第32話 絶体絶命の危機ともう一つの再会
水の社でヘルシャフトに襲われたケイ達は絶体絶命の危機に立たされるも、ヒバリとの強い絆でリンク・リンクを成功させたケイによって危機を脱した。
しかしそれもつかの間、湖に沈みゆく水の社を出たケイ達はヘルシャフトが作り出した執行人、フォルシュトレッカー・ツヴィリンゲに襲われ、再びピンチに陥る。
更に、ディモルフォセカを捕らえる炎がディモルフォセカの法術の炎と同化した事でツヴィリンゲが生き別れたディモルフォセカの双子の弟、リンドウ・ガーネットである事が判明した。
その事知ったケイ達は酷く動揺し、誰よりも弟との再会を望んでいたディモルフォセカは喜びと絶望に襲われた。
「リンドウ……まさか……本当に…⁉」
ディモルフォセカは目の前にいるツヴィリンゲを見て動揺を隠しきれずにいる。
ディモルフォセカとリンドウは幼い頃にヘルシャフトに襲われ、命を奪われかけた。
その結果、ディモルフォセカの両親は死に、その時にリンドウと生き別れ、つい最近になってリンドウが生きている事を知った。
しかしヘルシャフトがファイアーファントムであるリンドウを生かす事はありえないと、その場にいる全員がそう思った。
その事はヘルシャフトであったラヴァーズがよく知っていた。
スピリットシャーマンは必ず殺すという暗黙のルールがある程、ヘルシャフトに取ってスピリットシャーマンは脅威である存在なのだ。
だがそれは今、目の前にいるツヴィリンゲによって覆された。
「会いたかったよ、ディルカ姉ちゃん。ディルカ姉ちゃんが生きてるって聞いた時、すっごく嬉しかった」
そう言うとリンドウはディモルフォセカのもとに歩み寄る。
ディモルフォセカは動揺しながらも、リンドウにかける言葉を言った。
「リンドウ、それは私もっぅあ!!」
ディモルフォセカが言葉を紡ごうとしている途中、ツヴィリンゲはトリック・トリックでディモルフォセカの動きを封じている首輪の鎖を掴んで、そのまま強引に引っ張り、ディモルフォセカの顔を自分の顔に引き寄せた。
「もう二度と離れない。これからはずっとずっと一緒だよ!」
笑顔で笑い、幼い子供のように嬉しそうな口調で言うツヴィリンゲ。
だがその笑顔はディモルフォセカの知っているリンドウの笑顔ではない。
その笑顔は、どこか狂気が含まれた、“リンドウの姿をした別の誰か”の物のように思えた。
ディモルフォセカが目の前にいるツヴィリンゲにどう反応すれば良いかわからないでいると、ケイが斧を振りかざし、ツヴィリンゲをディモルフォセカから引き離した。
「お前の相手は俺だろ⁉」
そう言うとケイはリンク・リンクで体力はそれ程残っていない体を無理に動かし、ディモルフォセカからツヴィリンゲを引き離そうと試みる。
徐々にツヴィリンゲをディモルフォセカから引き離すが、ケイの攻撃は一つとしてツヴィリンゲには当たらず、軽々と躱されてしまう。
それどころかまるでケイの動きをじっくりと観察するかのように見ていた。
(なんだコイツ⁉ ディルカの弟とはいえ、かなり不気味だぞ…!)
「スマッシュ・スマッシュ」
するとツヴィリンゲはスマッシュ・スマッシュを唱えた。
ケイは迫りくる炎の衝撃波を素早くよけ、ツヴィリンゲの後ろに回り込んで斧を振りかざした。
だがその攻撃すら躱されてしまう。
その時、ツヴィリンゲは不気味な笑みを浮かべると同時に、ツヴィリンゲが攻撃に出た。
ケイはツヴィリンゲの攻撃を受け流しながら躱すも、違和感を感じていた。
ケイとツヴィリンゲが戦っている姿を見ていたヒバリはツヴィリンゲの動きを見ている内にある事に気付き、顔をしかめた。
そんなヒバリの様子に気付いたラヴァーズは、ヒバリにどうしたのかと聞いた。
「どうしたんですか、ヒバリさん?」
「あの動き、さっきまでの動きと違う……」
「え?」
「あの動きは、ケイの動きと全く同じでごじゃる⁉」
それを聞いたラヴァーズはツヴィリンゲの動きをよく見た。
剣を振り下ろす時の動作、ケイの攻撃を受け止める時の動作、攻撃を躱す時の動作、その動きのどれもが、ケイの動きとよく似ている。
しかしそれはいくらなんでも似すぎており、寧ろ全く同じ動きだった。
ツヴィリンゲと戦っているケイも、ツヴィリンゲが自分と同じ動きをしているようやく気付き驚いていた。
(まさかこいつ、俺の動きを真似してるのか⁉
そうだとしても、今ここで攻撃の手を緩める訳にはいかない!)
例え自分の動きをまねされていたとしても、今更違う動きをすることは不可能であり、止まればそこを狙って攻撃されるため、今攻撃を止める訳にはいかない。
ケイは思い切ってツヴィリンゲに向かって、キャノンズ・キャノンズを発動させた。
キャノンズ・キャノンズは見事にツヴィリンゲに当たったが、それはツヴィリンゲがトリック・トリックで作り出した偽物だった。
「消えた⁉(今のはトリック・トリックか⁉)」
すぐにトリック・トリックで作られた偽物だと気付いたケイの背後に、本物のツヴィリンゲが回り込み、剣を大きく振りかざす。
自分の背後にツヴィリンゲがいる事に気付いたケイは素早く斧でガードするが、そのまま蹴とばされてしまった。
蹴とばされたケイはその勢いを利用して体勢を立て直し、リプル・リプルを唱え、ツヴィリンゲの動きを封じようと試みる。
だが、ツヴィリンゲは剣を鞘に収め、何処からともなくクロスボウを取り出し、自分に向かって飛んでくる水の輪を次々と打ち落としていく。
ツヴィリンゲの動きを見ていたカトレアは、ツヴィリンゲの能力の正体に気付いた。
「そうか! リンドウは相手の動きや技を“再現する”事ができるんだ!」
「なんやそれ? どういう事なんやカトレア⁉」
カトレアを抱きかかえながらカトレアとヒバリを襲ってきた蔦から逃げ回るニヤトは、再現するという言葉の意味が全く分からなかった。
動きや技を再現するとはどういうなのか、ニヤトに聞かれたカトレアは詳しく説明し始めた。
「簡単な動きなら誰でもできるけど、ツヴィリンゲの場合はその動きを完全に自分の物にする事ができるのよ!
それにあのクロスボウの射ち方、前に炎の社でアタシ達を襲ってきたシュッツェと全く同じよ!」
ツヴィリンゲの弓捌きがシュッツェと全く同じだと聞いたニヤトや、上空から聞いていたヒバリとラヴァーズ、実際に戦っているケイは驚いた。
誰かの動きを真似するというのなら誰でもできるが、その動きを完全に再現するという事は容易にはできない。
しかしツヴィリンゲの場合、ヘルシャフトが持っていた精霊石に宿る力を体内に宿す事によって、どんな動きでも完全に再現する事ができる事ができるという事だ。
「そう、僕の能力は【再現】。法術もとはいかないけど、見た相手の動きや技を完全に僕自身のものにする事ができる。
それだけじゃないよ。フォルシュトレッカー全員の動きも、技も、能力も、僕の物にできるんだ。
僕の能力の特徴を見破るなんて、流石はディルカ姉ちゃんの親友だね」
動きも技も、ましてや能力までも自分の物にする事ができると聞いたケイ達は、信じられなかった。
もしそれが本当の事なら、ヒバリとカトレアに襲いかかった蔦の事も辻褄が合う。
だが、全員の動きや技、ましてや能力全てを覚えるというのは至難の業であり、それを簡単にやってのけるツヴィリンゲは普通ではなかった。
ツヴィリンゲの再現の詳細を聞いたディモルフォセカには心当たりがあった。
(そうだ、リンドウにはお母さんから受け継いだカメラアイがある。
見たものを一生忘れる事はないという特性が、不可能な事を可能にしているんだとしたら、この事を知らないケイが圧倒的に不利だわ!)
実の弟と戦う事になると思っていなかったディモルフォセカは、ツヴィリンゲのカメラアイと呼ばれる特性の事を、ケイ達に話していなかった事を激しく後悔した。
一刻も早くケイに加勢しようと炎の鳥籠の中で暴れるが、自分を足ら得る鎖が外れる気配はない。
試しにリベレー・リベレーを唱え解除を試みるも、かなり力を込めていたのか、辛うじて両腕を封じていた鎖を解除する事しかできず、何度もリベレー・リベレーを唱えるもびくともしない。
そんな時に、ディモルフォセカの元に意外な救世主が現れた。
そしてツヴィリンゲとの戦闘を続けているケイは、次々と繰り出される攻撃を躱す事で精一杯になっており、背後からヒバリ達を襲っていた蔦に吹っ飛ばされた。
もう一度体勢を立て直そうとしたケイだったが、ケイの目の前にはまたしてもツヴィリンゲが立っていた。
「薬師ケイ、君には感謝してるよ。おかげでディルカ姉ちゃんと会えたんだ、今回は“肩腕だけ“で許してあげるよ」
そう言うとツヴィリンゲは剣の先で左手の指先を軽く切り、自らの血をケイの右腕と右肩の付け根に血を垂らし、そのまま左手を握る。
すると突然、ケイの右腕と右肩の付け根から血が飛び出した。
「ぎゃああああああああああっ⁉」
右腕と右肩の付け根から感じた突然の痛みに対応できず、ケイはたまらず悲鳴を上げる。
それを見たヒバリ達もケイ自身も目を見開いた。
あまりにも突然だったため、ケイのみに何が起きたのかわからず、全員混乱していた。
「ケイ⁉」
「なんや急に、ケイの右肩から突然血が噴き出したで⁉」
「ケイ! ラヴァーズ、一刻も早くケイの元へ!」
「はっはい! うわぁ⁉」
空中にいたヒバリとラヴァーズはケイのもとに行こうとしたが、蔦に叩き落とされてしまい、叩き落とされた二人の元にカトレアとニヤトが駆け寄った。
ツヴィリンゲはそのまま左手を横に動かすと、ケイの右腕が引きちぎれるような形でケイから離れ始めた。
ケイは必死に自分の右腕を抑えるが、止める事ができず、自分の右腕が徐々に離れていくのを感じた。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ! どうする? 攻撃する⁉
ダメだ、躱されるのがオチだ!
それなら法術を使って治すか? でも原因がわからないんじゃ発動しても意味がない‼)
離れる右腕を抑え必死に打開策を考えるケイだったが、痛みと予測不可能なツヴィリンゲの存在に正しい判断ができない。
もうだめかと思われたその時、左肩にタメゴローを乗せたボロボロのディモルフォセカが、ツヴィリンゲに向かってトーチの炎を振るい、ケイから遠ざけた。
「ケイ、大丈夫⁉」
「ディルカ! お前、どうやって脱出したんだ⁉」
「タメゴローが機転を利かせて、チャンスを作ってくれたの」
そう、あの時タメゴローがツヴィリンゲにばれないよう、アクアシーフの力が宿っている水の社を守る湖の水を運び、ディモルフォセカを閉じ込める炎の鳥籠に掛けて弱めたのだ。
炎の鳥籠が弱まった事を確認したディモルフォセカは強引に檻を破り、そのままケイの目の前に立ち、ツヴィリンゲと戦い始めた。
ディモルフォセカとツヴィリンゲが戦い始めた様子を見たヒバリ達は、姉弟対決に発展した事に驚いていた。
「おい! ディルカが自分の弟と戦い始めたで!」
「大変! 早く止めないと…!」
「待って、手を出してはダメ」
ディモルフォセカとツヴィリンゲの戦いを止めに行こうとするラヴァーズを、カトレアが制止する。
カトレアのその行動に驚いたラヴァーズは、思わずカトレアに視線を向ける。
「ねえさん?」
「何考えとるんやカトレア! 敵と言えども自分の弟と戦っとるんやぞ⁉」
「自分の弟だからこそ、よ」
ディモルフォセカとツヴィリンゲの戦いに手を出すなというカトレアの考えがわからず、納得のいかないニヤトだったが、カトレアにはカトレアなりの考えがあった。
考えというよりも、ディモルフォセカが何を考えているかを想像していた。
ディモルフォセカが考えているのは、姉として、ただ一人の家族として、弟の過ちを正そうとしているのだろうと思った。
親友であるからこそ、ディモルフォセカが何を考えているのか、大体想像する事ができた。
「ツヴィリンゲはディモルフォセカに任せて、アタシ達はケイを助ける事だけ考えましょう。
今、一番ピンチなのはケイよ」
「確かに、カトレア殿の言う通りでごじゃる。
どういったカラクリかわからぬが、ケイは右肩をやられて真面に戦えぬ。
一刻も早く治療せぬと、出血多量で命に係わるでごじゃるぞ」
カトレアの提案を受け入れたヒバリは、ツヴィリンゲの攻撃によって重傷を負ったケイを、どうやって救出するかを考え始めた。
「うっぐぅ……ヒーリング・ヒーリング…」
ディモルフォセカのおかげで九死に一生を得たケイは、なんとか動かす事ができる左手を右肩と右腕の付け根にできた傷にかざし、ヒーリング・ヒーリングと唱える。
ヒーリング・ヒーリングと唱えると、ケイの左手から淡い水色の光が放たれ、右腕と右肩の付け根にできた傷を包み込んだ。
ヒーリング・ヒーリングは、アクアシーフだけが使える強い癒しの法術。
ヒーリング・ヒーリング以外にも癒しの法術はあったが、これだけ深手となればヒーリング・ヒーリングを使うのが一番だ。
(やばい、血を流し過ぎた…。傷の回復、急げ…!)
血を流し過ぎた事で意識が朦朧としながらも、必死に自分の傷をいやすケイは、目の前で起こっているディモルフォセカとツヴィリンゲの戦いを見ていた。
ディモルフォセカは、スイング・スイングを唱え攻撃範囲を広げたトーチの炎を振るい、ツヴィリンゲが操っている蔦を焼き払い、時には足場として利用して攻撃を躱しながら、次々と攻撃を繰り出す。
対してツヴィリンゲはクロスボウで攻撃するのは得策ではないと考えたのか、再び剣を手に取り蔦を操りながら、ディモルフォセカへと攻撃する。
二人の戦いを見ていたケイは、ヒーリング・ヒーリングによる治療を続けながら、ディモルフォセカに声をかけて止めようとした。
「ディルカ、だめだ! お前達は姉弟だろ⁉」
「仲間を傷つけられて黙って見てろって言うの?
どんな事があっても共に戦う、それが『仲間』、何より、自分の弟の過ちを正すのは姉として当たり前の事よ」
それを聞いたケイは思わず驚いてしまった。
ディモルフォセカにとってツヴィリンゲは大切な双子の弟、リンドウであるため戦いたくない筈。
そのため、そんなセリフが聞けるとは思ってもみなかったのだ。
そしてカトレアが考えていた通り、ディモルフォセカは自分なりに実の弟と向き合おうとしていた。
そんなディモルフォセカを見ていたツヴィリンゲは顔をしかめ、ケイに向かってスマッシュ・スマッシュを唱えた。
炎の衝撃波でケイは後ろの方に飛ばされてしまうが、後ろの方にいたニヤト達に受け止められた。
「ケイ!」
「ベール・ベール」
ディモルフォセカがソラ達のもとの行こうとした時、ツヴィリンゲにベール・ベールで妨害されてしまう。
ツヴィリンゲはケイ達に向かってフレア・フレアと唱えると、ディモルフォセカの目の前で炎がケイ達を包み込んでしまった。
ディモルフォセカは再び絶望に襲われたが、炎が収まった瞬間、驚くべき光景が目に入った。
蔦でできた柵が黒焦げになって存在していた。
黒こげた柵が崩れた時、聞き覚えのない声が聞こえて来た。
「スマッシュ・スマッシュ!」
黒焦げた柵が崩れると同時に、風の衝撃波がツヴィリンゲに向かって襲いかかった。
風の衝撃波を目にしたツヴィリンゲは瞬時に躱すが、その直後に杖を持った黒髪の少年が飛び出して来たため、剣でとっさに少年の攻撃を防ぐ。
その黒髪の少年が誰なのかディモルフォセカには解らなかった。
するとタメゴローが何かに気付き、ディモルフォセカにその事を知らせ、ケイ達のいる方向を示した。
そこにはケイ達の無事な姿と、ケイ達を守るように立つ、見ず知らずの少年少女達が立っていた。
「皆! よかった、無事だった…!」
ディモルフォセカがケイ達の姿に気を取られていると、茂みの方から白髪の女が現れ、ディモルフォセカを抱えケイ達のもとに行った。
ツヴィリンゲと戦っている少年は後ろに下がってケイ達の前に立った。
良く見ると槍をもった小さな少年と杖を持った少年の腕に、自分の聖痣と似た痣があった。
「まさか同じスピリットシャーマンが敵対するとは、どうなってんだよおい?」
「気を付けて、黒い服を着てるって事は、フォルシュトレッカーの一人よ。きっと強いわ」
槍を持った小さな少年は穂先をツヴィリンゲに向け牽制し、桜色の髪をした少女は重傷を負っていたケイの手当てをしながら警告する。
「クズが。こうなったら全員まとめて…⁉」
急に現れた少年少女達に敵対心を向けていたツヴィリンゲだったが、急に黙り込み、そのまま苦しみ出した。
ケイ達と少年達は、ツヴィリンゲの身に何が起きているのか分からず戸惑ったが、ディモルフォセカは一人慌て始めた。
「いけない! フラッシュバックが……リンドウ!」
ツヴィリンゲはもがき苦しみ、そのまま後ろに倒れ込んだ。
ツヴィリンゲが完全に倒れる前に、ノースリーブとアームカバーを身に着けた金髪金瞳の黒ずくめの少年がツヴィリンゲの体を支えた。
「お前は、レーヴェ!」
「いつの間に⁉」
どうやら少年達はレーヴェという少年の事を知っているらしい。
レーヴェと呼ばれた黒ずくめの少年は、目の前にいるケイ達には目もくれず、ツヴィリンゲに話し掛ける。
「ツヴィリンゲ! これ以上は体に触る、ここは一端引こう。チャンスはいくらでもある」
そう言うとレーヴェは自分よりも背の高いツヴィリンゲを抱きかかえ、白髪の女に声をかけた。
「ラピス、次に会った時は必ず殺す」
そう言い残すとレーヴェはそのままツヴィリンゲを連れ、そのままどこかへ行ってしまった。
ツヴィリンゲとレーヴェが去った後、ヒバリとニヤトは驚いた様子で二人の少年に声をかけた。
「バン、リース⁉」
「お主らどうしてここに⁉」
「よっ。ヒバリ、ニヤト!」
「お久しぶりです、ヒバリさん、ニヤトさん」
どうやら少年達の内バンとリースという少年達は、ヒバリとニヤトの知り合いらしい。
するとヒバリとニヤトが、バンと同じ顔のもう一人の少年を見て目を見開き、まるでもう一人増えたかのように、バンという髪を腰まで伸ばしている少年と見比べ始めた。
その様子に気付いたリースという人形のように大きな瞳の少年は、二人に解りやすく説明した。
「この人は兄さんのそっくりさんなだけで、双子のお兄さんではないんです」
「双子の兄ちゃんやないんか⁉」
「どう見ても双子にしか見えないでごじゃるよ⁉」
それを聞いても二人はまだ驚いていた。
そんな中、ケイはツヴィリンゲと戦っていた黒髪の少年を見つめていた。
ケイはその少年の事を知っていた、幼い頃から共に育ったかけがえのない存在なのだから間違える筈はない。
しかし自分の知っている少年とは雰囲気が違う。ケイは恐る恐る少年の名前を呼んだ。
「よッヨキ? ヨキなのか?」
ケイの声に気付いたのか、黒髪の少年はケイの方に顔を向けた。
そこにはケイが知っている少年の顔があった。
少年はそのままケイに笑顔を見せ、ケイの名前を呼んで。
「ケイ、やっと会えたね」
「ヨッヨキーッ!」
ヘルシャフトに恵の村を襲われ、聖なる祠で突然起こった竜巻により従姉のマリと、かけがえのない存在である幼馴染と離れ離れになり、それ以降行方が解らなかった。
だがその少年が、黄昏ヨキという名の幼馴染が今、自分の目の前にいた。
ケイはヨキとの再会に喜び、ヨキに抱きついた。
こうしてここに三人のスピリットシャーマン、ナチュラルトレジャー、ファイアーファントム、アクアシーフが揃い、ヨキとケイが再会したのだった。




