第95話 不安定な再出発【キールside】
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盗賊達を引き渡し、二刻の間に準備を整えルテラ砦からオリソンティエラに向けて出発したバーナードキャラバン。
一見なんの問題もなく出発したように見えるが、そう見えるだけで実際はかなり深刻な状態だった。
(ケイのお陰で平行線の瞳をだいぶ取り除けたが、問題は平行線の瞳とは別の仙具をどうやって見つけるかだ。
状態異常を悪化させる仙具の存在をミザールに知らせた途端、頭を抱えさせちまったからな)
先刻プロフィールが紛失していたバーナードキャラバン所属の商人達の疑いが正式に晴れた事で、疑われたままの冒険者達と一悶着があった。
その際にニルヴァに喧嘩を吹っ掛けたチャリティア族の女と同じパーティに所属している冒険者の男の状態異常が悪化している事がわかり、結果平行線の瞳以外にも状態異常を悪化させる仙具が仕掛けられている可能性が浮上した。
今の所それらしい物は発見されておらず、軽くなるかと思われた全体の空気も重いままだ。
キールがミザールにこの事を報告した際、ミザール本人は頭を抱えていた。
(平行線の瞳と同じように小箱に入ってて荷馬車に仕掛けられている可能性が高いとは思ったが、ケイにも話したら荷馬車じゃなくて荷物の方、しかも別の入れ物に入れて仕掛けられてると思った方が良いと忠告されちまった。
商品ともなればオイラ達じゃそう安々と手出しができねぇ……)
「どうしたチミッコ、元気ねぇじゃねぇか」
「元気も失くすわ、現在進行系で状況が悪化してると思うと気分が萎えるんだよ」
ミザールの専属護衛であるカプリースに話しかけられたキールは、今も自分が気付かぬ間に状況が悪化しているのではないかと気分を悪くしている事を愚痴った。
盗賊脱走事件の際、精神攻撃を受けていると判明した直後にミザールが自分が所有していた状態異常耐性が付与された装飾品を自分の専属護衛達に配り、オリソンティエラに着くまでは身につけているよう義務付けさせた。
そのため、カプリースを含む専属護衛達は問題ない事はわかっているため、それだけがキールにとって救いだった。
「次の休憩地点まで、何刻だっけか?」
「次は四刻後に着く予定になってるリノア砦だ。
そこで二刻程滞在してまた五刻かけてラディルタ砦に到着、三刻間滞在して一週間後にオリソンティエラの予定にはなってるな」
「合計すると、国境に着くまでに最低二一刻は掛かるのか。
完全に小暮月に入るな」
「儂としてはそっちの方がありがてぇ。
今の状況じゃあ小暮月内に着けるかも怪しいくらいだ」
カプリースと同じ専属護衛のオリゴーリョが、現在の状況について不満をいだいていた。
ギスギスとしたこの状況で初刻同様の連携を取るのは不可能に近い、主人であるミザールと所属する行商人達、そして商品を守らなければならない身としては困るのだ。
「短期間でここまで空気が悪くなるなんて、誰が想像できる?」
「誰もできねぇな、例の物を手に入れるためにここまで徹底的に仕込んでくるのも想定外。
唯一の救いはケイとヒバリが翡翠の渡り鳥と協力して平行線の瞳を減らしてくれた事だけだな」
キールが今の現状について嘆いていると、キャラバン全体を飛び回っていたクレアと契約している風の精霊フィオルンが戻って来た。
《クレアただいま〜》
「おかえりフィオルン、どうだった?」
《ダメだった。
何処に異常状態を悪化させる仙具が入ってるかわかんない。
いつもなら気が付くんだけどなぁ》
「そっか、ありがとう。
やっぱりコッチの方もフィオルンじゃ見つけられないみたい」
フィオルンに状態異常を悪化させる仙具、もしくはその仙具が入っていると思われる箱を探させていたクレアだったが、平行線の瞳の時と同様に見つけられなかったようだ。
風の精霊ですら見つけられないような道具を見つけるのは、ケイ以外では至難の業だ。
面倒な事をしてくれたとキールが思っていた時、前方にいる冒険者が大声を上げた。
「前方上空からヘルシャフトが来るぞーっ!」
「噂をすればなんとやらか、丁度サンドバックがほしいと思ってたんだよな」
「チミっ子、ちっこいなりして結構物騒な事言うんだな」
「うるせぇ! こちとら頭悩まされて参ってるんだ!
思っきしストレス発散できるチャンスをそう安々と見過ごせるかっての!
走行してる内に、来るぞ!」
そう言うとキールは封印箱が積まれている荷馬車の幌まで素早く登り、骨組みを足場にして勢いよく飛び上がる。
そして荷馬車目掛けて飛んで来たヘルシャフトの顔面を、短槍で思いっきり叩きつけた。
それを合図に、ヘルシャフトとの戦闘が始まった。
「翼を集中攻撃して地上に叩き落とせ!
連中は地上で戦うのはそう得意じゃないし、弱体化もさせられる!」
「良い事聞いたよ、全員聞いたな⁉
遠距離攻撃ができる者はヘルシャフトの翼に集中攻撃!
近距離、中距離攻撃ができる者は落ちてきたヘルシャフト、もしくは魔物の遭遇に備えて待機だ!」
キールからヘルシャフトを弱体化させる方法を聞いた冒険者達のまとめ役であるアンガスは、すぐさま全体に情報を伝達し、的確な指示を出した。
アンガスの指示を聞いた冒険者達は弓士や魔法使い達を中心にヘルシャフトの翼目掛けて攻撃し、剣士や槍士といった近距離や中距離攻撃ができる冒険者達は、万が一ヘルシャフトが落ちてきた場合や魔物が襲ってきたときに備えていた。
「下等種族風情が生意気な!」
「荷馬車だ! 荷馬車を狙え!
荷馬車に憎き“星の民が隠した種”が積まれている筈だ!」
(星の民が隠した種、星の民は星族、隠した種は厄災の種の事。
最初にぶっ叩いた奴の行動もそうだったが、連中の狙いはやはり封印箱か!)
最初にキールが叩きつけたヘルシャフトの動きと、空中にいるヘルシャフト達の言動から狙いが最初にミザールから聞いた通り、封印箱であることが確定した。
そうと分かればキールは迷う事なく法術を発動させる。
「∮リーフ・リーフ∮!」
緑色に輝く短槍の穂先から、木の葉の弾幕が飛び出しヘルシャフトを襲う。
他の冒険者の攻撃では傷つかなかったヘルシャフトの体に、次々と切り傷が出来上がっていく。
「ギャアッ! なんだコレは⁉」
「あそこを見ろ、スピリットシャーマンがいるぞ!」
「我らが宿敵を逃すなぁ!」
「そら来た、∮シード・シード∮からの、∮アイビー・アイビー∮!」
∮リーフ・リーフ∮で攻撃した事により、自分の存在に気付いたヘルシャフト達が一斉に向かってくる様子を確認したキールは、素早く∮シード・シード∮と∮アイビー・アイビー∮を発動させる。
周囲を∮シード・シード∮で出現した種の弾幕に覆われたヘルシャフト達は、翼を蔦で絡め取られ次々に地上へ落ちていく。
地上で待ち受けているのは、歴戦の猛者達ばかりだ。
「ヘルシャフトが落ちてきたぞ!」
「やれやれやれやれっ!」
「このどうする事もできない怒りを発散してやる!」
「他の冒険者もストレス溜まってるみたいだなー」
ヘルシャフトが落ちてきた瞬間に一気に間合いを詰めて攻撃する冒険者達。
その情け容赦ない光景を遠目で見ていたカプリースは、少々引いていた。
そんなカプリースも自前の諸刃剣で氷を操るヘルシャフトの弾幕を弾き落としながら、時折盾で弾幕を跳ね返して攻撃していた。
「このまま近付いてくるヘルシャフトを落としていくから、落ちてきた瞬間速攻でふっ飛ばしてくれ!」
「任された! そぅら来たぁ!」
キールが法術で次々にヘルシャフトを地上に落としていき、その直後にオリゴーリョが大型戦鎚を大きく振り回してヘルシャフトを遠くの方へとふっ飛ばしていく。
ふっ飛ばされたヘルシャフトは皆悲鳴を上げながら離れていった。
「フィオルン、風でヘルシャフトを怯ませてくれる?」
《任せて! それっ!》
落ちてきてなお、暴れるヘルシャフトに対してはクレアがフィオルンに指示を出して怯ませ、その隙に刺突剣で翼を集中攻撃する。
上手い具合に蔦の隙間を狙って翼に剣先を当てるが、やはり傷一つつかない。
「やっぱりダメ、攻撃自体は当たるけど傷一つつけられない。
こうなったら、フィオルン、今度は刃先に〘エレメンタル〙を纏わせて!」
《OK! こんな感じ?》
「ありがとう! これで、もう一度!」
クレアは刺突剣にフィオルンの風を纏わせた状態で、もう一度ヘルシャフトの翼目掛けて攻撃するが、羽が多少切れる程度になっただけで大したダメージにはならないようだ。
「これでもダメなの⁉」
「クレア、その状態で一箇所を中心に攻撃を続けるんだ!」
「一点集中って事ね、今度こそお願い!」
全くダメージを受けないヘルシャフトに対してクレアが焦っていると、荷馬車の上で戦うキールから助言があった。
その助言のもと、クレアは一つの隙間に連続で突くという形で集中攻撃を繰り出す。
十回突いた辺りで手応えを感じ、剣先を確認すると赤い液体が付着していた。
すぐに攻撃していたヘルシャフトの翼を確認すれば、そこには血で赤く染まりだしたヘルシャフトの翼があった。
「やったわ、やっと傷をつけられた!」
《やったねクレア!》
「ギャアーッ! つっ翼、俺の翼に傷がぁっ!」
クレアの連続攻撃で翼を傷つけられたヘルシャフトは、機が動転して攻撃の手を止めた。
その隙にキールが短槍の穂先をヘルシャフトに向け、∮チェック・ダ・ロック∮を発動する。
「∮チェック・ダ・ロック∮!」
「あ、あぁあああああっ!」
「へ? ヘルシャフトが、宝石になった⁉」
「ワリィ、その宝石回収しといてくれ!」
目の前でヘルシャフトが宝石になった事に対し驚くクレアだったが、キールからの指示で慌てて宝石を回収する。
「おぉっ! 凄い技持ってるなチミっ子!」
「ねぇこれ私が持ったままで大丈夫なの⁉
いきなり出てきたりしない⁉」
「問題ない! オイラや他の配置場所にいる仲間が法術を使わない限り出てこねぇ!
けどヘルシャフトに奪われるな!
アイツら側にも封印を解く事ができる連中がいるんだ!」
キールは封印したヘルシャフトの宝石を奪われるなと警告する。
理由はフォルシュトレッカーに最低二人、自分の同士がいるからだ。
万が一宝石を奪われれば、その二人に法術を使わせて封印を解き、ヘルシャフトが解き放たれる事を危惧しての事だろう。
そのため宝石も封印箱程ではないが、渡したくない代物なのだ。
驚いているクレアの代わりに、フィオルンが素早く宝石を回収しキールの下へと運んでくれた。
《はいコレ! 渡しておくね!》
「お、おう……クレアの所に持ってってくれても良かったんだぞ?」
《だってコレ、物騒だもん。じゃあね》
そこまで言うとフィオルンはクレアの下へ戻っていった。
キールはフィオルンに渡された宝石を懐にしまうと、再び空中にいるヘルシャフト達へ攻撃を開始する。
法術で空中にいるヘルシャフトを地上を落とし、接近してくるヘルシャフトがいようものなら問答無用で短槍で攻撃する。
そして少しでも余裕があれば、∮チェック・ダ・ロック∮でヘルシャフトを封印していく。
(今の所、連携に問題はなさそうだな。
だが状態異常悪化の仙具がどのタイミングで発動するかわからない以上、早めに迎撃してぇ)
「おーいキールーッ!」
状態異常悪化の仙具の発動を恐れ、早期決着を考えるキールの元に、何処にも配置されず自由移動という形で行動しているフィービィーがやって来た。
「フィービィーか、どうした急に?」
「他の所の進捗報告しに来たよ!
今の所ヘルシャフトは中衛に一番集まってるみたいで、前衛で何人か足止めしてて後衛は全然来てないっぽい!
そのせいで後衛は暇を持て余してるよ!
何人か援軍呼んでこようか?」
「いや、万が一を考えて後衛の戦力は残しておきたい!
他の配置場所にいるヨキ達の様子は⁉」
「キールと同じように物理と法術を混ぜて攻撃してるよ!
マリも直接じゃないけど∮テラー・テラー∮で援護射撃してた!」
バーナードキャラバン全体の様子とヨキ達の戦闘の様子をフィービィーから聞いたキールは、マリもアシストという形で参戦している事を聞き、少し安堵した。
(攻撃系以外の法術は使える状態なのは、不幸中の幸いだった。
もしこれで法術全部が使えないともなれば、かなり厳しかった)
「とりあえず此処は一番厳しそうだったから来たけど、どうする⁉」
「そりゃあありがたい!
一気に片を付けたいから手伝ってくれ!」
「OK! 任された!」
そう言うとフィービィーは五月雨を逆手に持ち、キールが∮シード・シード∮で生やした蕾がついた枝を足場に、上空にいるヘルシャフトに攻撃を仕掛ける。
かなり勢いをつけて五月雨を振るっているらしく、スピリットシャーマンの法術以外ではつけられない傷を付け、怯んだ所をかかと落としで地上に叩き落としていた。
「おぉ凄ぇ! 物理でヘルシャフトを圧倒してる奴は始めてみた!」
「あの娘さん、中々やるのぉ!」
「隙ありッアギャアッ!」
フィービィーがヘルシャフト相手に有利な戦いをする姿を見ていたカプリースとオリゴーリョは、その腕っぷしに感心していた。
最も、よそ見をしながらヘルシャフトを物理的にふっ飛ばしているオリゴーリョも中々のものなのだが……。
「ヘルシャフトの勢いが減って来た!
タイミングを見てこの場を離脱するぞ!」
襲撃当初よりもヘルシャフトの勢いが減り始めた事を確認したアンガスは、全員に聞こえるように新たな指示を出した。
その指示を聞いたフィービィーは、呆気に取られた。
「え? 皆やっつけないの?」
「馬鹿! オイラ達の目的はあくまでキャラバンの護衛!
オリソンティエラまで無事に辿り着く事ができりゃあコッチの勝ちになるから、襲ってきた奴全部を倒す必要はねぇんだよ!」
「あぁ成る程!」
キールは戦いながら、アンガスが出した指示の意図をフィービィーに説明した。
そしてアンガスの指示を聞いたヘルシャフト達は、焦りを見せ始めた。
「おい、下等劣種共が逃げるつもりのようだぞ!」
「絶対に逃がすな!
“我らが王”が例の種を求めておられるのだ!」
(我らが王だと⁉ “あの野郎”、やはり厄災の種を狙ってやがったか!)
ヘルシャフト達の言動から、バーナードキャラバン襲撃の首謀者が厄災の種の存在を知ったうえで狙ってきた事を確信したキール。
我らが王という言葉で、首謀者の正体にも納得がいった様子だ。
「(厄災の種を連中に渡す訳にはいかねぇ!)
クレア! フィオルンに突風でヘルシャフトを吹っ飛ばすよう指示してくれ!」
「フィオルン、今キールが言った事できる⁉」
《ちょっと待ってやってみる! それっ!》
フィオルンは自信の〘エレメンタル〙で突風を起こし、ヘルシャフトをふっとばそうと試みる。
だが思いの外粘り強く、その場に留める事はできても吹っ飛ばすまでには至らなかった。
《ゴメン! 吹っ飛ばすのは無理〜っ!》
「キール、フィオルンの風でも吹っ飛ばすのは無理よ!」
「クソッ! 中級精霊の〘エレメンタル〙でも駄目か……」
「キール、ヘルシャフトを吹っ飛ばすんだったらヨキを連れてこようか?
ヨキの∮ゲイル・ゲイル∮なら吹っ飛ばせるかもよ!」
「いや、それだと後衛側からスピリットシャーマンが一人もいない状態になっちまう。
はっきりいって意味がない!」
フィオルンの〘エレメンタル〙でヘルシャフト達を吹っ飛ばす事はできないとわかり、フィービィーから後衛にいるヨキを連れてくるかと提案されるも、キールは断った。
後衛にいるヨキを自分達の元に連れて来る事で、後衛が一気に不利な状況になる事を恐れたのだ。
どうしたものかと考えていると、カプリースがある提案を出した。
「チミっ子、連れてこれねぇんだったらこの前みたいな攻撃をやってもらえばいいじゃねぇか!」
「この前? 何時頃の事だ⁉」
「ギョルシル村の練習試合だよ!
ホラッ! ラッド族と一騎打ちした時に短弓とか投げナイフで飛んでもない攻撃してただろう⁉」
「そいつぁ武器に法術を付与した時の事であってるか⁉」
ヘルシャフトを大型戦鎚で吹っ飛ばしながらオリゴーリョが訂正を加える形で、カプリースが法術を弓矢に付与した状態で援護射撃をさせるという内容を把握したキール。
キール自信もその提案を聞いてハッとした。
「そうかその手があったか!
オイラとした事が、うっかりしてた。
フィービィー、今カプリースとオリゴーリョがが言った内容をヨキに伝えてきてくれ!」
「わかった! すたこらさっさっ!」
キールに伝言を頼まれたフィービィーは、後衛にいるヨキに向かって勢いよく走り出す。
その間にキールは上空にいるヘルシャフトを可能な限り一箇所に先導し、吹っ飛ばすの準備を始める。
「吹っ飛ばせるようにヘルシャフトを集めねぇと、∮リーフ・リーフ∮!」
「アンガスさん、遠距離攻撃ができる冒険者にヘルシャフトを一箇所に集める形で誘導するように指示を!」
「わかった、遠距離攻撃ができる者はヘルシャフトを一箇所に集めろ!
キール少年の弾幕を基準にするんだ!
近接攻撃ができる者は、遠距離攻撃ができる者達を援護しろ!」
カプリースが機転を利かし、アンガスに冒険者達へ指示を出すように頼んだ事でことがスムーズに動き始めた。
だが、ここでキールが恐れていた自体が起きた。
「そんなまどろっこしい事やってられるか!」
「集める余裕があるんだったら、そのまま倒してしまえばいいじゃない!」
(まずい、状態異常悪化の仙具が発動しやがった!)
何処かに隠された状態異常悪化の仙具が発動したらしく、その影響を受けた一部の冒険者がヘルシャフトを仕留めようと先走り始めたのだ。
だがそうなる前に、クレアがフィオルンに指示を出した。
「フィオルン! ヘルシャフトに向かう冒険者達を捕まえて!」
《邪魔はさせないよ〜っ!》
「キャアッ! 何コレ⁉」
「かっ体が宙に浮いて、身動きが取れない!」
クレアがとっさに指示を出したおかげで、先走った冒険者達を止める事ができた。
そして空中にいるヘルシャフト達を一箇所に集める事ができた直後、一陣の凄まじい風の渦が集まったヘルシャフト達を襲った。
「うわっ! こっこの風は⁉」
「とっ飛ばされるーっ⁉」
「ギャアーッ!」
(フィービィーが無事、ヨキに伝言を伝えてくれたか……)
突如発生した風の渦に襲われたヘルシャフト達は、風の渦に絡め取られそのまま遠方へと飛ばされた。
ヘルシャフトを巻き込む形で吹っ飛ばした風の渦は、後方の方から発生した。
そのためキールはヨキへの伝言が無事に届けられていた事に安堵した。
「なんだ今の風⁈ いや風? 風なのか⁉」
「凄いな、一陣の風というより、小規模な竜巻が槍を投げる感覚で吹いたぞ!」
「でも、おかげでヘルシャフトが一人も残らずいなくなったわ!」
「今の内だ! ヘルシャフト達が戻ってくる前にこの場から離れるぞ!」
ヨキが発生させたと思われる風の渦を目の当たりにした冒険者達は、戸惑いながらもヘルシャフト達がいなくなった事に喜んでいた。
これを好機と判断したアンガスは、すぐさま全体に指示を出し移動を開始させた。
アンガスの指示を受けた冒険者達は、バーナードキャラバン所属の商人達を先導しながら早急に移動を開始した。
キールも封印箱が積まれた荷馬車に乗り、周囲への警戒を怠らなかった。
(今回はなんとか切り抜けられたが、やはり通り仙具が発動しやがったか。
この先進むなら、せめて状態異常悪化の仙具だけでもなんとかしねぇと……)
キールは先程の戦闘中に起きた一部の冒険者達の暴走を目の当たりにし、改めて状態異常悪化の仙具の存在に悩まされた。
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