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第18話 祝福の讃美歌

 ケイ達は音楽の街、メディアロルに来ていた。

 メディアロルは音楽が溢れる小さな街。

 楽器の音色や歌声が聞こえるこの街は旅人達が旅での疲れを忘れ、再び旅に出ると言われている。

 メディアロルに来たケイ達も一度メディアロルで旅の疲れを癒す事にした。


「うわ~、綺麗な音だな~」


「めっちゃなごむで~」


 ケイとニヤトはすっかりメディアロルの音楽に癒されていて、その二人の様子を見ていたヒバリ達は少し呆れた顔をしていた。

 そんな中ディモルフォセカは、一人双子の弟リンドウの写真が入っているロケットを見ていた。

 すると突然ディモルフォセカが歌を歌い始めた。


「「「ディルカ⁉」」」


 ケイ達は突然のディモルフォセカの行動に驚いていた。

 ディモルフォセカの歌声は透き通るような音色をしていて、メディアロル中に響き渡った。

 メディアロルに鳴り響いていた音楽は鳴りやみ、ケイ達を含め人々はディモルフォセカだけを見ていた。

 歌い終わったディモルフォセカはしばらくして自分が無意識に歌を歌っている事に気付き、顔を赤面させた。

 次の瞬間周りから歓声が溢れ始めた。どうやらディモルフォセカの歌声に感動したらしい。


「ブラボー!」


「なんて綺麗な歌声なのでしょう…」


「今まで聞いた事ないよ!」


 ディモルフォセカの歌声を聞いたメディアロルの住民達は、感動した反動かディモルフォセカを囲み、囲まれた本人は困惑していた。

 するとケイ達がディモルフォセカに声をかけてきた。


「とても美しい歌声でごじゃる!」


「感動もんやで~。あかん、涙が出てきてもうた~」


 ニヤトは感動のあまり号泣しだした。

 ディモルフォセカは突然の事続きで動揺し、対応できないでいると見かねたラヴァーズは人前に出てディモルフォセカをフォローした。


「みなさーん、おちついてくださーい! 僕たちあしたまでいますからさわがないでーっ!」


 ラヴァーズがそう言うと納得したのか周りから聞こえていた歓声が静まり、再び音楽に溢れていった。

 それからしばらくして宿を見つけ、そこに泊まる事にしたケイ達だったが、そこにいた全ての人々がディモルフォセカを取り囲んだ。


 どうやらディモルフォセカの歌声を聞きたいらしく、最初は歌う事を否定したディモルフォセカだったが、ケイ達に説得され歌う事にした。

 街中で歌った歌と違うものを歌ったが、それでもディモルフォセカの歌声の美しさは変わらなかった。

 しかしケイはただ一人、その歌声に悲しみを感じていた。


(ディルカ、やっぱり昔の事で悲しんでるんだな)


 ケイはそう思ったが、あえて気付かないふりをしてディモルフォセカの悲しみに触れない事にした。

 するとディモルフォセカの歌声に惹かれたのか、宿に入り口で、のほほんとした少年がやってきた。

 その少年を見たヒバリとニヤトは声を揃えて少年の名をいった。


「「ボル!」」


「あはは~♪ ニヤト君、ヒバリ君久しぶり~。元気だった?」


 どうやらヒバリとニヤトの知り合いらしく、ボルと呼ばれた少年は喋り方までのほほんとしていた。

 するとボルがのほほんと二人に聞き始めた。


「ねぇねぇニヤト君、ヒバリ君、さっきここから聞こえてきた歌、誰が歌ってたの?」


「あぁ! やっぱお前もディルカの声に感動しとったんか!」


 それを聞いたディモルフォセカは思わずケイとカトレアの後ろに隠れてしまった。

 二人の後ろに隠れたディモルフォセカとケイ達に気付いたボルは、ヒバリとニヤトにケイ達の事を聞いた。


「二人とも、この人達は?」


 ケイ達の事を聞かれた二人はボルにケイ達の事を話し始めた。

 ケイがヒバリの上に落ちてきた事から、リトアで起きた今の事まで話すと、聞かされた本人は驚いてはいたが、のほほんとした雰囲気のせいかあまり驚いたようには見えなかった。



*****



 その夜、ディモルフォセカはベランダに立って夜空を見ていた。

 首にかけているロケットを手に取り、そして再び賛美歌を歌い始めた。

 その声に気付いたケイ達はディモルフォセカのいるベランダに向かうと、ケイ達の視界に入ってきたのは歌を歌いながらディモルフォセカは泣いていた。


「ディルカさん、なんだか悲しそうですね」


「なんでディルカ、泣いとんのんや?」


「多分、昔の事で悲しんでるんだと思う」


「なんでそう言いきれるの?」


「皆は感じて無かったと思うけど、ディルカの歌声には昔の事で悲しんでる気持ちが伝わってくるんだ。

 まるで、一人生き残ってしまった事を贖罪する鎮魂歌のつもりで歌ってるのかもしれない」


 ケイの従姉であるマリがかつてそうだったように、ケイは人の悲しみを感じ取る事ができた。

 ケイの言っている事は当たっていた。

 ディモルフォセカは歌を歌う時、必ず死んだ家族の事を思い出していた。



*****



 ディモルフォセカは歌う事が好きだった。

 幼い頃から暇があればいつも歌っており、透き通るような歌声は遠くまで響き渡り、両親が離れていてもその歌声は届いていた。


 双子の弟であるリンドウは、ディモルフォセカが歌う歌が好きだった。

 ディモルフォセカが歌っていない時には、聞きたいがためにディモルフォセカの元へ行き、ディモルフォセカの歌をせがんでいた。


『おねえちゃんおうた! キレイでおじょうずなおうたうたって!』


『やだ! そんなはずかしいことできないよ!』


『うわーん、おねえちゃんのいじわるーっ!』


 ディモルフォセカは歌う事が好きだったが、人前で歌うのは好きではなかった。

 リンドウに歌う事をせがまれると、いつもそっぽを向いて断っていた。

 それがリンドウとの最後の会話になった。



*****



(こんな事になるなら、もっと歌ってあげればよかった…)


 ディモルフォセカは家族を失う前、リンドウからの願いを聞き入れなかった事に対して後悔していた。

 平穏に暮らしていた自分達の元にヘルシャフトが現れるとは思っていなかったため、ずっとその事を悔いていたのだ。

 するとそこへ、男が大声で街を走り回りながら慌てていた。


「大変だー! 行商人の馬車がヘルシャフトに襲われてるんだ!」


「「「なんだって⁉」」」


 それを聞いたケイ達は急いでヘルシャフトに襲われている馬車を助けに行こうとしたが、ベランダで歌っていたディモルフォセカは気付いていなかったらしく、カトレアがディモルフォセカに声をかけてメディアロルの外に向かった。

 メディアロルの出入り口に着くと、外では大勢のヘルシャフトから必死に逃げる馬車が見えた。


「皆、あそこ!」


「俺に任せろ! スマッシュ・スマッシュ!」


 ケイはヘルシャフト目掛けて攻撃した。

 水の衝撃波は見事ヘルシャフトに命中し、それに吊られて他のヘルシャフトが怯んだ隙にケイ達は馬車の傍まで走った。


「ニヤト達は馬車を町まで誘導してくれ!」


「「わかった!」」


 ニヤトはボルとラヴァーズ、カトレアの三人と一緒に馬車を誘導し、メディアロルへ避難させた。

 ケイ、ヒバリ、ディモルフォセカはヘルシャフト達と戦い始めた。

 ケイ達はヘルシャフト達がメディアロルに近付かせないように防御に徹した。


「フレア・フレア!」


「ケイ! 右でごじゃる!」


「キャノンズ・キャノンズ!」


 ヒバリに指摘されたケイは迷う事無くキャノンズ・キャノンズを唱え、放水砲で攻撃を仕掛けようとしたヘルシャフトを攻撃する。

 キャノンズ・キャノンズで一部のヘルシャフトが怯んだ隙に、ディモルフォセカがチェック・ダ・ロックで封印していく。


「ディルカ宝石の回収頼む!」


「こっちのフォローをお願い!」


「こちらは任せるでごじゃる! 次の攻撃が来るでごじゃるぞ!」


 ヘルシャフトが封印された宝石をディモルフォセカがトーチ(炎の礎)の炎で回収しようとするが、ディモルフォセカよりも先に宝石を回収しようと他のヘルシャフトが妨害に入ってきたため、思うようにヘルシャフトが封印された宝石を回収する事ができない。


 そのためディモルフォセカは、ケイとヒバリにヘルシャフトが封印された宝石を回収し終えるまでフォローを頼んだ。

 ケイはリング・リングを発動させてヘルシャフトを次々と捕まえて行動を制限し、ヒバリが手裏剣を投げて牽制し、次の攻撃が繰り出されそうになるとケイとディモルフォセカに警告し自分も備えた。


「内二人はスピリットシャーマンだ! そちらの二人に警戒しつつ、先に人間のガキを始末しろ!」


 ヘルシャフトはケイとディモルフォセカがスピリットシャーマンである事に気付いており、二人よりも先にヒバリを倒そうとヒバリを集中攻撃し始めた。

 スピリットシャーマンが使う法術はヘルシャフトには効果抜群、受けた側はかなりのダメージを負うため必然的にケイとディモルフォセカの二人を警戒し、普通の人間であるヒバリを確実に倒す事ができれば自分達が有利になると考えたのだろう。


(天敵である毛糸ディルカ殿よりも先にセッシャに狙いを定めたか。

 じゃが、そう易々とやられはせぬ!)


 だが、ヒバリもキザミの里で鍛えた技術と、これまでのヘルシャフトと戦ってきた経験を活かし、ヘルシャフト達と対等に渡り合い、ケイとディモルフォセカが封印しやすい状況を作っていく。


「なんだこのガキ⁈ 人間のくせに我々に対応しているぞ!」


「誰でもいいからあのガキを何とかしろ!」


 ヘルシャフト達は未だにヒバリを倒す事ができず、ぎくしゃくし始めた。

 その様子を見ていたケイ達はヘルシャフト達がぎくしゃくし始めた事で、連携が取れなくなり始めている事を悟り、防御から攻撃に転じた。


「スマッシュ・スマッシュ!」


「ディルカ殿! 頼むでごじゃる!」


「任せて、チェック・ダ・ロック!」


 ケイがスマッシュ・スマッシュを唱え水の衝撃波でヘルシャフト達に攻撃し、ヒバリが鎖鎌で空中にいるヘルシャフトを次々と引きずり下ろしていく。

 ヒバリが引きずり下ろしたヘルシャフトを、ディモルフォセカが次々と封印していく。


 ケイ達三人は互いの死角にいるヘルシャフトを見つけては声をかけ、隙あらば封印し、ヘルシャフトに隙を見せぬようフォローをした。

 だが戦っている最中に、リンドウの写真が入っているロケットの鎖が切れ、ディモルフォセカから離れた。


(私のロケット! あれにはリンドウの写真が…!)


 その事に気付いたディモルフォセカは慌ててロケットを取りに行く。

 だが、ディモルフォセカがロケットに気を取られている隙にヘルシャフトに背後を取り、ディモルフォセカに襲いかかる。

 それに気付いたケイとヒバリはディモルフォセカに危険を知らせた。


「ディルカ危ない!」


「背後にヘルシャフトがいるでごじゃる!」


 ケイとヒバリの声でディモルフォセカは漸くその事に気付き、咄嗟の判断でスイング・スイングを唱え牽制したがバランスを崩し、左手にはトーチを、右手にはリンドウの写真が入ったロケットを掴んでいたため、上手く受け身をとれずに転倒してしまった。


 ディモルフォセカに襲い掛かったヘルシャフトは、ここぞとばかりに攻撃の手を緩めず、光の槍を作り出して再びディモルフォセカに襲い掛かった。

 ディモルフォセカは防御しようとしたが、ヘルシャフトとの距離が近かったため避ける事も法術を唱えるのも間に合わず、顔を青ざめさせた。

 それを見たケイは大声でディモルフォセカの名を叫んだ。


「ディルカ―っ!」


次の瞬間、ケイの右腕の聖痕(スティグマ)(水の礎)が光始めた。


「ケイ⁉ 腕と斧が!」


 突然の事に驚くヒバリはケイに声をかけたが、ケイはその事に気付いていなかった。

 すると斧の光が糸状に伸び、ヒバリに向かって伸びてきた。

 驚いたヒバリは必死に振り払おうとするが、光の糸は離れずヒバリを包み込んでしまい、そのままヒバリは斧の中に取り込まれてしまった。

 斧の光は更に輝きを増し、その様子は馬車をメディアロルまで誘導したカトレア達にも見えていた。


「ねえさんあれ!」


「どうしたの、ラヴァーズ?」


「ニヤト君、あの光ってヒバリ君達がいる場所だよね?」


「何がどうなっとるんや?」


 メディアロルから光を見ていたカトレア達は、ケイの斧が光っているとは知らないため一体何が起きたのかわからず困惑していた。

 ヒバリを取り込んだ斧は形を変え、刃の幅が広いハルバートになった。

 ケイ本人は気付いていないようだったが、ケイは何の迷いもなくハルバードを構える。


「タラッタ・ロック‼」


 そのままケイは法術を唱えながら斧を大きく振りかざした。

 すると陸地であるにもかかわらず巨大な波が起こり、ディモルフォセカに襲いかかったヘルシャフトを飲み込んだ。

 巨大な津波の飲まれたヘルシャフトはそのまま封印され、宝石になった。


 巨大な津波は広範囲に広がって行き、他のヘルシャフト達も波にのまれ、次々と封印されていった。

 ケイは力尽きたかのようにその場に倒れてしまった。

 するとハルバードの中からヒバリを取り込んだ光の糸が現れ、その中からヒバリが出てきた。

 そしてヒバリを取り込んだハルバードはヒバリが出て来た事で、元の斧に戻り、光も収まっていた。


「ここは元の場所⁉ セッシャは一体…」


「ヒバリ! ケイが…!」


 解放されたヒバリは自分の身に何が起きたのかわからず混乱していると、ディモルフォセカの一言でヒバリはケイを見た。

 ケイは気を失って気絶しているだけでのようだが、ヒバリはケイが気絶した理由がわからなかった。


 ディモルフォセカがケイの容体を確認すると、力を使い過ぎた事が原因で一時的に気絶したらしい。

 ケイが力を使い過ぎた原因と言えば、先程の現象しかないと考えたヒバリはケイの斧を見つめた。

 元はアクアシーフが守っていた水の礎が姿を変えたもので、礎には自分や両親ですら知らない何かがあるのではないかと考えていると、気絶していたケイが意識を取り戻した。


「う……あれ? なんで俺、寝てたんだ?」


 どうやらさっきまでの事は覚えていないらしく、頭を押さえながら周りの状況を確認すると、あちこちにヘルシャフトが封印された宝石が落ちていたため驚いていた。

 そこへカトレア達が戻ってきた。

 謎の光と突然現れて消えた巨大な波が気になり、ケイ達に何かあったのではないかと心配していたのだ。

 それからケイ達はヘルシャフトが封印された宝石全てを回収し、メディアロルの宿に戻って休んでいた。


「う~、なんかいつもより疲れが溜まってる気がする…」


「それはそうでごじゃる。ディルカ殿曰く、ケイはいつも以上に力を消費したらしく、その分疲れていても可笑しくないでごじゃるよ」


「そう言われても、斧がヒバリを取り込んだとか、俺が津波起こしたとか記憶にないんだよ」


 自分が力を消費した原因をヒバリから聞いたケイは、記憶が抜け落ちているせいであまり信じられないでいた。

 ディモルフォセカはロケットの鎖をボルに直してもらっている間、カトレアに怪我の手当てをされていた。


「これで良しっと。に、三日すればガーゼを外しても問題ないと思うわ」


「ありがとう、カトレア」


「でも次からは気を付けてよ?

 今回は右腕のかすり傷だけで済んだけど頭を強打してたら、命にも関わったかもしれないんだから」


「ごめん。だけど、これだけはどうしても手放したくなかったの…」


 そう言いながらディモルフォセカは、自分の手の中にあるロケットの写真を見つめていた。

 ディモルフォセカにとってロケットにあるリンドウの写真は、家族との思い出を感じさせる大切な物。

 いかに自分が不利な状況になったとしても、それだけは死んでも手放したくなかったのだろう。

 するとそこへ、馬車の持ち主である行商人がやってきた。


「あ、行商人のおじさん」


「さっきはありがとう、おかげで助かったよ。

 お礼といては何だが、これらを受け取ってくれないかな?」


 手渡されたのは小さなハープと透き通る水色の板で、ハープを受け取ったラヴァーズは試しに元を鳴らし、気に入ったのかそのまま自分なりの方法でハープを奏で始め、透き通る水色の板を受け取ったケイは、単なるガラス板だろうと思いそのまま自分の鞄にしまった。


 そしてケイ達に礼を言い終えるとそのまま行商人は部屋を出て行った。

 ボルはロケットの鎖を修復し、それをディモルフォセカに返そうとすると、偶然にもロケットの中に入っているリンドウの写真が目に入った。

 リンドウの写真を見たボルは、ディモルフォセカに声をかけた。


「ねぇディルカちゃん、その写真ちょっと見せてくれる?」


「え? えぇ、いいけど…」


 ボルにリンドウの写真を見せてほしいと頼まれたため、少し困惑しながらもディモルフォセカはロケットをボルに渡した。

 ボルはリンドウの写真を見て表情は変わらないものの、声からして驚いていた。


「うわぁやっぱり!」


「なんやボル、どないしたんや?」


 ニヤトは驚いているボルに聞いた。するとボルの口から驚くべき言葉が飛び出してきた。


「ディルカちゃんの顔、どこかで見た事があると思ったんだけど、この写真の人見た事あるよ」


「「「なんだって⁉」」」


 それを聞いたケイ達は驚いた。

 それを聞いて一番驚いていたのは、リンドウの姉であるディモルフォセカの方だ。


「ディモルフォセカ、弟君の遺体は確認した⁉」


「できてない。ヘルシャフトに襲われた時、家ごと燃やされて、その時起こった火事でリンドウの遺体だけ燃え切ったんじゃないかって言われてたから…」


 幼い頃にリンドウは両親と共にヘルシャフトに殺された、その筈だった。

 リンドウを見たというボルの言葉に、思わず耳を疑ったディモルフォセカは信じられないでいた。

 リンドウを見たというボルが嘘を言っていないか確認するため、ケイはボルの手からディモルフォセカのロケットを取り上げリンドウの写真を良く見せた。


「それ本当か⁉ この写真の奴で、間違いないんだな⁉」


「うん、歳はディルカちゃんとカトレアちゃんと同じぐらいだったけど、間違いなくこの写真の人だったよ」


 それを聞いたディモルフォセカは驚きのあまり、声も出せなかった。

 幼い頃に死んでいる筈の双子の弟が生きていると聞いた途端、ディモルフォセカは勢い良く立ち上がったが、気が動転していたためバランスを崩し、その場に座り込んでしまった。

 それを見たカトレアは驚いてディモルフォセカの傍に駆け寄った。


「ディモルフォセカ大丈夫⁉」


「弟が、リンドウが生きて……良かった…良かった…!」


 間違いなくリンドウが生きている、それを知ったディモルフォセカの目には喜びの涙が溢れ出ていた。


「良かったね、ディモルフォセカ」


「よかったな、ディルカ」


「うん……うん……!」


(これでディルカは生きている弟に歌を歌う事ができるんだから)


 幼い頃に刻まれたディモルフォセカの心の傷が癒されていく。

 リンドウが生きていた、その事だけでもディモルフォセカは大きな喜びを感じた。

 いつか会えるその日まで、ディモルフォセカはもう、家族に対する鎮魂歌を歌う必要はなくなったのだとケイは心の奥底で感じていたのだった。


 翌日ケイ達はボルと別れ、リンドウがいたとされる町に向かった。

 そこ今はまだ見ぬ、リンドウの手掛かりがあると信じて。ディモルフォセカは心の中でそう信じるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・チームごとに雰囲気を変えているのが好印象です [一言]  こんばんは、御作を読みました。  今話は、ディルカちゃんの歌イベントなどもあって華やかな印象でした。  リンドウくんが生きていて…
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