第30話 湖の底の遺跡
ケイが持っている水色の斧、水の礎が収められていた水の社がある場所に辿り着いたケイ達。
そこはかつてアクアシーフ達が住んでいた集落の跡地で、その名残が残っているように思えた。
「ここがアクアシーフの集落があった湖ね、建物の跡が今でも残っているみたい」
「ここに水の社があるんだな…」
「でも、それっぽい建物は見当たらないわよ?」
ケイ自身ここで生まれた訳ではないので、懐かしさなどは特に感じなかったが、全てはヘルシャフトに勝つため、アーカイブの謎を解くために来たのだ。
だがそこにはそれらしき遺跡は全く見当たらず、あるのは底が深い大きな湖と、かつてのアクアシーフが住んでいた集落跡があるだけだった。
それを見たケイ達はあまり期待できずにいた。
「なぁケイ、ホンマにここであってるんか?」
「可笑しいなぁ、確かにここにあるって水の古文書に書いてたのに…」
水の古文書の情報通りに着たにも関わらず、水の社が見当たらない事に首をかしげるケイ。
自分達がいるこの場所に水の社があるのは間違いないのだが、何処にあるのか皆目見当がつかない。
何か手掛かりはないかとラヴァーズは翼を広げて空を飛び、周りを見渡した。
だが何処を見渡しても水の社らしき建物は見つからず、湖の方に近づいた。
すると何かに気付いた。ラヴァーズはすぐにその事を伝えるべくケイ達の元に戻った。
「ねえさんみなさん、みずううみの中に何かありますよ」
「湖の中?」
「手掛かりでごじゃるか、セッシャが確認してみるでごじゃるよ」
それを聞いたケイ達はどういう事なのかがわからなかった。
そこでヒバリが湖の方へ行き、何があるのかを確かめるために湖の中を覗き込んでみると、ヒバリは驚いた様子で目を見開き、大声で叫んだ。
「こっこれはぁ⁉」
突然大声で叫んだヒバリの声を聞いたケイ達は、何事かとヒバリの元に駆け寄った。
「どうしたんだヒバリ、何かあったのか⁉」
「それが、その、あの…⁉」
「腰を抜かすだけじゃなく、完全に可笑しくなっとる…」
(ヒバリがこうなったのは湖に顔をつけてから。
となると、ラヴァーズが見つけた湖の底にあるのものが原因なら、考えるより直接確認した方が良さそうね)
ヒバリは腰が抜けたのか、ただ座ったまま湖の方を見つめていた。
ヒバリが可笑しくなった原因はラヴァーズが言っていた湖の中にある何かだと考えたカトレアは、湖の中に何があるのか確認するために頭を湖に着け、湖の中を確認した。
湖の中にある物を見たカトレアは、湖から顔を話してケイ達に声を掛けた。
「皆、湖の底を見て!」
それを聞いたケイ達もすぐさま湖の中を確認すると、目を疑うかのような光景が見えた。
それは、“湖の底に遺跡が立っているのだ”。
「湖の底に、大きな建物⁉」
「どうなってんだこれ⁉」
湖の底に建っている遺跡、それこそケイ達が探していたアクアシーフの誇りであり、水の礎が納められていた水の社だった。
それを見たケイ達は驚愕のあまり呆然とするしかなかったが、ニヤトのみ湖の底に水の社がある事に対して驚きの声を上げた。
「すっげー! 湖の底に遺跡があるー‼」
ニヤトの大声は相変わらずのもので、何故か湖の水面は波が立ち、どういう訳か岩にはヒビが入り、周りにいたケイ達を吹き飛ばした。
ディモルフォセカ、カトレア、ヒバリの三人は廃家の方に転げて壁にぶつかり、ケイとラヴァーズの二人は湖の中に放り込まれた。
タメゴローは猫という事もあり空中に投げ出され、落ちてきた所を起き上がったディモルフォセカに受け止められた。
「二~ヤ~ト~、なんべんも言いよるけどええ加減その大声何とかしんさいよ!」
「ぎゃにゃ―っ! かんにんやかんにんやかんにんやかんにんやかんにんや…!」
起き上がったカトレアはニヤトに怒鳴り散らし、カトレアにしかられながら許しを求めるニヤト。
そんな二人の様子をヒバリとディモルフォセカは呆れた様子で見ながら、ニヤトの大声で湖に放り込まれたケイとラヴァーズの元に駆け寄った。
湖に放り込まれた二人は水面から顔を出し、水面から出て来た二人を見たヒバリはすかさず声をかけた。
「二人とも大丈夫でごじゃるか?」
「はい。それよりもみずうみの底に沈んでるイセキ、もしかしてこれが水のやしろなのでは?」
「そう考える他ないでしょうね。
他の遺跡が無いし、最初にここへ来た時に遺跡を見つけられなかったのも納得がいくわ」
「通りで見当たらないし、ヒバリが可笑しくなる訳だ…」
ディモルフォセカのその言葉でケイ達は湖の底にある遺跡を見つめた。
湖の底に建っているともなれば、ヒバリが驚くのも無理はない。
ようやく見つけた水の社。
しかし、湖の底にあるという事でそう簡単に近づく事はできず、潜って近付こうにも湖の底が深すぎるため、息が持ちそうにない。
「ラヴァーズ、湖の水を操れそうか?」
「う~ん、むりそうです。このみずうみの水そのものにフウインの力が宿っているみたいで、ぼくの力じゃピクリともしません…」
「それって、ラヴァーズが触れても大丈夫なのでごじゃるか?」
「水のやしろに近づけないようにするだけで、ふれることじたいはもんだいなさそうです」
更に湖その物にヘルシャフトの力が干渉できないよう、封印の力が宿っているため水を操る事ができるラヴァーズでも、解決する事ができない。
そこでケイ達は『水の古文書』を使って水の社に入る方法を調べる事にした。
「バラバラになったとはいえ、古文書である事に変わりないんだ。
手掛かりの一つや二つ記されてても可笑しくない筈だ」
「とりあえずカトレアとニヤトにも声を掛けておきましょう。
ちょっとニヤトがかわいそうになってきたわ…」
ディモルフォセカの視線の先には、未だにニヤトに怒鳴る形で説教を続けるカトレアと、カトレアに怒鳴られ続け、精神的に疲労困憊しているニヤトの姿があった。
「たしかにかわいそうですね、ニヤトさん…」
「いい加減止めに入らぬと倒れそうでごじゃるな…」
これ以上はニヤトが限界だと判断したヒバリ達は、カトレアに声を掛けてニヤトへの説教を中断させた。
その後、湖の周辺に水の社へ入る方法が記された石碑があるという事がわかり、ケイ達は入念に湖の周りを調べ、石碑を探し始めた。
それからしばらくして、湖の岸の一角に水の社へ入る方法が記された石碑を見つけ、石碑の内容を確認したが古い文字で書かれていたため、読む事ができなかった。
「これ、なんて読むんだ?」
「いわゆる古代文字と呼ばれる類いみたいね。
昔古代文字の勉強をした事はあるけど、地域ごとに違ってくるし、この文字も見た事がないから解読できないわ」
「ケイさん、水のコモンジョでカイドクできませんか? やってみて下さい」
「できなくもなさそうだな、分かった。やってみるよ」
そう言うとケイは水の古文書を掲げて解読を試みた。
すると石碑に記された古代文字の内容が翻訳され、水の古文書に訳が記され始めた。
古代文字を翻訳した水の古文書にはこう書かれていた。
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湖に眠りし水の社、盗賊としての才能を引き出すための聖なる場所なり。
試練を受ける事を望みしもの必ずやその印として『盗賊の花』を見つけ納めよ。
さすれば水の社での試練、受けることを許され道は開くであろう。
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「盗賊の花? 盗賊の花ってなんの事や?」
「盗賊に関係のある花言葉か、あるいは花の名前を現しているのかしら?
ディモルフォセカ、何か心当たりない?」
「私の知ってる限りで、盗賊に関係のありそうな花は思い当たらないわ。
その様子だと、カトレアも心当たりはないのね」
ディモルフォセカは、レイトゥーンで花屋の老婆に育てられていた時の事を思い出しながら、盗賊の花に当てはまる花はないかと考えた。
だが、一度も盗賊の花と呼ばれていた花は一つも中区、カトレアも自分の記憶にある花の中に当てはまる花はなかったようだ。
「セッシャもよく辺りを探索してはいるが、あった区心当たりはないでごじゃる…」
「ワイもちんぷんかんぷんや」
「ぼく、しょくぶつについてあまりくわしくないです…」
「盗賊の花、か…」
食料調達の際に山菜や野草などを採取しているヒバリも、盗賊の花に関して心当たりはなく、ニヤトとラヴァーズに至っては植物に関する知識は皆無に等しい状態だった。
不意にケイは古文書を置いて立ち上がり、タメゴローを抱えて歩き始めた。
ヒバリはケイに何処へ行くのかを尋ねる。
「ケイ、一体何処へ行くでごじゃるか?」
「盗賊の花を探しに行ってくる。ニヤト、タメゴロー借りてくぞ」
ケイはそう言うとタメゴローを連れ、そのまま森の中に入っていった。
ケイがタメゴローを連れて森に入ってから時間は経ち、夜になってもケイとタメゴローは戻ってこない。
心配になったカトレアとニヤトは探しに行こうとしたが、それをヒバリに止められた。
二人は何故探しに行かないのかをヒバリに問いただした。
「ケイは山中の村で育ったのじゃ。森の事についても詳しい。じゃからセッシャらは信じて待ってやろう」
そう言ってヒバリはそのまま精神統一をして、ケイとタメゴローの帰りを待った。
ヒバリにそんな事を言われたニヤトとカトレアは仕方なくその場に座り、ケイとタメゴローの帰りを待つ事にした。
するとラヴァーズが鞄に入れていた竪琴を取り出し、ディモルフォセカの前に持ってきた。
「ディルカさん、うたをうたってくれませんか?」
「え? 歌を?」
「はい! メディアロルを出てから、一度もディルカさんの歌を聞いてなかったから、ずっともう一度聞きたいなぁって思ってたんです!」
「おぉ! それをナイスアイディアやで、ラヴァーズ!」
「どうせケイとタメゴローが戻ってくるまでする事もないし、丁度いいんじゃない?」
行き成りラヴァーズに歌を歌ってほしいと求められたディモルフォセカは戸惑ってしまった。
ラヴァーズのラヴァーズの提案を聞いたニヤトとカトレアも、ディモルフォセカに歌を歌うように求めてきた。
「仕方ないわね。ラヴァーズ、竪琴を貸して」
どうせケイが戻ってくるまで何もできない事もあり、ディモルフォセカはラヴァーズから竪琴を受け取ると、仕方なく歌を歌う事にした。
ディモルフォセカがハープを手に歌っている間もケイとタメゴローが戻って来る事はなく、そのまま朝になった。
ぐっすりと眠っているディモルフォセカ達に対し、ヒバリは精神統一をしたまま起きていた。
すると茂みの方から足音がした。
「皆、起きるでごじゃる!」
その音に気付いたヒバリhあはディモルフォセカ達を起こし、臨戦態勢に入った。
ヒバリに起こされたディモルフォセカ達も起き上がり、茂みに向かって臨戦態勢に入った。
だが、その茂みからタメゴローが飛び出してきたのだ。
その後からケイも茂みから出てきた。
「「「ケッケイィ/さぁん⁉」」」
「タメゴロー! やっと戻って来たんか」
「ただいま~。いやぁ結構戸惑っちゃってさ。遅くなってごめんな」
笑っているケイをポカンと見つめるディモルフォセカ達に対し、誰よりも先にソラと旅をしているヒバリは笑ってケイを見ていた。
そんなケイの手には、季節外れの桜が咲いた枝が握られていた。
それを見たカトレアは、ケイに何処で桜の枝を手に入れて来たのか訊いた。
「ケイ、その桜の枝何処で手に入れたの? 今の季節だともう桜は咲き終わってしまったはずだけど…」
「これか? 森の中で探してて、タメゴローが見つけてくれたんだ」
「タメゴローが見つけたのはわかったけど、どうして桜なの?」
「昔近所のじいちゃんから花盗人って言葉を聞いた事があって、花を持って行く人が由来になったのを思い出したんだ。
特に桜の花の枝を手折っていく事が多かったらしくて、もしかしたらこの辺りに桜の木があるんじゃないかと思って、森中を探し回ったんだ。
いやぁ、当たりの木を見つけるのは大変だったよ」
「当たりの木って、どういう事?」
ケイの口から当たりの木という言葉を聞いたディモルフォセカは、当たりの木というのがどういう意味なのか理解できず尋ねると、ケイは今持っている桜の枝が生えていた桜の木を見つけるまで、他にも桜の木を見つけたのだそうだ。
水の社に入るための鍵という事もあり、桜の木その物にも何か仕組みがあるのではないかと思い、見つけた桜の木に手当たり次第に触れて変化がないか確認して回り、最後にタメゴローが見つけた桜の木に触れた時に、春が終わったにも関わらず桜が咲き始めたのだそうだ。
ケイはそう言うと桜の枝を湖に浮かべた。
すると水面が光始め、湖が水の社の入口にそって割れて行き、水そのものが水の社へと続く階段へと変化した。
「湖が割れて、水の社に繋がる道ができた⁉」
「このような仕掛けがあったとは、信じられないでごじゃる…」
「皆、行こう」
ケイ達は水の階段を下り、水の社の中に入っていった。
水の社の中は、炎の社同様に迷路のように複雑になっており、炎の社とは違い罠が沢山仕掛けられていた。
そういった罠はケイが見つけて解除していき、水の社の最上階へと進んでいく。
そして水の社の最上階の部屋に辿り着き、そこはかつて水の礎が収められていたとされる部屋で、壁には何か書かれていた。
「この古代文字、外にあった石碑と全く同じものね」
「外の石碑同様、水の古文書で翻訳できる筈よ」
「よし、やってみよう」
水の社へ入るためのヒントが書かれていた石碑同様、古代文字で書かれていていたため、ケイは石碑の時と同様に水の古文書を掲げ、壁の古代文字を解析した。
「おっ、翻訳できたみたいだ」
「本当⁉」
「でも、アーカイブの事は書かれてないみたいだな…変わりによくわからない事について書かれてる」
「ケイ、この壁に書かれてる内容を読み上げてくれる?」
壁に書かれている文字の内容を理解しようと、カトレアはケイに文字の内容を訊ねた。
ケイは仲間達に聞こえる音量で、水の古文書に浮かび上がった古代文字の内容を読み上げ始めた。
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終焉の種は、通常の種の姿をしてはいない。
ある時は壺、またある時は剣と姿を変え、自身の苗床となる器を探す。
しかしその姿、この世のものではない。
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終焉の種の特徴が記されたであろう文章を見たケイ達は、文章の意味がわからなかった。
「終焉の種、てなんの事や? ディルカ、なんかわかるか?」
「わからないわ。父さんからそんな言葉聞いた事もないし、私も今ここで初めて聞いた言葉よ」
ディモルフォセカも心当たりはないらしく、それぞれの顔を見合せながら終焉の種がなんなのかを考えた。
すると上の方から何やら妙な音が聞こえてきたため上を見ると、そこには物凄い数のヘルシャフトが飛んでいた。
「ヘルシャフト! どうしてここに⁉」
「きっと水が引いて、中に入って来たんだわ! 皆、散るのよ!」
ディモルフォセカの掛け声と同時にケイ達は一斉に散開する。
だがそれぞれがバラバラになるという事はとても危険、一人一人が命懸けの戦いをする事になる。
ケイ達は六人と一匹に対し、ヘルシャフトは軽く百人は超えているため、明らかにケイ達が不利だった。
ニヤトとタメゴローはヘルシャフトを蹴り飛ばしたり引っ掻いたりとして攻撃し、ラヴァーズは水桜鏡でヘルシャフトを閉じ込めていく。
ディモルフォセカはと奥の方にいるカトレアと合流を試みながら法術でヘルシャフトと戦い、チェック・ダ・ロックで封印していく。
カトレアもまた、ヘルシャフトと闘いながらディモルフォセカの元に向かっていた。
「ディモルフォセカ、リンク・リンクよ! こんなにいるんじゃアタシ達やられちゃうわ!」
「解ったわ!」
二人は互いに近づいていき、そう離れていない距離まで来ると二人はリンク・リンクを唱えた。
「「リンク・リンク‼」」
二人はリンク・リンクを唱え、燃える熱情、エピン=カルマンを顕現させた。
「《ダルティフィス・ダルティフィス!》」
ヨルとロリ―の二人と戦った時に使用したダルティフィス・ダルティフィスで、次々とヘルシャフトを打ち落としていき、新たなる封印の法術を唱えた。
「《ラ・フラム・ロック!》」
ラ・フラム・ロックの炎は想像以上異常の速さで、ヘルシャフトを封印していく。
ヘルシャフトが一気に減少し、残る数は二十にも満たなかった。
しかしディモルフォセカは急に力が抜けたようにその場に座り込み、突然のディモルフォセカの異変に気付いたカトレアは、ディモルフォセカに声をかけた。
《ディモルフォセカ! どうしたの⁉》
「ナッ何…力が…急に…」
(まさか、リンク・リンクでの法術の使用は体力の消費が激しいの⁉)
突然座り込んだディモルフォセカの様子を見たカトレアは、リンク・リンクが自分が思っていた想像以上に、ディモルフォセカの体力を消費させている事に驚き、ディモルフォセカも突然の事に戸惑っていた。
その間にもケイ達はヘルシャフトと闘っていたが、ニヤト、タメゴロー、ラヴァーズはヘルシャフトの攻撃をまともに受けてしまい、絶体絶命の危機に立たされた。




