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第39話 希望を求めて

 ヘルシャフトを次々襲い、その命を奪っていったスピリットシャーマン、アイスアサシン、であるトゥーランドットの正体はヨキとケイが探し続けていた少女、マリだった。

 お前達の事など最初から知らない、そう二人に冷たく告げたマリはその場を去って行った。


 ヨキはショックのあまりその場で泣き出してしまい、予想外の事に呆然とするキール達だった。

ヨキがどれだけマリの事を心配していたかを知っているバンとリースは、マリとトゥーランドットが同一人物であると最初から知っていたヒエンを問い詰め始めた。


「おいヒエン! これは一体どういう事だ⁉ トゥーランドットがマリだって事、知っていたのか⁉」


「どういう事が説明してもらいます。言いのがれはできませんよ」


 バンとリースはヨキから聞いていたマリの人物像とトゥーランドットとの人物像があまりにもかけ離れているため、共に行動していたヒエンとレイアの二人ならばマリの身に何が起きたのか知っていると確信していた。


 バンに胸倉を掴まれながらも無言を貫くヒエン。

 今にもバンがヒエンに殴り掛かり、喧嘩が始まるのではないかという空気が流れていたが、キール達もまだ動揺し切っていたため、止める余裕がない。

 その空気を断ち切ったのは意外にもケイだった。


「皆落ち着け。マリを追いかけるにしろ説得するにしろ、マリがああなった原因がわからないんじゃなんの対策もとれない。

 バンもヒエンから手を放す。二人がマリを追いかけずにここにいるって事は、原因を教えてくれるって事だろう?」


 ヨキと同じようにトゥーランドットの正体がマリであり、自分とヨキの事を最初から知らないと言われ、ヨキ同様にショックを受けた筈なのに、冷静にその場を制すケイの姿に呆気に取られる仲間達。


「ケッケイ、お前、なんでそんな落ち着いとるんや?」


「落ち着いてるように見えるなら勘違いだよ。内心動揺してる。平静を装ってないとやってらんないよ」


「そっそうか…」


「それよりもキールはいい加減レイアを開放してやりなよ。ずっとその体制は可哀想すぎるだろう」


「あー、まぁ、そうだな。うん」


 ニヤトに何故冷静なのか聞かれたケイは、内心動揺している事を伝えた。

 実際の所、動揺しているというのは本当で青白い肌がいつも以上に青白くなっていたが、それでもこのまま訳もわからずヒエンとレイアの二人を責めるよりも、落ち着いて何をするべきなのか考えてから行動を起こした方がより良い結果に繋がると考えたのだろう。


 ケイはキールにアイヴィ・アイヴィで捕まったままのレイアを開放するようキールに言うと、そのまま泣き続けるヨキを慰め始めた。


「ヨキ、泣きたい気持ちはよくわかる。だけど今はヒエンとレイアから話を聞いて、次に何をするべきか考えた方が良いと思うんだ」


「ヒック、エック、……ケイ˝ィ、だけど…」


「落ち着いて、深呼吸。さっきも言ったけどマリがどうしてああなったのか、それがわからないんじゃマリを戻せない。

 前にヒエンに言われてたんだろう? 俺を探したらマリの事を教えてくれるって。ヒエンとレイアがいる今、二人から話を聞くべきだ」


 ケイは落ち着いてヨキを慰めながら、ヒエンとレイアから話を聞くべきだと説得し、二人から話を聞きやすい状態にする。

 暫くの間泣いていたヨキだったが、ケイに慰められた事で落ち着きを取り戻し、嗚咽声をあげながらもヨキはヒエンの方を見た。


「グスン、ヒエン君、教えて。マリに、何が起きたのか…」


「……わかった」


 目の周りを赤く腫らしながらも、自分をまっすぐ見つめるヨキに答え、以前の約束通り、マリが何故トゥーランドットになってしまったのかを話し始めた。



*****



 ヒエンとレイアの二人がマリとであったのは、意外な事にケイ達がアーカイブの手掛かりを求め向かい、フォルシュトレッカー・ツヴィリンゲ(双子座)と戦った水の社があるアクアシーフの集落跡だった場所だった。


 暫く湖の近くで休んでいたところ、湖に繋がる川から流木に捕まったまま意識を失った状態で流れてきたマリを見つけたそうだ。

 そのまま放置という訳にもいかず、川から引き揚げて意識を取り戻すまでの間アクアシーフの集落跡にとどまり、マリが意識を取り戻したのはその日の真夜中だった。


『ん、ん~。あら? ここは……?』


『目が覚めたみたいだな』


『だいじょうぶか? どこか痛い所とか、気分は悪くないか?』


『貴方達、誰? ここは何処なの?』


 意識を取り戻したマリは声を掛けてきたヒエンとレイアに気付き、自分が今いるのは恵みの村がある山の中ではないという事を理解したのか、混乱しているようだった。

 レイアが混乱するマリに、今いるのがエターナル大陸のガイア地方に位置する、シャンテ国にある湖だと教えると、マリは自分の身に起きた事を思い出し、目の前にいる二人にヨキとケイの事を尋ねた。


『ねぇ、私の近くに黒髪に黄色目の男の子と、肌の青白い水色の髪と瞳の男の子はいなかった?

 私と一緒にいた筈なの!』


『? お前以外に誰も流れて来なかったぞ?』


『嘘、もしかしてあの時にはぐれたの…? だとしたら二人は何処に飛ばされて…』


 レイアから自分以外に誰も見ていないという証言を聞いたマリは、完全にヨキとケイの二人と離れ離れになってしまった事に気付くと、一人でブツブツと呟きながら考え始めた。

 一人呟きながら考え始めたマリの姿を見て訳アリだという事はわかったが、マリが呟いている内容に至っては何を言っているのかわからず理解できなかったため、痺れを切らしたヒエンがマリに何があったのか説明を求めた。


 ヒエンに説明を求められたマリは、恵みの村で起きたヘルシャフトによる村の占拠、避難した聖なる祠で謎の竜巻が起きた事、その竜巻のせいで幼馴染のヨキと従弟であるケイと離れ離れになってしまった事、そして竜巻から解放された先が流れの強い川の上でそのまま落ちてしまい、近くに流れていた流木にしがみついていた事、自分の身に起きた事全てを可能な限り分かりやすく説明した。


 マリの話を聞いたヒエンとレイアは最初こそ信じられなかったが、その時既にヘルシャフトの仕業と思える事件があちこちで起きているという噂を耳にしていたため、マリの話を信じる事にした。

 とはいえ山の中にある村で育ったため世間に疎いマリを連れて旅をするのは危険と考え、安全な場所まで送り届けるまでの間、ともに旅をする事に決めた。

 それを聞いたマリは笑顔で二人にありがとうと伝えると、レイアは呆れたようにマリに忠告した。


『あのなぁ。言い出しっぺの僕が言うのもあれだけど、初対面の相手をそうやすやすと信じるのは良くないぞ。

 もしも僕らがワルモノだったらどうするんだよ?』


『二人が悪い人だなんてありえないわ。もしそうだったら私の事、助けただけじゃなく看病までしてくれる訳ないもの』


 マリはそう言うと笑顔で答えた。マリのその言葉を聞いた二人は、思わず呆れてしまった。

 それから安全な場所まで送り届けるまでの間、マリとの旅が始まった。

 山育ちという事もあり、マリは旅の道中で食料となる野草や木の実、簡易的な罠を作って魚や動物などを捕まえては捌き、ヒエンとレイアの代わりに食事など作ったりと雑用をこなしていた。

 レイア曰く、一番驚いたのはマリがためらう事なく小動物を解体していた事だった。


『マリ! なんでそんなちゅうちょなく動物を解体できるんだよ⁉』


『え? だって解体しないと食べるに食べられないじゃない。

 町とかで売ってるお肉も解体されたものばかりだし、私達は命を貰って生きているような物よ?』


『俺かも言わせてもらうが、お前くらいの女が普通に動物を捌ける方が可笑しい。

 レイアもその事を指摘しているんだ』


『それだったら恵みの村で猟師さんからお肉を貰う時に時々手伝ってたのよ。

 でも、言われてみたら私や猟師さんの親戚の子達以外の女の子はあまり手伝ってなかったわね…』


 ヒエンとレイアに指摘されたマリは、恵みの村での自分と同じくらいの村民の少女達が誰も手伝いに来ていなかった状況を思い出し、その点について疑問が生まれていたようだ。

 ヒエンはマリの思考がどうなっているのかわからなかった。


『お前の思考はどうなってるんだ…?』


『ん~、ちょっぴり普通じゃない、かも?』


『十分普通じゃねぇよ』


 そんなやり取りをしながらもマリは楽しそうに話をしていた。

 それから一週間程経過し、もう少しでアクアシーフの集落跡から一番近い町に辿り着く寸前で三人はヘルシャフトに襲われた。

 そのヘルシャフトは光を操る事ができ、ヒエンとレイアを無視してマリに襲い掛かったのだそうだ。


『俺達を無視して、真っ先にアイツの方に向かった⁉』


『マリ、危ない!』


『嘘でしょう、こっちに来た⁉ キャアッ!』


 驚いたマリはとっさに自分に襲い掛かったヘルシャフトに向かってナイフを投げつけ、ヘルシャフトが怯んだ隙にヒエンとレイアが反撃して追い払う事に成功した。

 そこで芽生えたのは、何故マリが優先的に狙われたのかという疑問だった。

 ヘルシャフトのその行動はマリ一人を狙ったものだという事は十分理解する事ができた。


 この時点で三人はまだスピリットシャーマンの存在を知らない状態だったため、何故マリが狙われたのかわからなかった。

 ヘルシャフトに狙われている以上、町に送り届ける事ができてもその先でヘルシャフトに狙われればどこも安全ではないと考え、二人はそのままマリを連れて旅を続けると同時に、ヘルシャフトとマリに関する調査を始める事にした。


 それからというもの、ヨキとケイを探しながらヘルシャフトとマリに関係がありそうな場所を調べては、ヘルシャフトに襲われては追い払うの繰り返しの旅を続けていた。

 その道中で事あるごとにマリが抱き着いてくるため、特にヒエンはかなり困らせていたようだ。

 そして旅を続けるうち、マリの生まれ故郷の町に辿り着いたそうだ。


『懐かしいわ。よくお父さんとお母さんと一緒に手を繋いで歩いてたっけ』


『……だいじょうぶか、マリ?』


『大丈夫よ、レイア。心配しないで』


 心配そうに自分を見るレイアに気付いたマリは、レイアを安心させるように抱きしめた。

 笑顔で大丈夫といっていても、その笑顔には何処かつらそうな雰囲気が漂っていたため、本当はつらいのだという事は、一目見ただけで分かった。

 マリの故郷の図書館でマリの両親が亡くなる原因となった事故の資料を見ている内に、マリが何かに気付いた。


『あれ…この記事、何か変?』


『どうしたんだ? 何かわかったのか?』


『この記事、私が前に話してた音の事が書かれてないの。事故が起こる前、確かに聞こえてたの。

 かなり大きかったし、お母さんも聞いてたみたいだから、周りにいた人達も聞こえてた筈なのに、どうしてあの音の事が書かれていないの?』


『それだけはっきり聞こえていたにも関わらず、お前とお前の母親以外誰も聞いていなかっていうのか?』


 事故の直前、マリが母親と共に聞いたという音について書かれていないという事を知ったマリは、困惑していた。

 当時のマリは幼さ(ゆえ)に両親を亡くした事がショックで、周りの状況をはっきりと覚えておらず、自分と母親以外に音を聞いた誰かがいたかどうかわからなかった。



 マリが聞いたという音をマリの母親も聞いていたと聞いたヒエンは、母親の方を調べればマリがヘルシャフトに狙われている理由がわかるかもしれないと判断し、三人はマリの母親の軌跡を辿り始めた。


 その際マリは、ヘルシャフトに狙われている以上、ヨキとケイを見つける事ができたとしても二人を危険な目に合わせるかもしれないと考え、事故の真相がわかるまでヨキとケイを見つけたとしても会わないと誓ったそうだ。

 そしてウィンディアに立ち寄った際、偶然にもバン達と親しく話すヨキを見つけたのだ。


『ヨキ、無事だったのね…よかった』


 ヨキの無事な姿を見たマリは安心していたが、すぐにでも駆け寄り、抱きしめたいという衝動を抑え、自分の思いを押し殺しているように見えた。

 その様子を見てマリの心境に気付いたレイアが、マリに声を掛けた。


『行かなくていいのか? 会いたかった奴なんだろ?』


『いいの、今はまだ。もう決めちゃったのよ、あの真相を確かめるまではケイとヨキには会わないって』


『ふ~ん、こうかいしても僕は知らないからな』


 その後ヒエンに急かされてウィンディアを後にし、マリの母親の事を調べる内にマリの母親がアーカイブのパーツを探していた事が判明。

 以前ケイ達がマリとツヴィリンゲの手掛かりを求め立ち寄った町で氷の古文書を持っていた医者の元に辿り着いた。


 医者は一目見てマリがアイスアサシンだと確信し、マリに氷の古文書を渡した。

 その証拠にマリは氷の古文書を操作する事ができ、氷の古文書を使ってマリが知ったのは、マリの母親は白い髪を持たない色付きのヘルシャフトであり、元はアーカイブのパーツを探す任務を受けて事、マリの父親と恋に落ちた事で堕天した事、二人の間に生まれたのがアイスアサシンである娘のマリ。


 その結果、ヘルシャフトの誓いを破るだけではなくこの世に新たなスピリットシャーマンを産んだ事により、マリの両親はヘルシャフトによって事故に見せかけられ暗殺された。


『殺された? ヘルシャフトに⁇ お父さんと、お母さんが…!!?』


『しっかりしろ。元々お前の親の死には不審点があったんだ、誰かに仕組まれたものだとしても可笑しくなかった筈だ』


『おい、ヒエン。マリの様子、おかしくないか…?』


『あぁ? ……⁉ おい、しっかりしろ! 聞こえてるか⁉』


 マリの様子が可笑しい事をレイアに指摘されたヒエンはイラつきながら確認すると、マリの表情は今まで見た事もない、無表情になっていたのだ。

 流石のヒエンもこれは普通ではないと思い、怒鳴り声に近い形でマリに声を掛けるが、マリ本人はヒエンの声が聞こえていなかった。


『殺された、お父さん、お母さん、ヘル、シャフト…!』


 両親がヘルシャフトに殺された、その真実を知ったマリは氷の古文書を持ったままヒエンとレイアを置いて飛び出してしまった。

 自分達を置いて飛び出していったマリを見たヒエンとレイアは、このままでは取り返しがつかなくなると思い急いでマリの後を追いかけた。

 だが、マリは信じられないような速さで走り、必死に走っても追いつける気がしなかった。


『マリ! マリ、待て! 何処に行くんだよ!』


『止まれ! 行くな! マリ‼』


 ヒエンとレイアが必死にマリを呼び止めるも、マリはどんどん走る速度を上げて行き、津に姿を見失ってしまった。

 二人の目の前に残ったのは、母親の形見として身に着けていた特殊な形をした赤い髪飾りだけだった。



*****



「その後、俺達がマリを見つけた時には知っての通りだ」


 ヒエンとレイアの話を聞いたヨキ達は、マリの両親がヘルシャフトに殺された原因がマリの母親が堕天だった事と、マリが生まれた事だった事に驚いていた。


「マリにそんな事が…」


「彼女も私と同じようにご両親をヘルシャフトに殺されていたのね。

 彼女にとって酷い真実だわ…」


「ディルカの言う通りだ。理不尽な理由で親を殺されて、その次に自分を受け入れてくれた恵みの村を襲われれば、いくらマリでも憎まずにはいられなかったのかも…」


「っていうか、さっきの話じゃお前らもマリがあぁなった根本的な原因がわかってねぇじゃねぇか!」


 ヒエンとレイアの話を聞いていたバンは、根本的な原因が判明していないため軽く八つ当たり状態になっていた。

 それに対しカトレアはバンの頭を叩いて黙らせると、自分の憶測をヨキ達に話し始めた。


「今の話し方からして、彼女が豹変したのは町ではぐれてから二人が最初にトゥーランドットと化したマリと接触するまでの期間。

 そう考えていいわね」


「それにさっきの話を聞いて納得した点もあるしな」


 カトレアはマリが豹変した原因がはぐれてから、トゥーランドットとの状態でヒエンとレイアの二人と再会するまでの空白の期間だと推測すると、キールも二人の話を聞いて一人納得している様子を見せた。

 その様子を見たフィービィーはキールが何に対して納得したのか質問を問いかけた。


「納得ってなんの事なの、キール?」


「生まれ変わりにしては強いとは思ってたんだ。

 皆に話してなかったが、生まれ変わったり混血が進みすぎるとスピリットシャーマンの力がどうしても弱体化する傾向にあるんだ。

 だが、この世に新しく生まれたとなれば話は別だ。

 堕天と人間、その親から生まれた子供は必然的に純潔のスピリットシャーマンとして生まれ、その力が今を生きるどのスピリットシャーマンよりも強くなるし、何より、潜在能力が高けりゃそこいらのヘルシャフトはイチコロだ」


「ヘルシャフトをイチコロって、そんなにマリが強いって事かいな⁉」


「キールの考えはあながち間違いではないだろう、私自身、油断していなかったにもかかわらず逃げの一手を選択するしかなかったくらいだ。

 鍛えればフォルシュトレッカーさえ圧倒できる可能性がある」


 キールとラピスの二人にフォルシュトレッカーさえ圧倒できる可能性があると言われる程、マリの潜在能力が高い事を聞かされ、豹変したマリをとめるのは一筋縄ではいかない問う事を誰もが自覚した。

 一番の問題は、何故マリが豹変したのかがわからない事には、仮に追いついても原因がわかっていなければ元に戻す事も出来ないという事だ。

 それに対し、ヒエンはある事をヨキ達に教えた。


「トゥーランドットと化す前、マリはある街に向かったそうだ。その街に手掛かりがある筈だ」


「マリが付けてたアーマーリングは、僕達とはぐれる前には付けてなかったんだ。

 多分、その街で手に入れて、あれを手に入れたせいでマリはあぁなったんじゃないかって僕らは疑ってる」


「この中で地図を持ってる奴はいるか? 街の場所を教える」


 ヒエンはマリが豹変した原因の可能性があるアーマーリングを入手した可能性がある街の事を教えるために、ヨキ達に地図を持っているか尋ねた。

 キールは懐から地図を取り出し広げると、ヒエンは地図を見て町の場所を示した。

 ヒエンが示した場所を見たヨキ、バン、リースの三人は酷く驚いていた。

 そこはヨキが飛ばされた場所であり、レイフォン兄弟の故郷、実りの街だったからだ。


「ここって、僕達の故郷じゃないですか!」


「えっ⁉ ここお前らの故郷なのかよ⁉」


「それだけじゃねぇ、オイラの記憶が正しけりゃあここには氷の社がある筈だ」


「それ間違いないのキール⁉」


「昔、アイスアサシン関連の遺跡を見つけた際に何かの在処を記された壁画を見た事がある。

 もしその壁画に記されていたのが氷の社だとすれば、間違いない」


 マリがアーマーリングを手に入れた街が実りの街であるだけではなく、氷の社があるとキールから聞かされたヨキ達は驚きの連続だった。

 だが、実りの街にマリが豹変した原因の手掛かりがあると分かった以上、実りの街へ向かう必要があった。


 それがわかったヨキ達はすぐさま町の住民達に事情を説明しに戻り、負傷したままのロイドを預けると実りの街に向かうべくワープ・ワープが使えるヨキの周りに集まり、ヨキは前回のような失敗をしないように実りの街の風景を強くイメージする。


 その間、ヒエンはこれまで過ごしたマリとの日々を思い出していた。

 自分が無意識にマリと過ごした日々を思い出している事に気付いたヒエンは、自分の思考が変わった事に対し、自分で自分に呆れていた。


(皮肉だな、この俺がたった一人に、しかも女に翻弄されるなんて…)


 ヒエンの脳裏に浮かんだのは、太陽のような温もりを感じさせるような笑顔を見せるマリの笑顔。

 不意にレイアの方に目線を向けると、不安そうな表情をしていた。

 レイアなりに不安なのだろう。ヒエンは安心させるようにレイアの頭に手を乗せる。


「絶対にマリを連れ戻すぞ、俺達の手でだ」


「ヒエン。……うん!」


「行くよ! ワープ・ワープ!」


 ヒエンとレイアがマリを連れ戻すと決意を固めると同時に、ヨキはワープ・ワープを唱える。

 ヨキ達は竜巻に包まれ姿を消し、希望を求めて実りの街に向かった。

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