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第12話 白き翼のヘルシャフトと新しい掟

 ブックマークありがとうございます。

 ファイヤーファントムのディモルフォセカが加わり、残るスピリットシャーマンと離れ離れになったヨキとマリを探すケイとヒバリ。

 その途中でディモルフォセカの親友がいる村による事にした。


「へえ~、ディルカにも友達がいるんだな」


「まぁね。と言っても一緒にいたのは一年間だけだけど」


「兎に角食料や飲み物が買えるから助かるでごじゃる」


 そう言って三人は村の中に入り、ケイは村のあちこちを眺めていた。

 生まれ故郷である恵の村、ヨキとマリの二人と過ごした思い出が蘇ってくるらしく、ケイ的には早くヘルシャフトとの戦いを終わらせ、ヨキとマリと一緒に帰りたいと考えていた。

 不意にケイはディモルフォセカに尋ねた。実際の所、村に寄ろうと言いだしたのはディモルフォセカ本人だ。


「そういやディルカ、なんで村に寄ろうって言ったんだ?」


「えぇ。レイトューンで気になる噂を耳にしてね」


「「気になる噂?」」


「その噂に心当たりがあってね。どうしても確かめておきたかったのよ。アンタ達も来る?」


 ケイとヒバリは声を揃えていった。

 レイトューンにはディモルフォセカが起こした事件がきっかけで一週間近くいたが、二人はそんな噂を一度も耳にしてはいなかった。

 その噂はケイとヒバリが来る前から存在していたのであろうが、内容自体があまりたいした事ではなかったため、たまたま二人の耳には入ってこなかったのだろう。


 だが、こうしてディモルフォセカ本人が気にしているとなると、自分達とも無関係ではないと考え、  ディモルフォセカが言う心当たりの場所に行く事になったが、そこで思いがけない出会いが待っていた事は知る由もなかった。

 村外れにある一軒の家に着いた時、ディモルフォセカがト扉を叩き、家の住人の名前を呼んだ。


「カトレア? カトレアいるでしょ? 私よ、ディモルフォセカ」


 ディモルフォセカが家の住人の名前を呼んだ途端、扉が勢い良く開き、そして中から白いジャマイカパンツとピンクのサファリジャケットを着こみ、黄色の髪をアップスタイルのツインテールに結ったケイ達と同年代の少女が出てきた。


「ディモルフォセカ! 久しぶりね! 元気だった⁉」


 突然の出来事にケイとヒバリは理解できなかった。

 と言うよりも、覚えにくいディモルフォセカの名前を完璧に言ってしまう少女の方に驚いていた。

 ヒバリはディモルフォセカにこの少女が誰なのかを聞く事にした。


「ディッディルカ殿、この方は?」


「さっき話してた私の友達のカトレア・シロップ。四年前にこの村に引っ越してたの」


「始めましてね。確か貴方は(わたり)()ヒバリ君で、そっちの君はなんていう名前?」


 ごく普通に名前を聞かれたケイはなんだが複雑な気持ちがした。


「や、薬師ケイ。ってか、なんでヒバリは知ってんだよ?」


 ケイは何故カトレアがヒバリだけ知っているのかを聞いた。

 その事を聞かれたカトレアは、当たり前のように答えた。


「あら? 知らないの? ヒバリ君って仲間と一緒に悪いやつらと戦って結構有名人なのよ」


「そうなのか?」


「そうでごじゃる。前に言ってなかったでごじゃるか?」


 そう言えば言っていたような、とケイは思っていた。

 するとディモルフォセカはカトレアに自分が耳にしたレイトューンの噂について尋ねた。


「ところでカトレア、レイテューンで気になる噂を聞いたんだけど、まさかアンタ…」


「噂って……あぁ、もしかして! ちょっと待っててくれる?」


 ディモルフォセカが尋ねた噂について心当たりがあったのか、カトレアは一度自宅に入って行った。

 それから少しして、再びカトレアが出てきた時、カトレアの後ろには小さな人影があった。


「お待たせ~、ディモルフォセカの聞いた噂ってこの子の事? 出てきていいわよ」


 するとカトレアの後ろから出てきたのは、まだ十歳にも満たない小さなヘルシャフトの少年だった。

 小さなヘルシャフトの少年は、一言も喋らず不安そうな様子でカトレアにしがみつきながら、ケイ達の事を見ていた。


「この子の名前はラレア=ラヴァーズ、歳は八歳。ちなみにラレアが名字で名前がラヴァーズよ」


 カトレアの背後からヘルシャフトの少年、ラヴァーズを見たケイとヒバリは驚いたが、ディモルフォセカは一人呆れた顔で言った。


「やっぱり、貴女だったのね。堕天のヘルシャフトを(かくま)ってたのは。

 この村の住民が堕天を匿ってるって聞いた時から、貴女じゃないかとは思ってたのよ」


 ディモルフォセカはレイトゥーンで耳にした噂の元がカトレアだと確認すると、一人困った様子でラヴァーズを見た。

 それを聞いたケイはラヴァーズの翼をよく見ると、ある事に気付いた。


 通常のヘルシャフトの翼は黒なのだが、ラヴァーズの翼は今まで見て来たヘルシャフトとは違い白かったのだ。

 ラヴァーズの白い翼を見たケイは、村に来るまでの道中に聞いたある事を思いだした。



*****



 それはディモルフォセカからヘルシャフトについて聞いている時に、ディモルフォセカが教えてくれた事だ。


『ヘルシャフトには消して掟を破ってはいけないの。まぁその掟を破るヘルシャフトはいないだろうけど』


『破ったらどうなるでごじゃるか?』


『背中の黒い翼が薄くなり始めて白くなっていって、最終的には堕天と認識され追放されるの』


 ディモルフォセカは掟を破ったヘルシャフトは堕天として追放されると説明したが、堕天という言葉が何を意味するのか分からなかったケイは、堕天が何を意味するのかをディモルフォセカに尋ねた。


『堕天ってなんだ?』


『わかりやすく言うなら、ヘルシャフトの社会から外れたはぐれ者ね。白くなった翼がその印よ。

 白い翼のヘルシャフトとは無理に敵対する必要はないと思うわ』



*****



 白い翼は堕天の印、それは旅の中でディモルフォセカから聞いた事だったが、まさかこの短期間でそのヘルシャフトに会う事になるとは思っても見なったのだ。


「いいじゃない、この子堕天で他のヘルシャフトに追われてるんだから」


 どうやらカトレアは、昔ディモルフォセカに聞いたらしく堕天のヘルシャフトについて既に知っていたらしい。

 そのため堕天であるラヴァーズを自分の判断で保護していたようだ。

 するとディモルフォセカがカトレアのある一言に顔色を変えた。


「追われてる? どういう事カトレア。確か堕天は追放されるだけで追われたりしない筈よ。

 それにどう見てもラヴァーズは子供じゃない」


 カトレアからラヴァーズが追われていると聞いたディモルフォセカは、何故ラヴァーズが終われているのかをカトレアに尋ねた。

 どうやらディモルフォセカが知っている事と、今の状況は明らかに可笑しいらしく、レイトゥーンで耳にした噂から堕天のヘルシャフトを匿ったのはカトレアであると確信していた。


 だが、その堕天のヘルシャフトが子供だとは思っていなかったらしく、カトレアが何か知っていると悟ったディモルフォセカは問いただした。

 不意に、一言も喋らなかったラヴァーズが言葉を口にした。


「……かわったんです。オキテが」


「掟が変わった…ってどういう事なの?」


 掟が変わったとディモルフォセカはラヴァーズに問いただしたが、あまりの剣幕にラヴァーズが怯えてしまったため、ケイとヒバリに注意された。

 数秒してラヴァーズは恐る恐る喋り始めた。


「六〇〇ネンマエにごせんぞさまたちがフッカツしていらい、そのおきてはかきけされ、あたらしいオキテがさだめれられました」


「「新しい掟?」」


「それは貴方がカトレアに保護された事と、どう関わっているの?」


 ケイとヒバリは声を揃えて新しい掟という言葉に疑問を感じ、ディモルフォセカはその新しい掟に原因があると感じ、どのように関係しているのかを尋ねた。

 ディモルフォセカに新しい掟について聞かれたラヴァーズは話す事をためらっていたため、それを見たカトレアはラヴァーズの肩を叩いて声を掛けた。


「あとはアタシが説明するから、ラヴァーズは家の中に戻ってて」


「……はい、ありがとうございます」


 そう言ってラヴァーズは家の中に入って行った。

 ラヴァーズが家の奥へ行った事を確信するとカトレアはドアを閉め、再び顔をケイ達に向けた。

 しかしその顔はさっきまでの明るく、優しさの籠った顔ではなかった。

 カトレアは真剣な表情でケイ達を見つめ、ヘルシャフトが六百年前に定めた新しい掟について話し始めた。


「それじゃあ、話すわね。新しい掟について。覚悟して聞いてちょうだい」


 三人はカトレアの言葉に真剣に聞く事にした。


「……『堕天は生かすべからず』、堕天になったヘルシャフトは必ず殺されるそうよ」


「「えっ⁉」」


「堕天を殺す…ですって⁉」


 その言葉に三人は驚きを隠せなかった。それはあまりにもむごい掟だった事もあるため、言葉を失ってしまった。


「奴らは恐れたのよ、スピリットシャーマンの復活を。

 だから奴らは、堕天となったヘルシャフトを一人残らず殺すつもりなのよ。許せないわ」


「そうか、確かスピリットシャーマンは元を辿れば普通の人間とヘルシャフトの間に生まれた存在。

 堕天を追放すれば新たなスピリットシャーマンが生まれる可能性が出て来るでごじゃるな」


「だからってあんな小さい子供をや(殺)る必要なんてないだろ⁉」


「確かに、小さなヘルシャフトはまだ子供だから矯正して元通りにする。

 けどラヴァーズは違うの」


 その言葉に三人は顔をしかめた。ケイとヒバリはその意味はわからなかったが、ディモルフォセカは心当たりがあったのか、まさかというような顔でカトレアを見ていた。


「カトレア、まさかとは思うけどあの子…!」


「…あの子がした事は許される事はない、友達も自分の親にすら許されない事をしてしまったそうよ」


 ケイとヒバリはその言葉の意味が全く分からなかった。

 ケイは分からないその意味を聞くために、ディモルフォセカに聞いた。


「そう言えばまだアンタ達には言って無かったわね、ヘルシャフトの掟の中には消して破ってはいけない五つの掟、『ヘルシャフトの誓い』というのがあるの」


「ヘルシャフトの誓い? それを破ったらどうなるでごじゃるか?」


「その掟を一つでも破ったらすぐにでも堕天と認識される厳しい掟よ。

 カトレア、あの子はどの掟を破ったの?」


 ディモルフォセカはカトレアに問いただした。するとカトレアは俯いてヘルシャフトの誓いの一つを口にした。


「ラヴァーズは『禁断の技を使ってはいけない』っていう掟を破ったそうよ」


「禁断の技? それってつまり絶対に使っちゃいけない技って事なのか?」


 それを聞いたケイは驚きのあまり大声でカトレアに聞いた。

 村の住人達は堕天のヘルシャフトであるラヴァーズがいる事は知らないため、カトレアは慌ててケイを落ち着かせた。


「しっ! 静かにして! 声が大きいわ、ヘルシャフトがこの村に何人かいるから、ラヴァーズが見つかっちゃうわよ⁉」


「ごっごめん。それで、どんな技なんだ? その禁断の技って」


「えぇ、確か『《水(すい)(おう)(きょう)』って言う、封印術と呼ばれる技らしいわ。

 ラヴァーズはそれを完成させちゃって、それで堕天って認識されて、追われる身になったそうなの。

 アタシが見つけた時は傷だらけで、酷く衰弱してたわ」


 ラヴァーズが堕天になった原因が、水桜鏡と呼ばれる禁断の技を使ってしまった事だと聞いたケイとヒバリは、水桜鏡がどういう技かあまり想像できなかった。

 ラヴァーズが堕天になった原因を聞いたディモルフォセカは、服自体は真新しい子供服だったのにもかかわらず、頭に包帯を巻いていた様子を思い出しながら、掟が変わったのが事実だと確信した。

 ラヴァーズを保護したカトレアにこれからどうするのかを尋ねた。


「それでどうするの?」


「まだ決めてないわ。あんなに小さな子ほっとけないんですもの」


「確かにそうだけど、カトレアの両親はどう説得するの?

 今はいないみたいだけど、もしバレたら色々と面倒くさい事になるわ」


 カトレアはラヴァーズを保護したまでは良かったが、それから先の事はまだ決めかねているらしく、かといってそのままラヴァーズを見捨てるつもりもなかったようだ。

 ディモルフォセカもカトレアの意思を尊重したいが、事情を知らないカトレアの両親にバレた時の事も考えるべきだと主張した。


 その時だった、急に頭上から雑音が聞こえ始めた。

 それに気付いたケイは、雑音の正体を確認しようと頭上に視線を移すと、そこには大勢のヘルシャフトがいた。


「うわぁっ! ヘルシャフトがあんなにぃ⁉」


 上空にいるヘルシャフト達の姿を見たケイは、驚きのあまり大声をあげてしまった。

 ケイの声につられてラヴァーズに関してカトレアと話し込んでいたディモルフォセカとヒバリも上空に視線を移し、ケイと同様、その数に驚いていた。

 上空にいるヘルシャフト達の姿を見たディモルフォセカは、初めて自分達が尾行されていた事に気付いた。


「やられた、私達が気付かない距離で後をつけられてたんだわ!」


「運がいい! 貴様らをつけていたら誓いを破った堕天がいるとはなぁ!」


 どうやらヘルシャフト達はケイとディモルフォセカから礎を奪うつもりで後をつけていたが、ここにヘルシャフトの誓いを破ってしまったラヴァーズがいるとは思っていなかったらしい。

 つい先程、掟の内容が変わったヘルシャフトの誓いについて説明を受けたケイ達は、ヘルシャフト達がラヴァーズを殺そうとしている事を悟り、ヒバリはすぐにカトレアに声を掛けた。


「カトレア殿はラヴァーズを連れて逃げるでごじゃる!」


「解ったわ!」


 カトレアは慌てて家の中に入り、リビングで待っていたラヴァーズを連れ、裏口から逃げ出した。

 カトレアがラヴァーズを連れて逃げた事に気付いたリーダー格と思われるヘルシャフトの男は、周囲にいた他のヘルシャフト達に指示を出した。


「堕天を生かすな! 追えぇ!」


「おぉっと! お前らの相手は俺達だっ!」


 カトレアとラヴァーズを追いかけようとするヘルシャフトの前にケイ達が立ち塞がり、ヘルシャフトとの戦闘を開始した。

 一方、裏口から逃げ出したカトレアはラヴァーズの手をしっかりと握りしめた。

 ラヴァーズは不安そうな顔でカトレアの事を見つめていた。


「カトレアさん、ぼく…」


「大丈夫よラヴァーズ! 私が守ってあげるからね!」


 カトレアは笑顔でそう答え、そんなカトレアの様子を見て安心したのか、ラヴァーズもカトレアに握られた手をしっかりと握り、二人はそのまま村の近くにある森の中へと逃げ込む。

 ケイは上手く法術が使えないためヒバリのサポートを頼りにヘルシャフトを封印していった。


 ディモルフォセカは、レイトューンにいた頃の経験をいかし軽々と封印していった。

 ヘルシャフトがカトレアとラヴァーズが逃げ込んだ森の方へと行かないよう、必死に応戦するが、明らかな人数差によって苦戦していた。


「スイング・スイング!」


「チェック・ダ・ロック!」


「数が多すぎるでごじゃる! このままでは、ここを突破されるでごじゃるよ!」


「そんな事わかってらぁ! スマッシュ・スマッシュ!」


 今のまま戦っていればいつ突破されても可笑しくないと指摘したヒバリの言葉に、ケイは意気揚々とスマッシュ・スマッシュを唱えた。

 だが、いつもの如く失敗してしまい、盛大に爆発を起こした。

 法術が爆発するという謎の減少を目の当たりにしたディモルフォセカは、信じられないといった様子でケイに声を掛けた。


「ちょっと! どうして法術が爆発するのよ⁉」


「知らねぇよ! こっちが知りたいくらいだよ!」


 目の前で法術が爆発するという現象を目の当たりにしたディモルフォセカは、何故法術が発動した途端に爆発するのかをケイに問いただしたが、爆発させたケイ本人も原因がわかっていなかったため、説明できる訳がなかった。


 ケイ達と戦っていたヘルシャフト達も、法術が発動する前に爆発するという現象を目の当たりにし、思わず攻撃の手を止めてしまった。

 違う意味でその場が騒然としていると、七人程ヘルシャフトがカトレアとラヴァーズが逃げ込んだ森に向かって飛んで行ってしまった。


「しまった! 森の方にヘルシャフトがっ!」


「させるか、キャノンズ・キャノンズ!」


 ケイはカトレアとラヴァーズが逃げ込んだ森に向かうヘルシャフト達に向かってキャノンズ・キャノンズを唱えたが、他のヘルシャフト達に妨害され、キャノンズ・キャノンズは届かずヘルシャフト達を森に通してしまった。

 それを見たディモルフォセカは、ケイとヒバリをカトレアとラヴァーズの元へ送り出す事に決めた。


「ここは私に任せて、アンタ達はアイツラを追いかけて!」


「しかしディルカ殿、一人では」


「平気よ、レイトューンでの経験があるからね。さぁ、早く行って!」


「…っわかった、頼んだぞディルカ!」


 ケイとヒバリは急いで森へ向かったヘルシャフト達を追いかけた。

 その場を引き受けたディモルフォセカはトーチ(炎の礎)を持ち直し、冷たい眼差しでその場に残っているヘルシャフト達を睨みつける。


「覚悟しなさい、ヘルシャフト。私の幸せを奪った事を後悔すがいいわ! トリック・トリック‼」


 ディモルフォセカは法術を唱えるとヘルシャフト達との戦いを再開した。



*****



 ラヴァーズを連れて森に逃げ込んだカトレアは、近づいてくる音にいち早く気が付き、ヘルシャフト達が追いかけて来たのだと悟った。

 ラヴァーズも同様に気付き、不安そうにカトレアの方を見ていた。

 カトレアは不安そうなラヴァーズを安心させるように、明るく笑顔で、ラヴァーズに話し掛けた。


「ラヴァーズ、安心して。言ったでしょ? アタシが守るって。だから自分を責めたりしないで、ね?」


「カトレアさん……」


「私に考えがあるわ。私を信じて」


 その力強い言葉に心を打たれたラヴァーズはカトレアの言葉を信じる事にした。

 それからしばらくしてヘルシャフト達が現れ、カトレアとラヴァーズの二人を探し始めた。


「くそ、どこに行った?」


「探せ、そう遠くには行っていない筈だ。生命力を探知すればすぐに見つかる筈…」


 ヘルシャフト達が探す事に夢中になっている時、茂みの方からカトレアが蔦を持ち飛び出してきたのだ。

 それに気付いたヘルシャフト達はカトレアの予想外の行動に対応できず、あっという間に蔦で簀巻きにされてしまった。


「ざっとこんなもんよ! ラヴァーズ、大丈夫よ!」


 ヘルシャフトを簀巻き状態にしたカトレアは、ラヴァーズに出てきても大丈夫だと伝えた。

 近くの茂みに隠れていたラヴァーズは、カトレアの声に反応して出てきたが、カトレアが簀巻きにして捕まえたヘルシャフト達とは別にあと一人残っていたらしく、ラヴァーズが隠れていた茂みの上からヘルシャフトが飛び出してきた。


「とどめだぁ!」


「危ないラヴァーズ!」


「…っ!」


 身の危険を感じたラヴァーズは自分の力を開放した。

 それは自分が掟を破る事になってしまうきっかけとなった技、禁断の技の一つ、水桜鏡だった。

 水桜鏡を発動した途端に水がヘルシャフトを捕らえた。


「こっこれは、水桜鏡か⁉」


「…印!」


「ぎゃぁぁぁぁぁ⁉」


 ラヴァーズはそのままヘルシャフトを水桜鏡で閉じ込め、そのままヘルシャフトを鏡に封印してしまった。

 ラヴァーズがヘルシャフトを鏡にしたのを見たカトレアが、その力が水桜鏡だと悟り、何故水桜鏡が禁断の技に指定されたのか理解した。


 どれだけ実力があろうとも、一度捕まればそのまま鏡にしてしまうだけの力を持っているからだ。

そこへケイとヒバリの二人がやってきた。


「おーいカトレア殿ー、ラヴァーズー」


「二人とも無事かってなんだこりゃ! ヘルシャフトの大群⁉」


「私が捕まえたの。凄いでしょ?」


「たっ確かに凄いでごじゃるな。む? これは、鏡?」


 ケイがカトレアの手で簀巻きにされたヘルシャフト達に驚いていると、ヒバリはラヴァーズが閉じ込めたヘルシャフトの鏡に気付いた。

 気になったヒバリはその鏡を手に取ると、その鏡に映っていたのは自分に似た肌の白い少年だった。


「その鏡はラヴァーズが水桜鏡で封印したヘルシャフトが入ってるの。気をつけてね」


「それを早くいってほしいでごじゃる!」


「兎に角こいつらも封印しとくか」


 ケイとヒバリは、無事ラヴァーズを守り抜いたカトレアと合流し、ヘルシャフト達を封印した。

 ケイ達は急いでディモルフォセカのもとへ戻ると、そこにはヘルシャフト達を封印したディモルフォセカの姿があった。


「ディルカ、大丈夫か?」


「平気よ、それよりカトレアとラヴァーズは?」


「アタシ達なら平気! ディモルフォセカは大変じゃなかったみたいね」


 ディモルフォセカの無事な姿を確認したケイ達は、たった一人で大勢のヘルシャフトを封印し切った事に感心していたが、根本的な問題は解決していなかった。

 大勢のヘルシャフトがカトレアの自宅に押しかけて来た事もあり、村人達にラヴァーズを匿っていた事がバレるのも時間の問題だったため、ディモルフォセカはカトレアにどうするのかを尋ねた。


「それよりカトレア、これからどうするの?」


「そうねぇ、しばらくディモルフォセカ達と旅して静かな所で暮らそっかな?」


「本当に貴女はマイペースね」


 カトレアの返事を聞いたディモルフォセカは、呆れ顔で言った。

 それからすぐに、カトレアの自宅で旅の準備をし、ケイ達は村人に見つからないようにして村を出た。

 ラヴァーズは目立ってしまう白い翼を、昔教わったようにして閉まった。

 そうすればヘルシャフト以外の人々に堕天である事を隠す事ができるからである。


「カトレア、本当にこれで良かったの?」


「平気平気! それに親とは別暮らしだからね♪」


 更に呆れ顔でディモルフォセカは言った。

 しばらくカトレアとラヴァーズと旅をする事になったケイ達。

 無論、ケイとヒバリは喜んで賛成したがディモルフォセカは厄介ごとを持ち込んだ気がしたため、少し後悔する事になったが、後悔しても今更遅かった。


(……厄介な荷物を持ち込んだ気がする)

 ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  前話で登場人物の一覧が、簡潔かつわかりやすくまとめられていて、より読みやすくなりました。  ヨキ側とケイ側に分かれているので、いまはこっちサイドって見直せ…
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