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第14話 リース、またもや攫われる

今回は少し長めになります

 それは突然の出来事だった。マリがいたと思われる付近を探していると、空から血の雫が降ってきた。

 血の雫が降ってきた事に驚いたヨキ達は、何が起きているのか混乱している時に更に信じられない事が起きた。


 空から一人の少女が降ってきたのだ。

 バンの上に落ちた少女は意識を失っていたが、バンの服を掴んだまま離そうとしなかった。

 その背中には翼が生えており、その事にようやくヨキ達は気付いた。


「待って! この子、背中に翼が生えてるよ!」


「え⁉ じゃぁこの人はヘルシャフトなんですか⁉」


「次々と町や村を占領してるって言う…」


 空から降ってきた少女がヘルシャフトと聞いたリエナはとても驚いた。

 ウィンディアにはまだヘルシャフトが攻めてきていないため、実際にヘルシャフトを見るのは初めてだったようだ。

 その時、ヘルシャフトの少女の翼を見たキールがヨキ達にある事を指摘した。


「ちょいと待て、こいつの翼、他の奴らと違って白いな」


 キールの言う通りその少女の翼は白かった。

 キールは白い翼を持つヘルシャフトに心当たりがあった。掟を破り、追放された堕天。

 少女の白い翼を見て堕天だと確信したキールは、ヨキ達に伝える事にした。


「大丈夫だ、こいつは封印しなくても問題ない」


「封印しなくてもいいって、どういう事?」


「このヘルシャフトは堕天だ。堕天は自分の身を守るのに精一杯だ、オイラ達と敵対する事はないだろう」


 堕天という言葉を聞いたヨキ達は、バンの上で意識を失っているヘルシャフトの少女に視線を向けた。

 ヘルシャフトの少女は意識を失ったまま、バンにもたれ掛かったまま目覚める気配はない。

 不意に、ヘルシャフトの少女の背中の翼が消える。

 するとバンは、自分の腕が血まみれになっている事に気づいた。

 バンは慌てて自分にもたれ掛かるヘルシャフトの少女を確認する。


「なっ血⁉ この子血が出てるぞ!」


 それを聞いたヨキ達は慌てて少女を見ると、ヘルシャフトの少女の体から血が出ていた。

 よく見るとヘルシャフトの少女の体は傷だらけで、その傷から血が流れていたため、ヨキ達は大急ぎで少女をクレイとエリルの家に運び込んだ。


 幸いにも傷は浅く、キールがフレッシュ・フレッシュと呼ばれる癒しの法術を唱え治療した。

 ヘルシャフトの少女が来ていた服は血まみれになっていたため、エリルの服を着せた。

 無論、服を着せたのはエリル一人であり、同性という事からエリルがヘルシャフトの少女の看病に当たった。


「良かったですね。酷い傷じゃなくて」


「オイラがフレッシュ・フレッシュ掛けたからな」


「そう言えば掟ってなんの事なんだ?」


 バンはヘルシャフトの少女の治療を終えたキールに、ヘルシャフトに関する掟の事を聞いた。

 バンにヘルシャフトの掟について聞かれたキールは、掟について話し始めた。


「ヘルシャフトは掟を破り続けると翼が白くなって、堕天になる。

 そうなると仲間じゃないって事で追放されるんだ」


「じゃあヘルシャフトの誓いというのは、なんなんだ?」


「ヘルシャフトの掟の中で絶対に破ってはいけない五つの掟さ。

 それを一つでも破れば即刻堕天って事になる」


「でも、どうしてこんな酷い事を」


 ヘルシャフトの掟とヘルシャフトの誓いについて聞いたエリルは、そう言いながらキールに聞いた。

 どうやらエリルは納得がいかないらしく、それを見かねたキールは言った。


「多分掟が変わって、堕天は殺す事になったのかもしれないな」


「掟を破っただけで⁉ そんなの酷いよ!」


 ヘルシャフトの少女が傷だらけだった事から、キールは自分の知らぬ間にヘルシャフトの掟が変わったのではないかと推測した。

 掟を破っただけで殺されると聞いたヨキは、思わず声を荒げた。


 すると白いTシャツと黒いパギンスを着せられたヘルシャフトの少女が目を覚ました。

 その事に気付いたヨキ達は、全員ヘルシャフトの少女の方に視線を向け、看病をしていたエリルは声を掛けた。


「大丈夫ですか?」


 エリルの声に驚いたのか、ヘルシャフトの少女は怯え始め、そして自分のいる場所に気付き、混乱した。


「ここは何処⁉ アタシ、どうなったの⁉」


「大丈夫です、ここにはヘルシャフトはいませんから安心して下さい」


 エリルは慌ててヘルシャフトの少女に声をかけて落ち着かせた。

 するとキールは、ヘルシャフトの少女に声をかけた。


「オイラはキール・ロワイヤル。ナチュラルトレジャーの子孫であると同時に生まれ変わりだ。

 お前、堕天だな? 掟を破り続けたのか? それとも誓いを破ったのか?」


「え、ナチュラルトレジャー? やめて、お願い、封印しないで!」


「落ち着け、お前を封印しねぇよ! それより答えろ、お前は掟を破り続けたのか、それとも誓いを破ったのか?」


 キールが自分の天敵であるスピリットシャーマン、ナチュラルトレジャーだと知ったヘルシャフトの少女は封印されると早とちりし、更に混乱した。

 混乱するヘルシャフトの少女を見たキールは、自分がヘルシャフトの少女を封印する気はない事を伝えると、改めてヘルシャフトの少女に掟を破り続けたのか、ヘルシャフトの誓いを破ったのかを尋ねた。

 それを聞かれたヘルシャフトの少女は怯えた顔で言った。


「アタシ、誓いを破った。だから堕天になった」


「どの誓いを破ったんだ?」


「……王の命令に背いた」


「王命に背いてはならない掟を破ったんだな」


 それを聞いたキールは、ヘルシャフトの少女が背いたというヘルシャフトの王の命令がどのような内容だったのかを尋ねた。


「それで、その命令ってなんなんだ?」


「…それは、言いたくない」


「なんでだよ?」


 キールとしては、今後に関わってくる可能性があるかもしれないと考え、ヘルシャフトの少女が背いたという命令の内容を把握しておきたかったのだ。

 なんとか任務の内容を聞き出そうとしたキールを、バンが止める。


「やめろよキール。この子だって話したくないなら仕方ないだろ」


「なんだよバン」


 バンの名を聞いたヘルシャフトの少女は驚いていたが、その事には誰一人気付いては無かった。

 するとヨキは意外な事に気付いた。


「ねぇ、この子の名前聞いてないよ、僕達」


「そう言えばそうだな。君、名前なんていうの?」


 ヨキに言われて自分達がヘルシャフトの少女の名前を聞いていない事に気付いたバンは、ヘルシャフトの少女に名前を尋ねた。

 バンに尋ねられたヘルシャフトの少女は戸惑ったが、名前を言う事にした。


「リル、リル・レッドベリル」


 リルと名乗ったヘルシャフトの少女の声は、ヨキ達に対してまだ怯えているのか、とても小さかった。

 するとリースがリルの髪に色が付いている事に気付いた。


「そう言えばリルさんって、他のヘルシャフトとはちがってかみに色が付いてますね」


「ん? 本当だな。こいつ色付きか」


「「色付き⁇」」


「って何?」


 キールはリルの髪色を見て、リルの事を色付きと言った。

 それを聞いたヨキ達は色付きという言葉を知らず、不思議そうにしていた。

 キールは呆れ顔で色付きというのがなんなのかを説明した。


「ヘルシャフトは翼と髪に力を溜めるんだ。

 翼がでかければでかい程、髪が白ければ白い程、そのヘルシャフトは強い。

 けど生まれながらに強い力思っている影響が髪の方に出て突然変異で白以外の色をした髪を持って生まれたヘルシャフトの事を色付きって言うんだ」


「リルさんは? 桜色の長い髪」


「たしかに、サクラ色というのはめずらしいですね」


 それを聞いたリルは急に暗くなって黙りこんでしまった。

 それを見たヨキ達は心配になったが、キールのある一言でリルが黙り込んでしまった理由が判明した。


「ちなみに髪に色の付いてるヘルシャフトは、他のヘルシャフトと違って髪が白くないからって理由で傷つきやすいから気をつけろよ」


「それ先に言っといてよキール君!」


「そうですよリルさんおちこませちゃったじゃないですか!」


 キールから突然変異で髪に色が付いているヘルシャフトは、髪が白くない事で傷つきやすいと言われ、リルの髪の色について指摘したヨキとリースは自分達の発言が原因でリルが落ち込んだのだと知り、後悔した。

 桜色の髪は珍しいといわれたリルは、うつむいたまま自分の髪色は可笑しいのではないかと考えた。


(やっぱり、アタシの髪、シャーマンから見ても人間から見ても、変なのかな…?)


 リルは自分の髪の事で悩んでいると、不意にバンがリルの髪に触れて眺め始め、しばらくしてリルに向かっていった。


「綺麗な桜色の髪だな」


 それを聞いたリルはバンの顔を見た。

 ヘルシャフトの社会では異質な自分の髪を褒められる事はなく、褒められたのは初めてであったため、リルは照れながらバンに感謝の言葉を伝えた。


「…ありがとう」


 バンの一言をきっかけに、リルは少しだけ落ち着きを取り戻した。

 傷が癒えたとはいえ、体力の方はまだ回復していないという事もあり、しばらくの間リルを一人で休ませる事になった。

 少しでもリルの気が休まるようにと、エリルがケーキを御馳走しようと紅茶を入れていると、砂糖を切らしてしまった。


「あっお砂糖が切れちゃった」


「それじゃあ僕が買ってきます」


「お願いします」


 エリルはリルの看病があるという事もあり、代わりにリースが砂糖を買いに行くと言った。

 ウィンディアには何度か来た事があるという事もあり、砂糖が売っている店舗の場所も覚えていたため問題なく買いに行けるとリースは判断したのだろう。

 そう判断したリースが砂糖を買いにクレイとリエナの家を出て、一分も経たないうちに事件は起きた。


「うわーっ!」


 突然外から砂糖を買いに出かけたばかりのリースの叫び声が聞こえてきたのだ。

 リースの叫び声に驚いたヨキ達は外に飛び出すと、そこには十五人程のヘルシャフトが宙を飛んでいたのだ。


「ヘルシャフト⁉ どうしてここに⁉」


「もう感知してきやがったのかよ!」


 ヘルシャフトの姿を見たバンは慌ててリースの姿を探したが、肝心のリースの姿は見当たらない。

 バンはリースがヘルシャフト達によって再び連れ去られたかもしれないと考え、ヘルシャフト達にリースを何処に連れて行ったのか問いただした。


「お前ら! リースを何処へやった⁉」


「あの小僧を返してほしくば、堕天を渡せ」


「堕天って、もしかしてリルさん?」


「ふざけんな! 力づくでもリースを返してもらうぞ!」


 ヘルシャフト達がリースを連れ去った理由が、堕天であるリルを見つけるためだと知ったバンは、勝手にヘルシャフト達に宣戦布告を言い出した。

 勝手にヘルシャフト達へ宣戦布告をしたバンを見たキールは呆れた様子で見ていた。


「勝手に決めるなよ馬鹿」


「どうしよう、リース君が(さら)われたのこれで二回目だよ~っ!」


「どこぞのヒロインかアイツは⁉ あんななりだが一応男だろう⁉

 あー、多分この周辺戦場になるだろうからお前らはリル連れて避難しといてくれ。

 ついでにリースの奴探してくれ」


「わ、わかった…」


 ヨキからリースが以前もヘルシャフトに連れ去られたのが二度目だと聞いたキールは、思わずツッコミを入れる。


 とりあえず、バンの宣戦布告により自分達の周辺がヘルシャフトとの戦いで戦場になると考えたキールはクレイとエリルに、二人の家にいるリルを連れて非難、及びヘルシャフト達に連れ去られたリースを探すよう指示を出した。

 キールに指示を出されたクレイは、エリルとともに自宅に入り、リルの元に向かった。


*****


 一方、ヘルシャフト達が自分を探しに来た事を知らないリルは、傷ついていた事と飛び続けていた疲れで眠っていた。

 急に近づいてきた足音が聞こえて来たため、リルは体を起こして扉の方を見た。

 扉が開き、部屋に入ってきたのはクレイとエリルだった。

 二人はリルを見て安心した顔をしていたため、リルは寝ぼけ眼で何かあったのかと二人に尋ねた。


「どうか、した?」


「ヘルシャフトがお前を追って来たんだ!」


「リースさんが攫われて、リルさんを差し出せと言いだしたんです!」


 それ聞いたリルはヨキ達がいない事に気付き、クレイとエリルにヨキ達はどうしたのかと尋ねた。


「他の人達は?」


「今外で戦ってる。バンがヘルシャフトに宣戦布告を言い出したのが原因なんだが」


 バンがヘルシャフト達と戦っていると聞いたリルは少し動揺していた。

 バンの名を聞くたびに、何故か動揺しているリルにクレイとエリルは気付き、その事に対して違和感を覚えたため、何かあると考えたクレイはバンの名前を聞くたび動揺する理由を尋ねた。


「リル、なんで俺達がバンの名を聞くたびに驚いているんだ?」


「それは、その…」


 クレイに指摘されたリルは何か隠し事をしているらしく、どう反応すればいいのか困っていた。

 不意にエリルは、リルがヘルシャフトの王に命じられた任務の事を話したがらない事を思い出し、その事とバンが何か関係あるのかリルに尋ねた。


「もしかして、リルさんが背いた命令と何か関係があるんですか?」


「…!」


 自分が背いた命令にバンが関わっているとエリルに見破られたリルは、それでも話そうとはしなかった。


「…今は…言えない、言ったら、何が起こるか解らない」


 それを聞いたクレイとエリルは理解できなかった。


「兎に角、俺はヘルシャフトに気付かれないようにリースを探す。

 リルはエリルと一緒に安全な場所へ避難するんだ」


「それならアタシも行く」


 そう言ってリルは起き上がり赤いジレを羽織って体上がろうとした。

 だが体中に痛みが走り、リルの動きが一瞬止まった。

 その様子を見たエリルは慌ててリルを支えた。


「リルさん無茶をしないで! 傷口は塞がったとはいえ痛みはまだ残ってるんですから!」


「…っ平気。それにアタシならリースの居場所が分かるかも」


「それは本当か⁉」


「うん、リースがいそうな場所を特定して、その周辺を探せば見つかるかも」


「よし、リースを探しに行くぞ!」


 リルならリースが連れ去られた場所を特定する事ができると聞いたクレイは、エリルとリルを連れてリースを探しに外へ出た。



*****



 一方、ヨキ達の方はヘルシャフトを八人封印し、残るヘルシャフトと戦っていた。

 バンはヨキをフォローしながらヘルシャフトに攻撃し、避けきれない時はエアー・ガン使ってヘルシャフトの攻撃を打ち落としていく。


「スマッシュ・スマッシュ!」


「ロング・ロング!」


「次の奴、降りて来るぞ! 封印の準備!」


「バン、後ろからくるよ!」


「うわぁっ!」


 ヨキから背後からヘルシャフトが迫っている事を教えられたバンは慌てて避け、バンに攻撃を仕掛けたヘルシャフトにキールが槍(樹の礎)で攻撃をし、ダメージを与えた。

 キールに攻撃されたヘルシャフトは体勢を立て直すためにもう一度空中に戻った。


「気を付けろよ馬鹿! 普通の人間が当たったらひとたまりもねぇぞ!」


「んな事わかってるって!」


「二人とも、次来る次来る!」


 キールが油断していたバンに説教をしている最中に次の攻撃が来るとヨキに知らされたため、キールは問答無用で攻撃してきたヘルシャフトをチェック・ダ・ロックで封印した。

 ヨキ達は法術を使ってヘルシャフトを攻撃し、封印した。


 ヘルシャフト達は全員宙を飛んでいたが、バンがエアー・ガンで攻撃を仕掛けてくれるおかげでバンに攻撃されるヘルシャフトはバンを攻撃しようと高度を下げれば法術を使うヨキとキールによって封印される。

 その方法で戦法をとる事でヘルシャフト達の残り人数を五人にまで減らす事ができた。


「あと五人だ、お前ら油断するなよ!」


 ヘルシャフトの人数が少なくなったとしても油断するなとキールに忠告されたヨキとバンは、より一層警戒してヘルシャフト達との戦いに挑んだ。



*****



 その頃、再びヘルシャフトに連れ去られたリースは、町外れにある地下に向かってできた小さな洞窟に閉じ込められていた。

 狭い訳ではなのだが、地面がぬかるんでいて動きづらく、何度もこけそうになった。

 脱出しようにも出口が急斜面になっているため、登るに登れなかった。


「なんで僕だけさらわれるんですか~」


 自分が再び連れ去られた事に対して嘆いていると、そこへリースを探しに来たリル達の声が聞こえてきた。


「リース、何処にいるんだーっ!」


「リースさーん、いたら返事をしてくださーい!」


「この辺りにいる筈なんだけど…」


 その声に気付いたリースは大声でリル達を呼んだ。


「クレイさーん、エリルさん、リルさーん!」


 リースの声に気付いたリル達はあたりを見回した。

 リースの声を頼りにようやくリースが閉じ込められている洞窟を見つけた。


「良かった、無事だったんだな」


「はい。でもキュウシャメンになっているせいで出られないんです!」


「待ってて、今だしてあげるから!」


 そう言ってリルは白い翼を広げて中に入ろうとした。

 だが、リルが洞窟に入ろうとした瞬間に、見えない力で跳ね返されてしまった。


「リルさん!」


「なんだ今のは⁉」


 リルが跳ね返されたのを見たグレイとリエナは驚いていた。

 洞窟の中でその様子を見ていたリースは、自分が出られないもう一つの理由をリル達に伝えた。


「ヘルシャフトが結界を張ったせいで、出られないようになってるんです。

 この急斜面も加わって、こちらからだとほぼ脱出できない状況になってます!」


「それなら、二人とも下がって!」


 リルはクレイとエリルが下がったのを確認すると風を操り始めた。

 そして風の槍を作り上げ、風の槍をリースが閉じ込められている洞窟の入り口を閉ざす見えない結界に向かって投げつけた。


 すると『パキィン』と音が鳴り、洞窟の入り口付近に白い光の粒子が見えたのを確認するとリルは中に入った。

 先程の光の粒子は、洞窟の入り口を封鎖していた見えない結界が壊れた後だったようだ。

 洞窟に入ったリルはリースを抱えて出てきた。


「リース!」


「大丈夫ですか?」


「はい! それよりも、早く兄さんたちの所へもどりましょう!」


 リル達に救出されたリースは、ヘルシャフト達と戦うヨキ達の元に戻るべきだと言い、急いでヨキ達の元へと急いだ。



*****



 ヨキ達は最後に残ったヘルシャフトの男にてこずっていた。

 最後に残ったヘルシャフトの男は炎を操って攻撃をしてくるため、ヘルシャフトとの戦いになれているキールとは相性が悪くヨキ達は避けるのが精一杯だった。


「どうした? もうお終いか⁉」


「クソッ! 相性が悪すぎる!」


 キールは炎を操るヘルシャフトと植物の力を使う法術と相性が悪い事から、無理に攻撃せず、封印するチャンスを伺っていた。

 しかし、ヨキ達と戦う中で一番の手練れがキールである事に気付いたヘルシャフトの男は自分の周りを炎で囲い、キールが手を出せないように身を守っていたため近付く事ができなかった。


「せめてあの炎を消す事ができれば、封印するチャンスがあるんだが…」


 ヘルシャフトの男を守る炎を忌々しそうに見つめるキール。

 ヨキもヘルシャフトの男を守る炎を見つめ、どうにか炎を消す事は出来ないか考えていると、初めてヘルシャフトと戦った時と同じようにヨキの脳裏にある言葉が浮かんだ。


「ウィンドゥ・ウィンドゥ?」


「ヨキ、どうした?」


「バン、今言葉を思い出したんだ! ウィンドゥ・ウィンドゥって」


「もしかしてなんかの法術じゃ、ヨキ! それ使ってみろ!」


「解った!」


 ヨキは杖を握り直し、炎で身を守るヘルシャフトの男に向かってウィンドゥ・ウィンドゥと唱えた。


「ウィンドゥ・ウィンドゥ!」


 ヨキがウィンドゥ・ウィンドと唱えると、杖から強風が吹き始めた。

 ウィンドゥ・ウィンドゥはヘルシャフトの男を守る炎を吹き飛ばし、ヘルシャフトの男を無防備の状態にした。


 自分を守る炎を消されたヘルシャフトの男はもう一度炎で身を守ろうとしたが、ウィンドゥ・ウィンドゥで炎を消され、身を守る事ができない。

 それを見たキールは封印するチャンスを見出し、加速をつけて高く飛び、ヘルシャフトの男との距離を一気に詰める。


「チェック・ダ・ロック!」


 キールはチェック・ダ・ロックを唱え、ヘルシャフトの男を封印する事に成功した。

 ヘルシャフトの男を封印したキールは地上に着地し、ヘルシャフトの男が封印された宝石が地面に落ちる前に掴み取った。

 キールが最後の一人を封印し終えたのを見たヨキとバンは、勝てた事に安堵していると背後からリースの声が聞こえてきてヨキ達は驚いた。

 声のする方を見るとそこにはリースの姿があった。


「リース! 無事だったんだな!」


「リルさんたちがたすけてくれたんです」


「そうなのか?」


 リルに助けられたとリースから聞いたバンは、リルの方を見て尋ねた。

 バンに尋ねられたリルは、首を縦に振る形で答え、リースを助けてくれたと知ったバンはリルに感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう!」


 リルはその言葉に驚いた。バンの思わぬ感謝の言葉に、どう反応していいのか困ったリルは思わず視線をそらし、そんなリルの反応を見たヨキ達は不思議そうにしながらも、そのままは別行動をとっている間に何があったのかと話し始めた。


 その隙にクレイは小声でキールを呼び、リルが背いた命令とバンが関係している事を伝えた。

 クレイから報告を受けたキールはしばらく考え、話し込んでいるヨキ達には聞こえないようにクレイに言った。


「あいつらには言わない方がいい。リルは連れていく」


 リルが背いた命令にバンが関わっていると聞いたキールは、このままリルをウィンディアに置いておくのは危険だと判断し、旅に連れて行く事にした。

 ヘルシャフトの王直々の命令となると、ただ事ではない事は確かであるためその内容を知るリルが狙われるのは必須。


 キールはヨキ達と話し込んでいるリルと、リルが背いた命令に関わっているバンを見ながら、ヘルシャフトの王の目論見が何なのか、それを解き明かす必要があると感じた。



*****



 ヘルシャフト達を封印したヨキ達を見つめる、一人の人物がいた。

 キャスケットとゴーグルで顔を隠し、狼の耳と尻尾を持つ少年が、何かを(こいねが)うようにヨキ達を見つめていた。


「頼む、思い出してくれ。お前が思い出してくれれば、壊れた未来を、捻じ曲げてしまった運命を直す事ができるんだ。

 そのために、その子をお前の元に送ったんだから…」


 その少年はヨキ達を見つめながら、願うように言葉を紡ぐ。

 ゴーグル越しに見える美しい紫の瞳は、悲しみと後悔の色に染まっていた。

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