第99話 リラクゼーション+トラブル=最適な治療方法【ケイside】
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トリッククロウの群れによるバーナードキャラバンへの被害を確認している内にすっかり日は暮れてしまい、予定を変更してその刻は野宿をする事になった。
全体の空気はピリピリしていたが、幸か不幸かラヴァーズとタメゴローが女性陣や子供好きへの緩和剤となってくれたおかげで少しだけ落ち着いたように見えた。
「良かった、なんとか落ち着いてくれたようですね」
「癒やし要員がいてくれて良かったわ、そうじゃなきゃアチコチで一触即発が起こりまくってたわよ」
「モフモフ様々だねぇ、まぁ本人達は揉みくちゃにされてるけど……」
翡翠の渡り鳥の三人は周囲が落ち着きを取り戻してくれた事に安心していたが、引き換えにラヴァーズとタメゴローが揉みくちゃにされているため少々困惑してもいた。
そこにヒバリが三人に声を掛けてきた。
「御三方、ココにおられたでごじゃるか」
「あら、ヒバリ君。私達に何か用?」
「ガントゥ殿とケイが呼んでるでごじゃる。
馬車を引いてくれる馬が数頭ほど怪我をしたらしく、人手が欲しいとの事でごじゃるよ」
「えぇ、馬が怪我を⁉」
「やっぱり無傷とは行かなかったかぁ」
トリッククロウの群れの襲撃を受けた結果、バーナードキャラバンの馬が数頭怪我をしてしまったと聞かされた三人は、すぐさまヒバリのあとについてケイとガントゥの元に向かう。
そして二人の元に着くと、興奮冷めやまない馬を必死になだめるガントゥと怪我を負った馬を甲斐甲斐しく手当するケイの姿が目に入った。
「またせたでごじゃる、セレン殿達を連れてきたでごじゃるよ」
「ご苦労、助かった。
休憩中の所スマン、ちょいと、手を貸してくれ、俺達だけじゃ、手に負えない!
どうどう、落ち着けっての!」
「なんか、妙に人手が少なくない?」
「非戦闘員の方でも怪我人が出てるからそっちにも人数を割いてるんだよ。
よ〜し良し良し良し、もうちょっとで終わるからな〜」
「これは確かに、人手が必要ね……」
非戦闘員側からも怪我人が出た事から、そちらにも人数を割いているためどうしても馬達の世話をする人数が足りなくなってしまったようだ。
ケイとガントゥの二人を除くと馬の世話をしている人数は八人程度。
対して馬の方はその四倍もいるため、人手が足りないのは明らかだった。
「シファ、お前馬の扱い得意だろう?
俺の代わりに、コイツをなだめてくれ、どうどうどうっ!」
「めっちゃ荒れてるねぇ、一回お散歩させて気分転換させてくるよ」
ガントゥと交代したシファはそのまま馬の上に飛び乗ると、手綱を握ってそのまま近くの草原に向かっていった。
シファと馬がその場から離れた事を確認すると、ガントゥは大きなため息を付いた。
「はぁ〜、トリッククロウの時よりも疲れたぞ」
「お疲れ様ですリーダー、っと言ってもまだ落ち着きがない馬達が多いですが」
「そうなんだよ。
ここの所襲撃続きなせいでストレスが溜まっちまったみたいでな、今回の襲撃で爆発したみたいなんだ」
「それはそれで面倒ね……」
無傷な馬達が荒れている原因を聞いたセレンは、残りの馬達の様子を見た。
ざっと見た所トリッククロウの襲撃で負傷した馬はさほど多くはなく、荒れているのは無傷な馬ばかりだ。
シファのように一度連れ出して自由に走り回らせれば落ち着くかもしれないが、馬にも個性があるため必ずしも走っただけで落ち着くとは限らず、かといって人手が足りなさすぎるこの状況では不可能に等しかった。
「リーダー、もう少し人手を探してこようか?」
「すまないがそうしてくれ、ハッキリ言ってそうしてくれた方がありがたい」
ガントゥの様子を見かねたセレンは、足りない人手を補うために手が空いていて馬の扱いに長けている者達がいないか探しに向かった。
その間、ケイは一頭の馬の治療を終えた。
「これをこうして、良しできた。
ヒバリ、コイツの治療が終わったから向こうの木陰に連れて行ってやってくれ」
「承知仕る、さぁ、向かうの木陰に移動するでごじゃるよ」
ヒバリはケイから手綱を預かると、そのまま指定された木陰へと馬を誘導する。
そしてヒバリと入れ替わる形でバーナードキャラバンの使用人が次の馬を連れてきた。
「次はこの馬をお願いします」
「任された。それじゃあ何処を怪我したか見せてくれよ〜」
「怪我の手当はケイ君に任せるとして、僕達はどうしましょうか?」
「なんとかして馬達のご機嫌を取るしかないだろう……」
負傷している以外で興奮状態の馬達を見ながら、ガントゥはため息を付いた。
残りの馬を自分達だけで面相見なければならないという、中々に鬼畜な展開だ。
かといってセレンが戻るのを待つ訳にもいかない。
「とりあえず、飯でもやってみるか。
腹が膨れりゃあちっとは落ち着くかもしれん」
「何もしないでいるよりかはマシですかね……」
試しに餌を与えてみる事にし、ラファは近くにおいてあった人参入のバケツから一本のニンジンを手に取ると直ぐ側にいた馬の口元まで人参を近づけた。
だが馬の方は腹が減っていなかったのか、はたまた腹の虫の居所が悪かったのか、人参に興味を示さずそっぽを向いてしまった。
「……お腹は空いていないみたいですね」
「これ以上どうしろっていうんだよ……」
「ただいま〜、戻ったよぉ」
ガントゥとラファが馬の扱いで困っていた所に、ガントゥが最初になだめていた馬を散歩に連れ出したシファが戻ってきた。
「シファ、丁度いい所に! この馬も連れ出してくれませんか?」
「任せといてよ、代わりにこの子移動させといて」
そう言うとシファは今乗っている馬からガントゥとラファが相手をしている馬に乗り換えると、再び平原の方へと駆け出していった。
代わりにラファが戻ってきた馬を近くの木陰に移動させた。
「次はコイツか、コイツもシファみたいに走らせたら落ち着くか?」
シファのマネをして次に面倒を見る馬を散歩させようと手を伸ばしたガントゥだったが、首を激しく横に振るという形で馬の方から拒絶されてしまった。
散歩ではないなら食事を与えればと思い再度人参を手にして馬の口に近付けるが、それも違ったらしく人参を持った手を顔で弾かれる形に終わった。
「一体全体どうしろってんだよ⁉」
「体を綺麗にしてやったら良いんじゃないかな?
結構汚れてるみたいだし」
隣で馬の手当てをしていたケイはガントゥが面倒見ている馬の様子を確認し、アドバイスを送った。
そして自分の方は馬の傷口を消毒した後にガーゼを貼り、手当てを終えた。
「これで良し、三刻後にガーゼを外してやるからな。
少しの間だけ我慢してくれよ」
ケイは馬の手当てを終えると、馬の気持ちを汲み取って頭を撫でてやる。
そんなケイの気持ちが伝わったのか、馬の方も心地よさそうな表情をし、撫で終わると使用人によって移動させられていった。
そして別の使用人が次の馬を連れてくると、後ろ右足の様子が可笑しい事に気が付いた。
その事に気付いたケイは慎重に後ろ右足に触れ、状態を確認すると馬が嫌がる素振りを見せた。
「わっわっ! 大人しくしないか!」
「……折れてはないだろうけど、多分不全骨折、骨にヒビが入ってるかも」
「えっ、骨にヒビが? それは参ったな、オリソンティエラまでまだ道のりはあるのに……」
馬の後ろ右足の骨にヒビが入ってる可能性がある事を聞かされた使用人は、かなり困った様子だった。
次の砦までは勿論、オリソンティエラまでまだ道程は長い。
加えて馬の骨折というのは治すのが難しく、骨折した馬は悲しい結末を迎える。
かといって治療しようにもストレスに弱いため、その事を考えれば楽にしてやった方が馬のためになるのかもしれない。
「不全骨折なら法術で治せるかも、∮ヒーリング・ヒーリング∮」
∮ヒーリング・ヒーリング∮をかければ不全骨折を治せるのではないか?
そう考えたケイは不全骨折をした馬の後ろ右足に∮ヒーリング・ヒーリング∮を掛け始めた。
最初は問題なく掛けられていたが、治り始めたことで痛みが生じたのか、馬は不全骨折をしている後ろ右足を激しく動かし拒絶の意を示した。
「あっぶね! やっぱり痛いか〜」
「この調子だと治療は無理そうだな、ここで楽にしてやった方が良いか」
「ちょ、ちょっと待って!
なんとか落ち着かせる事ができればちゃんと治療できるから、もう少しだけ待って!」
∮ヒーリング・ヒーリング∮で治してやれると確信したケイは、慌てて使用人を止めた。
骨折した馬を治すのは至難の業、けれども、治せると確信したからにはなんとかしてやりたいと思ったのだ。
なんとか不全骨折した馬の後ろ右足を治してやれないかと考えていると、馬の扱いに慣れている者達を探しに行ったセレンが数人引き連れて戻ってきた。
「リーダーお待たせ、なんとか人手を集めてきたよ」
「おぉ、助かった。俺達だけじゃマジでどうしようもなくてな……」
「本当にどうしようもないみたいね。
コッチも大変なのは分かるんだけど、ちょっと面倒な事が起こってるみたい」
ブラッシングを掛けている馬に頭を甘噛みされているガントゥの姿に呆れ果てているセレンだったが、人手を集めている最中に起こった事を知らせた。
「厄介な事って、なんだ?」
「近くの水辺にスライムの群れがいるんだけど、それを狙ったアリゲーターワームが暴れ回ってるのよ。
スライム自体は上位個体がいないからほぼ無害だから良いけど、アリゲーターワームは厄介だわ」
「アリゲーターワームか、それは確かに厄介だな。
こっちに被害が出る前に追っ払う、もしくは最悪討伐しねぇと」
「アリゲーターワームって?」
「鰐みたいに凶暴なのに体が蚯蚓みたいに柔らかい黄緑階級の魔物よ。
アリゲーターワームが通った後の地面は耕されたみたいに柔らかくなるから厄介なの」
セレンからアリゲーターワームの特徴を聞いたケイは、蚯蚓のような鰐なのか鰐のような蚯蚓なのか想像できなかった。
むしろアリゲーターワームが通った後が耕されたように柔らかくなると聞いて、恵みの村に一匹いたら畑仕事が楽になるだろうなとケイは思った。
「野営地に来られたら厄介だ、すぐにでも行動するぞ。
現在進行形で対応してる冒険者パーティはいるか?」
「今二組のパーティが対応してるわ」
「良しわかった、馬達の面倒は今連れてきてくれた連中に任せて俺達はアリゲーターワーム退治だ」
「それ、おっさんが馬達の面倒見たくないだけじゃん」
アリゲーターワームを理由に馬達の世話から離脱する金丹が見え見えなガントゥの態度を見たケイは、ジト目で睨んでいた。
そして馬を木陰に移動させたヒバリとラファ、散歩に行っていたシファがタイミング良く戻ってきた。
「ただいま~、どうしたの?」
「どうしたんです? 何かあったんですか?」
「良い所に来た、今からアリゲーターワーム退治に行くぞ」
「戻って早々訳が分からぬでごじゃるよ」
「アリゲーターワームっていう魔物が出たからこれから追っ払いに行くんだって」
「翡翠の渡り鳥全員揃ったな? それじゃあ現場に向かうぞ」
突然の魔物退治宣言で混乱するヒバリに対し、簡易的に事情を説明したケイは使用人から何かが入った大袋を三袋程受け取っていた。
一先ず馬達をセレンが連れてきた冒険者に任せ、ガントゥに従いアリゲーターワーム退治に向かう事になった。
そして現場となっている川辺に着くと、セレンが言ったように二組の冒険者パーティが戦っていた。
対象となっているアリゲーターワームらしき姿は見当たらないが、耕された畑のように川辺の地面が柔らかくなっているのが分かった。
「翡翠の渡り鳥だ。
アリゲーターワームの出現と聞いて助太刀に来た」
「助かる! そっちのパーティに植物系統のスキル持ちはいるか⁉」
「植物系統のスキル持ちはいない代わりに光系統のスキルが使えます!」
「希少な光持ちか!
だがアリゲーターワームは地中にいるから、引きずり出す必要があるんだ!」
「シファ、アリゲーターワームを全部引きずり出せるか?」
「無理だよ、僕の【造形】はあくまで形を整えるだけだもん」
アリゲーターワームを倒すには地中から引きずり出す必要があるため、地属性のスキルを持つシファに白羽の矢が立ったが、自分のスキルでは無理だと申告した。
その直後、ケイ達の目の前の地面から何かが飛び出して来た。
最初は太陽の逆光で上手く姿を確認できなかったが、次第に目が慣れてきたため飛び出してきた物の正体を目の当たりにする事になった。
「うわぁっ⁉ 鰐の顔した巨大蚯蚓だ!」
ケイが言った通り、目の前に現れたのは鰐の顔を持つ巨大な蚯蚓だった。
アリゲーターワームを見た事がないケイは、まさか名前の通りの見た目をしているとは思ってもいなかった。
「地中に潜っていたアリゲーターワームが出てきたぞ!」
「これ、鰐みたいな蚯蚓じゃなくて鰐の顔した蚯蚓じゃん!
どうなってんのコイツ!?」
「驚いてるヒマはねぇぞ。
ラファ、凍らせて動きを固定しろ!」
「了解! 【氷造形・鎖】!」
ガントゥの指示を受けたラファは、【氷造形・鎖】を発動し出て来たアリゲーターワームを拘束する。
だがアリゲーターワームの図体のデカさと【氷造形・鎖】の本数が二本だけだった事が災いしたのか、アリゲーターワームが激しく暴れると簡単に高速は解かれてしまった。
「駄目です、僕一人じゃ拘束しきれません!」
「それなら私のスキルで牽制するわ」
「待つでごじゃる、今セレン殿のスキルで牽制すれば再び地中に逃げられるでごじゃるよ!」
「アリゲーターワームがこっちに来るよ、皆避けてぇ!」
ヒバリがセレンを止めている間にアリゲーターワームの顔が自分達に向かって来たため、ケイ達は左右に分かれてアリゲーターワームを躱す。
ケイ達に躱されたアリゲーターワームは進行方向にあった木に噛みつき、その状態で体を起こし木を引っこ抜いてそのまま噛み砕いてしまった。
「うわぁ、木が粉々だ。
やる事がもう蚯蚓の範疇超えてるんだけど……」
「アリゲーターワームの咀嚼力は一般の鰐型魔物を超えているでごじゃる。
噛みつかれれば最後、胴体が真っ二つにされるから油断するでないぞ」
「うん、もう蚯蚓じゃないな!」
ヒバリからアリゲーターワームの咀嚼力は危険だから噛みつかれるなと警告されたケイは、アリゲーターワームは完全に蚯蚓じゃないと割り切った。
その間にも翡翠の渡り鳥や他の傍観者パーティが攻撃を仕掛けるが、どれも決定打にかけていた。
「駄目ね、炎属性系統の攻撃もぬめりのせいで軽減されてるみたい」
「僕の属性だと相性悪いよ、やっぱりセレンに牽制してもらったほうが良いんじゃないかな?」
「でも先ほどヒバリ君が入った通り、また地中に戻られたら地面を耕されて行動範囲を制限されてこちらが不利になります」
「物理攻撃もあまり期待できそうにないでごじゃるし、ここはキールかラピス殿を呼びに戻るべきか……」
「あらよっと!」
ここにいる冒険者ではアリゲーターワームとの相性が悪すぎるため、弱点属性となる樹属性を持つキールかラピスのどちらかを呼びに戻る必要があるのではないかとヒバリが考えていると、ここに来てケイが使用人から受け取った大袋の中身をアリゲーターワーム目掛けてぶちまけるという暴挙に出た。
「は!?」
「「「えぇっ!?」」」
「何勝手な事をしているでごじゃるかケイ!?」
「多分だけどアリゲーターワームが嫌がるであろう物をちょいとぶちまけてみた」
「ドヤ顔で自慢すると事ではないでごじゃるよ!」
アリゲーターワームが嫌がるであろう物と言われても、それが何なのか皆目見当がつかないため、ヒバリを含む翡翠の渡り鳥は驚きを隠せないでいた。
が、ケイがぶちまけた物の効果が現れ始めたのか、変化が起き始めた。
「見ろ、アリゲーターワームの様子が可笑しいぞ!」
「なんだ、なんか怯んでないか?」
「へんね、さっきまでこんな事なかったのに……」
ケイが大袋の中身をぶちまけてからアリゲーターワームが怯む姿を見せたため、冒険者達は何が起きたのかと少々困惑していた。
冒険者達が言った通り、アリゲーターワームは地中に逃げる様子を全く見せないでいた。
「アリゲーターワームが地中に逃げないだと?
薬草の坊主、お前本当に何をぶちまけたんだ?」
「椿の油粕だよ。
椿の油粕には蚯蚓が嫌がる成分があって、それを利用して俺の故郷では堆肥を作ったり畑の調子整える際、蚯蚓がいそうな場所に椿の油粕を撒いて蚯蚓を捕まえて調整するんだ。
やってる事が蚯蚓じゃないけど体の方は蚯蚓っぽいからな魔物といえど蚯蚓相手ならコイツが効くんじゃないかと思って貰って来たんだよ」
アリゲーターワームが蚯蚓の魔物と聞いたケイは、恵みの村での経験を説明した。
椿油粕をぶちまけられたアリゲーターワームは激しい拒絶反応をあらわにし、思うように動けなくなっていた。
「すごーい、めっちゃ嫌がってるねぇ」
「見て下さい、体の表面に油粕がついた事でぬめりが取れていってますよ!」
「アレなら物理攻撃が通るかもしれん。
セレンはスキルで牽制、ラファはもう一度拘束、それ以外は全員物理攻撃だ!
アンタらも攻撃を頼む!」
「シファ、悪いけど二袋目の油粕を地面に撒くからスキルで地面に混ぜ込んでくれ!
ヒバリは焙烙火矢を投げ付けて!
爆破の熱でダメージ入るかも!」
アリゲーターワームの状態を見たガントゥはこの好機を逃さず、周囲にいる冒険者に協力を呼びかけて攻撃に入る。
ケイもアリゲーターワームが地中に逃げないよう二袋目の椿油粕を地面に巻き始めた。
ケイとガントゥの指示を受けた冒険者達は、指示に従いアリゲーターワームに攻撃を開始し始めた。
「もう一度行きます! 【氷造形・鎖】!」
「【光操作・閃光!】」
「【土造形・巨大な手】!っで混ぜ混ぜ〜♪」
「全員頭部から離れるでごじゃる! ゆくぞ!」
「おせおせおせおせーっ!」
「攻撃が通じるならこっちのものだ!」
ケイのファインプレーにより形勢逆転した事で、一気に攻撃へ転じる冒険者達。
思わぬ形で反撃を受けたアリゲーターワームは胴体を大きく振り回しながら攻撃するが、椿油粕のせいで思うように動けなくなっていた。
自分の独断場ではなくなってしまった事で本領を発揮できなくなったアリゲーターワームは、たまらず踵を翻して野営地とは逆方向へろ逃げていった。
「アリゲーターワームが逃げたぞ! 俺達の勝利だ!」
「よっしゃぁ!」
「一時はどうなる事かと思ったけど、これで一件落着ね」
アリゲーターワームを追い払う事に成功した冒険者達は各々喜んでいた。
そして今回の戦いに貢献したケイは、アリゲーターワームが戻ってこないよう最後の袋を開けて椿油粕を満面に撒いていた。
「これぐらい撒いてたら問題ないだろう……んん?」
椿油粕を巻き終えた直後、ケイは眼の前に岩場が気になった。
空になった麻袋をその場に置くと岩場に近付き、身を屈めて下の隙間に潜り込むとしばらく動かなかった。
「あん? 何やってんだ薬草の坊主」
「ごめーんちょっと足引っ張って引っ張り出してくれーっ!」
「はぁ? 何やってんだ全く……」
ケイが何をしているのか全く理解できないガントゥは、言われた通りに足首を掴んでケイを引っ張り出した。
そして引っ張り出されたケイの手には、白くて丸い、ぷるんとした物があった。
「って何持ってんだオメェ!?」
「ミィ〜」
「スライム! そこの隙間に隠れてるのを見つけた。
一匹だけ逃げ遅れてとっさに隠れたっぽいな」
「ちょっと待つでごじゃる、それはヒールスライムでごじゃるよ!」
ケイが見つけたスライムを目の当たりにしたヒバリは、そのスライムを見て酷く驚いていた。
それを聞いた冒険者達も釣られてケイの周りに集まりだす。
「ヒールスライム? 普通のスライムじゃないのか?」
「普通のスライムな訳なかろう!
ヒールスライムは上位種ではあるが、治癒能力を持つ希少なスライムでごじゃるぞ!」
「ヒールスライム自体が弱すぎて野生ではほぼいないと言っても良いから、希少価値はかなり高いわ。
野生の個体は初めて見るわね」
「誰だってそうだ。俺もすぐには気づかなかったぞ」
「お前、めっちゃレアなんだな〜。
あ、そうだ!」
周囲からヒールスライムの特徴を聞いたケイは何かを思いつくと、ヒールスライムを抱えたまま野営地の方まで駆け出した。
そんなケイの後をヒバリ達も慌てて追いかける。
ヒールスライムを抱えたケイが行き着いた先は、数刻前まで面倒を見ていた馬達の所だった。
何故馬達の所なんだとヒバリ達が疑問をいだいていると、ケイは不全骨折を起こした馬の後ろ右足にヒールスライムを引っ付けると、馬の正面に立って自分の額を馬の額に当てる。
「少しの間だけ、我慢してくれ。∮リラクゼ・リラクゼ∮」
そう言うとケイは馬に対して∮リラクゼ・リラクゼ∮という法術を発動させた。
それと同時に馬の後ろ右足に引っ付いたヒールスライムが自身の能力を発動させ、馬の治療をし始めた。
最初こそ治り始めた痛みで荒ぶっていた馬だったが、ケイの∮リラクゼ・リラクゼ∮が効果を発揮しているらしく次第に落ち着いて暴れなくなっていく。
「馬が暴れなくなったな。
忍びの坊主、薬草の坊主が何をしているかわかるか?」
「おそらくでごじゃるが、ケイは骨折部分の治療をヒールスライムに任せて自分は痛みの緩和に徹しているでごじゃる。
きっと先程の話を聞いて、今の方法を思いついたでごじゃるよ」
「あの短時間でよくここまで思いついたわね」
「馬の治療はそう簡単では有りませんから……」
「まぁでも、これなら残念な結果にはならないんじゃない?」
ヒールスライムの特徴を聞いただけで今の治療法を思いついたケイの発想力と行動力に驚くヒバリたちだったが、それはそれでケイらしいと思った。
現在進行系で馬の治療に当たるケイは、ヒールスライムを適度に休ませながら治療を続け、見事馬の不全骨折を直してみせたのだった。
ご覧いただきありがとうございます。
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