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第15話 カトレアとラヴァーズ

4月3日修正しました。

 ひょんな事からディモルフォセカの親友カトレアと、堕天として命を狙われるヘルシャフトの少年ラヴァーズと旅をする事になったケイ達。

 ケイ達は小さな田舎町、リトアに来ていた。

 ここにはヒバリの仲間の一人がいるらしく、その仲間の家に行く事になった。


「なぁなぁ、お前の仲間ってどんな奴なんだ? 面白い奴?」


「ケイ、そんなにはしゃがなくてもいいでしょ? すぐそこなんだから」


 ケイはディモルフォセカに注意されて大人しくなった。するとヒバリが立ち止った。


「ここがニヤトの家でごじゃる。ニヤトの家は料理店をやっているでごじゃるよ」


 どうやら仲間の家についたらしく、ケイ達はその家を見た。

 その家は猫の顔をモチーフにして建てられたらしく、その家を見たケイとディモルフォセカはヒバリがボケているのではないかと思った。

 それを見かねたかカトレアはケイとディモルフォセカに声をかけた。


「まぁまぁ考えても仕方ないし、中入ろうよ!」


 ヒバリが店のドアを開けて中に入って行き、それに続いてケイ達もそのまま中に入って行った。

 幸い中の様子は普通のカフェのような作りになっていたため、それを見たディモルフォセカは少し安心した。


「いらっしゃいませー。あらヒバリ君、久しぶりね」


「ヒロミ殿。お元気そうで何よりでごじゃる」


 店に入ってすぐヒバリに声を掛けて来た猫の耳と尻尾を生やした女性が声を掛けてきた。

 今まで猫の耳と尻尾を生やした人物を見たことがなかったケイは、声を掛けてきた女性が誰なのかヒバリに訪ねた。


「ヒバリ、この人誰だ?」


「こちらの方はニヤトの母君のヒロミ殿でごじゃる。ヒロミ殿は(マオ)族の獣人(ビースト)でこじゃるよ」


「あら? 貴方達ヒバリ君のお友達? その様子だと獣人を見るのは初めて?」


「まぁ旅の仲間って事でお願いします。俺は薬師(やくし)ケイ、幼馴染と従姉を探して旅をしているんです」


「ケイ君っていうの? 大変ねぇ、幼馴染の子と従妹を探してるって事は何かあったの?」


 ヒロミの質問はほぼ的中しており、ケイは聖なる祠で発生した竜巻に巻き込まれ、そのままヒバリの故郷に飛ばされてしまったのだ。

 今思えば、それが全ての始まりだったのかもしれないとケイは思っていた。

 するとそこへ猫族の赤毛の少年と黒猫が入ってきた。


「たっだいまーっ! ニャニャ? なんやヒバリ来てたんかいなぁ! 久しぶりやな!」


「ニヤト、久しぶりでごじゃる」


 どうやらこの少年がニヤトらしい。

 するとニヤトは、ヒバリの近くにいるケイ達の姿に気付いた。

 それに気付いたヒバリは、ニヤトにケイ達の事を説明し始めた。


「今旅をしている仲間達でごじゃる。訳あって一緒に旅をしているのでごじゃる」


「ほー、そりゃ大変やな。まさかとは思うけど全員なんか問題抱えてるか?」


 ニヤトの言った事もほぼ的中した。

 ケイはヨキとマリを探し、残るスピリットシャーマンの子孫の生き残りを探す事、ディモルフォセカは家族の仇、カトレアはラヴァーズと暮らせる静かな場所探し、ラヴァーズは堕天として命を狙われる身であるのだ。

 ニヤトは当ててはならない事を当ててしまったと悟った。


「……もしかして、そうなんか?」


「えっ? いやまぁ、なんていうかその~、気にしなくていいって。俺は薬師ケイ」


「私はディモルフォセカ・ガーネット。ディルカでいいわ」


「はいはーい、アタシはカトレア・シロップよ。よろしくね!」


「らっラレア=ラヴァーズ、です」


「ワイは三毛(みけ)()ニヤトや。こっちはタメゴローや。皆よろしくな」


 こうしてケイ達はニヤトと親しくなった…と言った方がいいのだろうか。

 その夜、ケイ達は昔の事、故郷の事、仲間の事、体験した事を話し合っているとニヤトは何日か前の新聞を持ち出して読み始めた。


「それにしてもヘルシャフト襲っとった鬼女はどこったんやろか?」


「え? ちょっと見せてくれよ」


 鬼女という言葉を聞いたケイはニヤトからその新聞を受け取り、書かれている内容を読んだ。

 そこに書かれていたのは、『レイトューンの鬼女、いずこかへと消える』という記事だった。

 その記事を見たケイとヒバリは、レイトゥーンでディモルフォセカが起こしていた事件がここまで知られていたとは思っていなかったため、思わず顔を引きつらせた。


「なんや二人とも、鬼女の事知っとんのんか?」


「え~とその鬼女の事なんだけどさぁ」


「私がその鬼女だけど」


 ニヤトに鬼女の事を尋ねられたため、ケイとヒバリはディモルフォセカがレイトューンで起こした事件をどう説明するか迷っていると、ディモルフォセカはあっさりと言ってしまった。

 それを聞いたカトレアはやはりというかのように話し始めた。


「なんだ~。やっぱりディモルフォセカだったのねぇ」


「え? え⁇ どういう事や⁇」


「つまりディルカ殿がヘルシャフト狩りをしていた鬼女の正体でごじゃる」


「あ~そうなんかいな…ってえーっ! ホンマかいな⁉」


 それを聞いたニヤトは大声で叫んだ。

 しかも近くにいたケイ達を吹き飛ばしてしまう程の大声で、ケイ達は思いっきり壁にぶつかり、カトレアはラヴァーズが壁にぶつからないように自分を犠牲にして庇った。

 するとカトレアは突然ニヤトに怒鳴り散らした。


「ちいとアンタ! 危ないじゃろう! ラヴァーズが怪我したらどうするのよ⁉」


「「へ……⁇」」


「カトレアの元々の喋り方よ。動揺したり興奮すると言葉が(なま)るみたいね」


 カトレアの喋り方が変わったため、ケイ達はとても驚いていた。

 何より言葉が訛っているカトレアの雰囲気は恐ろしく、場の雰囲気を変えようとニヤトは別の話題に切り替えた。


「そっそう言えば、この前どっかの村で堕天とかいうの探しとったヘルシャフトの軍隊が知らん連中にやられた言うけど、まさかお前ら…」


「「間違いなくそれにも関わってる/でごじゃる」」


 それを聞いたニヤトはやはり驚いていた。

 ここまでバレたら話すしかないと思ったケイは、ニヤトの話に出てきた堕天がラヴァーズである事を話す事にした。


「それとそいつらが探してた堕天ってラヴァーズなんだ」


「せやけど羽ないで⁉」


「周りにばれぬよう隠しておるのじゃ」


「すっすっす」


 ニヤトがまた大声を発しそうになったため、その様子を見たケイ達は思わず身構えたのだが、そうはさせないとカトレアが先に牽制した。


「さっきみたいに大声出したら、わかっとるわよね?」


 それからカトレアによるニヤトへの説教が始まり、しばらくしてケイ達は眠りいついた。

 その夜、カトレアは眠ってすぐ昔の夢を見ていた。

 それはカトレアに取って何もないだけの毎日だった。


*****


『おとうさんおかあさんまたおしごと? カトレアどこぞにあそびにいきたい』


『そんな暇があったらお勉強しなさい。カトレアは他の子よりも賢いし運動神経が抜群なんだから。

それにその口癖なおしちゃいなさい』


『そうだぞカトレア、お前は天才なんだ。他の子達とは違う、特別なんだ』


 そう言ってカトレアの両親は仕事に行ってしまった。

 次に見たのは六歳ぐらいの頃、学校という所に入ってからというものの、同世代の子供達はカトレアの恐ろしい程の頭脳に恐れおののきカトレアを避け続けた。


 それから三年ぐらいしてカトレアはディモルフォセカと親しくなった。

 この時ディモルフォセカもカトレアと似たような状況で、孤立していた。

 最後に見た夢はついこの前の事だった。

 家の外で物音がして見に行くとそこには傷だらけのラヴァーズが倒れていた。


『この子ヘルシャフト⁉ 大丈夫⁉ しっかりして!』


 ラヴァーズは酷く衰弱していたため、カトレアは急いで家に運び込みラヴァーズ看護をした。

 カトレアの努力もあってラヴァーズは助かった。

 幸いにも両親とは別居していたためラヴァーズを匿う事ができた。


『おねえ、ちゃん……きえ…ないで……』


『大丈夫よ、アタシが傍にいるからね…』


 傷だらけになりながら眠るラヴァーズは何かにすがるように、宙に手を伸ばした。

 そんなラヴァーズを見たカトレアは、少しでも安心させようと伸ばされたラヴァーズの手を優しく手に取る。

 この子は自分が守らなければならない、カトレアはそう思った。


*****


 次に目を覚ますと朝になっていた。カトレアは下に降りてディモルフォセカと朝食を食べた。


「カトレアどうしたの? 浮かない顔して」


「うん、夢で今までの人生見てね。それよりラヴァーズやケイ達は?」


「外で遊んでるわ。ほんと子供ね」


「って皆まだ子供じゃない!」


 こうやって二人だけで話すのは四年ぶりらしく、話している内に会話が弾み、それからしばらくしてヒロミも二人の話に加わり会話は賑わいを増していた丁度その時だった。

 急にニヤトとタメゴローが帰ってきた。

 だがニヤトとタメゴローは傷だらけになっていたため、その姿を見た三人は慌てて駆け寄る。


「ニヤトどうしたのその怪我⁉ ヒバリ君やケイ君達は⁉」


「たっ大変や! ヘルシャフトが出てきて、ラヴァーズを襲って来たんや!」


 それを聞いたディモルフォセカとカトレアは、ヘルシャフトの目的がラヴァーズを殺す事だと悟り、ニヤトにラヴァーズが何処にいるのか問いただした。


「今ケイとヒバリが戦っとって、いつまでもつか分からんのんや!」


「それで三人はどこなの⁉」


「空地や! ワイが案内するさかいに母ちゃんは警察呼んでくれ!」


「解ったわ!」


 ディモルフォセカとカトレアは、ニヤトとタメゴローに案内され空地に向かった。

 その頃、ケイとヒバリは突如現れたヘルシャフト達に苦戦し、二人はラヴァーズを庇いながらディモルフォセカ達に伝えに行ったヤマトが戻るのを今か今かと待ちわびていた。


「くっそー、数が多すぎるだろこれ!」


「このままではもたない、ラヴァーズ! 逃げるでごじゃる!」


「はっはい!」


 ラヴァーズは隠していた翼を広げてその場を逃げだした。

 ラヴァーズが逃げる姿を見たヘルシャフトの一人が、周りの仲間に声を掛け、逃げたラヴァーズを追いかけようとした。


「堕天を逃がすな!」


「させるか! スマッシュ・スマッシュ!」


 ケイはラヴァーズを追いかけようとしたヘルシャフトに向かってスマッシュ・スマッシュを唱えた。

 |斧(水の礎)の先から水の衝撃波が飛び出し、ヘルシャフトを直撃した。


「どうだ! ディルカのスパルタのおかげで使える法術増えたぞ!」


 ケイはディモルフォセカに自分の法術が爆発する現象を見られてから、ディモルフォセカの指示のもと、法術の特訓していた。

 その結果使える法術が増え、現在のように戦う事ができるようになっていた。

 そこへディモルフォセカとカトレアが二人の元に辿り着いた。


「ケイ、ヒバリ!」


「二人とも大丈夫⁉ ラヴァーズは⁉」


「さっき逃がした! 多分町の外にいるかも」


「アタシ、町の外探してくる!」


 そう言ってカトレアは一人リトアの外に向かい、ラヴァーズを探しに行った。

 それを見届けたケイ達は再びヘルシャフトに攻撃を始めた。


「二人とも、まだやれる? 外にもヘルシャフトがいる可能性があるから、早くこっちを片付けてカトレアを追いかけるわよ!」


「おうっ!」


「シャーマンを殺せ!」


 ヘルシャフト達は目の前に現れたディモルフォセカがファイヤーファントムだと気付き、ラヴァーズを追いかけるよりも先にケイとディモルフォセカを倒す事を優先したようだ。

 自分の方に向かってくるヘルシャフトを見たケイは、斧の先端を向け新たな法術を唱えた。


「リプル・リプル!」


 ケイがリプル・リプルという法術を唱える斧の先端から水の波紋が広がり、そのままヘルシャフトに向かって飛んでいく。

 ケイに向かってきたヘルシャフトや近くにいたヘルシャフトはリプル・リプルによって作られた水の輪に縛られ、そのまま地面に落ちた。


「チェック・ダ・ロック!」


 ケイはそのままヘルシャフトを封印した。

 ヒバリが封印されたヘルシャフトの宝石を素早く回収しようとした時、後ろにヘルシャフトがいた。

 それに気付いたヒバリはギリギリのところで避けるが、バランスを崩して倒れてしまった。


「フレア・フレア!」


 ディモルフォセカはとっさにとフレア・フレアいう法術を唱え、ヘルシャフトを炎の波に襲わせ、ヒバリを助けた。

 だがディモルフォセカは右にいるヘルシャフトに攻撃されようとしている事に気付いておらず、そのまま直撃するかに見えたがタメゴローがヘルシャフトに飛びつき、そのまま顔を引っ掻いた。


「ぎぃやぁぁぁぁ!」


 その声に気付いたディモルフォセカはようやく右の方にヘルシャフトがいる事に気付いた。

 次に振り向いた時にはニヤトがヘルシャフトを蹴とばしていた。


「コラー、お前ら卑怯やでぇ!」


 それを見たケイ達はとても驚いた。

 普通にヘルシャフトを蹴とばした一般人はニヤトが初めてかもしれない、そしてヘルシャフトの顔をためらわずに引っ掻いた猫もタメゴローが初めてかもしれないからである。


「おいヒバリ、ニヤトとタメゴローって案外怖いもの知らずなんだな」


「いや、流石のセッシャも驚いているでごじゃる」


「おいあの獣人のガキと黒猫、我らを恐れるどころか普通に攻撃しているぞ!」


「あ、あぁ。シャーマンの子孫でもないというのにとんでもないぞ」


 それを聞いたディモルフォセカはある事に気付いた。

 ヘルシャフトがニヤトとタメゴローの行動に驚いて自分達を見ていないのだ。

 チャンスは今しかない、そう思ったディモルフォセカはとっさにカトレアが住んでいた村で使った法術を使った。


「トリック・トリック!」


 すると火の鳥が次々と現れてケイ達がいる周辺を飛び始めた。

 それを見たケイ達は何が起きたのか理解できなかった。

 すると一匹の火の鳥がニマトに襲い掛かったのだ。


「ニマト危ない避けろ避けろ当たる~!」


「へ⁉ ニャニャニャァアァアー!」


 ニマトはそのまま火の鳥に攻撃されてしまうが、二マトは燃えるどころか全くの無傷だったのだ。

 ケイとヒバリが慌ててヤマトのもとに駆け寄る。


「ニマト! 大丈夫でごじゃるか⁉」


「そっそれが、なんともないんや」


「え? ほんとかよ」


 火の鳥の襲われた筈が、ニヤトが無傷である事を不思議がっていると、ディモルフォセカが近くにいたタメゴローを抱きかかえてケイ達のもとに来た。


「トリック・トリック。ファイヤーファントムのみ使う事ができる法術よ。

 動物や様々な形の道具を作りだす事ができて、術者が敵とみなした物のみにダメージを与える事ができるわ」


「つまり、火の鳥は味方にはなんともないんだ!」


「だからニヤトはなんともなかったのでごじゃるな」


「今の内にコイツ等を封印して、カトレアの後を追いましょう。カトレアとラヴァーズが心配だわ」



*****



「ラヴァーズ、ラヴァーズ何処? 何処にいるの⁉ ラヴァーズー!」


 一人リトアの外に飛び出したカトレアは、ラヴァーズの名を呼んで探していた。

 近くの岩陰に隠れていたラヴァーズは自分を呼ぶ声に気付き、外を見るとカトレアがいる事に気付いた。


「カトレアさん?」


「ラヴァーズ⁉」


 カトレアは迷わずに声のした方を見た。目の前の岩陰に隠れているラヴァーズがいた。


「ラヴァーズ! 良かった、無事だったのね!」


 ラヴァーズの姿を見て安心しきったカトレアは、そのまままっすぐにラヴァーズのもとに走り出した。

 ラヴァーズも岩陰から飛び出そうとしたが、カトレアの後ろにヘルシャフトがいる事に気付き、ラヴァーズは大声でカトレアに危険を知らせる。


「カトレアさんうしろ!」


 後ろを向くと空中にはヘルシャフトがいたのだが、ヘルシャフトはそのまま岩陰に隠れているラヴァーズに攻撃した。


「危ない!」


 カトレアは急いでラヴァーズのもとに走り、捨て身の防御に出た。

 ヘルシャフトが放った稲妻はラヴァーズを守るカトレアの背中に直撃し、カトレアの悲痛な叫びが上がる。

 それでもヘルシャフトの攻撃はやまず、カトレアは一人ヘルシャフトの攻撃を受け続けていた。

 それを見たラヴァーズは脳裏にカトレアの死がよぎった。


「カトレアさんダメ! このままじゃ死んじゃうよ!」


「い、言ったでしょ? アタシが貴方を守るって…」


「カトレアさん…」


「邪魔だぁ、そこをどけぇ!」


 ラヴァーズを狙うヘルシャフトは、自分の邪魔をするカトレアに苛立ち始めたがカトレアはそんな事などお構いなしに、大声で叫んだ。


「この子は命に代えてでも守り切る! だってアタシがこの子のお姉ちゃんですもの!」


 その言葉を聞いたラヴァーズはこの前聞いたカトレアの話を思い出した。



*****



『カトレアさん、ひとりっこなんですか?』


『そうなのよ。親が二人とも共働きでさぁ、アタシ兄弟とかそう言うのが羨ましいのよねぇ』


『そうなんだ。カトレアさんってあるいですね』


『そう? アタシの友達にも弟いたらしいよ? あ~あぁ、アタシにもラヴァーズみたいな弟がいたらいいのになぁ』



*****



 ラヴァーズには一人の姉がいたが、ラヴァーズが幼い頃に任務先で命を落としこの世を去った。

 その事が原因でラヴァーズは一人になるのが怖くなった。

 何よりラヴァーズが恐れたのは、誰かに裏切られる事だった。


 姉の死因は仲間の裏切りによるものである事が原因だった事が判明し、ラヴァーズの姉を裏切ったヘルシャフトは裁かれた。

 それを知ったラヴァーズは仲間を信じる事ができなくなり、裏切りを恐れヘルシャフトの誓いの一つである『禁断の技を使ってはならない』という掟を破り、禁断の技の一つ、水桜鏡を完成させてしまったのだ。


 だが今のラヴァーズは違う、何故なら、今のラヴァーズには“信じられる仲間”がいるからだ。

 意を決したラヴァーズは、自分の翼で自分とカトレアの周りを囲った。

 丁度その時、リトアの空地で戦っていたケイ達が二人のもとに来た。


「先手必勝や!」


 そう言ってニマトはカトレアとラヴァーズに攻撃するヘルシャフトを蹴とばし、そこへタメゴローが乱れ引っ掻きでダメージを与える。

 ニヤトとタメゴローの攻撃でヘルシャフトが怯んだ隙に、ディモルフォセカがトーチ(炎の礎)の炎でヘルシャフトの足を掴み逃げないようにする。


「ニヤト、タメゴロー離れろ! チャック・ダ・ロック!」


 ケイはありったけの力で斧を投げ、ヘルシャフトを封印した。

 ヘルシャフトを封印したケイ達は慌ててカトレアとラヴァーズのもとに駆け寄り、二人の無事を確認する。

 その声に気付いたラヴァーズは翼を広げた。

 そこには背中が傷だらけのカトレアがいたため、驚いたディモルフォセカは背中の傷について尋ねた。


「カトレア! どうしたのよ、その背中の傷⁉」


「ラヴァーズを守っててね。それよりラヴァーズ、大丈夫? 何処か怪我してない?」


 ディモルフォセカに背中の傷について説明すると、カトレアは自分の事よりもラヴァーズに怪我無いか確認する。

 するとラヴァーズは自分の事について話し始めた。


「カトレアさん、ぼく、ちいさいころにあねをなくしていて、いきていればカトレアさんとディルカさんとオナイドシだったかもしれません。

 あねはナカマにうらぎられて、このよをさったとしって、ぼくはずっとヒトをしんじることがこわかった」


「ラヴァーズ……」


「でも、いまはちがいます」


「?」


「ぼくにはしんじてもいいヒトたちがいます。

 だからもう、こわくないです。

 だから早くこのたたかいをおわらせてしずかなところでくらしましょう、ねえさん」


「っ!」


 ラヴァーズに姉さんと呼ばれたカトレアは突然泣き出した。それを見たケイ達は驚いた。


「どっどうしたんだよカトレア⁉ 背中の傷が痛むのか⁉」


「ううん、違う、違うの。この子に、ラヴァーズに姉さんって呼んでもらえたのが嬉しかったのよ」


 カトレアはラヴァーズに『姉さん』と呼ばれて涙と嬉しさが込み上げてきたのだ。

 それを見たディモルフォセカは首にかけているロケットの蓋を開け、もう一人の自分の写真を見た。


「リンドウ…」


 一人は新たな絆を持ち、一人は悲しみに触れる日となった。

 カトレアにとっては喜びの日となり、ディモルフォセカにとっては悲しい過去の一部を思い出す日となったのだった。

 それから一週間後、カトレアの背中の傷が癒え、旅にニヤトとタメゴローが加わり、更にケイ達の旅は賑わいを増した。


「にしても驚いたよな。だってニヤトが平気でヘルシャフト蹴とばしてたんだぜ」


「それにタメゴローもヘルシャフトの顔を思いっきり引っ掻いていたでごじゃるな」


「本当にたいしたものね、アンタ達」


「ニャハハハ、そんなに褒められるとてれるヤン♪」


「それにカトレアの方も良かったな」


「そうね、叶う事のない願いが叶ったんですもの」


 ケイ達が後ろを向くと、そこには楽しそうに手を繋いで話しているカトレアとラヴァーズの姿があった。

 それを見たディモルフォセカは何処か寂しい顔をしていた。

 その様子に気付いたケイはディモルフォセカに声をかけた。


「ディルカ、大丈夫か?」


「平気よ。二人を見てるとリンドウの事を思い出して」


 カトレアとラヴァーズの様子を見ていたディモルフォセカは、亡くなったリンドウの事を思い出し寂しい表情をしていた。

 リンドウがディモルフォセカの弟である事を知らないニヤトは、リンドウが誰なのかを隣にいたヒバリに尋ねた。


「リンドウ? 誰やソイツ?」


「ディルカ殿の双子の弟君でごじゃる。幼い頃にヘルシャフトに殺されてしまったでごじゃる」


 ヒバリはディモルフォセカに聞こえないよう小声でニヤトに説明したのだが、またしてもニヤトの悪い癖が出た。


「なんやとー⁉」


「ニヤト! ええ加減にその無駄に大きい声をなんとかしんさい!

 ラヴァーズが怪我するじゃろうが!」


「やっぱあの口調で喋ってるカトレアって怖いな」


「「「確かに怖いかも」」」


 ケイ達は声を揃えていった。それ程カトレアに取ってラヴァーズはかけがえのない存在となったのだった。

 ご覧いただきありがとうございます。

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