第36話 密かな別れ
キールの助言により無我夢中でヨキがワープ・ワープを使い、風に乗って難を逃れたヨキ達は見知らぬ所についた。
だが上手く使いこなせなかったのか、ヨキ達は空中に放り出され、次々と地面に落下していく。
「うわぁっ!」
「アイタッ!」
「ポギャッ⁉」
「キャアーッ!」
空中に放り出されたとは幸いにも地面からそう離れておらず、何より周りには誰も人はおらず、見られる事はなった。
言い出しっぺであるキールは全員無事にいるか確認し、自分達がいる場所が安全かどうかを確認すると安堵のため息を吐いた。
「なんとか逃げ切れた、みたいだな」
「っていうかキール、さっきのポギャッて、なんだよ、ポギャッって!」
「おいゴラ、人の驚いた声悪うんじゃねぇ」
地面に落下した時の声をバンに笑われたキールは不機嫌になったが、周りにいるヨキ達の様子を確認した。
突然のフォルシュトレッカーの襲撃により、ヨキ達のほとんどがボロボロになっていたため、しばらくの間は思うようには戦う事はできないだろう。
この中で一番重傷を負っていたディモルフォセカは、ケイの持っていた薬と治療道具では手当てし切れないと判断され、法術で右脇腹を治療されていた。
ディモルフォセカ以外の仲間達も、ケイに薬と治療道具を渡されたカトレアとラヴァーズに手当てをされていた。
「思った以上に重傷だな。スズ、悪いがヒエン達の居場所の確認してくれねぇか?
どれくらい距離が開いたか確認しておきたい」
「わかった、少し待ってくれ。今から確認する」
そう言うとスズは赤褐色のクォレルを手に取り、ウィンドウ・ハートを発動させてヒエンとレイアとの距離を確認し始めた。
「ケイ、皆の容体はどんな感じだ?」
「やっぱりディモルフォセカが一番酷いな、傷は塞いだけど血を少し流し過ぎたと思う。
他の皆が負った傷に関しては深くはないけど、浅くもない、寧ろ打撃痕の方が多いのを見るに、あとからかなり痛くなってくると思う。
ラピスとフィービィーも診てみたけど、毒によるダメージはなさそうだ」
「ケイ、傷薬が無くなったわ。これ以上手当を続けられないわよ」
「それでしたら、僕が持ってる傷薬を使って下さい」
仲間達の手当てをしていたカトレアが傷薬を使い切ってしまったと報告すると、近くの木にもたれ掛かっていたヨキが自分の持っていた傷薬を差し出した。
ヨキから傷薬を受け取ったカトレアは、仲間達の手当てを再開した。
そこに、ウィンドウ・ハートでヒエンとレイアとの距離を確認していたスズから報告が上がった。
ここからヒエンとレイアの二人がいる場所から遠いか確かめるために、スズがウィンドウ・ハートで確かめた所、遠くはないらしく、逆に近くなっているらしい。
運良く二人の近くまでワープする事ができたようだ。
それに近くに町があったため、フォルシュトレッカーとの戦いで受けた傷と消費した体力を回復するため、今回はそこの宿で泊まる事にした。
すると不意にヨキがリルに背いた命令について聞いた。
「ねぇ、リルさん。リルさんが背いた任務にバンが関わってるって、本当なんですか?」
それを聞いたバン達は目を見開いて驚いた。
リルが自分から話さなかったため知らなかったが、まさかバンが関わっているとは思ってもみなかったらしい。
リースはとても動揺していたのか、思わずリルに問いただした。
「どっどういう事なんですか、兄さんが関わってるって本当なんですか⁉ 答えて下さいリルさん!」
動揺してリースに激しく問いただされたリルはとても震えていた。
まるで言う事を恐れているように。
だがヨキ達の動揺を隠しきれていない目線がリルに浴びせられる。
どうすればいいのかわからず、ただ怯えている。
すると不意にリルの手に温かなぬくもりを感じた。
誰かが自分の両手を握っている事に気付き、手を握っている手の先を目でおうと、そこにはバンの姿があった。
その瞳にはヨキ達とは違い、混乱してはおらず、優しく見つめてくれている。
そして優しく語りかけてくれた。
「大丈夫だ。俺達はリルを信じてる。今回はアイツらが勝手に話そうとしただけで、リルは悪くないよ」
リルはその言葉に温もりを感じ、次第に震えは納まっていく。
そしてケイはヨキ達に聞こえるようにいった。
「皆、アイツらの言ってた事も気になるけど、これ以上リルに聞けばリルの心がもたない。
今は体を休めよう」
まだ動揺して落ち着きを取り戻す事のできないリースはケイの言葉に反対しようとしたが、ケイと共に旅をしていたディモルフォセカに止められた。
そしてそのままヨキ達は近くの町に向かったが、その場の空気はギスギスしていた。
リルはまだ顔が青ざめており、バンに支えられながらゆっくりと歩くのがやっとの状態であった。
するとヨキがリルに申し訳なさそうに声をかけた。
「あの、リルさん…。ごめんなさい。気になって仕方が無かったとはいえ、僕が聞かなければこんな事には…」
「いいのよヨキ。私が話さなかったからって事もあるから……」
自分のした事によってこのような事態を招いてしまった事を謝罪するヨキに対し、リルは無理やり笑って見せた。
それでもその顔に宿る恐怖は消えてはいなかった。
そんなリルを見たヨキは更に申し訳なく思った。
(うぅ、完全に聞くタイミングを間違えちゃった。
ケイとバンが止めてくれなかったら、絶対にリルさんは気絶しちゃってたよ。
あとでどうお詫びするか考えないと…)
ヨキはもしあの時バンとケイが止めていなければ、そのままリルは気を失って倒れてしまっていただろうと思った。
自分が関わっていると聞いたバン自身が一番気にしている筈だが、それでもリルに何も聞こうとはしなかった。
(思った以上に最悪な空気になっちまったな。こりゃ早めに何とかしねぇと)
「……」
町に向かう間、ヨキ達は誰もしゃべる事はなかったが、町に近づく度に何か様子が可笑しい事に気付いたヨキ達は急いで町に入った。
その町にはなんとヘルシャフトがいたのだ。
このままではこの町がヘルシャフトに支配され、町の住人は恐怖に怯え暮らさなければならない。
その事を悟ったヨキ達は武器を構え、ヘルシャフトに襲いかかった。
「着いた途端にまた戦闘かよ⁉」
「つべこべ言ってる場合じゃねぇ! チェック・ダ・ロック!」
最初にヘルシャフトを封印したのは経験豊富なキールだった。
槍を構えヘルシャフトの中心に入り込み、槍を振り回しながらチェック・ダ・ロックを唱え、次々とヘルシャフトが封印されていく。
その事に気付いた他のヘルシャフトはすぐさまキールの方を見た。
だがその隙にディモルフォセカもまた、トーチの炎を振るってヘルシャフトを封印していく。
更にそこへケイのキャノンズ・キャノンズとヨキのウィンドュ・ウィンドュを組み合わせた技によって、封印されていないヘルシャフトが町の外に吹き飛ばされた。
「良し、全員町の外へ追い出したぜ!」
「いや、連中がこの程度で諦めはしない。このまま追撃するぞ」
ヘルシャフトが町の制圧を簡単には諦める筈がないと推測したラピスが、追撃するべきだと提案した。
カトレアはディモルフォセカに体調はどうかと確認した。
ケイの治療を受けたおかげで、右脇腹の傷が完治した事で問題はないとディモルフォセカが答えると、ラヴァーズ、スズ、ニヤトの三人に町を任せヨキ達はヘルシャフトが吹き飛ばされた方向へ向かい、残るヘルシャフトを封印する事にした。
そこは茂みが生い茂る森で、夜になっているという事もあって周りは薄暗く、何も見る事ができない。
無理に深追いすると、方向を見失って逆に自分達が危険になる。
するとキールが鞄から何か玉のような宝石を四つずつ取り出した。
「希望の光宿せし珠よ、その輝きで我が道を照らせ」
キールが何か呟くと同時に、四つの宝石が一気に輝き始めた。
輝き始めた宝石を見て驚いたヨキ達は、何が起きたのか分からず動揺していると、ラピスがそのうちの一つを手に取りながら説明し始めた。
「ガイドグリッター。光の力を宿す精霊石でできた珠だ。半径二メートルまで周りを照らせる」
「つまりこいつで周りがわかりやすいって事だ。兎に角四組に別れてヘルシャフトを追うぞ!」
「ラピスはアタシ達と来て。傷口が塞がったとはいえ、ディモルフォセカはまだ不調な筈だから戦い慣れてる貴女が来てくれるとありがたいわ」
ヨキ達はガイドグリッターを一つずつ手に取り、そのまま四組に分かれてヘルシャフトの封印に行った。
ヨキは付いてきているバンとリルの様子を見ようと、少しばかり後ろを振り向いた。
そこには何も気にせず普通に付いてきているバンと、バンの顔を見ないように顔をそむけているリルの姿があった。
(バン、自分がリルさんの背いた任務とどう関わっているのか気になる筈なのに…)
ヨキは自分が仲間達の前で質問してしまったせいで、複雑な状況になってしまった事を悔やんでいた。
その時バンが急にリルを止めてヨキの腕を掴んで引っ張った。
その直後、氷の矢が飛んできたのだ。
氷の矢が飛んで来る事に気付いたバンは二人を止め、飛んできた氷の矢から二人を守ったのだ。
そして飛んできた氷の矢は、明らかにラピスのものではない。
次の瞬間、ヘルシャフトが茂みからバンに襲い掛かってきたが、ヨキがウィンドゥ・ウィンドゥでヘルシャフトを跳ね返した。
跳ね返されたヘルシャフトは再度バンを襲うが、ヨキが前に躍り出てチェック・ダ・ロックを唱えたが、ヨキのチェック・ダ・ロックは躱されてしまい、ヘルシャフトの封印に失敗してしまった。
「バン、大丈夫⁉」
「あぁ、リルが助けてくれたおかげでこの通り! ピンピンしてるぜ♪ ありがとな、リル」
バンは自分が無事だと証明するかのように明るい口調で言った。
そんなバンを見たリルは安心としたかのように胸をなでおろし、バンの言葉に喜びを感じていた。
(私が隠し事をしていても、貴方はありがとうって言ってくれるんだね…)
だがそれもつかの間、茂みの方から次々とヘルシャフトが飛び出して来た。
ヨキは驚いて何振りかまわず杖を振り回すが、バンに注意され慌てて杖を構え臨戦態勢に入り、バンもいつでも攻撃できるように構える。
同じタイミングでケイ達もヘルシャフトとの交戦に入っていた。
「スマッシュ・スマッシュ! からの、ウォーター・ウォーター!」
「助太刀するでごじゃる!」
ケイとヒバリは、ケイが法術をメインに、ヒバリが至近距離から仕掛けて襲い来るヘルシャフト達を怯ませ戦っていた。
キールとフィービィーもお互いに背を預けながら戦っていた。
「キール後ろからきてるよ!」
「っだらぁっ!」
小柄なキールは槍のリーチを利用し、フィービィーは自慢の速さで対等に戦っていた。
一番苦戦しているのは、重傷を負っていたディモルフォセカだった。
血を流し過ぎていた事もあり、貧血気味になりながらトーチの炎を振るっていた。
「っくぅ、やっぱり、少しきつい、かも…」
「ディモルフォセカ、無茶しちゃダメよ!」
「くそ、人数が少ないうえに全員ダメージを追っている。
長期戦になるのを覚悟した方が良いか…⁉」
ガイドグリッター四つ分に分かれて行動しているため、少人数で行動しており人数は足りない。
何より簡単な手当てをしているとはいえ、フォルシュトレッカーとの戦いのダメージは残っており傷の痛みと身体に重みを感じ、普段のように動く事ができない。
それはヨキ達も同じであり、体中に走る痛みを堪えながらヘルシャフトの攻撃を防ぎ、互いに庇い合いながら反撃のチャンスを窺っていた。
だが、ヘルシャフトの一人がリルの姿を見て話しかけてきたのだ。
「貴様、リル・レッドベリルか⁉」
「えっ? えっ⁉」
「コイツ、リルの知り合いなのか⁉」
「嘘、どうして貴方がここにいるの⁉」
ヘルシャフトがリルの名前を呼んだ事に驚いたヨキとバンは、思わずリルに話しかけたヘルシャフトとリルの顔を交合に見た。
どうやら本当に知り合いのようで、リルも驚いた様子で自分の名前を呼んだヘルシャフトの方を見ていた。
何故かリルの顔は青白くなっており、激しく震えている。
リル本人も、自分の顔見知りと会う事になるとは思ってもいなかったらしい。
そんなリルの様子を見ていたヨキとバンは、リルの前に立ちはだかり、ヘルシャフトを睨みながら警戒心を高めた。
するとヘルシャフトが驚く言葉を口にした。
「お前達、ソイツから何も聞いていないのか? 特にバン・レイフォンとか言ったな、貴様」
「へ? なんで俺の名前を知ってるんだ?」
バンはヘルシャフトが自分の名前を知っている事に驚き、目を見開いた。
リルもヘルシャフトの言葉に更に怯え始め、そんなバンとリルの様子を見たヘルシャフトは大胆不敵に笑い、話を続けた。
「貴様の名を知らぬ者など、一人としていない。貴様が我らを勝利に導く鍵なのだからな」
それを聞いたバンは、それだけで自分がリルの背いた任務に深く関わっている事を理解した。
自分がバン・レイフォンだと知った時、リルは言う事が出来なくなってしまったに違いないと自覚してしまった。
ヘルシャフトは更に話を進めた。
「何故なら貴様は…」
「いやぁあ! それ以上言わないでっ‼」
ヘルシャフトがバンがどれだけ重要な存在なのかを言おうとした時、今まで聞いた事のない程にリルは大声で叫んだ。
頭を抱え、更にその場に蹲ってしまった。
その様子を見たヨキは慌ててリルの傍に駆け寄り、蹲ったリルを宥める。
よく見ると、リルは涙を流し、ただただ震えながら泣き続けていた。
泣いているリルを見たバンは、ヘルシャフトを睨みつけた。その顔には怒りが宿っていた。
「お前、女の子を泣かせるなんて何考えてるんだ⁉」
「知らんな。ソイツは純白の白い髪を持たない色付きなだけでなく、悉く任務に失敗し、挙句、最後の恩恵として王直々の命令に背いて堕天した、役立たずの裏切り者なのだからな」
そう言うとヘルシャフトはリルを嘲笑い、周りにいたヘルシャフト達もつられるように笑い始めた。
リルを嘲笑うヘルシャフト達を見たバンは、完全に頭にきていた。
ヨキも顔をしかめてすぐバンの横の立つ。
リルを精神的に傷つけるだけではなく、嘲笑ったヘルシャフト達を許せないという、二人の意志はほぼ一致していた。
するとヨキの持っている杖と右腕の痣が光始めた。
それと同時にバン自身も光始めたが怒りのあまり、二人はその事に全く気付いてはいない。
ヨキの杖から光の糸が現われ、そのままバンを包み込んで杖に取り込んでしまい、更に形が変わり始め、杖は氷を模ったコピスに形を変えた。
ヨキはコピスを構えると、ヘルシャフト達に向かって走り出した。
驚いたヘルシャフト達はヨキに向かって攻撃するが、ヨキは次々と繰り出される攻撃を躱していき、武器を破壊していく。
「なんだコイツ⁉ 急に動きが…っ!」
「うわぁっ! 俺の武器が!」
「でやぁあああああっ!」
ヨキの動きが素早くなり、更に自分の武器がいとも容易く破壊されたヘルシャフト達はお互いの状況を確認する余裕がなくなり、連携が乱れて行く。
中には武器を破壊されても冷静に自信の力で対抗するヘルシャフトもいたが、ヨキはコピスを振るい能力による攻撃を切り刻んでいく。
そして今まで使った事のない法術を唱えた。
「ストーム・ロック!」
その途端、強い吹雪が巻き起こり始め、次々とヘルシャフト達を封印していった。
その吹雪は森のあちこちに散らばったケイ達の元まで届いており、ケイ達と交戦していたヘルシャフト達もヨキが起こした吹雪によって封印されていく。
「なんだ? 突然吹雪が吹き始めたかと思ったら、ヘルシャフトが次々と封印されている?」
「何がどうなってるの⁉」
「ヘルシャフトが封印されていってる? この吹雪はコイツらの仕業じゃないのか⁉」
「この吹雪、法術の類。という事はヨキか? だがヨキが使うのは風の法術だった筈…」
それぞれの組に分かれていたケイ達は、突然ふぶいた吹雪によってヘルシャフト達が封印されるという光景に困惑していた。
ヘルシャフト達が封印されると、コピスの中からバンが出てきて元の杖の形に戻った。
「……あ、あれ? ヘルシャフトがいなくなってる?」
「うわぁ! なんで周りが雪景色になってるんだ⁉」
怒りに身を任せていたせいか、二人は何も覚えていないらしく辺りをキョロキョロと見回して何が起きたのかと混乱していた。
それから散らばっていたケイ達もヨキ達の元に駆けつけ、突然起きた吹雪に驚いて急いでヨキ達のもとに駆けつけたのだ。
リルは一人俯いていたが、しばらくしてバンの方を見た。
(ついに、自分がヘルシャフトを勝利に導くカギだと知られてしまった。
このまま一緒にいればバンが危ない)
そう確信するや否いや、リルは物音を立てぬよう静かに立ち上がり、町のある方向とは逆方向に走り出し、ヨキ達のもとを離れた。
ヨキ達も話しに夢中になっていたため全く気付かず、ようやくリルがいなくなった事に気付き、慌ててリルを探したのだが、見つける事は出来なかった。
町に残っていたラヴァーズ達にリルが戻ってきたかを聞いたが戻ってきておらず、スズのウィンドウ・ハートで探そうにもリルの私物が無くてはどうしようもなく、ヨキ達にリルを探す術はなかった。
*****
一人ヨキ達と離れたリルは誰かと接触していた。
手にはホラ貝のようなものを手にし、穴の方を口に近づけて何かを話していた。
それを誰かに渡し、その誰かは本当にこれで良かったのかとリルに尋ねたが、リルはこれ以外に方法はないと告げると、翼を広げて空に飛び立って行った。
一人寂しく夜空を飛び続け、休憩のために近くの茂みに降り立った時だった。
何の前触れもなく右翼を狙撃されたのだ。
リルは急いで翼を隠し、そして攻撃態勢に入り敵を探していると木の上に黒いカチューシャを付けた少女がいる事に気付いた。
その少女が黒系統の服を着ていたためすぐにフォルシュトレッカーだと気付いたリルは、風の刃を作り出し、攻撃したが躱された。
すると後ろの方から和モダンの服を着た少年が刀を勢いよく振り下ろして襲いかかって来た。
攻撃を受け止めたが次の攻撃がリルを襲った。
だがその攻撃は妙に可笑しい。
(痛くない? それどころか撃たれた場所が濡れてる?)
体は何ともなく、撃たれた部分は何故か濡れていた。
だが次の瞬間、行き成り今まで感じた事が無い程の激痛を感じた。
「キャァアッ! 痛い、痛い! なんなの⁉」
リルは自分の身に何が起きたのかわからず、痛みのあまりに騒ぐ事しかできなかった。
木の上から自分を撃った黒いカチューシャの少女が、余裕のある様子で笑いながら言った。
「パライス・パライスを直接打ち込むと激痛が走るのですか。これは新発見なのです」
パライス・パライスはアクアシーフのみ使う事が出来る法術であり、かけた相手は体中が痺れて動く事ができなくなる。
黒いカチューシャの少女が言った通り、しばらくして体に痺れを感じ始めた。
パライス・パライスを使った少女を見たリルはその容姿を見て驚いた。
何故かというと、その容姿がケイと同じだったからだ。
リルはまさかと思ったがもうどうしようもなかった。
「さぁ、これで終わりなのです。フィシュ、やっちゃいなさいなのです!」
「OKヴァッサーマン!」
フィシュの攻撃がリル襲い掛かる。体が痺れて動く事も風を起こす事もできず、対抗する事ができない。
こうなる事は覚悟していた。
そしてゆっくりと目を瞑り、一筋の涙を流した。
(バン、皆、ごめんなさい……)
フィシュの刀が無慈悲にリルの体を切り裂く。
それを確認したヴァッサーマンは、何処からともなく拘束具を取り出してリルに施し、完全に逃げられないように体の自由を奪った。
こうしてリルは二人のフォルシュトレッカーに襲われ、囚われの身となってしまったのだった。




