第24話 フォルシュトレッカー
未だ再会する事ができないヨキとマリ、リンドウを見つけるため、五つの古文書に分かれそアーカイブのパーツを見つける事に専念したケイ達。
旅の途中、ケイ達はディモルフォセカの父親の生まれ故郷へ向かった。
そこにアーカイブについて何らかの手掛かりがあるかもしれないと思ったのだろう、ケイ達もその考えに賛成した。
そこは元々ファイヤーファントムの集落だったらしいが、ヘルシャフトの攻撃によりほとんどのファイヤーファントムが命を落としてしまったため、少しでも生き残るべく集落を離れたらしい。
そしてケイ達は今、『幻影の砂漠』砂漠にいた。
「なぁディルカ、本当にこの方向であってんのか?」
「間違いないわ。父さんの言っていた事が正しいならもうすぐよ」
「にしてもめっちゃ熱いで」
「仕方がないでごじゃるよ、砂漠とは熱いものでごじゃるし」
「それに夜は気温が一気に下がって寒くなるわ。下手をすれば命取りよ」
ヒバリとカトレアの言う通り、砂漠とは温度の変化が変わりやすく、下手をすれば命取りになる場所であった。
するとそこへ空を飛んで先を確かめに行っていたラヴァーズが戻って来た。
ラヴァーズが戻って来た事に気付いたタメゴローはケイ達に身振りで伝え、ラヴァーズがいる方向を指した。
「ねえさーん、みなさーん」
「ラヴァーズ、どうだった?」
ケイは降りてきたラヴァーズに聞いた。するとラヴァーズはしばし興奮気味に言った。
「この先におおきなタテモノみたいなものがありましたよ。
もしかしてそこがディルカさんのお父さんのコキョウなのでは?」
「きっとそこだわ。行ってみましょう!」
それを聞いたディモルフォセカは確信して先に進む事を決めた。
ディモルフォセカとラヴァーズの案内のもと、ケイ達は廃れた集落に辿り着き、その先にはラヴァーズの言っていた建物があった。
建物の方はとても古いため、おそらく遺跡であろう。
ケイ達は廃れたと建物を見てディモルフォセカに聞いた。
「ディルカ、もしかしてここが…」
「間違いないわ、父さんの故郷よ」
それを聞いたケイ達は少し安心した。するとニヤトは気になるのか、遺跡についてディモルフォセカに聞いた。
「それよかあの建物はなんや?」
「多分、『炎の社』よ。ファイヤーファントムは炎だけじゃなく幻影を操る一族。
幻影を操る力を使って炎の社と炎の礎を守ってきた。
その証拠に、父さんの代までヘルシャフトに襲われる事はなく、今こうして炎の礎は私の手の中にある」
「ディモルフォセカの一族にとって、その二つは象徴であり、誇りだったのね」
父親の故郷に辿り着いたディモルフォセカは、自分の手の中にあるトーチを見つめながら炎の社と炎の礎について話した。
ディモルフォセカから話を聞いたカトレアは、目の前に見える炎の社の状態がそれ程酷くない事に気付き、ファイヤーファントムにとって守りたいものだったというのがわかった。
その時、何処からともなく飛んできたクォレルがヒバリに目掛けて飛んできたのだ。
幸いにもヒバリの足元に刺さったためツバメは無事だったが、ケイ達は何が起きたのかわからなかった。
カトレアがクォレルを見た途端、危険を察知しケイ達に危険を知らせた。
「敵よ! 皆隠れて! クォレルが飛んできたって事は、相手はクロスボウを使ってるわ!」
それを聞いたケイ達は一斉に物陰に隠れたが、一人一人ちりぢりになってしまった。
一人では危険だと考えたディモルフォセカはケイ達と合流しようと動くが、今度はクォレルが雨のように降ってきた。
(このままじゃうまく進めない。敵はヘルシャフトではなさそうだけど、一人で出るのは危険だわ)
ディモルフォセカはタイミングを見計らい、法術を使った。
「ベール・べール!」
ディモルフォセカはベール・ベールという法術をクォレルの雨に向かって唱えると、炎の幕がディモルフォセカの頭上を覆い、クォレルの雨を防いだ。
炎の幕が張っている内にディモルフォセカは急いで物陰に隠れている一人一人と合流し、ひと塊りになった。
そのまま炎の社に向かおうとした時、カトレアとニヤトがある事に気付いた。
「ちょいまて! タメゴローは何処や?」
「ディモルフォセカ、ラヴァーズとは合流していないの?」
カトレアとニヤトの言う通り、そこにはラヴァーズとタメゴローの姿が見当たらず、ディモルフォセカは自分が通ってきた道を確認してラヴァーズとタメゴローを探した。
すると何処からともなくラヴァーズの叫び声が聞こえた。
ラヴァーズの叫び声を聞いたケイ達は、叫び声が聞こえた方向を見ると、そこには黒一色のつなぎを着た少年が鎖鎌でラヴァーズとタメゴローを縛り付けて抱えていた。
それを見たカトレアは怒りがこみ上げ、とてつもないスピードで黒いつなぎの少年の方へ走って行った。
「アンタ! 弟をなげんさい!」
カトレアは怒鳴りながら黒いつなぎの少年に蹴りを入れようとした。
だが、黒いつなぎの少年はカトレアの蹴りをあっさり躱してしまい、その身のこなしに驚いたケイ達は呆然としていたが、カトレアはラヴァーズを取り返そうと必死で攻撃し続けていた。
「早うラヴァーズ返せって言いよるのが聞こえんの⁉ この無口野郎!」
「弟? 血も繋がらない堕天のヘルシャフトが?」
「⁉」
それを聞いたカトレアは驚いた。何故ラヴァーズが自分の本当の弟ではない事、堕天のヘルシャフトである事を知っているのかが解からなかったのだ。
黒いつなぎの少年は一瞬の隙をついてカトレアを蹴り飛ばした。
「「「カトレア/殿!」」」
「ねえさん! ねえさっむぐ! むーむー!!」
カトレアが蹴り飛ばされたのを見たラヴァーズは叫ぼうとしたが、黒いつなぎの少年に口を押さえられ、そのまま連れ去られた。
ケイ達は蹴り飛ばされたカトレアの傍に慌てて駆け寄り、カトレアの状態を確認した。
「カトレア大丈夫か⁉」
「ナッなんとか…それよりアイツ、ラヴァーズが堕天って事知ってた」
「「「えっ⁉」」」
それを聞いたケイ達は驚いた。ただでさえ正体のわからない相手だというのに、ラヴァーズの正体を知っていたと聞けば混乱してしまう。
だが今はそれどころではなかった。
「それ考えるのは後や! 今はラヴァーズとタメゴローを助けなあかん!」
「しかし、あの者は一体どこに向かったのでごじゃる⁉」
「炎の社じゃないかしら? 確か、ヘルシャフトの力を封じ込める道具を幾つか置いて来たという話を聞いた事があるから」
「可能性はあるな。兎に角行ってみよう!」
ケイ達は急いで炎の社に向かって走った。
炎の社に向かっている道中、ケイ達は自分達を襲った挙句、気付かない間にラヴァーズとタメゴローを連れ去った黒いつなぎの少年の正体について疑問を抱いていた。
「それにしてもあの者、何者でごじゃろうか?」
「てっきりクロスボウを使って攻撃して来たと思ってたんだけど、実際に持ってたのは鎖鎌だしな」
「そがいな事はどがぁでもええわよ! 今はラヴァーズを助ける事が先よ!」
「タメゴローもな!」
ケイはラヴァーズを連れ去った黒いつなぎの少年がクロスボウではなく、鎖鎌を持っていた事に疑問を持っていたが、カトレアとニヤトはラヴァーズとタメゴローを攫われた事で怒りが頂点に達していた。
そんな二人の様子を見ていたケイとヒバリは心の中で
((この二人、本気で切れると案外恐ろしいな))
と呟いていたその時だった。
「見て! 入口が見えてきたわ!」
ディモルフォセカが指で指した方向を見てみるとそこには炎の社内に入る入口があった。
それを見たカトレアとニヤトの二人は一気に走る速度を上げて走り出したが、ディモルフォセカとヒバリに止められた。
もしかすると罠が仕掛けられている危険があるため、頭に血が上っているカトレアとニヤトが気付かずに引っかかるのではないかと思い、ディモルフォセカとヒバリは必死で二人を落ち着かせた。
二人がカトレアとニヤトを落ち着かせている間、ケイは一人で入口の辺りを調べていた。
そしてヒバリ達に向かってこういったのだ。
「罠とかそういうのはなさそうだぜ」
それを聞いたヒバリ達は驚いた。ケイが何故罠が仕掛けられていないと言い切れるのかが解らなかったからだ。
何故わかるのかとニヤトはケイに聞いた。
「なんでそんな事が言えるんや?」
「だって地面とか掘り起こされた後とかないし、それに糸みたいなのが全然ないからさ。
ほら」
そう言うとケイは一人で入口の方に近づいた。
それを見たヒバリ達は慌てて空を止めようとしたが、何も起こらなかった。
ケイの言う通り、間違いなく罠は仕掛けられてはいなかったのだ。
それを見て安心したヒバリ達。するとディモルフォセカは何故罠がない事がわかったのか、ケイに聞いた。
「どうして罠がないって事がすぐにわかったの?」
「そりゃあ、俺が昔っから悪戯で村のあちこちに罠仕掛けまくってたもん」
「そんな事を自慢げに言うなでごじゃる!」
今も昔も変わらない事を自慢げに話すケイにツッコむヒバリ。カトレアはいてもたってもいられずに大声で怒鳴り散らした。
「いい加減に中に入るわよ!」
怒鳴り散らすカトレアを見たケイ達は、これ以上カトレアを怒らせてはいけないと悟り、急いで炎の社に入って行った。
炎の社の中は、迷路のようになっており、床の一部はどういう原理なのか砂粒が流れていて足を踏み外せば危険な状態で、外程ではないが暑かった。
ケイ達はその暑さにもめげずに中を歩いてるとケイがいきなり立ち止まり、その後ろを歩いていたヒバリ達は何事かと前を見たが何もなかった。
それを見たニヤトはお構いなしに進もうとするが、それをケイが遮った。
「何すんねんケイ! なんで止めるねん!」
「ば~か。目を細めてよく見てみろよ」
それを聞いたカトレアとディモルフォセカは少し前に進み、ケイが指さした場所をよく見てみた。
すると、微かではあるが、何かが光って見えた。
ヒバリは後ろの方にいたがそれに気付く事ができた。
「これって…」
「罠⁉ どうしてこんなものが中に」
「決まってるだろ? 答えはただ一つ」
それを聞いたヒバリ達はようやくわかった。
この罠を仕掛けたのは突然自分達を襲い、ラヴァーズとタメゴローを攫った黒いつなぎの少年だと確信した。
ケイは仕掛けられた罠を解除しながら話を続けた。
「それにこれ、ついさっきか昨日あたりに仕掛けられたみたいだし、外から確認した高さを考えるとこの社はかなり広い。
とても一人でできるもんじゃないぜ」
「って事は、相手は一人やないって事か⁉」
「そゆ事」
それをいたカトレアとディモルフォセカは、ラヴァーズとタメゴローを攫った少年は鎖鎌しかもっていなかった事に納得がいった。
仲間がいなければクォレルが雨のように飛んでくる訳がないからだ。
守る物がいなくなった炎の社は、既に敵の陣地となっており、ケイ達が不利な状況になっていた。
「相手が複数、となると、このまま進むのは難しいわ。
炎の社の中は、炎の礎を守るために法術でかけられた罠や幻影も残っている筈よ」
「そうなると敵はそれらをも利用して、こちらにダメージを負わせる作戦でごじゃるな」
「そうか態勢を整えるための時間稼ぎ、でしょうね。こんな形で妨害されるなんて…」
「ここで立ち止まっててもしゃあない。ラヴァーズとタメゴローを取り返すためにも先に進むのみや!」
「物理的なのは俺が解除できるから、法術とかの罠はディルカに任せる。よし、解除できた」
そうとわかったヒバリ達は、ケイを頼りに黒いつなぎの少年とその仲間が仕掛けた罠を、ディモルフォセカを頼りに法術による幻影と罠を避けて進んでいった。
そしてケイ達は一つの部屋に辿り着くと、そこはとても広く、恵みの村にある聖なる祠に似た祭壇があった。
「私の考えが正しいなら、ここは炎の礎が納められていた場所の筈よ。
もしかしたら敵はここにいるかも…」
ディモルフォセカがそう言った直後、突然クォレルがディモルフォセカとカトレアに目掛けて飛んできた。
それに気付いたヒバリは背中の刀を取り出し、クォレルを切り落とした。
「なんだ⁉」
「敵でごじゃる! ここにいるのは間違いなさそうでごじゃるよ」
「こぉらー! いるんじゃったらさっさと出てきんさい! ラヴァーズ返せ糞野郎!」
「カトレア殿、おなごがそんな下劣な言葉を使うのはやめてほしいでごじゃる!」
普通は女が使わない言葉を堂々というカトレアに、ヒバリは恥ずかしそうに注意した。
するとニヤトが何かに気付いた。
「おい! あそこにおるで!」
それを聞いたケイ達は祭壇の方を見た。
そこにはニヤトの言う通り、ラヴァーズとタメゴローを連れ去った黒いつなぎの少年だった。
黒いつなぎの少年だけではない。
他にもあと三人、黒系統の服を着た少年少女達の姿があり、そしてその中央には口を塞がれ首に首輪をつけているラヴァーズとタメゴローが柱に縛られていた。
その事に気付いたカトレアは大声でラヴァーズの名前を叫んだ。
「ラヴァーズ!」
「ふぇえふぁんっ」
ラヴァーズは声を震わせながらカトレアを呼んだ。
するとラヴァーズとタメゴローを攫った少年とは違う、黒いカジュアルな服を着て黒いニット帽を被った少年がラヴァーズの顔の近くをナイフで刺した。
しかもぎりぎり当たろうかという場所だった。
「ふぃっ!」
いきなりナイフを顔の近くに刺した少年に怯えるラヴァーズ。
それを見たカトレアは少年に向かって怒声を上げた。
「やめんさい! ラヴァーズにゃあ手を出さんで!」
するとスカートの丈が膝上まである黒いクラシカル系のメイド服の少女がクロスボウを構え、それをカトレアに向けて射った。
カトレアは素早く反応して飛んできたクォレルを躱した。
「仕留め損ねた」
「やめとけシュッツェ、アイツは殺さず生け捕りにしろっていう命令が出てたろ?」
「しかしヴァーゲ、あの女はある意味危険です」
シュッツェと呼ばれたメイド服の少女は、ヴァーゲと呼んだ黒いニット帽を被った少年に向かってカトレアは危険だと言った。
すると黒いミリタリーロリータ服の少女が、シュッツェとヴァーゲに向かって命令を出した。
「やめなさいヴァーゲ、シュッツェ。
私達の任務はシャーマンの殲滅およびカトレア・シロップの身柄を確保する事。
命令違反は許されない」
「「ユングフラウ」」
ユングフラウと呼ばれた軍服ワンピースの少女はシュッツェとヴァーゲに向かっていった。
ユングフラウの話を聞いたケイ達は驚いた。
その目的がケイとディモルフォセカ、つまりスピリットシャーマンの殲滅とカトレアを捕まえるという事だから聞いて驚くのは当然の事である。
ニヤトは驚きのあまりにユングフラウ達に何者なのかを聞いた。
「お前ら一体何者や⁉」
するとラヴァーズとタメゴローを攫った黒いつなぎの少年が喋り始めた。
「俺達はフォルシュトレッカー。ヘルシャフトによって作り出された『執行人』だ」
「「「ヘルシャフトに作り出された⁉」」」
「執行人?」
それを聞いたケイ達は、ユングフラウ達がヘルシャフトによって作り出されたと聞いて意味が分からなかった。
だがカトレアはそんな事もお構いなしに全速力でユングフラウ達のいる祭壇に進み始めた。
「そがいな事よりも弟返せーっ!」
「クレープス、来ます!」
シュッツェはクレープスと呼ばれた黒いつなぎの少年に言いながら、クロスボウを構えた。
クレープスは鎖鎌を取り出し、それをカトレアに向かって投げつけた。
カトレアはそれをうまく躱し、一度後退した。それを見たケイ達も散り散りになって動き始めた。
ケイ達の動きに合わせ、フォルシュトレッカー達も動き出す。
クレープスは鎖鎌を使いカトレアに、ユングフラウが槍を構えケイとヒバリに、ヴァーゲがトンファーを構えディモルフォセカとニヤトに接近戦を仕掛け、シュッツェは祭壇付近から一歩も動かず、クロスボウを使った後方からの支援に徹した。
「皆気を付けて! コイツ等、かなり統率が取れてる!」
「んな事言われても、避けるので精一杯だよ!」
「目の前の敵だけでなく、クォレルの方にも注意するでごじゃる!
刺さればかなりの痛手でごじゃるぞ!」
「あぁもう! コイツ、しつこい! このままじゃ、ラヴァーズの所にっ行けないじゃない!」
統率の取れた動きで攻撃を仕掛けるフォルシュトレッカー達と応戦するケイ達だが、実力差がありすぎ防戦一方になっていた。
その証拠に、ケイ達の中で一番戦い慣れている筈のディモルフォセカが、ヴァーゲに押されていた。
更にはケイとヒバリの二人と戦っていた筈のユングフラウがいつの間にかニヤトの背後に移動しており、ユングフラウの槍で吹き飛ばされた際にシュッツェのクォレルが腕に刺さってしまった。
それを見たケイはニヤトに避難するように指示を出した。
「ニヤト、出入り口の方に避難しろ! それから痛いだろうけど、クォレルは抜かずそのままにしとけ!
下手に抜いたら出血量が増えて命に関わるぞ!」
「すまん、恩に着る!」
「よそ見してる余裕はないぜ!」
ケイに言われた通りニヤトは広間の出入り口付近に避難した。
その間にもフォルシュトレッカー達の猛攻は続き、次第に防御し切れなくなり始め、直撃しないように避けるので精一杯だ。
このままでは埒が明かないと判断したのか、ケイはヴァーゲと戦っているディモルフォセカに声を掛けた。
「ディルカ! ラヴァーズの首についてる奴って」
「多分ヘルシャフトの力を封じ込める道具よ! あれが付いている限り力を使う事ができないわ!」
「どうやって外すでごじゃるか⁉」
「多分、鍵がある筈よ! あの中の誰かが持ってるかも」
それを聞いたケイは四人のフォルシュトレッカーを順番に見ると、ケイはシュッツェの方に向かって走り出した。
ケイが自分の方に向かっている事に気付いたシュッツェは、構えているクロスボウをケイの方に向けた。
そして筒からに十本のクォレルを取り出し、それをケイに向かって射った。
それは最初にケイ達が受けたクォレルの雨そのものであり、クォレルの雨はシュッツェが射った物である事がわかった。
ケイはクォレルの雨を斧で防御しながらシュッツェに近づいていき、素早く通り過ぎ、そのままラヴァーズとタメゴローが縛られている柱に向かった。
よく見るとその手には一つの小さな鍵があり、シュッツェは自分の腰を見て、そして驚いた声で叫んだ。
「そんな、どうして⁉」
「どうしたのシュッツェ⁉」
「私が持っていた鍵がなくなっているんです!」
それを聞いたユングフラウはまさかと思ってケイを見た。
そこには斧でラヴァーズとタメゴローを縛り付けていたロープを切り、ラヴァーズの首についている首輪を外すケイの姿があった。
ラヴァーズの力を封じる首輪の鍵を奪われた事を悟ったユングフラウは、カトレアを戦っていたクレープスに声を掛けた。
「クレープス!」
「全員撤退だ」
事態を悟ったクレープスは指示を出し、近くの窓に上るとそのままフォルシュトレッカー達は姿を消した。
フォルシュトレッカー達がいなくなったことを確認すると、カトレアはすかさずラヴァーズのもとに駆け寄った。
「ねえさん!」
「わーんよかった~。無事じゃなかったら私自殺してた~」
「カトレア殿おおげさでごじゃる」
余程怖い思いをしたのだろう、ラヴァーズは泣きながらカトレアに抱き着いた。
タメゴローもニヤトのもとに走り出し、そのままニヤトに飛びついた。
ケイはシュッツェの攻撃を受けたニヤトの治療をするために、医療用の道具を入れた鞄から必要な薬と道具だけを取り出し、治療を始めた。
するとヒバリは、ケイに何故シュッツェが鍵を持っている事が解ったのか尋ねた。
「それよりもケイ、どうしてシュッツェという者が鍵を持っているとわかったのでごじゃるか?」
「そう言えばそうやな? どうやったんや?」
ケイの治療を受けているニヤトも不思議に思い、鍵の事についてケイに尋ねた。
するとケイは不思議そうに言った。
「なんだお前ら。あの子の腰が一瞬光ったのが見えなかったのか?」
それを聞いたヒバリ達は困惑した。『シュッツェの腰が光って見えた』というケイの言葉の意味が分からなかったのだ。
ヒバリ達は戦っている中、一度も何かが光ったような輝きを見ていないのだ。
するとディモルフォセカがわかりやすいように説明し始めた。
「きっとアクアシーフ特有の能力が発動したのね。
アクアシーフの眼はその時に必要なものが何処にあるかがわかる、というものなの」
「あの時セッシャ達が必要だったのは、ラヴァーズに着けられていた首輪の鍵。
だからケイには鍵は誰が持っているのかわかったでごじゃるな」
「今回はすぐ引いてくれたから良かったけど、あのまま攻撃され続けてたら危なかったわ」
カトレアはラヴァーズを抱きしめたままそういった。
カトレアの言う通り、ラヴァーズとタメゴローを助ける事ができたとしても、そのまま追撃されていればひとたまりもない。
その証拠に、ケイ達は一方的に攻撃され、体中切り傷や痣だらけになっていた。
逆に言えば、その程度で済んだのは奇跡だ。
「問題は、山積みだな」
「今はアーカイブの手掛かりを探しましょう。リンドウやケイの幼馴染と従姉も探さないと」
それから何時間もかけて炎の社を調べていたが、中には何も手がかりになるようなものはなく、荒らされた跡があっただけだ。
おそらくフォルシュトレッカーが何か必要な物を持ち去ったのだろう。
このまま炎の社にいても意味がないと考えたケイ達は炎の社を出て、水の古文書を使い『水の社』がある場所を突き止め、炎の社を背に再び歩きだすのだった。




