン?」
「敵連中が特殊なのは知っていたが、あの巨木をこんな短時間で生やせるものか?
最低でも五分は掛かる筈だろ」
「私はトューランドットだった時の記憶が曖昧でわからないわ。
ニヤトに聞いてみたらどうかな?」
「ニヤト、敵があの巨木を生やすならどれくらいかかると思う?」
「何度か植物を操る敵に接触した事はあるけど、皆蔦とかの方が多かったな。
それにそこら辺に生えとる木を盾に生やしたりもしてたけど、大体三十秒位やった筈やで?」
ニヤトの話を聞いた三人は、少し考え計算すると町などに生えている木などなら一本だけでも三十秒も掛かるとなると、それを一気に五本生やすには1分五十秒掛かるという事になる。
つまり、突然生えた巨木が現在の大きさになるまでにはかなりの時間を費やす事になると理解した。
それを知ったマリはますます戦っているヨキ達が心配になってきた。
マリの不安は見事に的中した。
*****
「なんだこれ⁉ 黒い霧⁉」
《あの木、さっきよりもでかくなってるでごじゃるよ!》
「嘘だろ⁉ …うっ⁉」
《ケイ! どうしたでごじゃるか⁉》
黒い花粉が辺りに漂い始めた途端、ケイが苦しそうな表情をしたためヒュドール=オルニスの中にいたヒバリは心配そうにケイに声をかけた。
だがそれはケイだけに限らず、傍にいたディモルフォセカも苦しみ始めた。
「はァはぁ……うぅ!」
《ディモルフォセカ! どうしたの⁉》
「きっ急に、息が……できないっ!」
ディモルフォセカは苦しそうな様子で喉に手をあて、必死に息を吸おうとした。
その様子を見ていたヘルシャフトやウィアグラウツ達は自分の能力を駆使しながら自分や仲間の身を守り始めた。
ケイとディモルフォセカは黒い花粉によって呼吸困難に陥り、苦しむケイの姿を見ていたヒバリはヒュドール=オルニスの中から声をかけた。
《大丈夫でごじゃるか⁉ 今礎から出て安全な所に》
「出て来るな! 息が……できなくなるぞ!」
「もう…ダメ…っ!」
呼吸困難に陥っていたディモルフォセカは耐え切れず、遂に倒れてしまった。
ディモルフォセカが倒れた直後リンク・リンクが解けトーチの中にいたカトレアが出て来た。
トーチから完全に出る前に息を大きく吸い、なるべく黒い花粉を吸わないように気を付けながらディモルフォセカに話しかけた。
「ディモルフォセカ、しっかりして!(空気中に漂っている花粉の密度が濃すぎる…。これじゃ呼吸なんてできる訳ない!)」
カトレアは外の様子を直で体験し、空気中の花粉の密度があまりにも濃いため呼吸がうまくできない事がすぐに分かった。
安全な場所まで運ぼうにも見渡す限り黒い花粉で覆われている為、何処にも避難する事ができない状況であったのだ。
しかし立ち往生している間にもカトレア自身にも限界が来てしまう。
すると空中で戦っていたウィアグラウツの内二人が急降下して来たと思いきや、一人ずつカトレアと呼吸困難に陥っていたディモルフォセカを抱えると、一気に急上昇して花粉が及ばない空中に出た。
「大丈夫か⁉ しっかりしろ、おいっ!」
「……っげほっげほっ……ぅぅ。あり……がとう」
呼吸困難から脱したディモルフォセカは、自分を助け出したウィアグラウツの男に感謝を伝えるとそのまま気絶してしまった。
それからすぐ後にカトレアとディモルフォセカ達を助けたウィアグラウツ同様に別のウィアグラウツに抱えられる形でケイも避難してきた。
余程我慢していたのかケイは荒々しい呼吸で酸素を必死に吸い込んでいると、先に避難していたカトレアとカトレアを抱えているウィアグラウツが何か気付き、驚いた表情をしていた。
二人の様子に気付いたディモルフォセカを抱えているウィアグラウツはカトレアを抱えているウィアグラウツに話しかけた。
「リッツ、どうしたんだ?」
「ルドゥウィン、セルク! 後ろだ、後ろ!」
「後ろ? ……何もいないぞ」
「違う違うそうじゃない! その下! 巨木の方!」
「巨木がどうし…」
「なっなんじゃありゃぁあああああっ⁉」
セルクというケイを抱えているウィアグラウツが話している途中、ケイが突然大声を上げたため、セルクとルドゥウィンと呼ばれたウィアグラウツはカトレアが言ったように黒い巨木がある方を見ると、信じられない光景が目に入った。
黒い花粉をまき散らしている黒い禍々しい巨木が止まる事なく、まだ成長を続けていたのだ。
その影響により黒い花粉が広がる範囲が広がっていたのだ。
「どうなってるんだ⁉ まだでかくなってるぞ!」
「何を糧にしてるかまでは把握できないけど、成長の吸盤が使われてる可能性があるよ⁉」
「だけどあの巨木からはアタシの仲間の生命力しか感じんってラピスが言うとったわ! その糧ってまさかバンの事じゃ⁉」
「どっちにしてもこのままじゃやばいぞ!
俺もう一回地上に降りて巨木の方に行ってくる!」
「ちょっ危険過ぎるんですけど⁉ 息かもできないだろう君は!」
《危険すぎるでごじゃるよケイ! どうするつもりでごじゃるか⁉》
「このままほっといたら他の町にも被害が広がるだけだ!
ベール・ベール!」
ヒバリの制止も聞かずにケイは、自分の頭部全体を覆うようにシャボン玉上のベール・ベールを作ると、セルクの腕の中から抜けだしてそのまま地上に向けて落下を開始した。
高度はかなりあったため、ウォーター・ウォーターでクッションの代わりとなる水の塊を作り、その真上に着地した。
それからすぐに黒い巨木の方に向かおうとしたが、一時避難する前まで戦っていたフィシュの攻撃にあい、とっさに防いだ。
だがそれだけでは済まされず、完全に気配を消していたレーヴェが背後から襲ってきた。
間一髪の所で指揮をウィアグラウツ達の指揮をしていたラピスと、戦い慣れているウィアグラウツが助けに入ってくれた。
「助かったよラピス!」
「私達に構うな! ここは任せて早く巨木の方に行け!」
「ありがとう!」
そういうとケイは急いで黒い巨木の方に向かった。
*****
町中が黒い花粉で覆われる中、ラヴァーズの力を借りながら空中で洗脳されているリルと戦っているヨキは、呼吸困難に陥らないようにベール・ベールを全身に纏い黒い花粉を跳ね返していた。
「物凄い花粉の量だ。今まで一度も見た事ない…」
「まわりがまっくらになってて、ぜんぜん見えないですね。
って右からこうげきがーっ!」
黒い花粉により視野が狭まっている状態で、ラヴァーズの探知能力を頼りになんとかリルの攻撃を防ぐが、空中での戦いに不慣れなせいで何度かかすり傷程度の攻撃を受けていた。
そんな時、自分達の周りを囲う様にして巨大な蔦が生えてきた事に驚くと、リルに向かって何かが飛んできた。
その正体は、ラピスに言われ自分達のもとに来たフィービィーだった。
そして下の方からヨキとラヴァーズの名前を呼ぶリースの声が聞こえてきた。
「ヨキさーん、ラヴァーズくーん、ぶじですかー⁉」
「僕達は平気だよー! リース君達こそ大丈夫なのー⁉」
「エアプラントがあるから平気だ! んな事よりも、そこにいるのリルだよな? 様子からして操られてんだな⁉」
「ここはアタシに任せて、早く巨木の方に行って! キールとリースも早く!」
「ありがとうございます! ラヴァーズ君もタメゴローを連れて、早く避難して!」
ラヴァーズにタメゴローを連れて避難するように言うと、ヨキは杖の羽の部分をうまく使い、成長し続けている蔦に引っ掛けるとそのまま上へと上昇し黒い巨木の方に向かった。
地上にいたリーとキールの二人も蔦や葉の部分に乗り巨木の方を目指した。
フィービィーは一人その場に残り成長し続ける蔦を利用しながらリルに応戦し始めた。
蔦の先端は上手く黒い巨木の枝部分の枝を捕らえ、三人はなんとか黒い巨木の上層部に辿り着く事に成功した。
「ここが巨木の上層部、でいいんだよね?」
「上層部っちゃ上層部だが、問題のバンと主犯?のシュタインボックが何処にいるかが問題だな」
「二人共上を見て下さい。まだジョウソウブがあるみたいですよ」
「この感じだと、最上層部か中央部にいる可能性が高いな。
こうなると登り長田探すしかないな…」
バンとシュタインボックが最上層部か中央部、どちらかにいると考えたキールは指示を出すと、そのまま先に進み始めた。
二人も遅れながらもキールの後を追う様にして先に進み始めた。
成長を進める黒い巨木の枝の上を何とか移動する中、ヨキは僅かに風を感じ、”風の吹いている先”に目を向けた。
以前見知らぬ男にチェーン・ロックという、同じまじないが掛かった者同士の居場所がわかるという、まじないの事を思い出したヨキは風の導きに従い1人上るのをやめてそのまままっすぐに進み始めた。
そんなヨキに気付いたリースはキールに伝えるとヨキに声をかけた。
「ヨキさんどこに行くんですか⁉」
「バンはこの先にいる、中央の方にいるんだ!」
「本当か⁉ って勝手に先に進むなヨキ! ちょっと待ちやがれ!」
ヨキはバンが中央部の方にいると確信し、1人中央部に向かって走り出したため、リースとキールもヨキの後を追うようにして中央部に向かった。
この悪夢から逃れられるかは、ヨキ達三人に委ねられた。




