第31話 アクアシーフの試練、悲しき再会
今年初の投稿になります。
ヘルシャフトに勝つための手掛かりを求め、水の社に辿り着いたケイ達だったが、そこで水が引いた事によりヘルシャフトが社に侵入してきた。
ケイ達はバラバラになってそれぞれヘルシャフトと戦い始めた。
ディモルフォセカとカトレアは、ヨルとロリ―戦で習得したリンク・リンクを発動させ、新たな封印の法術で一気に多くのヘルシャフトを封印する事に成功した。
しかし、リンク・リンク状態で法術を発動させた事により、ディモルフォセカの体力が一気に削られてしまい、思うように体を動かせなくなってしまった。
ディモルフォセカとカトレアはリンク・リンクを使ったまま戦うという事は、今まで以上に体力の消費が激しくなり、何度も使える訳ではないという事を身をもって思い知らされる。
二人とは別にヘルシャフトと戦っていたニヤト、ラヴァーズもヘルシャフトの攻撃をまともに受けてしまい、猫であるタメゴローに至っては逃げ回る事で精一杯。
ケイ達は絶体絶命の危機に立たされた。
運良く合流する事ができたケイとヒバリは、次々と倒れてゆくディモルフォセカ達に気付いた。
「やばい、皆次々に倒れてる!」
「このまま別々に戦っていては逆に危険でごじゃる。
ここは一度、全員一か所に集まって体勢を立て直すでごじゃるよ!」
「近距離の奴らは俺が相手するから、ヒバリは遠距離の奴らを頼む!」
「承知!」
ケイとヒバリはすぐに駆けだし、ディモルフォセカ達を助けに行こうとする。
だが、それをヘルシャフトに邪魔されてしまい、思うように進まない。
ラ・フラム・ロックを使って一気に体力を消耗してしまったディモルフォセカは、法術を使ってはいないが、かろうじて攻撃を防いでいた。
(体が、重い…! まさか、リンク・リンクにこんなデメリットがあったなんて!)
《ディモルフォセカ、一度皆と合流して! 少しだけでもいい、体を休めて!》
「そうしたいけど、体が思うように動かせなくて、攻撃を防ぐ事で精一杯よ…!」
ケイ達と合流して体を休めるよう進言するカトレアだったが、ディモルフォセカ本人は体をうまく動かせず、ヘルシャフトの攻撃を防ぐ事で精一杯だった。
直撃を受けながらも動く事ができたラヴァーズは翼を広げ、気を失って倒れているニヤトと、逃げ回るタメゴローの元に行き、そのまま抱えて空中に逃げ、必死に攻撃を躱す。
「わっわっどうしよう…っ!」
「ラヴァーズ、ディルカ達の所に逃げろ! 俺達もすぐそっちに行く!」
「スピリットシャーマン達を合流させるな、分断している内に確実に仕留めろ!」
ケイ達が体勢を立て直すべく合流しようとしている事がわかっていたヘルシャフト達は、そうなる前にケイ達を殺そうと集中攻撃を行う。
集中攻撃を受けながらも、ケイはヘルシャフトを封印していき、ヒバリはケイのフォローをしながら少しずつ、少しずつディモルフォセカの元に近づいて行った。
するとヒバリが妙に足元が冷たい事に気付き、足元を見た。
「なんじゃ? 妙に足元が冷たいでごじゃるな…っ⁉ こっこれは⁉」
そう多くはないが、足元には水が溜まっていた。
ヒバリはまさかと思い周りを見回し確認すると、壁の隙間から水が入ってきている。
水の社を守っていた湖の水が溜り始めたのだ。
「ケイ! 水が、水が溜り始めてるでごじゃる!」
「なんだって⁉」
水が溜り始めていると聞いたケイは周りを見渡し、ヒバリが言った通り、水の社を守っていた湖の水が戻り始めている事に驚いていた。
ただでさえヘルシャフトと戦っているというのに、更に水が溜り始めたという事は、水の社が再び沈み始めたという事になる。
水の社に入ってきた時同様に、一定時間が経つと水の社を守っていた湖の水が入ってくる仕掛けが施されていたようだった。
「あの流れ方、壁の隙間から水が入ってきてる⁉
さっき調べた時には隙間なんてなかった筈なのに!」
「きっと、水の社の仕掛けが作動したのでごじゃる。
今はまだ足首まで使ってはおらぬが、このまま戦闘を続けていたら…」
「完全に水没して皆お陀仏だ…! 急いでディルカ達を連れて脱出しなきゃ!」
一刻を争う事態となった事を知ったケイは、急いで脱出しようとディモルフォセカ達に知らせるべく、一気にヘルシャフトを封印しようとした。
だが、ケイが発動させたチェック・ダ・ロックは完全に外れてしまった。
「チェック・ダ・ロックが外れた⁉ こんな事、一度もなかったのに…⁉」
ケイはチェック・ダ・ロックが外れた事に動揺していた。
溜まり始めた水が動きを制限し、湖の社が沈み始めたという事実が、無意識のうちにケイの焦燥感を駆り立て、いつも通りの動きができなくなっていた。
状況を打開しようと攻撃を続けるが、、ケイの攻撃はヘルシャフトに一つも当たらない。
「なんだ、急に動きが悪くなったぞ?」
「よくわからないが、チャンスだ! このアクアシーフを殺すぞ!」
「クソックソッ! なんで攻撃が当たらないんだよ⁉」
ケイの動きが悪くなった事に気付いたヘルシャフト達は、問答無用で集中攻撃を放つ。
ヘルシャフト達の攻撃を防ぎながら自分も攻撃するケイだったが、軽々と躱されてしまい、余計に焦燥感にかられる。
反ば自暴自棄になりながら、ケイはキャノンズ・キャノンズを発動させようとするが、それをヒバリに止められてしまい、ケイは振り返りヒバリを睨みつけた。
「落ちつくでごじゃるケイ。いくら焦っても状況は改善しないでごじゃる!」
「俺は冷静だよ! 冷静だからこそ急がなきゃいけないんだよ!」
時間が無い事で焦るケイに対し、冷静で対処しようとするヒバリ。
そんなヒバリに苛立ったのか、ケイはヒバリに怒鳴り散らし、ケイはますます怒りと焦りで冷静さを失っていく。
しかしヒバリはこう言ってケイを落ち着かせた。
「このまま闇雲に戦ってもセッシャらに勝ち目はない!
逆に事態を悪化させてやられるだけ、ヨキ殿とマリ殿にも会えなくなるでごじゃるぞ!
お主はそれでも良いのか⁉」
「あ…」
その言葉を聞いたケイは目を見開いて驚いた。
そもそもケイはある事に気付き、その事に驚いていた。本来の目的を忘れていたのだ。
本来なら残るスピリットシャーマンの生き残りを見つけ、謎の竜巻のせいで離ればなれになり、行方知れずになったヨキとマリを探し出して恵の村に帰る筈の旅が、いつの間にか全く違う目的で旅をしていた。
(そうだ、元々スピリットシャーマンの生き残りと、ヨキとマリを探す筈だったのに、今はじゃヘルシャフトを倒す手掛かりを探す旅になってる。
それに、二人の事、すっかり忘れて、逆にヒバリは覚えててくれた…)
スピリットシャーマンの社をめぐり、アーカイブの部品を探し、ヘルシャフトを倒すという目的に切り替わっていた。
それどころかヨキとマリ以外の事で必死になっているし、しかも知らない内に二人の事をすっかり忘れていた。
そんな自分にケイは心底驚いていたが、その事をヒバリは覚えていたのだ。
ヒバリは落ち着きながら、ケイに助言する。
「ケイ、落ち着いて今やらなければならない事を考えるでごじゃる。
そうすればおのずと道は開けるでごじゃる」
ヒバリに諭されたケイは、落ち着いて自分が今やらなければいけない事とは何か、その事を考え始めた。
(俺がやらなきゃいけないのは、アクアシーフの生まれ変わりとして、ヘルシャフトと戦う事?
違う、それは合ってはいる。けど、俺が今やらなきゃいけないのは…)
ヒバリの一言で冷静になり、落ち着いて自分が今なすべき事を考える。
そして、ケイが導き出した答えは…。
「俺が今、やらなきゃいけないのはアクアシーフとして戦う事じゃない。
ディルカを、カトレアを、ラヴァーズとニヤトとタメゴローを助け、守るために戦う事!」
「うむ、その通りじゃ!」
今自分がやらなくてはいけない事にようやく気付いたケイ。
その様子を見たヒバリも、やっと落ち着いたかとケイを見ていると、ケイの持っていた斧(水の礎)とケイの右腕の聖痕が光始めた。
それだけではない、斧から光の糸がヒバリの体に巻き付き始めたのだ。
突然の事に二人は驚いてはいたが、メディアロルで自分達に起きた現象と全く同じである事に気付き、二人はお互いの顔を見て覚悟を決めた。
「「リンク・リンク!」」
リンク・リンクを唱えた途端、光の糸がヒバリを包み込み、ヒバリは取り込まれた。
突然の輝きに気付き、ディモルフォセカ達は一斉にその方向を見た。
一体何が起きたのか理解できず、戸惑っていたがカトレアが斧の形が変わっていく様子に気付き、その事をディモルフォセカに伝えた。
《ディモルフォセカ! ケイの斧が、水の礎が形を変えていってる!》
驚いたディモルフォセカはまさかと思った。
光は徐々に弱まり、そこには翼を模したギガントアックスを持ったケイの姿があった。
そしてすぐにわかった。ケイとヒバリがリンク・リンクを成功させたのだ。
それは空中で逃げ惑っているラヴァーズも、気を失っていたニヤトとタメゴローも気付ける程だった。
「《自由に舞え、水と共に。ヒュードール=オルニス!》」
ヒュドール=オルニスを手にしたケイは、ヒュドール=オルニスを大きく振りかざし、今まで使えなかった法術を唱えた。
「《キューマ・キューマ!》」
ウェーブ・ウェーブと唱えると、ケイ達のいる祭壇の部屋に溜まり始めていた水が荒波になり、そのままヘルシャフト達に襲いかかった。
ヘルシャフト達は荒波にのまれ、荒波はヘルシャフト達を逃がさないと言わんばかりに水の量が増していき、ヘルシャフト達身動きが取れなくなる。
ヒュドール=オルニスの中にいるヒバリはケイに告げる。
《ケイ、ヘルシャフト達を封印するのは今がチャンスでごじゃる!》
「おう! 行くぞヒバリ!」
《承知!》
そしてケイは荒波に捕らわれたヘルシャフト達に向かってメディアロルで唱えた法術を唱えた。
「《タラッタ・ロック!》」
タラッタ・ロックを唱えたケイは、アクアスワロウを大きく振るう。
ヒュドール=オルニスが足元の水に触れたと同時に一定範囲で輝きだし、キューマ・キューマと同じように波を起こしたが、その波は光り輝いていた。
輝く波は一気に残るヘルシャフト達を封印した。
「ぃよっしゃーっ!」
「凄い! ケイさんとヒバリさんのリンク・リンク!」
「めっちゃ凄いで! かっこええでケイ!」
ついにリンク・リンクを習得したケイは、ヒュドール=オルニスを抱えたまま喜んだ。
空中でケイの活躍を見ていたラヴァーズとニヤト、タメゴローはケイとヒバリのリンク・リンクに興奮していた。
ディモルフォセカはリンク・リンクを解き、エピン=カルマンの中からカトレアが出てきた。
形を変えたトーチも、いつもの形に戻った。
「一時はどうなるかと思ったけど、何とか助かったね。ディモルフォセカ」
「えぇ、ついこの前まで見習シャーマンだったのに…すっかり成長していたのね、ケイ」
ディモルフォセカは知らないうちにスピリットシャーマン、アクアシーフとして成長していたケイを見ていた。
最初に出会った頃は、何故か法術を爆発させるという謎の現象を引き起こしていたが、今では頼れる存在にまで成長していた。
ケイはリンク・リンクが成功した事に喜び、はしゃいでいたが、いきなりディモルフォセカ達の目の前で倒れてしまった。
「「「「ちょっえぇー⁉」」」」
《ケッケイーッ⁉》
突然、目の前で倒れたケイに驚き、ディモルフォセカ達は慌ててケイのもとに駆け寄り、安否を確認する。
ケイが倒れた事でリンク・リンクが解けたのか、ヒュドール=オルニスの中にいたヒバリが出てきた。
形を変えていた斧も、いつもの形に戻った。
いきなりディモルフォセカ達の目の前で倒れたケイは、カトレアとラヴァーズの診断の結果、ただ気を失っているだけだった。
「…気絶してるだけみたいですね」
「体力をほとんど使い果たしたのね」
(成長したと思ったのに、まだ半人前ね)
ケイがただ気絶しただけだと知ったディモルフォセカは心の中でそう呟いた。
(ん? なんだ、体が妙に冷たいな…)
すると気絶したケイは不意に目を覚まし、妙に体が濡れている事に気付くと同時に水がさっきよりも溜まっている事の気付き、水の社が沈み始めている事を思い出して慌て始めた。
「やばい、さっきよりも水が増えてる!」
「そっそうでごじゃった! 湖の水が入り込んできて、水の社そのものが沈み始めていたでごじゃる!」
「え˝っ! この浸水ってヘルシャフトの仕業やなかったんか⁉」
ヘルシャフト達との戦闘中に気絶していたため、祭壇の部屋が浸水している理由がヘルシャフト達の仕業だと思い込んでいたニヤトは、水の社そのものが沈み始めているとは思わず酷く驚いていた。
二人の話を聞いていたディモルフォセカ達も、戦闘中は余裕がなかったため浸水の原因がヘルシャフトではなく、水の社そのものに原因があるとは考えていなかったようだ。
「待って待って! ヘルシャフトがどさくさに紛れて壁を破壊したからじゃないの⁉」
「ニヤトさんをかかえてにげ回ってたんですけど、ダレもかべにはこうげきしてなかった気がします…」
「アタシも炎の礎の中から見てたけど、ラヴァーズの言う通りよ。
よくよく考えると、入る時同様に何かしらの仕掛けがある可能性もあったわね」
「ってそうこうしてる内にだんだん水の量が増えとる⁉」
「このままじゃ水の社が沈んでセッシャらもひとたまりもないでごじゃるよ!」
「全員今すぐ脱出だぁああああああっ!」
それを聞いたディモルフォセカ達は、急いでヘルシャフトが封じられている宝石を集め始めた。
近くにあるのはケイ達が拾い集め、遠くにあるのはディモルフォセカがスイング・スイングで集め、全て集め終えると、そのままケイ達は出口に向かって走り出した。
ギリギリの所でケイ達は無事に水の社から出る事ができ、水の社は再び湖の底に沈み、もう入る事はできなくなった。
それを見たケイ達はほっとしたのか、力が抜けその場に崩れた。
「それにしても、ケイは凄いで。あんなでかい斧を軽々と使いこなすんやから」
「いや~、俺でもあんなにでかいの振り回せるとは思ってなかったよ」
「それにしても、終焉の種ってなんなのかしら?」
「呼ばれ方からして、とてもいい物ではなさそうね…」
ケイ達は水の礎が収められていた祭壇の間の壁に書かれていた、終焉の種と呼ばれるものについて考え始めた。
そんな時、何処からともなく少年の声が聞こえて来た。
「やはり、やはり水の古文書はお前達が持っていたのか…」
少年の声を聞いたケイ達は少年の声がした方向を向くと、そこには黒いネックウォーマー状のチュニックを着た少年が木にもたれかかって立っていた。
ネックウォーマー状のチュニックを着た少年を見たケイ達はすぐその少年が何者なのかが解った。
ヘルシャフトによって精霊石に宿る力を体内に宿し、まだ見ぬ脅威となる者達を暗殺する執行人として育てられた才能ある少年少女達、フォルシュトレッカー。
実力はまだはっきりしたものではないが、ヘルシャフトに鍛えられ上げたという事もあってとても強い。
連係プレーもできている。ケイ達はネックウォーマー状のチュニックを着た少年を見て身構えた。
「僕はフォルシュトレッカー・ツヴィリンゲ、三番目の執行人さ」
「貴方、いつからそこにいたの?」
ディモルフォセカはツヴィリンゲと名乗った少年にいつからいたのかを聞いた。
するとツヴィリンゲは普通に答えた。
「ずっといたよ、ディモルフォセカ・ガーネット。お前達が水の社から出てきた時からずっとね」
「どうして私の名を…⁉」
「先手必勝だ!」
ディモルフォセカは、ツヴィリンゲが自分の名前を知っている事に動揺するが、ツヴィリンゲは当たり前だといった様子でディモルフォセカを見る。
ケイはリンク・リンクで体力がほとんどないというのに、ツヴィリンゲに攻撃を仕掛けた。
だがツヴィリンゲはケイの攻撃を軽々と躱し、ケイとの距離を取った。
ツヴィリンゲが距離をとったのを見たケイは遠距離攻撃に出た。
「キャノンズ・キャノンズ!」
キャノンズ・キャノンズを唱え、斧の先端から放水砲をツヴィリンゲに向けて打ったが、ツヴィリンゲはそれをも軽々と躱したのだ。
ツヴィリンゲは腰の剣を手に取り、剣の刃に炎を灯した。
剣に灯った炎をそのまま振りかざすと、炎の狼が生み出され、危険を感じたディモルフォセカはケイの前に躍り出て狼達をトーチの炎で止めた。
「この狼達は私が食い止める! その間にケイはアイツを…⁉」
ディモルフォセカはケイに指示を出してツヴィリンゲに攻撃しようとするが、いきなり口を閉ざした。
炎の狼達がトーチの炎をすり抜けたのだ。それを見たケイ達は驚いた。
炎の狼達はそのままディモルフォセカの周りを取り囲み、炎の鎖や首輪、鳥籠のような檻になってディモルフォセカを捕らえた。
「ディルカ! 待ってろ、今助ける!」
捕らえられたディモルフォセカを助けようと、ケイはディモルフォセカのもとに駆け寄ろうとした。
しかし、いつの間にかツヴィリンゲがケイの目の前に現れたのだ。
ツヴィリンゲはケイに攻撃を仕掛けた。
その攻撃をケイは斧で受け流し、ツヴィリンゲに反撃するべく斧を振るった。
だが攻撃は躱され、再び炎の狼達が襲いかかってきた。
ケイは炎の狼達を次々倒していくが、一向に減る気配がない、むしろ増えている。
(なんなのあの狼達⁉ まるでディモルフォセカの…)
炎の狼を見て驚いているカトレアは、それをディモルフォセカの何かに例えようとしていた。
「考えるのはあとにして、今はディモルフォセカとケイを助けなきゃ!」
「ケイ! セッシャも今そっちに…」
二人がケイとディモルフォセカのもとに行こうとした時、後ろから蔦が生え、二人に襲いかかった。
突然の事に驚いた二人は、思わず動きを止めてしまった。
だが幸いにもラヴァーズはヒバリを抱え空中に、ニヤトはディモルフォセカを抱きかかえてよけたおかげで二人は助かった。
だがその間にもケイはツヴィリンゲの攻撃を受けている。
「ケイ! くっ……!」
檻に閉じ込められてしまったディモルフォセカは、なんとかして脱出しようと手に持っていたトーチを使って檻の破壊を試みた。
スイング・スイングを唱え、トーチの炎は大きく波打つように檻に当たるが、破壊されず、むしろ目を疑う出来事が起きた。
ディモルフォセカの炎が、ツヴィリンゲの炎をすり抜けたのだ。
こんな事が起きる筈がないからだ。
(すり抜けた⁉ まさか…)
自分の炎がツヴィリンゲの炎をすり抜けたのを見たディモルフォセカは、一つの答えに辿り着いた。
「ファイヤーファントムのトリック・トリック⁉
どうして法術を…!」
ディモルフォセカはツヴィリンゲが法術を使う事が出来る事に驚き、混乱したが、その謎はすぐに解けた。
「ようやく見つけた、僕の小夜啼鳥。さぁ、歌って。僕のために綺麗な歌を歌って」
ツヴィリンゲは顔をディモルフォセカに向けた。
よく見ると、髪と瞳の色は違えどツヴィリンゲの顔がディモルフォセカに似ている、否、瓜二つだった。
その場にいた全員が信じたくはないが、まさかと思った。
そして笑いながら、ツヴィリンゲはこう言った。
「綺麗なお歌を歌ってよ、“ディルカ姉ちゃん”」
生き別れた弟が、探していた弟が、今敵として目の前に立っている事に、ディモルフォセカは喜びと絶望に襲われた。




