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第28話 秘められた可能性、リンク・リンク

 水の社を目指して旅を続けるケイ達の目の前に現れた仮面の青年ヨルと堕天のヘルシャフト、ロリーから告げられたフォルシュトレッカー誕生の経緯と、切り札となりえるディモルフォセカとカトレアに秘められた可能性。


 その意味はわからないが、二人に秘められた可能性をヘルシャフトが恐れているらしく、その可能性を潰そうとヘルシャフトはカトレアを捕えて十三番目のフォルシュトレッカーにしようとしている事を告げられた。


 ヨルは何故かケイ達に旅をやめるようにいったが、ケイ達は旅を辞めるつもりはないと意思表明を行動で示し、ヨルとロリーと戦う事になった。


 愛称的にはロリーは炎、ケイとラヴァーズが水と言う事で、ケイとラヴァーズの方が有利だが、ヨルがどういう方法で攻撃してくるかわからない。

 それでもケイ達は全力で二人に戦いを挑んでいた。


「スマッシュ・スマッシュ!」


「スイング・スイング!」


 ケイとヒバリはロリー、ディモルフォセカとカトレアはヨルに攻撃した。

 ニヤトとラヴァーズは体当たりをしたり、物を投げたりと自分達なりにケイ達をサポートした。

 だがケイ達の攻撃は簡単に(かわ)されてしまう。

 ロリ―は冷静にケイ達の動きを観察しながら、ケイ達の実力を見極めていた。


「マスター、こいつらそこそこやる方みたいですよ」


「今までの旅で出会ったヘルシャフトにフォルシュトレッカーとの一戦、それが彼らを強くしたみたいだね」


「それでもマスターには遠く及びません」


 ロリーはケイ達の実力を見極めると、ケイの隙をついて炎を発火させた。

 慌てて避けたケイだったが、頭に巻いているターバンの先に火が付いてしまっていたが、ケイ本人は全く気付かない。

 ケイが気付かない代わりに、ヒバリがケイのターバンに火がついている事に気が付き、慌ててターバンに火が付いている事をケイに伝えた。


「ケイ! 火が着いてるでごじゃるよ!」


「えっ? ギャーッ⁉」


 漸く自分のターバンに火が付いている事に気付いたケイは慌て始め、火を消すという選択をせず戦闘を放棄して走り回り出した。

 その様子ヒバリも慌ててケイのターバンの先についた火を消すために、ケイの後を追いかけ始め、二人のやり取りを見ていたロリ―は呆れた様子でよくこれまで生き残る事ができたものだと思っていた。


「こんな時に何してるのよ?」


「ディモルフォセカ、気持ちはわかるけど今はこっちに集中!」


 ヨルと戦っているディモルフォセカとカトレアも、二人のやり取りを見ていたため何をしているんだという反応をしながらも戦闘を続ける。

 ディモルフォセカは離れた所からトーチ(炎の礎)を振るい牽制し、その隙にカトレアはヨルとの間合いを詰め、ヨルの顔面目掛けて勢いよく右足を蹴り上げるが、ヨルは素早く後方に下がりトーチの炎を杖で簡単にいなす。


 それでも二人は攻撃の手を緩めず、ディモルフォセカはトリック・トリックを唱え実態を持つ炎の鳥の群れを作り、炎の鳥の群れに紛れて再びヨルとの距離を詰めるカトレアはもう一度ヨルに向かって大きく蹴り上げる。

 ヨルはひらりひらりとその攻撃すら簡単に躱していき、目の前にいるカトレアに向かって杖を振るう。


 カトレアは素早く体勢を立て直し、バク転する形でヨルの攻撃をかわすと同時に後方へ下がり、同時にディモルフォセカが前衛に回りヨルに攻撃を繰り出す。

 ディモルフォセカの怒涛の鞭裁きを受けながらも、その猛攻すら素早く躱していくヨルは未だに残っている炎の鳥達を杖で叩き落していく。


(中々精度の高い幻影だな。それに戦闘に向かない鞭を上手く使いこなしている、この中では一番戦闘経験があるんだろうね)


「ディモルフォセカ、代わって!」


「カトレアお願い!」


(成程、前衛と後衛を入れ替える事で僅かな隙を作りお互いに攻撃のチャンスを作る。

 互いを良く知る中だからこそできる、彼女達ならではの戦い方なのだろう)


 ディモルフォセカとカトレア、自分への攻撃の手を緩めない二人の息の合ったコンビネーションに感心するヨルだが、動じる事なく攻撃を躱していく。

 ターバンに着いた火を消したケイとヒバリも体勢を立て直して再度ロリーに挑んでいた。


 二人はディモルフォセカとカトレアとは違い、二人掛かりで近接戦に持ち込む事で有利な状況に持ち込もうとしていた。

 そんな二人が少しでも動きやすいように、ニヤトとラヴァーズは後方から支援する形でロリーの頭上に攻撃する。


(あちらはロリーを空中に逃がさないようにする事で、体力を減らしあわよくば戦意喪失に持ち込もうという考えかな?

 だけど残念、そうなった時の対策は政策済みなんだ。

 それに、このまま同じ事を繰り返していると僕の思うツボだよ?)


 ヨルの考えている事など露知らず、ケイ達は必死に攻撃を繰り出す。

 一見ヨルとロリ―を追い詰めているように見えるが、体力の消耗は明らかにケイ達の方が激しい。

 その時カトレアはヨルとロリーの二人が全く疲れていない事に気付いた。


「ディモルフォセカ! あの二人、全然疲れないわ!」


「そんな筈ないわ、あれ程私達の攻撃を躱しているのに!」


 驚いたディモルフォセカの声に反応したケイ達も、ようやくヨルとロリ―が疲れていない事に気付いた。

 冷静に見ると、確かにヨルと年が近い筈のロリーは疲れている様子がない。

 むしろ全く体力が減っていないというべきだろうか。

 何故二人は平気なのか解らなかったケイは、今まで二人の攻撃パターンを思い出し、ある事に気付いた。


「(そう言えばコイツら、全然攻撃してこない……そういう事か!) 皆! コイツら全然疲れてない理由がわかったぞ!」


「ホンマかケイ⁉ どんな手を使っとるんや⁉」


 少し離れた所からケイに聞くニヤト。

 ニヤトに聞かれたケイはついさっき気付いた事を、周りにいる仲間達全員に聞こえるように大声で言った。


「コイツら、攻撃を躱しているだけで全然攻撃してこないだろ?

 攻撃してないのと、無駄のない動きで俺達の攻撃を躱している分、体力が減らないんだ!」


「そうか! 自分達への負担を減らす事で、体力の消費を抑えてたのでごじゃるな!」


「ようやく気付いたみたいだね。だけど残念、君達の体力はすっかり減ってしまったみたいだね」


 ケイが気付いた事を聞いたディモルフォセカ達は、ヨルとロリーが全く攻撃せず自分達の攻撃を躱すだけという行動パターンしかとっていない事にようやく気付いた。

 確かにヨルとロリーは自分達の攻撃を躱しているが攻撃しようとはせず、ただ躱すだけなのに対し、ケイ達相手に攻撃するチャンスを作らせないように、攻撃し続けているため体力が減っていく。


 何よりケイとディモルフォセカは、法術をほぼ連続で使っているため体力の消耗が激しい。

 どうやら相手は随分と戦いなれているらしく、あえてこちらに攻撃させて体力を奪っていく作戦だったようであった。


「自分達の体力消費を抑えつつ、わざと攻撃させてこっちの体力を減らしていたの⁉」


「嘘、全然気づかなかった…」


「ぼく、はなれた所からサポートしてたつもりだったのに……、みなさん、ごめんなさい」


「そんなん言うたらワイも同じや。こっから巻き返して行くで」


 ヨルの作戦に気付く事ができず落ち込んでいたラヴァーズに激励するニヤトは、先程までのケイとヒバリのように、自分も近距離で戦闘に参加するつもりのようだ。

 不利な状況にもかかわらず諦めないニヤトの姿を見たケイ達も、ヨルとロリ―に勝つ方法があると信じ、もう一度体勢を立て直す。

 諦める気配のないケイ達の様子を見たヨルは、仮面越しに微笑みながら杖の先端をケイ達に向ける。


「本気を出す必要がある訳じゃないけど、少しだけ本気になってみようかな?」


 そう言ったヨルの言葉にケイ達は耳を疑った。

 少しだけ本気を出すという事は、ヨルは一度も全力を出さず、常に手加減して戦っていたという事になる。


 ヨルはケイ達にはわからないくらいの大きさで言葉を囁くと、周囲に風を起こし始めた。

 その風はただケイ達の周囲で吹いているだけではなく、だんだん激しくなり、いつしか竜巻になっていった。

 自分達の目の前に現れた竜巻を見たケイ達は驚いた。


「嘘でしょう? 竜巻⁉」


「あんなに凄そうなのを受けたらひとたまりもないですよ!」


(確かにあんなの喰らったらひとたまりもない。

 でもあの竜巻、少し違うけど俺をヨキとマリから引き離した竜巻に似てる…?)


 ケイはヨルが作り出した竜巻が自分をヨキとマリから引き離し、ヒバリの故郷であるキザミの里に飛ばした謎の竜巻に似ている事に気付き、その竜巻の圧倒的な存在感に完全に見入っていた。

 しかしそのせいで竜巻の影響により巨大な岩が飛び、ケイめがけて飛んで来た事に気付いておらず、近くにいたニヤトが気付き咄嗟にケイを助けた。


「ケイ、危ない!」


「うわっ!」


 巨大な岩はケイがいた場所に勢いよく落ち、それを見てようやく自分が危険な状況に遭った事に気付いたケイは、ニヤトのおかげで命拾いをした。

 もし直撃していたらひとたまりもない。むしろ死んでいたかもしれない。

 ニヤトはケイに怪我がないか確認しながら、声を掛ける


「大丈夫かケイ⁉」


「あっありがとうニヤト。あの竜巻に驚いてつい」


 ヨルが巻き起こした竜巻と、聖なる祠で起きた謎の竜巻が似ているという疑問は残ったが、今はその疑問について考えている余裕はない。

 ケイは立ち上がり、深く深呼吸をして(水の礎)を握り直す。


 一方のヨルはどんどん風を強め竜巻を大きくしていく。

 その竜巻にロリーが起こした炎を竜巻に加えると、ロリーの炎がたちまち竜巻全体に広がり、炎の竜巻が出来上がった。


 炎の竜巻が出来上がったのを見たケイ達は驚きを隠せず、この炎の竜巻を食らえば、先程の竜巻と違い確実に無事はすまないと思った。

 そんなケイ達の様子を見たヨルは軽くほほ笑んだ。


「そんなに驚く事かな? 風はありとあらゆるものを切り裂き、ありとあらゆるものと一つになる事ができる」


「炎は風に吹き消されてしまうが、その炎を風は増やす事ができる。

 マスターならこれくらい簡単さ」


 ロリーがそう言った後、突然炎の竜巻が分散し、ケイ達に向かって動き始めた。


「竜巻が分裂した⁉」


「ヤバイ、こっちに来た。皆バラバラに逃げろ!」


 動き始めた竜巻に気付いたケイ達は急いでバラバラになって避けたが、ディモルフォセカが逃げ遅れてしまい、そのまま炎の竜巻にのみ込まれてしまった。


「きゃぁあっ!」


「「ディルカ!/ディモルフォセカ!」」


 ディモルフォセカが巻き込まれた事に気付いたケイとカトレアは、ディモルフォセカがのみ込まれた炎の竜巻に向かった。

 二人を攻撃しようとしたロリーを、無謀ではあるがヒバリとニヤトは阻止しようとする。

 ラヴァーズも翼を広げて空中に飛び、他の炎の竜巻を水桜鏡で消し始め、少しでも自分達に有利な状況にしようと試みた。


 ケイとカトレアはディモルフォセカを飲み込んだ炎の竜巻の近くまで辿り着くと、なんとかしてディモルフォセカを助けるようと炎の竜巻を消そうとするが、炎が激しく、ケイが発動させたキャノンズ・キャノンズですら消せない、悪循環に陥っていた。

 このままでは埒が明かないと判断したカトレアは、とんでもない行動に出た。


「このままじゃ埒が明かない、こうなったら……!」


 なんと炎の竜巻に自ら飛び込んでいったのだ。

 カトレアの自殺行為としか思えない行動に周りが驚かされる中、ラヴァーズは消している途中の炎の竜巻をほったらかして、カトレアの後を追い自分も炎の竜巻に飛び込もうとした。


 だが、ヨルが起こした風によって地面に叩き落とされてしまった。

 叩き落とされても飛び込もうとするラヴァーズを、今度はロリーを止めていたヒバリとニヤトが止める。


「やめるでごじゃるラヴァーズ!」


「あんなのに飛び込んだらお前まで助からん! 落ち着くんや!」


「ねえさん! ねえさん!」


 カトレアを呼びながら、泣きじゃくるラヴァーズ。

 自分達も助けに行きたいという思いを必死に抑えるヒバリとニヤト、ケイは炎の竜巻の中にいるディモルフォセカとカトレアが無事だと信じ、無駄な事だと分かっていても炎の竜巻に向けキャノンズ・キャノンズを放ち続けた。



*****



 炎の竜巻の中で、ディモルフォセカが空中にいた。

 いくら熱さに強いディモルフォセカでも、この炎の竜巻の熱は幻影の砂漠の暑さとは大違いの熱さであるため耐え難く、体の自由が利かないだけでなく、法術を唱える余裕もないため何もできなかった。


(熱い、熱い、体が動かせない、法術を使いたいのに、声が出ない。

 このままだとケイ達も危ないのに、何もできないなんて…)


 このまま何もしなければ外にいるケイ達が危ないと気付きながらも、ディモルフォセカの意識は次第に遠のき、何もできない自分が憎かった。


(もう、駄目なのかしら……)


 ディモルフォセカが心の中でそう呟いている時だった。

 トーチを持っている左手を掴まれる感覚を感じ、驚いて僅かな力を振り絞り、顔を左に向けると、そこにはボロボロになったカトレアの姿があった。


(カトレア? 体中がボロボロ…。

 私を助けるために、無理やり飛び込んできたんだわ…)


 ディモルフォセカはすぐ、カトレアが自分を助けるために無理に炎の竜巻に飛び込んでこうなったのだろうと悟った。

 ディモルフォセカの左手を掴んだカトレアは、大声で励ますようにディモルフォセカに語り掛けた。


「諦めちゃ駄目よ、ディモルフォセカ! まだ、生きているリンドウに会ってないじゃない!

 もう一度、リンドウに会うんでしょう⁉」


 ディモルフォセカは、リンドウと聞いて目を見開いた。

 幼い頃にヘルシャフトによって命を落とした筈のリンドウに、何処かで生きている筈のリンドウにまだ会ってはいないのだ。


(リンドウ…!)


―――――『ディルカ姉ちゃん!』―――――


 カトレアが口にしたその言葉は、ディモルフォセカのリンドウに会いたいという思いを焚きつけるには十分だった。


「死ねない! リンドウに会うまでは、弟と再会するまでは、絶対に死ねない!」


「行こう、ディモルフォセカ! ケイ達が待ってる‼」


 カトレアのおかげで遠のいていた意識を持ち直したディモルフォセカは、カトレアと共に炎の竜巻からの脱出を目指す。

 すると突然、ディモルフォセカの持っていたトーチとディモルフォセカの左腕の聖痕(スティグマ)が光始めた。

 それと同時にカトレアの体が、トーチから伸びてきた光る糸に巻き付き始める。


「これって」


「メディアロルでケイとヒバリに起きた現象と同じ…」


 自分達が何をするべきなのか自然とわかったディモルフォセカとカトレアは、互いの顔を見て決心し、一つの法術を唱えた。


「「リンク・リンク!」」


 リンク・リンクと唱えた途端、光の糸がカトレアを包み込み、カトレアは取り込まれた。

 カトレアを取り込んだトーチは姿を変え、炎が茨の形状に変わり、花束を連想させるようなトーチになった。


 ディモルフォセカはカトレアを取り込み、姿を変えたトーチを構え、炎の竜巻とは反対方向に大きく回転する。

 ディモルフォセカの動きに反応するように炎の竜巻にも変化が起き始めた。



*****



 僅かな炎の竜巻の異変に気付いたケイは、その事に気付いていないヒバリ達に伝えた。


「皆! よく見ろ!!」


「「「え?」」」


 ようやく異変に気付いたヒバリ達は、炎の竜巻に視線を向ける。

 ケイ達の目に映ったのは、ディモルフォセカとカトレアがいる炎の竜巻が段々小さくなっていくという、信じられない現象だった。


 炎の竜巻が突然小さくなるという現象を目の当たりにしたヒバリ達は混乱していたが、ケイはただ一人、ディモルフォセカとカトレアの二人が起こしたのだと悟った。

 ヨルとロリーもその事に気付いたその瞬間、炎の竜巻は突如消え去り空中には姿を変えた鞭を手にしていたディモルフォセカの姿があった。


「《燃える熱情、エピン=カルマン!》」


 炎の竜巻から脱出したディモルフォセカは、ヨルとロリーを見るとエピン=カルマンを大きく振るい、法術を唱えた。


「《ダルティフィス・ダルティフィス!》」


 ダルティフィス・ダルティフィスを唱えた途端、エピン=カルマンから花が咲き乱れるように数多の花火が飛び出した。

 数多の花火はそのままヨルとロリーに向かって飛び、それを見たヨルはとっさにロリーの腕を掴み後方に飛びのくと同時に、数多の花火が地面に爆ぜた。


 ディモルフォセカは地上に降り立つと、ダルティフィス・ダルティフィスを躱したヨルとロリ―を睨みつける。


「ありがとう、お陰で私達は可能性を得る事ができたわ。

 さっきは油断したけど、今度は油断もしないし、外しもしないわ」


「(実際に目の当たりにするのは彼女達が初めてだが、ここまでとは…) ロリ―、帰るよ」


 ディモルフォセカの手の中にあるエピン=カルマンを見たヨルは、周囲に風を起こしそのままロリーを連れて何処かに消えていた。

 ディモルフォセカの無事な姿を見たケイ達は、ディモルフォセカの元に駆け寄った。


「ディルカ! 良かった、無事で…」


「ごめんなさい、心配かけて。もう大丈夫だから」

 

「せやけど、カトレアはどこ行ってしもうたんや?」


「ディルカさん、ねえさんはどこですか? ディルカさんをたすけようと、たつまきにとび込んで…」


 ディモルフォセカの無事を喜ぶケイ達だったが、カトレアの姿が見当たらないため困惑していた。

 ラヴァーズに至っては不安そうにあたりを見回しながら、カトレアの姿を必死に探している。

 するとどこからともなく、カトレアの声が聞こえて来た。


《アタシはここよ、ラヴァーズ》


 カトレアの声が聞こえてきた直後、エピン=カルマンが光り始め、その光の中からカトレアが出てきた。

 カトレアが出て来ると、エピン=カルマンはいつものトーチの形に戻ったため、それを見たケイ達は呆気に取られた。


「ねっねえさん⁉ どうしてトーチの中から⁉」


「何がどうしてどうなってるんや⁉」


 混乱しているケイ達を見たディモルフォセカは、軽く微笑んで説明し始めた。


「リンク・リンク。聖痕(スティグマ)を持つスピリットシャーマンが一番信頼している者とのみ、発動する事ができる法術よ。

 ヨルの言っていた可能性ってこの事だったのよ」


「可能性って、トーチが姿を変えたのが?」


「私も信じられないわ、礎は聖痕を持つスピリットシャーマンに合わせて姿を変えるとは父さんから聞いていたけど、リンク・リンクで更に形を変えるなんて」


「そうそう。実際にトーチから糸みたいな物が出て、アタシを取り込んだのよ!」


 リンク・リンクを発動させた事で、炎の礎であるトーチに取り込まれたというカトレアの証言を聞いたヒバリはある事を思い出した。

 メディアロルでヘルシャフトと戦っている時、突然ケイの斧が光り始め自分を取り込んだ。

 その事を思い出したヒバリはその事をディモルフォセカに話した。


「ディルカ殿、セッシャもカトレア殿と同じ現象をメディアロルで経験したでごじゃる。

 というよりも、ケイがそれに近い現象を起こしていたでごじゃるよ」


「え、そんな事あったっけ?」


「あの時はすぐに戻る事ができたというのもあるが、その直後に気絶していたでごじゃるからな。

 覚えてなくても無理ないでごじゃるよ」


 ヒバリの口から、自分もリンク・リンクを発動させていたかもしれないと聞いたケイだったが、ケイ本人は全く覚えがないため混乱していた。


「セッシャ個人の憶測でごじゃるが、あの時のケイはリンク・リンクを発動させていたのではないかと思うのでごじゃる」


「私もそう思うわ。ケイがアクアシーフの生まれ変わりというのもあるかもだけど、メディアロルでは不完全な形で発動してしまったから、すぐに解けてしまったんでしょうね」


「でも、ディルカがリンク・リンクを習得してくれたおかげでこっちが有利になったんだ。

 気を取り直して水の社に向かおうぜ!」


 それを聞いたディモルフォセカは、おそらく不完全な形でリンク・リンクが発動し、ケイはアクアシーフの生まれ変わりという事もあって今はまだ上手く使えないのだろうと考えた。

 ディモルフォセカがリンク・リンクを習得した事で、ヘルシャフトとの戦いが有利になったと考えたケイ達は、改めて水の社に向かって歩き始めるのだった。



*****



 その頃、水の社に向かうケイを探しているヨキ達を探す、風変わりな格好をした一人の少女がいた。

 少女は緑色の石板を手に、ヨキ達が歩いたとされる道を走っていた。

 まるで誰かを探すかのように。


「ったくあのバカ! 一年前に勝手に消えたと思ったらこんな大騒動起こして、許さないんだから!」


 少女は愚痴をこぼしながら、短いオリエンタルブルーの髪をなびかせ走り続けた。

 そしてこの少女の出現により、ヨキ達の旅に大きな変化が起きる事をヨキ達はまだ知らなかった。

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