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第23話 情報と条件

少し残酷な描写があります。

苦手な方はお控えください

 インバシオンの特訓施設にあった炎の古文書を持ち出した第三者の正体が、レイフォン兄弟と同じようにインバシオンに所属していたヒエンであるという事を知ったヨキ達は、ヒエンの行方を探すべく情報を集めていた。

 特にヨキは積極的に情報を探し、ヒエンが他の町に向かったという情報が手に入り、現在ヨキ達はその町に向かう馬車に乗って向かっていた。


「運よくヒエンの情報が手に入って良かったな」


「そのヒエンって人、普段は会えないの?」


「会えないというより、見つけられないんです。

ヒエンはそしきの中でもプライドが高くて、常に一人で行動していたので」


「組織が潰れてからはキアンと一緒に旅してるみたいだけど、それでも連絡できないからな」


「聞いてるだけで気難しそうな奴だな」


 かつてインバシオンに所属していたバンとリースの証言から、ヒエンが気難しい性格だと判断したキールは面倒くさいという表情が出ていた。

 ヒエンが炎の古文書を持っている以上、手に入れるには持ち出した本人を説得する必要があると考えた。


 だが、そう簡単には行かないという事がバンとリースの話で分かったため、堕天のヘルシャフトであるリルとスズを見て面倒ごとにならない事を祈るばかりだ。

 スズはというと、バンと瓜二つすぎて事情を知らない一般人に見られ、ややこしい事態にならないようにキールに帽子を被せられていた。


「さっきの話を聞く限り、なるべく大勢から聞き込んだ方が良さそうだな。

 違うか?」


「ヘルシャフトに情報が行き渡らないようしんちょうに行動しているはずです。

 そうなればもくげき情報も少ないと思います」


「町に着き次第手分けして情報を集めた方が良さそうだな。

 ヨキ、頑張って情報集めようぜ」


 バンは町での情報収集に意気込みながら隣にいるヨキに話し掛けたが、肝心のヨキは顔面蒼白になりながら体を震わせていた。


「……ヨキーっ⁉」


「あばばばばばばばばばっ」


 顔面蒼白になりながら体を震わせているヨキを見たバンは、何故ヨキがそうなったのかわからず困惑していた。

 バンの声に反応したキール達もヨキの様子が可笑しくなっている事に気付き、ヨキが可笑しくなった原因がわからなかったため困惑していると、ヨキを見てリルが可笑しくなった理由を説明し始めた。


「知らない人達と沢山話したから、今になってその反動が出てきたみたいなの」


「そういえばヨキさんって、人見知りがはげしい方でしたね」


「大丈夫かよヨキ?」


「あばばばばばばばばばっ」


 見ず知らずの相手に聞き込みをした反動で正気を失っているヨキは、心配になって声を掛けてくるバン達に返事をせず顔面蒼白のまま同じ反応しかしない。

 そんなヨキの反応を見たキールは、町に着くまで放置する事にし、ガナドール会場がある街で集めた情報を整理しておく事にした。


「とりあえず気になるのは、ヒエンがあの街にいた時にはケイとマリ、どちらかと行動していなかって事だな」


「ヒエンと行動していたのはレイア君のみで、他には誰もいなかったという事ですからね。

 キール君の考えでは、ヒエンがケイさんかマリさんのどちらかと行動を共にしている、でしたよね?」


「あぁ。ヨキから聞いた二人の特徴からしてケイがアクアシーフ、マリがアイスアサシンの生まれ変わりである可能性がある。

 その可能性がある以上ヘルシャフトに命を狙われて、その過程でスピリットシャーマンの事を知っても可笑しくはない筈だ」


「アイスアサシン、と言えばラティアの…」


「わかってる。あの女(トゥーランドット)の事だろう?」


 アイスアサシンと聞いた際、リースが思い浮かべたのはマーダに会うべくラティアを訪れた際に遭遇した氷の暗殺者、トゥーランドットだった。


 トゥーランドットもまたスピリットシャーマン、アイスアサシンの血を引く者であり、トゥーランドットは滅ぼされた一族の復讐と称してリースが助けたヘルシャフトの娘以外のヘルシャフトを皆殺しにしていた。

 トゥーランドットの髪と瞳の色もマリと同じだったため、思わずリースは連想してしまったのだろう。


「あの様子じゃ単独行動メインで動く性格だ。ヒエンとレイアって奴と行動していたってのはない筈だ」


「かみの長さもちがいましたから、同じアイスアサシンでも別人ですよね?」


 トゥーランドットの事も気にはなるが、今はヒエンとレイアを探し出して炎の古文書を手に入れる事優先すべきと考えたキールは、目的の町に着いてからの行動パターンをリースと共に考え始めた。

 それからしばらくして町に着き、ヨキも正気に戻っており、リルとスズがヘルシャフト以外の人の社会に疎い事と、ヨキが人見知りの反動で馬車に乗っている間正気を失った事も踏まえ、二人一組で情報を集める事になった。


 ヨキはバンと共にヒエンとレイアの情報を集めるが、やはり人見知りが発動して上手く会話ができなくなり、代わりにバンがヨキの言いたい事を代弁して情報を集めた。

 だが、バンとリースが考えていた通り、情報が全く手に入らないどころか、目撃者さえ見つけられない。


 集合場所として決めていた公園に向かい、キール達が情報を手に入れているのではないかと思ったが、キール達も手に入れる事ができなかったようだ。

 二人が次に向かった場所さえ特定する事ができず、追跡する事ができないと落ち込んでいると、不意にスズが手を挙げてある提案をした。


「なぁ、情報がなくても何処に行ったかさえわかれば追い掛けられるんだよな?」


「手掛かりさえあればな」


「スズ、なんか良い方法でもあるのか?」


「あるよ」


「それ本当⁉」


 情報がなくてもヒエンとレイアを見つける方法があるというスズの発言に敏感に反応したヨキは、思わず大声を上げたため公園に来ている町の住人達の視線が一気に集まった。


「シーッ! そんな大声出したら目立つだろう⁉」


「ごっごめん。それよりスズ君、本当に見つけられるの⁉」


「ヨキ、俺はスズじゃなくてバンな?」


 興奮していた事もあるが、バンとスズを間違えたヨキは大声を出したうえ、二人を間違えた事に対して恥ずかしさのあまり赤面して俯いた。

 提案者であるスズはなるべく人がいない場所に移動する必要があると言ったため、キールがヒエンとレイアの情報を探している際に人通りが少ない路地裏を見つけていたためそこまで移動する事になった。


 路地裏に誰もいない事を確認すると、スズはインバシオンの特訓施設に落ちていたヒエンのクォレルを貸してほしいとキールに言った。

 そう言われたキールは自分が持っていた赤褐色のヒエンのクォレルを取り出し、それをスズに渡した。


「スズ、それを使ってどう探すつもりなんだ?」


「まぁ見ててよ。それより、周りに人が来そうになったら知らせてくれ」


 そう言うとスズはキールから受け取ったヒエンのクォレルを握り、集中し始めた。

 ヨキ達はスズが何を始めるのかと見守っていると、先程まで吹いていなかった風が吹き始め、スズの周りに集まり出した。

 スズの周りに集まり出した風は、スズを中心としてそよ風となって周囲に吹き始めた。


「なんだ? 急に風が吹き始めたぞ?」


「スズさんが風を操ってるみたいです。確かにこれは人前ではできませんね…」


「皆、スズ君の眼を見て!」


 スズが操るそよ風に気を取られていると、スズを見ていたヨキが何かに驚いたようにスズの瞳の色を指摘した。

 バン達はヨキの言葉に反応してスズの瞳を確認すると、青色だった筈のスズの瞳が、何故か銀色に変化していたのだ。

 銀色に変化したスズの瞳を見たリルは、スズが何をしているのかがわかった。


「ブリーズン・ハート! 禁じられた技の一つね!」


「ブリーズン・ハートってなんだ?」


「探している対象者の持ち主を媒体として、そよ風を通して対象者を見つける技よ。

 でも、王族の情報が漏れる危険があるって理由で禁断の技に指定されたのよ」


 リルからブリーズン・ハートの特徴を聞いたキールは、スズが何故情報がなくてもヒエンとレイアの二人を見つけられると言った理由が分かった。

 スズは自分が操るそよ風を通し、バンとリースから聞いたヒエンの姿を探す。

 スズの視界に映る景色は町の外へと行き、十数人のヘルシャフトが顔に傷がある赤褐色の髪の少年を捉えた。


「ヒエンを見つけた!」


「本当か⁉」


「ヘルシャフト相手に戦ってる!」


 スズからヒエンを見つけ、更にヘルシャフトと交戦している事を聞いたヨキ達は急いで町に外にいるヒエンとレイアの元に向かおうとした。

 だがそこで、スズから予想外の一言が発せられた。


「ちょっと待て! もう一人、もう一人ヘルシャフトと戦ってる!」


「もう一人ってレイアか?」


「違う、戦ってるのは女の子だ! 帽子とマフラーのせいで顔はわからない!」


「帽子とマフラーって、まさか、トゥーランドット⁉」


 スズからヘルシャフトを戦っている少女の特徴として帽子とマフラーと聞いたヨキ達は、その少女がトゥーランドットではないかと考えた。

 ヒエンとレイアが何故トゥーランドットといるのかはわからなかったが、今はそれどころではないという事もあり、急いで町の外に向かった。


 町の外に出てヒエンとレイアがいる近くまで来ると、空中にいるヘルシャフトの姿が見えたたが、同時に空中にいるヘルシャフトが落下する様子も見えた。

 落下するヘルシャフトを見たヨキ達はもしやと思い、更に近付くと、目の前に大量のヘルシャフトの死体が転がっていた。


「キャアーッ!」


「ひぎゃあああっ! 死体まみれ―っ!」


「え? あっえっえぇ⁉」


 付近に転がるヘルシャフトの死体を見たリルはたまらず悲鳴を上げ、動揺にキールも普段の冷静さはなくなり混乱した。

 ブリーズン・ハートで見ていた筈のスズも、目の前の光景が信じられないといった様子で動揺していた。

 ヨキも顔色を青くしていたが、必死に自分を保ちながらヒエンとレイアの姿を探した。


(何処? 何処⁉ ヒエン君とレイア君は何処にいるの⁉)


「兄さんあそこ! ヒエンとレイア君がいます!」


 ヨキが必死にヒエンを探していると、同じようにヒエンとレイアを探していたリースが先に二人を見つけたようだ。

 リースが指さした先には、クロスボウを構えているヒエンと、ナイフでヘルシャフトを牽制するレイアがいたが、どういう訳かヒエンはトゥーランドットに向かって攻撃していた。

 その光景を見たバンとリースは酷く驚いていた。


「おい―っ! ヒエンの奴なんでトゥーランドットに喧嘩売ってるんだよ⁉」


「そんな事聞かれましても、僕だってわからないですよ!」


「たっ大変!」


 トゥーランドットに攻撃しているヒエンを見たヨキは、ヒエンが殺されてしまうと思い込み後先考えずに飛び出してしまった。

 ヨキが飛び出したのを見たバンも、動揺したままヨキの後を追いかけたが、途中でヘルシャフトの妨害に遭い、そのまま戦闘に入った。


 リースは、トゥーランドットがリルとスズにも狙いを定める危険性を考え、二人には戦闘が終わるまで離れているように指示を出すとキールの腕を掴み、戦いに加わった。

 服の袖から護符を取り出すと、自分に襲い掛かって来たヘルシャフトに向かって護符を投げつけた。

リースが投げつけた護符はヘルシャフトの額に張り付くと、ヘルシャフトは金縛りにでもあったかのように動かなくなり、そのまま地面に落下してしまった。


 その隙にリースはヘルシャフトから剣を奪い、護符を使いながら他のヘルシャフトと戦い始めた。

キールも動揺しながらも槍を振るって応戦し、封印していく。

 一方、真っ先に飛び出したヨキは襲い掛かるヘルシャフトの攻撃を(かわ)していき、ヒエンとレイア、トゥーランドットの近くまで辿り着く事ができた。


 するとトゥーランドットがヒエンとレイアに向かってスマッシュ・スマッシュを唱えた。

 氷の衝撃波がヒエンとキアンに向かっていくのを見たヨキは、ヒエンとレイアに前に躍り出て自分もスマッシュ・スマッシュで応戦した。


「スマッシュ・スマッシュ!」


 ヨキのスマッシュ・スマッシュから生まれた風の衝撃波が、ヒエンとレイアに向かってくる氷の衝撃波を相殺した。

 突然現れたヨキを見て驚くヒエンとレイアに対し、トゥーランドットは表情こそ変えなかったが、自分の邪魔をしたヨキに対していい感情は抱いていなかった。


「貴様、ラティアでヘルシャフトを庇った風使いだな」


「ヒッヒエン君とレイア君は、殺させないよ!」


 トゥーランドットから放たれるさっきに怯みながらも、ヨキは必死に強がり、いつでも対応できるよう臨戦態勢に入った。

 するとトゥーランドットは、薄紫色のアーマーリングを着けている右手を横に大きく振り上げた。

 その先には誰もいなかった筈が、トゥーランドットの右手が血で染まり、更に首から血を流すヘルシャフトの姿が現れた。


「ヘルシャフト⁉」


「あ……な、ぜ…⁈」


 どうやらトゥーランドットの意識がヨキに向いている隙をついて攻撃したのだろうが、その攻撃はトゥーランドットには通用しなかった。

 そのままトゥーランドットはアーマーリングで容赦なく襲ってきたヘルシャフトの胸を突き刺し、ヘルシャフトはそのまま絶命した。


「この私が貴様ら程度に後れを取るとでも思ったのか? 貴様程度の小物、私の敵ではない」


「情けようしゃなさすぎるだろう…」


「うっうぅ…」


 トゥーランドットが容赦なくヘルシャフトを殺す光景を見たヨキは今以上に顔を青くし、レイアは思っていた事を思わず呟いていた。

 それを見ていた他のヘルシャフトが、仲間の敵と言わんばかりの勢いでトゥーランドットに襲い掛かり、トゥーランドットはそのヘルシャフトも殺すつもりでアーマーリングを向ける。

 

 しかし、それを予測したのかヨキがヘルシャフトに向かってウィンドゥ・ウィンドゥを唱え、矯風を起こしヘルシャフトを吹っ飛ばした。

 ヨキに邪魔をされたトゥーランドットは、何を思ったのかヨキ達に攻撃する事なく走り去って行った。

 トゥーランドットがいなくなったのを見たヨキは一瞬何が起きたのかわからなかったが、ヒエンに声を掛けられて我に返った。


「お前、黄昏ヨキだな?」


「えっ⁉」


 ヨキは話しかけて来たヒエンが、自分の名前を知っている事に驚いた。

 そんなヨキの反応などお構いなしに、ヒエンは話を続ける。


薬師(やくし)ケイを探せ。薬師ケイを見つけ出したその時は、マリの事を教える。

 その時まで炎の古文書は俺が預かる」


 そこまで言うと、ヒエンはトゥーランドットを追いかけるように走って行ってしまった。

 ヒエンとと同じように走り出そうとしたレイアは、一度立ち止まるとヨキの方に振り返った。


「お前、聞いた話とぜんぜんちがうな」


 そう言うとレイアは前を向いてヒエンの後を追いかけた。

 トゥーランドットがヘルシャフトを殺した時とは違った意味で驚いていたヨキだったが、バンの声に反応し、後ろを向くとリースが剣を手にして戦っている事に驚き、バン達が生き残ったヘルシャフト達と戦っている姿を見て今は封印する事が先だと判断した。


「キール君伏せて! スマッシュ・スマッシュ!」


 大量のヘルシャフトの死体を見て動転したままキールは、いまだに(樹の礎)で応戦したままで法術を使う事をすっかり忘れていた。

 キールに余裕がない事に気付いたヨキは、スマッシュ・スマッシュを唱え風の衝撃波を生み出し、キールと戦っていたヘルシャフトを攻撃し掛けた。


 風の衝撃波が迫っているのを見たキールはヨキの指示に従い、体を低く伏せる。風の衝撃波はキールと戦っていたヘルシャフトに直撃して吹っ飛ばされた。


「すまないヨキ、助かった! ヒエンとレイアは⁉」


「トゥーランドットさんを追いかけていなくなっちゃった!

 やっぱり炎の古文書はヒエン君が持ち出したみたい!」


「詳しい話はまたあとで聞く! 今は、コイツらを片付けるぞ!」


 ヨキに助けられた事で余裕が戻ったキールは、生き残っているヘルシャフト達と戦い始めた。

 他のヘルシャフト達と交戦しているバンはヘルシャフト達に距離を取られ、攻撃が通らなくなり始めた。

 自分の攻撃が通らなくなり始めた事により、バンは苛立ち始めた。


「くっそー、こうなりゃエアー・ガンで撃ち落としてやる!」


「兄さん、そんなヤケクソみたいな事しないで下さい!」


「これ以上好き勝手されてたまるか!」


 エアー・ガンで攻撃した方が早いと判断したバンは、エアー・ガンを取り出して空中にいるヘルシャフトに攻撃しようとしたが、その前にヘルシャフトの一人が衝撃波を操り、バンが持っていたエアー・ガンを破壊した。


「あぁーっ⁉ エアー・ガンがっ俺のエアー・ガンがーっ⁉」


「ハハッ。ざまぁみろ!」


「こんな時におふざけは止めて下さい兄さん!」


「うぅ~っ。ヨキ、アイツら何とか引きずり降ろせないか⁉ っていうか引きずり降ろせ!」


「無理だよ! 空を飛んでる相手を下す方法なんてわかんないよ!」


 ヘルシャフトにエアー・ガンを破壊されたバンは、ヨキに空中にいるヘルシャフト達を地上に引きずり降ろすように言ったが、ヨキはヘルシャフト達を地上に卸す方法を知っている訳もなく、自分に襲い掛かってくるヘルシャフトの対応で精いっぱいだった。


「だったらキール! お前ならアイツら引きずり降ろせるか⁉」


「無茶言うな! そんな事できたらとっくにやってるっての!」


「リース!」


「先に言わせて下さい、僕のゴフなら動きを止めて落下させられるでしょうけど、ひきょりがありすぎて届きません!」


 バンが言いきる前にリースは動きを封じる効果がある護符が届かない事を伝えると、バンは文句を言いながらどうにかならないのかと叫んだ。

 バンの子供過ぎる反応に呆れたのか、仕方がないと言った様子でキールは槍を地面に突き刺し、腰に着けているポシェットから一つの種を取り出した。


「しゃあねぇなぁ。引きずり降ろすのは無理だが、足場位なら作ってやるよ。グロウ・グロウ!」


 キールは取り出した種にグロウ・グロウという法術を掛けると、戦いの中心となっている場所に種を蒔いた。

 すると、蒔かれた種に変化が起きた。

 種が突然芽吹き、急速に成長したかと思いきや一本の木に成長した。


「からの、バウリム・バウリム!」


 キールはグロウ・グロウで成長した木に、更に別の法術を掛ける。

 バウリム・バウリムを掛けられた木は急速に枝を伸ばしていき、葉を茂らせてヘルシャフトが更に上に飛べないよう妨害した。


「何これぇ⁉」


「木が生えたと思ったら、今度は枝が伸びた⁉」


「見て下さい! 木の枝と葉が邪魔をしてヘルシャフトが自由に飛べなくなってます!」


「これなら思う存分アイツらを殴れるだろう?」


 キールは笑いながらバンに言った。キールの意図を悟ったのか、バンは勢いよく走り出した。

 ヘルシャフト達は横に伸びている枝と葉のせいで高く飛ぶ事ができず、その内の一人にバンの蹴りが入り、思わず高度を下げてしまった。

 その隙をついてキールがチェック・ダ・ロックで封印し、ヨキとリースも飛ぶ事ができないヘルシャフト達に向かって攻撃を仕掛け、飛んでいるヘルシャフト達が枝の範囲から出ないようにする。


 その間にバンが次々と蹴りをヘルシャフト達に喰らわせてダメージを与え、キールが封印していき、ようやく戦いは終わった。

 トゥーランドットに狙われないよう遠くに避難していたリルとスズも、戦いが終わった事を確認してヨキ達の元に駆け寄ってきた。


「皆、大丈夫⁉」


「全員無事ってヨキ、なんでバンの後ろに隠れてるんだ?」


 合流したスズに言われバンの方を確認すると、そこにはヘルシャフトから奪った剣を手にしたリースを見て怯え、バンの後ろに隠れるヨキの姿があった。


「アハハ、ウィンディアの時と同じリアクション」


「え? え? リース、なんで剣なんて持ってるの?」


「それ以前にビビりすぎじゃないかヨキ?」


「それより、ヒエンとレイアって奴らがトゥーランドットを追いかけて行ったって、どういう事だよ?」


 バンの後ろでリースに怯えていたヨキだったが、キールに指摘され、ヒエンが言っていた事を思い出した。


「そうだ。ヒエン君とレイア君、マリと一緒にいたみたいなんだ!

 僕の名前を知っていて、ケイを探せって」


「ヒエンがマリと⁉ お前の聞き間違いじゃないのか⁉」


「あのヒエンが女性といっしょに行動、にわかに信じがたいですね…」


 ヨキからヒエンとレイアがマリと行動を共にしていた事を聞いたバンとリースは、信じられないといった様子で考え込んだ。

 バンとリースの二人からすればありえない事なのだろう。

 ヨキは更にヒエンに言われた事をバン達に伝えた。


「それから、炎の古文書はケイを見つけた時に渡すって言って、マリの事も、教えてくれるって言ってた。

 マリが二人と一緒じゃないのと関係があるのかな?」


「マリって奴に何かあった可能性はあるだろうな。

 トゥーランドットとの関係も気になるが、今はケイを探す事を優先した方が良い」


「ヒエンとレイアはいつでも探せるしな」


 そう言いながらスズはキールから受け取ったヒエンのクォレルを見せながら笑った。

 スズの言う通り、ブリーズン・ハートとヒエンのクォレルさえあればいつでもヒエンとレイアを見つけ出す事ができる。

 ヨキはヒエンに言われた通り、行方が分からないケイを探し出す事を優先する事にした。


(早くケイを見つけなきゃ。マリ、今はまだ会えないだけで、無事だよね?)


 マリの身に何が起きたのかわからないヨキは、只々マリの無事を信じるしかなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  今話は、エアー・ガンが破壊されたり、種から木を操る魔法が大活躍したり、戦闘描写が映えた回でしたね^ ^♪  最終的な謎解きにはやはり合流が必要なのかな? …
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