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第21話 現状の打開、過去の真実

記念すべき第20話です


4月24日修正しました。

 行方知れずのマリと、生きていたディモルフォセカの双子の弟、リンドウの手掛かりを探しにアーカイブの部品があったとされる町にやってきたケイ達だったが、ヒバリが得た情報によってリンドウがヘルシャフトの手先ではないかという噂を知る。

 それを聞いたディモルフォセカはショックのあまりに熱を出して倒れてしまった。


 そしてディモルフォセカを運び込んだ病院に、ニヤトが見つけたアーカイブの部品を持っていた人物がたが、更にディモルフォセカの熱が上がり、命に関わる程になってしまう。

 それぞれがディモルフォセカを救うために動き出した。

 病院の状況も酷く、それを見かねたケイは病院全体の指揮をすると言い出した。


「アンタは氷枕を二十個! アンタ達はありったけの包帯を持ってきてくれ!

 そこのオッサンは手の開いてる人を何人か見つけて、残ってる薬を持ってきてくれ、どの薬が足りないか確認したい‼」


「ケイさん! ぼく、ツバサをつかって、びょういんの人たちをてつだおうとおもってるのですが…」


 それを聞いたケイはラヴァーズに言った。


「ダメだ! 今この状況で翼を出したら状況は悪化するぞ!」


「だけどひとでぶそくですし、ヘルシャフトの羽にはちゆのうりょくがそなわってるんです!

 だから…おねがいします!」


 自分の翼に宿る治癒能力で手伝いをしたいと頭を下げるラヴァーズに対し、ケイはしばらく考えたが、考えている余裕はなかった。

 そこへ一人の看護婦がケイのもとに急いできた。


「一二五号室の患者さんの容体が悪化して、残っている薬ではどうしようもありません!」


 それを聞いたケイはやむを得ずラヴァーズに翼を使う事を許可した。


「…解った。ラヴァーズ、翼を出してくれ!」


 それを聞いたラヴァーズは隠していた翼を広げた。

それを見た看護婦は驚いて混乱してしまったが、それを見たケイは看護婦に向かって怒鳴り散らした。


「こんな時にビビるな! ラヴァーズはヘルシャフトだがアンタ達の知ってる奴らとは違うから安心しろ!

 アンタは周りに説明しつつラヴァーズと一緒に動け!

 解ったな⁉」


 ケイからの説教を聞いた看護婦は我に返り、承諾するとラヴァーズと共に病室に向かった。

 アーカイブの部品を持っていた医者はケイに言われた通りに、全力でディモルフォセカの看護にあたっていた。

 これ以上ディモルフォセカの熱を上げる訳にはいかないため、強制的にディモルフォセカの看護をする事になった。



*****



 カトレアはケイに頼まれてある物を探していた。

 薬を作るための道具と、薬を飲みやすくするための材料を探していたのだ。

 薬を飲みやすくする材料を見つけたカトレアは、薬を作るための道具を探し古い道具が置いてある店に駆け込んだ。


「すみませんすみません! ここに『薬研』っていう道具ありますか⁉ 借してほしいんですけど⁉」


「あぁ一つあるよ? 2万5000マニーで」


「買うんじゃのうて借りに来たのよ! 買うたぁ一言も言うとらん‼」


 店主に探していた道具の購入と勘違いされたカトレアは、借りたいのだと訂正し、そのまま勢いよく説明し始めた。

 ケイの話によると、薬草をすり潰すだけならすり鉢を使ってもいいが、薬を作るとなるとただ混ぜるだけではなく、材料をすりつぶした状態で順番に混ぜていく必要がある。


 中には固い木の実や根っこのような物もあるため、そういったものは薬研を使ってすり潰した方が早いのだそうだ。

 カトレアの気迫に押されながらも、詳しい話を聞いた店主は店の奥にしまってあった薬研をカトレアに渡した。

 カトレアは頼まれていた物を全て揃え、急いで病院へ戻った。



*****



 その頃ヒバリとニヤトは医者から教えられた道をたどり、薬草を売っている男の家に辿り着いた。


「見えた! あそこやな⁉」


「急ぐでごじゃるニヤト!」


 ヒバリとニヤトは、ケイに二十種類以上の薬草を手に入れてくるよう頼まれていたのだ。

 解熱剤を作るのにそれ程の薬草はいらないと思うが、おそらく病院に残っている薬だけでは病院にいる患者の手当てはできないと判断したためである。

 家の前に着くとニヤトは乱暴に扉を叩いた。


「すんませーん! 薬草売りのオッサンおりますかー⁉」


 ニヤトは乱暴に扉を叩き続けるが、中からの反応が全くない。

 不自然に思ったヒバリとニヤトは、一刻も早く薬草を手に入れる必要があったため扉を蹴破って中に入ったのだが、そこでアクシデントが発生した。

 玄関に足を踏み入れた途端、玄関の床が開いてヒバリとニヤトはそのまま落ちてしまったのだ。

幸い落ちた先にクッションがあったため怪我はしなかったが、落ちた側はたまったものではない。


「いって~。大丈夫かヒバリ?」


「なんとか。そういえば、ここの家主がカラクリ好きだと言っていたでごじゃったな」


 ヒバリは医者から薬草売りの男がカラクリ好きであると聞いていたのを思い出し、先程の落とし穴はその一つだと考えた。

 中に入る事ができたとはいえ、問題は薬草売りの男が何処にいるのかという事だ。


「とりあえず気を取り直して、オッサン探して薬草売ってもらわんと…。どっから出たらええんや?」


「カラクリと考えると、この近くに手掛かりか何かある筈…」


 ヒバリは何処かに手掛かりがあると考え、近くの壁を調べ始めた。

 その考えは的中し、ヒバリが壁に設置されていた燭台を調べているとそれがレバーである事が判明し、燭台を掴み手前に引くと近くの壁が動き、隠し階段が現れた。

 隠し階段を登り上の階に進もうとしたが、そこでもアクシデントが発生した。

 ニヤトが階段を上っている時に手すりに掴んでいたのだが、その途中で手すりの一部が下がったのだ。


「へ?」


「カチッて、ニヤトまさか⁉」


 スイッチが入ったような音を聞いたヒバリは、下がっている手すりの一部とニヤトを皇后に見て隠し階段に仕掛けられたカラクリのスイッチを起動させてしまったのだと悟った。

 ヒバリの予想通り、隠し階段の上の方から何かが転がってくるような音がヒバリとニヤトに向かって近づいてきていた。

 自分達の身に危険が迫っていると感じたヒバリは、ニヤトに声を掛けた。


「ニヤト! 最初に落ちた部屋へ逃げるでごじゃる!」


「わわかった! ってヒバリ前、前!」


「ぬおぉおーっ⁉」


 ヒバリに指摘され前を確認すると、ヒバリとニヤトより一回り大きい木製の大玉が転がってきた。

 それを見たヒバリは大慌てで隠し階段を下り始めた。

 それにつられてニヤトも隠し階段を下り、最初に落ちた部屋に戻るとヒバリとニヤトは左右の壁際に分かれ、木製の大玉をやり過ごした。


 転がってきた木製の大玉はヒバリとニヤトの落下地点となったクッションの所で止まると、クッションと木製の床ごと上へと動き出して壁の中へと消えて行き、新しいクッションと木星の床が現れた。


「あんな事までできるんかいな、ここ」


「慎重に進まねばこちらが危険でごじゃる」


「急がなあかん時に、なんでこうなんねん!」


「暴れるなでごじゃる。うっかり周りにある物に触れて、またカラクリが動いたりすればこちらが危険でごじゃるぞ」


 先ほどの仕掛けを見たヒバリは、自分達がいる建物がカラクリ屋敷になっていると考え、下手に動けばカラクリが動いて自分達に襲い掛かる危険があると判断し、ニヤトに暴れないように注意した。

 気を取り直して、ヒバリとニヤトは隠し階段をのぼり移動を始めた。

 今度は無事に隠し階段を登り切り、隠し階段から出てみると廊下には窓が見当たらなかったため、まだ地下にいるという事がわかった。


「随分凝った作りやな。すんませーん、誰かおらんかー?」


「部屋を一つ一つ調べる訳にもいかぬし、どうするべきか…」


 恐らく他の部屋にも何かしらのカラクリが仕掛けられていると考えたヒバリは、どうやって薬草売りの男を探しつつ外に出るか考えていると、何処からともなく男の声が聞こえて来た。


《おーい、誰か来てんのか~?》


 突然聞こえて来た声に驚いたヒバリとニヤトは、辺りを見回して声の人物を探した。


「誰や! どこにおるんや⁉」


「姿を現すでごじゃる!」


《もし誰かいるんだったらよぉ、近くに伝声管があると思うからそっから声かけてくれ》


「伝声管?」


「もしかしてこれちゃうか?」


 どうやら声の主の方からはヒバリとニヤトの声は聞こえていないらしく、二人と話をするためには伝声管を使う必要があるようだ。

 伝声管と聞いたニヤトは、近くにトランペットのベルのような物がある事に気付き、蓋を開け試しに話し始めた。


「おーい、聞こえるかー?」


《おう、ちゃんと見つけられたみたいだな。なんか俺に用でもあんのか?》


「失礼仕る。貴殿はこのカラクリ屋敷の家主であられるか?」


《カラクリ屋敷というよりか迷路みたいなもんだが、俺が本人で間違いないぞ。

 ところで、俺になんか用か?》


 伝声管から聞こえてくる声が医者が言っていた薬草売りの男だと分かったヒバリとニヤトは、事の経緯を説明した。

 ヒバリとニヤトから事情を聴いた薬草売りの男は、世間に疎いのか、ヘルシャフトが町に襲ってきた事は知っていたが、そこまで酷い状況だとは知らなかったようだ。


 町の状況を聞いた薬草売りの男は無償で薬草を譲っても構わないとヒバリとニヤトに伝えたのだが、そこで想定外の事を言ってきた。


《俺は今からお前さんらに言われた薬草の準備すっから、自力で出てきてくれ》


「はぁ⁉ そんなん無理や! あちこちにカラクリあるんにどう出ろ言うねん!」


《地下は一階分からしかねぇから仕掛けを解けばすぐ出られる。

 って訳で脱出頑張ってくれ》


 そこまで言うと薬草売りの男は一方的に会話を切ってしまい、せめて方法だけでも聞こうとしたニヤトは伝声管に向かって喋り続けたが返事が返ってくる事はなかった。

 薬草売りの男との連絡が取れなくなったヒバリとニヤトは、どのようなカラクリが仕掛けられているかわからない地下から自力で脱出する羽目になった。


「こうしちゃいられへん、はよこっから脱出するでヒバリ!」


「待つでごじゃるニヤト。下手にいじれば仕掛けられているカラクリが…」


「ギャニャアーッ!」


「そら見た事か!」


 一刻も早く外に出ようと行動を起こしたニヤトだったが、近くの部屋に入ろうと扉を開けようとした瞬間に感電した。

 それを見たヒバリは思わず呆れたが、外に繋がる扉を探し始めた。

 ヒバリとニヤトがいる階には階段が見当たらず、先程と同じように隠し階段があるのではないかと考えたヒバリは隠し階段の手掛かりはないか辺りを確認すると、絵画がない額縁を発見した。


「これは、隠し階段の手掛かりでごじゃろうか?」


「おーいヒバリ―。これなんかわかるか?」


 ヒバリが額縁を見ていると、ニヤトが何か見つけたようだ。

 ニヤトの手にあったのは、少し大きめのパズルのピースのような物で何か絵のような物が描かれているのを見たヒバリは、ニヤトからピースを受け取り、額縁の内がと見比べた。


「やはりそうでごじゃったか!」


「なんや、どないしたんや?」


「この額縁にピースを嵌め、絵画を完成させれば隠し階段が見つかるやもしれぬ。

 家主殿が言っていたカラクリというのは、これの事でごじゃるよ!」


「って事は、残りのピースさえ見つければ出られるんやな⁉」


「見た所、残るピースはあと三つ。二手に分かれて探すでごじゃる!」


 地下からの脱出方法を見つけたヒバリとニヤトは、絵画を完成させるために残るピースを探し始めた。


*****


 病院で指示を出していたケイはカトレアが持って来た薬研を使い、自分が持っていた薬草を使ってその症状に合った薬を作り、病院関係者に渡して患者の治療に当たらせた。

 また、手の空いている者に声を掛け清潔な布を使って臨時のガーゼと包帯を作らせ、少しでも多く患者に行き渡るようにした。


「使えそうな布、持って来たわよ!」


「カトレア、戻ってきて早々悪いんだけど氷を探してディルカや熱出してる患者の所に運んでくれ!

 それから何か甘いものを見つけたらラヴァーズに食わせてやってくれないか?

 今一番頑張ってるのはアイツだ!」


「わかったわ!」


 カトレアに次の指示を出したケイは、次の作業に取り掛かった。

 ケイは病院にある調理場から持ってきたすり鉢に傷に聞く薬草を入れていき、すりつぶしていった。

 更にそれをボウルに移し替えてウォーター・ウォーターという法術で出した水を少しずつ加えていきながら混ぜ、傷薬を作った。


 出来上がった傷薬を他の容器に移し、ケイの元にやって来た看護婦に出来上がった傷薬を渡し、傷口が化膿している患者に塗るよう指示を出した。

 そしてテーブルに広げた薬草と備品、元々あった薬の数を確認すると、もうそれ程残っていなかった。


(ここまで持たせたけど、この調子だと薬草も薬もなくなるのも時間の問題だ。

 前に巻物を見た時に治療に使えそうな法術があったけど、力を使い果たして俺まで倒れたら意味がない)


「報告します! 二二六号室の患者さんの一人が腹痛を訴えられています!」


「腹痛に効く薬ならまだ残ってる! 担当医の判断をしっかり聞いて飲ませるんだ!」


(ヒバリ、ニヤト、早く戻ってきてくれ!)



*****



 カラクリ屋敷の地下に落ちてしまい、外に出るための方法として絵画を完成させるためピースを集めていた。

 その間に地下に仕掛けられていたカラクリで酷い目に遭い、ボロボロになっていたが何とか三つ集める事ができ、残るは一つとなった。


「何とか三つ集まってけど、最後の一つが見つからへんなぁ」


「試しに嵌めてみたが、やはり一つ足りないでごじゃるな…」


 ヒバリは未完成の絵画を見ながら、残るピースが何処にあるのかを考えた。

 念のため一度探した部屋をもう一度調べ直したり、ヒバリが調べた場所をニヤトが調べ、ニヤトが調べた場所をヒバリが調べ直したりもしたが見つける事ができないでいた。


「どこか見落としているのでごじゃろうか」


「んな事言われたかて、この階全部調べつくしてもうたし、残っとるとしたらワイらが落ちた地下ぐらいしか…」


「それでごじゃる!」


 自分達が落ちた地下を詳しく調べていなかった事を思い出したヒバリは、急いで最初の地下に戻り、ピースが隠されていそうな場所を探した。

 ヒバリとニヤトは最初の地下をしらみ潰しに調べたが、ピースは見つけられず、あと探していないのは木製の大玉が転がって来た隠し階段だった。

 ヒバリとニヤトは隠し階段に仕掛けられているかもしれないカラクリを動かさないよう、慎重に探しながら、何処か怪しい所がないか探した。

 隠し階段を調べていると、ニヤトが階段に使われている石材の一部が違う事に気付いた。


「ヒバリ、これそうちゃうか⁉」


 ニヤトに声を掛けられたヒバリは、ニヤトが見つけた石材を調べ、取り外しが可能である事に気付くと慎重に取り外した。

 そこにはずっと探していた最後のピースが納められており、それを見つけたヒバリとニヤトは急いで上の階に戻り、最後のピースを未完成の絵画にはめ込んだ。

 最後のピースを嵌めると、絵画の横の壁が動き始め、新たな隠し階段が現れた。

 ヒバリとニヤトは現れた隠し階段をのぼり、小屋のような場所に出た。


「ここは、小屋の中か?」


「あれは、中に入ろうとした時に開いた扉。地下から出られたでごじゃるぞ!」


「よっしゃー! ッじゃなくて、肝心のおっさんは何処や⁉」


《おーい、そろそろ出て来られたかー?》


 漸く地下から出る事ができたヒバリとニヤトが薬草売りの男を探そうとすると、近くの伝声管から本人の声が聞こえて来た。

 ヒバリとニヤトは伝声管に近寄り、薬草売りの男が今どこにいるのかを尋ねた。


「おっさん、今何処におんねん!」


《小屋の外だよ。地下から出られたなら裏口から出てきとくれ。

 頼まれた薬草は全部準備できてるからな》


 それを聞いたヒバリとニヤトは裏口らしき扉から外に出ると、目の前には辺り一面の薬草畑が広がっていた。

 その近くで五〇㎝程の籠を二つ程持った薬草売りと思われる中年の男の姿があった。


「おーいこっちだこっち―」


 薬草売りの男に呼ばれたヒバリとニヤトは、駆け足で薬草売りのもとまで行くと籠の中に大量の薬草が入っている事に気付いた。

 伝声管で聞いた通り、地価のカラクリを解き明かしている間に用意していたのだろう。


「これだけあれば問題ないだろう。急いで病院に届けてやんな」


「あんがとなオッサン!」


「ありがとうごじゃりまする! このご恩は必ずお返しいたす!」


 ヒバリとニヤトは薬草が入った籠を背負うと、大急ぎでケイ達がいる病院に向かった。



*****



「三〇三号室の患者さんが初熱しました!」


「傷薬が足りません!」


「まだ消毒液は残ってますか⁉」


 ケイの指揮の元、何とか病院は起動していたのだが、薬の数が足りず押し寄せて来る患者の数に対応できなくなり始めてきた。

 一番の問題は、ケイが持っていた薬草を使い切り新しい薬を作る事ができなくなってしまったのだ。


「傷薬はこれで最後だ! 消毒液がないなら熱湯を沸かしてそれで道具を消毒するんだ!」


「どいてくれーっ!」


「ケイ、待たせたでごじゃる! 頼まれていた薬草を持って来たでごじゃるぞ!」


 ケイが指示を出していると、薬草を手に入れたヒバリとニヤトが駆け込んできた。

 ヒバリとニヤトが背負っている籠に大量の薬草が入っているのを見たケイは、ようやく新しいニヤトにこれまで使った容器を洗うよう指示を出し、解熱効果のある薬草を手に取りヒバリに薬草を種類ごとに分けておくように指示を出すと、解熱剤を調合する準備に取り掛かった。


 カトレアに頼んでいたものの中には寒天と蜂蜜があり、寒天を鍋に入れて溶かし、そこに蜂蜜を加え、平らな容器の上に円上にして広く伸ばし自家製のオブラートを作った。

 固まるまでの間、解熱効果のある薬草を調合し、薬研で粉上にすると傷薬と同様に他の容器に移して少しずつ水を加えながら混ぜ解熱剤を作り上げると、冷めて固まった自家製のオブラートを慎重に外していった。

 外した自家製のオブラートのその上に解熱剤を載せ、慎重にくるんでいく。


「出来た! この薬をディルカの所に持って行ってくれ!」


「承知!」


 ケイは出来上がった解熱剤を薬草の仕分けが終わったヒバリに渡し、他にも解熱剤を必要とする患者と他の症状に苦しむ患者のために他の薬の調合を始めた。

 それから三刻(さんこく)が経過し、ケイの指示によって病院の状況は良くなり、落ち着いていた。

 ディモルフォセカもケイが作った解熱剤で熱が下がり、一命を取り留め意識を取り戻した。


「カトレア、それに皆も。私…」


「良かった、目が覚めたのね!」


「リンドウさんの事を聞いて、三刻も寝込んでいたんですよ」


「兎に角ディモルフォセカが無事でよかッドワーやっちまったー!」


 ケイはディモルフォセカに水分補給をさせようとコップを渡そうとした時に鞄を落とし、中にあった物をばらまいてしまった。

 すると医者がその中にあった水色の板を見て驚いていた。


「こっ古文書⁉ …じゃない。だがこれは間違いなく」


「どうしたんですか?」


「これを持っているという事は、この中にスピリットシャーマンの子孫がいるとみて間違いないな?」


 それを聞いたケイ達は医者がスピリットシャーマンの事を知っている事に驚き、何か知っているのではないかと思い、ケイは自分がアクアシーフであり、ディモルフォセカがファイヤーファントムである事を明かす事にした。


「俺はアクアシーフの生まれ変わりで、ディルカはファイヤーファントムだけど、アンタ何者なんだ?」


「…私の祖先は三千年前の戦いに関わった人物だ。何年か前に空からアーカイブの一部、『氷の古文書』が降ってきた。

 それから数年が経ったある日、二人の少年と一人の少女が訪ねてきた」


 それを聞いたケイ達はそれがヒエンとレイア、そしてマリである事を悟った。


「その少女は氷の古文書を使って両親の死の真相を知った、ヘルシャフトに殺されたという真実を」


 それを聞いたケイは更に驚く。

 マリの両親がディモルフォセカと同じようにヘルシャフトに事故に見せかけられて殺されたと聞けば驚かずにはいられなかった。


 その後マリは氷の古文書を持ったまま飛び出してしまい、ヒエンとレイアもマリの後を追いかけるように飛び出していったそうだ。

 その二週間後にリンドウが町に現れ、現在のような状況になったそうだ。

 ケイは医者にマリの特徴を聞いた。


「その女の子、珍しい紫がかった白銀の髪を長く伸ばしてて、赤い野薔薇のバックカチューシャつけてなかった⁉

 もしかしたら俺の従姉かもしれないんだ!」


「何⁉ 従姉だと⁉」


「信じてくれるかどうか解らないけど、俺はマリと、ヨキっていう幼馴染は住んでた村をヘルシャフトに襲われて、聖なる祠っていう場所に逃げ込んだんだけど、突然竜巻が起こってそのまま離れ離れになったんだ」


 それをいた医者は古文書と呼んだ水色の板をケイに見せ、説明し始めた。


「これは『水の古文書』。アーカイブの一部だ。

 今のままではお前さんにしか使えないが、古文書が一つになった時に、全ての真実が分かる筈だ」


「アーカイブが戻れば、リンドウの事もわかるのね」


 ディモルフォセカは真剣な眼差しで医者を見た。医者は何も言わずに頷いた。

 ディモルフォセカは寝ていたベッドから降りた。


「そうとなれば急いで残りの古文書を探さないと。一つでもヘルシャフトの手に渡らないうちに」


「大丈夫なのかディルカ⁉」


「もう平気。行きましょう、全ての謎を知るためにも」


 そう言うとディモルフォセカは自分の荷物を手に取った。

それを見たケイ達それぞれの荷物を手に取り、そのまま病院を出て町から旅立った。

過去に隠されたマリの両親の真実と再び行方が分からなくなったマリ、そして真実かどうかわからないリンドウの事を知るために、ケイ達は古文書を探し始めるのだった。

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