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第22話 消えた炎の古文書

本日2話目です

 全ての謎を知るために必要だったアーカイブは、四年前にヘルシャフトが近づいた事によって五つの古文書になってしまった事が判明する。

 更にその一つ、『炎の古文書』の在処が判明した。


 なんとエターナル大陸にあるガナドールという大会の会場の地下に、あるインバシオンという組織の特訓施設にあるというのだ。

 ヨキ達は精霊鏡という鏡の中にいたバンにそっくりな堕天のヘルシャフトの少年スズを連れ、ガナドール会場のある街に来ていた。


「ここがガナドールの会場がある街だぜ」


「うわ~凄いなぁ。今まで来た町とは全然違うよ」


 今まで見た町よりも明らかに違う雰囲気に好奇心が芽生えるヨキ。

 ヘルシャフトとして生きて来たため、他の種族がどう暮らしているのか知らなかったリルやスズも街を物珍しそうに見渡した。

 そんな中、キールはヨキ達が何のためにここに来たのかを忘れていると判断したのか、ヨキにロング・ロングをお見舞いした。


「ロング・ロング!」


『ビシッ!』


「痛い! 酷いよキール君。いきなり法術で攻撃するなんて~」


「アホかお前ら。オイラ達が何のためにここに来たのか忘れたのか?」


 それを聞いたヨキ達は何のためにここへ来たのかを思い出した。

 その様子を見たキールは呆れ顔でため息をつき、キールはバンとリースにインバシオンが使っていたという入口が何処なのかを聞いた。


「さっさと行くぞ。バン、リース。入り口まで案内してくれ」


「はい、こっちです」


 リースはバンよりも先に返事をし、インバシオンのアジトに繋がっている入口に向かった。

 インバシオンのアジトに繋がる入口に向かっている間、ヨキとリルはだいぶ街の風景に慣れてきて落ち着いてきたが、スズはまだ街をきょろきょろとみていた。

 その様子に気付いたバンはスズに声をかけた。


「どうしたんだよスズ?」


「俺が精霊鏡の中にいる間に、こんなにも技術が発展してたんだなぁって思ってさ。時代の流れって意外に早いもんだな」


 そう言いながらスズは街の景色を眺めていた。

 スズの話を聞いたヨキは、スズにどれくらいの間精霊鏡の中にいたのかを尋ねた。


「そういえばスズ君ってどれくらいあの鏡の中にいたの?」


「もうだいぶ前だからなぁ、忘れちゃったよ」


 そう言ってスズはまた街の様子を見始めた。

 ヨキとバンはスズに聞こえないように、どれだけの間精霊鏡の中に閉じ込められていたのか小声で話し合い始めた。


「ねぇバン。スズ君ってどれくらい鏡の中にいたのかな?」


「四年前にアーカイブがあった場所に移されたっていうし、五年ぐらいじゃないか?」


「でも、さっきの言い方じゃそれ以上にいたみたいな感じだよ?

 スズ君、今何歳なんだろう?」


「言われてみれば、確かに気になるな」


 ヨキとバンは、スズがどれぐらい精霊鏡の中にいたのかを話し合った。

 それからしばらくして、リースの案内の元インバシオンの特訓施設に繋がる入口に辿り着いた。


「ここに入口があるの?」


 ヨキ達は入口を探し始めたが、中々それらしいものを見つける事ができない。


「前にも言ったように見つけにくいんだ。インバシオンの人間しか知らないからな」


「大会中にセンリョクになりそうなぼうけんしゃに目ぼしをつけては、ちかのシセツにつれ去っていたみたいですからね」


 念のために確認しておくが、バンとリースの二人は昔、そのインバシオンにいたのだが、ある事をきっかけにインバシオンを抜けたのである。

 ヨキ達にそのまま動かず待っているように伝えると、バンとリースは入口を探し始めた。


「たしかここらへんに…あっあれ? 兄さん、来て下さい!」


「どうしたんだよリース」


「ここを見て下さい!」


「え? どうかし……はぁ⁉」


 リースに呼ばれたバンは、リースが指さした先を確認すると突然驚いた様子で叫んだ。

 その声は明らかに動揺していたため、ヨキ達はどうしたのかと心配になりバンとリースの傍に駆け寄った。


「どうしたんだよ二人とも。そんなに驚いて?」


「ダレかが前にここを通ったけいせきがあるんです!」


 誰かが通った形跡があるとリースから聞いたヨキ達は、ヘルシャフトにも見つかる恐れがないとされていた分安心していたため、炎の古文書がインバシオンのアジトにある事を知られ、ヘルシャフトに発見されたのではないかと不安になった。


「まさかヘルシャフトが見つけて…」


「いや、ヘルシャフトじゃないな」


 キールは入口を見てそう言った。入口を見つけたのがヘルシャフトではないというキールの考えを聞いたヨキ達は、一斉にキールの方を見た。

 何故そう言いきれるのか、リルはキールに聞いた。


「どうしてそう言いきれるの?」


「連中ならここを見つけて、入口を開けるよりも壊す筈だ。入口は壊れてないし、ご丁寧に隠されてる」


 キールに言われ、ヨキ達は入口付近をよく見ると、確かにキールの言う通り壊された形跡もなく、ましてや荒らされた様子もなかった。

 何より誰にも気づかれないように隠されていたため、ヘルシャフトではない可能性があった。

それを見たヨキ達は少し安心したが、不審に思ったスズがキールにある事を聞いた。


「じゃあ誰が入ったんだ? この入口って誰にもバレた事がないんだろ?」


「おいバン、リース。お前ら確か古の図書館で話してた時に確か〝インバシオンしか知らない〟っていったよな?」


「え? あぁ。それがどうかしたか?」


「知っているのは僕と兄さんを含めた元インバシオンの…」


 リースが何かを言いかけたが、突然黙り込んでしまった。

 それどころかバンまでもが黙り込んでしまったため、ヨキ達は急に黙り込んでしまった二人に困惑し、どうしたのかと不安になった次の瞬間。


「「あぁーっ!」」


 今度は大声で叫んだ二人に驚いたヨキ達。するとキールがヨキ達にわかりやすく説明し始めた。


「こいつらが言ってただろ? この入口を知ってるのはインバシオンの人間しか知らないって。

 つまりっこに来たのはそのインバシオンにいた奴って事だ」


 それを聞いたヨキ達はようやく納得できた。

 が、何故わざわざここに来る理由があるのかという疑問がすぐに浮かんだため、ヨキ達は声を揃えてキールに聞いた。


「「「じゃあなんでもう使わない場所に来たの/さ?」」」


 それを聞いたキールは更に呆れて溜息を吐いた。

 ヨキ達に自分の考えが伝わっていないと分かったキールは、更にわかりやすく説明し始めた。


「つまりソイツが何らかの方法でオイラ達スピリットシャーマンの事を知ったって事だよ。

 それとヨキ、これはあくまで仮説とさせてもらう」


「?」


「もしかしたら、ソイツと一緒に〝お前の探してる奴ら〟のどちらかと一緒にいるかもしれないぞ」


 それを聞いたヨキはある事が浮かんだ。もしかしたらその人物と一緒にケイとマリのどちらかがいるかもしれない。

 そうなればケイとマリのどちらかと再会する事ができるかもしれないと思った。

 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。


「だったら早く中に入ろう! バン、早く入口開けて!」


「解った解ったって。少し落ちつけよヨキ」


 そう言ってバンは隠していた入口の扉を開けた。

 すると中は通りやすい大きさの洞窟になっており、全員が入っても問題のない広さ扉が開くと同時にヨキは興奮した状態で中に入った。

 バン達も慌ててヨキの後を追って中に入っていく。


「ヨキ待って! 早すぎ、早すぎ!」


「あんなにテンションの高いヨキ、初めて見た!」


「キール君、かくしょうもないのになんであんな事言ったんですか⁉」


 ケイとマリの二人が第三者と行動しているかもしれないと聞かされ、一人先走ってしまったヨキの様子を見ながら、リースは何故確証がない事を言ったのかキールを問いただした。

 その事に対し、キールは前々から思っていた事を話し始めた。


「確かに確証はねぇけど、その二人も俺と同じシャーマンの生まれ変わりの可能性がある!」


「どういう事だよそれ⁉」


「前にヨキからその二人の特徴を聞いて、二つのシャーマンの特徴に当てはまってるんだ!

 恐らくヘルシャフトに狙われてる可能性がある!」


「じゃあ、その時にスピリットシャーマンの事を知った可能性も⁉」


「本人達がスピリットシャーマンの生まれ変わりって自覚がなくてもその可能性もある!」


 ヨキからケイとマリの特徴を聞いた時、自分と同じスピリットシャーマンの転生者である可能性があると考えていたキールは、第三者の存在を知り、ケイとマリのどちらかがその第三者と行動している可能性が浮かんだのだ。

 先に進んでしまったヨキに追いつき、そのまま通路を進んでいくとインバシオンの特訓施設に着いた。

 中は物凄く複雑になっていてバンとリースの案内なしではすぐに迷ってはぐれてしまいそうになった。


「これがインバシオンの特訓施設…」


「まさに、秘密基地って感じだな。三千年前じゃ想像もつかないぜ」


「なんであちこち金属の壁とか、床とかになってるんだ?」


「バカ野郎。地下だと地崩れが起きる危険だから、金属を使ってそうならないようにしてんだよ」


「キール、俺バンなんだけど」


 インバシオンの特訓施設が地下にあるため、地崩れが起きないよう金属を使っているのだとスズに説明したキールだったが、間違えてインバシオンの特訓施設を案内しているバンに説明していた。


 その事を間違えられた本人に指摘されたキールは、今後の事を考えバンとスズの見分け方を考えた方が良いかもしれないと考えた。

 するとリルがガラス張りの壁の向こうに似たような道具がいくつもある事に気付き、リルはバンとリースに道具の事について尋ねた。


「ねぇ、あそこにある色んな道具みたいな物は何? 同じものがいくつもあるんだけど…」


「あれは特訓用の道具だよ。この辺はトレーニングルームが見られる作りになってるんだ」


「バンとリース君も、ここで特訓したの?」


「いや、俺とリースは本部の方で特訓してたから、ここの施設は使った事はないんだ。

 本部も厳しかったけど、こっちの方がめちゃくちゃ厳しかったみたいだし、ノルマを達成しなかったら死ぬ程恐ろしいペナルティがあったみたいだぞ?」


「そんなに怖いの? 死ぬ程のペナルティは嫌だわ…」


 バンから今いるインバシオンの特訓施設に死ぬほど恐ろしいペナルティがあったと聞いたリルは顔をしかめながら、どんなペナルティなのか想像した。

 同じように聞いていたヨキも死ぬ程と聞いて、自分が受ける訳でもないのに顔面蒼白になり、身震いを起こしていた。


 その時点で何故バンとリースがインバシオンという悪の組織に入ったのか、という疑問が生まれた。

 そうやって進んでいく内に先行していたリースが、炎の古文書が仕舞われている可能性がある倉庫にもうすぐ事を告げた。


「ここをまっすぐ行けば重用品をしまう倉庫につく筈です」


 リースがそう言ったその時、『かちっ』という怪しげな音がした。もちろんヨキ達が気付かない訳がない。


「「「…え?」」」


 ヨキ達が驚きの声を揃えて言うと同時に、突如壁から大量の槍が飛び出し、雨の如く矢が降り注ぎ、大人の頭ぐらいの大きさはあるであろう石の(つぶて)など、様々な武器が飛び出してきてヨキ達を襲った。


「うわぁーっ⁉」


「キャーッ!」


「なんだ⁉」


「わーっと!」


 突然飛び出してきた武器の数々に驚いたヨキ達は必死に飛んでくる武器を(かわ)すが、壁から出て来る武器は一向に止まる気配がない。

 これにはたまらず、ヨキ達は元来た道を戻って避難した。

 ようやく安全地帯に避難する事ができたヨキ達は、安心してその場に座り込んでしまった。


「ナッなんなの今の? いきなり私達を攻撃してきたわ」


「くそ! トラップか!」


「えっ! トランプ⁉」


「違う違う、トラップだよ! 罠って事!」


「ってかこんな時にボケる奴がいるか普通⁉」


 安全地帯に避難した事で余裕が戻ったのか、トラップとトランプを間違えるヨキにツッコミを入れるキールとスズ。

 リルは罠が仕掛けられていた廊下に驚き、自分達が攻撃されたのだと一人で騒いでいた。

 そんな中、バンとリースは何かが可笑しいという顔で何か考えていた。

 その様子に気付いたヨキは、考え込んでいるバンとリースにどうしたのかと尋ねた。


「どうしたの、二人共?」


「いや、さっきの防犯システムの事なんだけど…」


「防犯システム?」


「さっきのトラップの事か⁉」


 バンとリースが考えていたのは、先程ヨキ達を襲ったトラップ、防犯システムの事についての事だった。

 バンとリースの話によれば、先程のトラップは重要品がある倉庫に裏切り者や不審人物に重要品を奪われないようにするための防犯システムとしての役割があったそうだ。


 だが、インバシオンが潰れて以降、このインバシオンの特訓施設は電力を止められ、防犯システムは止まっている筈が、何故動いているのかがわからなかったのだ。


「じゃあ、さっきの二人にとっても予想外だったって事?」


「そうなんだ。だからなんで動いてるのか俺もリースもわからないんだよ」


「電力はもうないはずですから、動かないはずなんですけど…」


 バンとリースの話を聞いたキールは、二人にある事を聞いた。


「おい、ここに制御室とかいう部屋ってあるのか?」


「はい。確かここからすぐ近くにあったと思うんですけど…」


 それを聞いたキールは、様々な武器が襲いかかる防犯システムが仕掛けられた廊下に視線を向けた。

 それを見たヨキ達はキールが何をしようとしているのかがわかった。


「キール君、何するつもりなの⁉」


「お前まさか!」


「お前らは制御室に行って防犯システムを止めに行ってくれ。その間にオイラは倉庫に向かう」


 キールが一人で倉庫に向かうつもりだと知ったリースは、大慌てでキールを止めた。


「無茶です! 廊下の防犯システムは厳重で通り抜けるなんて無理ですよ!」


「忘れたのか? オイラはナチュラルトレジャーの子孫にして生まれ変わり。

 こんなの朝飯前さ」


 そう言ってキールはリースの忠告を無視し、一人で倉庫に行ってしまった。

 それを見たヨキ達はキールの安全を確保するべく、防犯システムを止めに急いで制御室に向かった。

 キールは身軽な身のこなしで襲い来る武器を躱していく。

 避け切れない武器の攻撃は槍や法術を発動させ、武器を叩き落したり防いだりしながら進んでいた。


「ロング・ロング! スマッシュ・スマッシュ!」


 キールは(樹の礎)と法術を上手く使い分け、辿り着くのは不可能だと言われた倉庫の入り口に辿り着いた。


「流石は秘密基地の倉庫、頑丈な扉に守られてるな。

 この程度の頑丈さなら、ヨキ達が防犯システムを止めるより、こっちでぶっ壊して中に入った方が早いか。

 カット・カット!」


 倉庫の扉は固く閉ざされ、パスワードを入力しなければ開かないしくになっていたが、扉の頑丈さを調べ壊した方が早いと判断したキールはカット・カットを唱えた。

 槍の穂先にに鎌のような形をした緑の光が集まり、キールはそれを使って扉を破壊し、そのまま中に入り、一人探索を始めた。



*****



 既にキールが倉庫内に入った事などつゆ知らず、ヨキ達は制御室の前に辿り着いたまでは良かったが、扉を開けるためのパスワードに手こずっていた。

 何者かにパスワードを書き換えられていて、中に入れないのである。


「二人とも早く早く!」


「解ってるけど、パスワードを書き換えられたせいで開けられないんだ!」


「書きかえたのがダレなのかわかればよそうがつくんですけど、そのダレかがわからないのでよそうがつきません」


「キール君、大丈夫かな?」


 パスワードを書き換えた人物が誰なのかわからず、可能性がある文字を幾つも入力するリースは頭を抱えていた。

 一人で倉庫に向かったキールは無傷で倉庫に辿り着き、扉を破壊して探索を始めていたが、ヨキ達はキールが無事なのか把握できないため、心配になっていた。

 そんな中、スズのとんでもない行動をとったためそれどころではなくなった。


「「「「…わぁあああっ⁉」」」」


 いつまでたっても制御室に入れない事に痺れを切らしたのか、制御室の扉をこじ開けようとスズの手には巨大な風の塊が出来上がっていた。

 それを見たヨキ達は巻き込まれればただでは済まないと判断し、慌てて扉から離れた。


 スズはそのまま風の塊を扉にぶつけ、開けられなかった制御室の扉をこじ開けた、というよりもぶち壊した。

 それを見たヨキ達は最初こそ呆然としていたが、我に帰ってスズに文句を言った。


「いきなり何するんだよスズ!」


「いくらなんでも危なすぎるわよーっ!」


「恐かった~!」


「危ないじゃないですか‼」


「まぁまぁ開いたし良いって事でいいんじゃないか。

 それより早く防御システムを止めてキールの所に行こうぜ」


 こうしてスズによって制御室の扉がぶち壊され、中に入る事ができるようになった。

 制御室に入ると、リースがインバシオンの特訓施設のシステムをコントロールするためのパネルを操作し、全てのシステムが止まったのを確認するとキールの安否を確認するべく急いで倉庫に向かった。


 倉庫の扉は既にキールによって破壊されており、ヨキ達はすぐに中に入ってキールを探し始めた。

 だが、キールの姿が見当たらず、バンは近くの柱を思いっきり蹴った。

 すると上から何か…ではなく、キールが降ってきた。


「「わーっ⁉」」


「バン! 大丈……あら? キール⁇」


 バンの叫び声を聞いて駆け付けたリルは、バンの上にキールが乗っている姿を見て戸惑っていた。

 ヨキ達もバンの声に気付いて集まったが、バンの上にキールが乗っている事に少し驚いた。


((なんでだろう、物凄いデジャブ感を感じる…))


「なんでバンの上にいるんだ?」


「イテテ。お前らの声が聞こえて来たから、降りようとしたら急に足場が揺れてバンの上に落っこちたんだよ!」


 バンが柱を蹴った事でバランスを崩し、バンの上に落ちたというキールの証言を聞き、最初にキールに会った時もバンが近くの木を蹴った事でキールが落とされたのを密かに思いだしたヨキとリース。

 スズはキールに炎の古文書はあったがどうかを問いかけた。


「それで、炎の古文書は見つかった?」


「間違いなくここにあったみたいだ。けど前に来た誰かが持って行っちまったらしい」


「それってもうここには古文書がないって事?」


 リルがそう言うと、キールは右手に握っていた物をヨキ達に見せた。

 キールが握っていたのはクロスボウ用の矢である赤褐色のクォレルだった。


「多分古文書を持っていった奴のだ。バン、リース。このクォレルに心当たりはないか?」


 キールに聞かれたバンとリースは矢を見つめたまましばらく考えていた。

 そして何かを思い出したかのようにバンとリースはお互いの顔を見た。

 バンとリースの反応を見たリルは二人に聞いた。


「心当たりがあるの?」


「このクォレル、多分ヒエンのだと思う」


「「ヒエン」」


「それって二人と一緒に炎の古文書を盗んだ人だよね?」


 キールが見つけた第三者の手掛かりである赤褐色のクォレルが、ヒエンの物である事が判明した。

 炎の古文書は以前、バンとリースがインバシオンに所属していた頃、ヒエンと共に盗み出したものであったため、ヒエンが炎の古文書を知っていても可笑しくはない。

 第三者の正体がヒエンと聞いたヨキにとっての問題は、ヒエンがケイとマリのどちらかと行動しているのかという事だった。


「だとすれば、ケイさんかマリさんのどちらかが、ヒエンと行動してる可能性が高いですね」


「そうと決まればさっさとここを出てソイツを探そうぜ」


 こうしてヨキ達はインバシオンの特訓施設を出て、ヒエンの手掛かりを探す事になった。

 炎の古文書を得るため、ケイとマリ、どちらかに会うために。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  複数パーティのザッピングスタイルを上手く使って、謎と謎解きを描かれていますね。  もどかしくも楽しいのが冒険の醍醐味かも。面白かったです。
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