第94話 知らされた現状
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「「「キャラバンの馬車に状態異常の道具が仕掛けられてたぁ⁉」」」
「「「キャラバンのメンバー内に殺意を持った人物がいたぁ⁉」」」
オリソンティエラに向かい始めて四刻目、ルテラ砦滞在最終日になって突如キールから緊急招集されたヨキ達は、そこで初めて馬車に平行線の瞳が仕掛けられていた事、バーナードキャラバン内に危険人物がいた事を知らせた。
この報告に関しては完全に想定外だったため、思わず全員が大声で叫んでしまう程だった。
それだけヨキ達にとっては衝撃が強すぎる事実であり、平常心を保つ事は不可能だ。
緊急招集を掛けたキールは、詳しい説明を始めた。
「一先ず一つ一つ説明していくぞ。
まず殺意を持った人物、危険人物についてだが十中八九フォルシュトレッカーが侵入していたと見て間違いないとオイラは見てる。
ヘルシャフト連中の性格を考えると自分達の特徴を隠すとは到底思えねぇからな」
「ラピスさん、センニュウが得意なフォルシュトレッカーに心当たりはありますか」
「ヴァーゲ、スコルピオン、シュッツェ、フィシュ、それからあった事はないがヴィダーという一番目だ。
この程度でヴィダーが動かされるとは思えないから、候補から外していいだろう。
妥当なのはヴァーゲかスコルピオンのどちらかだな」
「あの二人なら有り得そうだね。
ヴァーゲはわざと挑発して口車に乗せてペースを乱してくるし、スコルピオンなら的確に不利な事を指摘して揺さぶってくるし」
ヘルシャフトがフォルシュトレッカーに指示を出し、何かしらの工作を仕掛けていても可笑しくはないと考えたため、ヨキ達はすんなりと納得した。
そしてキールは説明を続ける。
「次に連中が潜入していた理由だが、恐らくこいつを仕掛けてキャラバン全体に揺さぶりをかけてたんだ」
そう言いながらキールが取り出したのは、ケイが発見した平行線の瞳が入っていた仙具の箱だった。
「これは?」
「ヘルシャフトが作った道具だ。
この中に対象物を収納すると、スキルによる探査じゃ発見不可能になる仕組みだ」
「アイツら、そんな物を作っていたの⁉」
キールから報告を聞いたディモルフォセカが、信じられないといった表情でキールを見た。
そんな厄介な道具が作られていたことに衝撃を受けたが、それをヘルシャフトが作ったという事の方が衝撃的だったのだろう。
「この箱の中に平行線の瞳っつう状態異常を維持する仙具が入れられていたんだ。
ミザールの専属護衛の中に風の注意精霊と契約してる奴がいたんだが、その精霊でさえ見つけられなかったんだ」
「あれ? それじゃあこの箱はどうやって見つけたんだ?」
「ルテラ砦についてから俺達が血眼になって探し出したんんだよ……」
こめかみを押さえながら、ケイが手を上げてそう告げた。
翡翠の渡り鳥と共に極秘依頼を受け、アクアシーフの固有能力で箱の捜索を行っていたためか、目が疲れているようだった。
「これ、ケイさんが見つけたんですか?」
「あぁ、おっちゃんに呼ばれてミザールさんの所に行ったら、そういう依頼を受ける事になったんだ。
お陰で目がショボショボだよ」
「実際に探し始めると簡単に見つける事ができす、ほぼケイ頼みだったでごじゃる。
周りを刺激せぬよう行動する必要もあったから、苦労したでごじゃるよ」
「なんか忙しそうにしてるなぁとは思ってたけど、そう言う事だったのか。
じゃあ全部取り除けたって事?」
「残念だけど、まだ残ってると思う。
未だに言い争いが収まってないみたいだから……」
ケイは言い争いが起こり続けている事から、馬車に仕掛けられた箱がまだ残っていると断言した。
いくら形でもこの二刻間で全てを見つけ出すという事はやはり無理があったようだ。
残りの箱を探そうにも、明日には出発するため必然的に周囲の目に映る以上、節以前に思われる危険があったため作業を中断せざるをえなかったようだ。
「それでもかなりの数を見つける事ができたんだ、これで少しはマシになってる筈さ。
次に危険人物がいた件についてだが、今はキャラバン内にはいないようだ。
それはマリが証明してる」
「えーっと、なんでここでマリなの?」
危険人物の不在がマリで証明されている事に対し、ヨキはかなり困惑していた。
それは他も同じようで、全く意味がわかっていないようだ。
「どうやら無自覚にアイスアサシンの固有能力を使ってたらしくてな、話を聞いたレイアがそれに気付いてオイラに報告してきたんだ」
「発動するタイミングがいつもヘルシャフトにシュウゲキを受けてる時だったみたいで、マリも自覚がなかったみたいなんだよ……」
「なんたる不運……」
「なんかごめんね?
てっきり調子悪いのかなぁって程度にしか思ってなかったから」
マリはそう言うものの、その証言はかなり重要だったためキールとレイアはジト目でマリの方を見ていた。
どちらにしろ、現在危険人物となる存在がいない事は証明されたため、かなり気は軽くなるだろう。
「でも、そんな大事な話アタシ達にして大丈夫なの?
ケイとヒバリに至っては極秘依頼でしょう、契約違反にならない?」
「それに関しては問題ない、オイラがミザールから言質を取っといた。
一先ずお前らにはキャラバンが再出発した際、残された平行線の瞳の影響で起きるであろう諍いを止めてほしんだ。
無論、護衛しながらの状態にはなるけどな」
「それは、かなり厳しいですね……」
リースは旅の道中、平行線の瞳の影響で起こる諍いを止めるよう指示されたものの、護衛の方も疎かにできないためかなり厳しいと感じた。
するとそこに、クレアの契約精霊であるフィオルンがキールの元に現れた。
《キールいたー。今お取り込み中?》
「フィオルンか、何かあったのか?」
《昨日届いたキャラバン所属の商人のプロフィールの確認が終わったの。
結果は商人全員シロ判定で、容疑者から外れたよ。
でもそうしたら容疑者のままの冒険者達が文句を言い出して、面倒くさい事になってるから落ち着かせるの手伝ってほしいんだって》
「良い知らせだと思ったら速攻悪い知らせをぶち込みやがったな……」
フィオルンから盗賊脱走事件の容疑をかけられていたバーナードキャラバン所属の商人達が容疑者から外され、未だに容疑者のままでいる冒険者達から不満の声が上がっていると聞かされたキールはかなり複雑な表情をしていた。
せっかく不安要素の一部が解決したと思ったら、全く別の形で膨れ上がったしまったため、かなり気が滅入るのだ。
キールはため息を付きながら全員に声を掛けた。
「あー、面倒事が起きた。
キャラバン所属の商人達の容疑が晴れたらしいが、それを不服に感じた冒険者達が不満をぶつけてるらしい。
悪いが手を貸してくれ」
「それはまた大変ね……」
「一先ず現場に行こう、怪我人が出たら元も子もないよ」
またしても平行線の瞳の影響と思われる言い争いが発生したと聞かされたヨキ達は、フィオルンの先導の元現場へと急ぐ。
そして現場につくと、そこでは行商人と冒険者による言い争いが繰り広げられていた。
「うわっ! 言い争いというより口論合戦になってる!」
「上手い事言ってないで早く止めるわよ。
このままじゃ喧嘩に発展しちゃうわ!」
ニヤトが行った通り、行商人と冒険者による言い争いはあちらこちらから怒声が響き、言い争いというよりも口論合戦といっていい程激しいものだった。
バーナードキャラバン専属の護衛達が仲裁に入るも、全く聞き耳を持たない。
雰囲気からして喧嘩に発展するかもしれないと感じたカトレアは、早急に止めるために行商人達と冒険者達に向かって大声を張った。
「アンタ達今すぐその言い争いを止めなさい!
さもないと問答無用でボコボコにするわよ!」
「ごめん僕としてはそのしゃべり方のカトレアの方が怖い」
「でもこっちの方が説得力あるんだよね〜」
レイアとフィービーが言った通り、この状態のカトレアは恐ろしい分説得力がある。
現に効果覿面で、突然大音量の訛り口調が聞こえてきたため、言い争っていた行商人達と冒険者達は一斉にヨキ達の方に振り向いた。
「誰だお前ら!」
「こっちの邪魔するんじゃねぇ!」
「煩いわね! アンタ達のゆい争う声が大音量過ぎてコッチは大迷惑してるのよ!」
「カトレア、顔、顔!」
自分達の問題に水をさされた商人と冒険や側から文句が飛んできたが、カトレアはお構いなしに大声で怒鳴り返す。
が、その時の表情はまるで般若のような形相だったため、ディモルフォセカは顔面蒼白になりながらとっさにラヴァーズの視界を手で覆い隠し、カトレアに指摘した。
カトレアに般若の形相で怒鳴りながら睨まれた商人達と冒険者達は、あまりの恐ろしさに全員黙り込んでしまった。
「すげぇ、さっきまでの喧騒が一気に静まった」
「ディルカさん、一体何を見たんだろう……?」
「少なくとも、ラヴァーズには絶対見せられないって事だけは悟った」
カトレアより後方にいたヨキ達が、カトレアの表情についてヒソヒソと話している中、ケイが前に出て商人達と冒険者達に話しかけ始めた。
「状況はなんとなくだけど把握したよ。
自分が疑われてるのが嫌だってのはわかるし、せっかく疑いが晴れたのに責め立てられるのもわかる。
けど、だからといってお互いに責め合うのは可笑しいんじゃないかな?」
「そうは言っても、コッチはずっと疑われっぱなしなんだ。
それでも我慢しろって言うのか?」
「こちらは根も葉もない事を言われ続けたんだ、今日まで言われた言葉のせいで信頼を失ってしまっては商売ができなくなるかもしれないんだ」
「何もしていないのに、どうしてこんな目に合わなければいけないのよ⁉」
そうやって不満の声を上げるのは、本刻まで疑われ続けようやく身の潔白が証明された商人と、未だに身の潔白が証明されず疑われ続ける冒険者達だ。
無実であるというのに理不尽に疑われ続けた事で、相当なストレスが掛かっていたらしく、言い争いうという形で爆発してしまったようだ。
その事を察してかケイは落ち着いた口調で話を続けた。
「そうだね、今のこの状況はとても理不尽だ。
だからといって、言い争っても良いっていう理由にはならない。
それでも不満だって言うなら、俺の事を一方的に疑ってくれても構わない」
「ケイ! 何を言い出すの⁉」
あまりにも無謀すぎるケイの発言を聞いたヨキ達は驚き、ヨキに至っては思わず声を上げてケイに駆け寄ろうとした。
だがその前に隣りにいたヒバリに止められてしまった。
「落ち着くでごじゃるヨキ殿、ケイも無策で今のような発言を言う事はないでごじゃるよ」
「でも、今の言い方だとケイに疑いの目が向いちゃうよ⁉」
ヒバリに止められたものの、ヨキはこのままでバーナードキャラバン全体から、一方で機に疑われてしまうのではないかと不安に思った。
それは他の仲間達の大半も同じようで、不安そうな氷所でケイの方を見つめる。
そんなヨキ達の心境を知ってか知らずか、ケイは話を続けた。
「この中では一番新参者だし、何よりこの中で一番薬草に詳しいって自信がある。
真っ先に疑うんだったら、俺の事を疑うべきだと思うけど?」
「成る程、自分にヘイトを向けて収拾をつける魂胆か」
「しゅうしゅう? 何を集めるんや?」
「ニヤトが言ってるのはゴミ収集の方だろうけど、ヒエンが言ってるのは多分まとめるの方の収拾だと思うぞ?」
「つまり、どういうこっちゃ?」
「キャラバン全体の疑心暗鬼を自分に向けさせようとしてるって事だ」
ケイの意図にいち早く気付いたヒエンは、ニヤトにもわかるように答えた。
ヒエンが気付いた通り、ケイは疑いの目を自分に向けさせようと考えたのだ。
疑われる対象が複数いる事で疑心暗鬼が生まれているというのなら、いっそ一人に絞ってしまえばオリソンティエラにつくまでの間落ち着くのではないかと考えたのだ。
かなり危険ではあるが、本来なら新参者である自分達が疑われても可笑しくはない立場なのだ。
だが、事が上手く運ぶというのはそう簡単にできる事ではなかった。
「そうは言うが、君達じゃ眠加蜜列を仕掛けるのは無理だろう。
普通にバラバラの配置になってるし」
「それ以前に君達の大半が眠加密列の事を知らなかったじゃないか」
「確か罪喰いも被害にあってたわよね?」
(今回ばかりは恨むぞ、キール)
自分にヘイトを向けようとしたが、キールが他社との連携を経験させるという提案が邪魔をし、自分達がバラバラの配置に付いている事を指摘されてしまい結果をえられなかった。
この結果には流石のケイも覆すのは不可能だと悟り、この時ばかりは自分達をバラバラに配置したキールを恨んだ。
未だに興奮状態でいる商人達と冒険者達に対し、カトレアが再度言葉を紡いだ。
「アンタ達がゆい争うなぁ勝手じゃが、その勝手に周りの人達をまき込むんじゃなゆわよ。
分かったわね?」
「カトレア、だから顔、顔!」
「あの、ディルカさん。今はどういうじょうきょうですか?」
「大丈夫、うん、本当に大丈夫だから。
だから手を退けようとしないでお願い!」
カトレアは先程より幾分か落ち着いてはいるものの、般若の形相のまま。
一体どうなっているのか分からないラヴァーズは、自分の視界を覆うディモルフォセカの手を退かそうとする。
しかし、そんな表情のカトレアをとても見せられないと判断したディモルフォセカは必死に見せないようにしていた。
そんなカトレアを目の当たりにした商人達と冒険者達は身の危険を感じ、一気に興奮状態が解けた。
皮肉にも現在のカトレアの状態のおかげで、商人と冒険者による言い争いは終止符を打たれた。
「カトレアの表情がちょっと気になるけど、なんとか落ち着いたみたいだな……」
「一時的ではあるがとりあえず一件落着、ではあるか」
「よっぽどおっかない顔してたんだな、カトレアの奴」
「兄さん、それはカトレアさんに対して失礼ですよ」
ケイの決死の説得とカトレアの般若の如き説教により、一時的とはいえ一件落着かと思われたが、そう簡単にはいかなかった。
「おい何勝手に決めてんだよ」
「え?」
「どういう事だって、アレは一昨日の……」
「ニルヴァさんと揉め事を起こした冒険者パーティの人だ!」
ようやく落ち着いたかと思いきや、突然冒険者側から異議を唱える声が上がった。
折角収まりそうだったというのに雰囲気が台無しになり、バンが一言文句を言ってやろうと冒険者側の方を見て思わず言葉を詰まらせた。
ヨキもバンに釣られる形で冒険者側の方を見ると、見覚えのある冒険者の姿があった。
文句を言った冒険者の正体はルテラ砦に着いた直後、一方的にニルヴァに喧嘩を売り揉め事を起こした冒険者パーティに属している冒険者だった。
「あの人、確かラピスさんに氷漬けにされたあとに兵士さんに連れて行かれたよね?」
「どのタイミングかはわからないけど、きっと厳重注意だけど釈放されたんだ」
「あれは、マズいな……」
「マズいって、どうしたんですかラピスさん?」
深刻そうな様子で冒険者を見るラピスの反応が気になったリースは、どういう事なのかとラピスに訪ねた。
「あの男、異常状態の影響をかなり受けている」
「えぇ⁉ 本当なんですか⁉」
「元々異常耐性が低かったんだろう、平行線の瞳のせいで精神異常が自然解除されず、逆に悪化したんだ」
「なんで俺達が一方的に疑われてあっちは疑われないんだ?
これは不公平じゃないのか?」
平行線の瞳の効果で維持された精神異常が悪化した事により、常に冷静ではない状態になってしまったようだ。
これには周囲も異様に感じたらしく、すぐ側にいた冒険者が止めに入った。
「おいよせよ、この話はもう終わりだ。
またさっきの顔で睨まれる事になるぞ」
「黙れ三下! コッチは理不尽な目に遭ってんだ、文句言わねぇと気がすまねぇんだよ!」
「そうは言うが、確かお前の所は疑われてなかっただろう⁉」
「うるせぇ! 未だに疑われてるのも、一方的に拘束されたのも、全部ラッド族のせいだ!」
その冒険者はかなり精神異常が進んでいるらしく、実際はそうでないのに自分も疑われていると思い込み、その原因をこの場にはいないニルヴァのせいだと言い始めた。
今にも武器を手に暴れ出しそうな状態であったため、このまま放置すれば本当に怪我人が出ると感じた専属護衛達が冒険者を取り押さえにかかった。
「あの男を取り押さえるぞ」
「このまま放置はヤバい、手が空いている者は手伝ってくれ!
それから拘束する用の縄の用意を!」
「そこの青いバンダナを付けた男、大人しくしなさい!」
冒険者がかなり興奮している様子から、専属護衛は複数人で取り押さえにかかった。
止めに入った専属護衛の中に、フィオルンの契約者であるクレアの姿もあったが、冒険者の興奮具合からかなり苦戦しているようだ。
「何コイツ、数人がかりで抑え込んでるのに全然大人しくならない!」
「クレア変われ、こうなったら一回意識を飛ばす」
「わかった、それじゃあお願い……キャアッ⁉」
《クレア危ない!》
交代を申し出た同僚と入れ替わろうと冒険者から手を話した瞬間、振り上げられた冒険者の腕によってクレアはふっ飛ばされてしまった。
それを見たフィオルンはすかさずクレアの周りに風を起こし、地面に激突するのを防いだ。
クレアが地面に下ろされるのを確認すると、ヨキとフィオルンはすぐに駆け寄った。
《クレア、平気?》
「大丈夫ですか⁉」
「ありがとう、平気よ。
それよりアイツを取り押さえないと……!」
「そのまま押さえて! ∮リーピス・リーピス∮!」
これ異常は危険だと判断したケイは、すぐさま暴れる冒険者に手斧を向け、∮リーピス・リーピス∮を発動した。
ケイの∮リーピス・リーピス∮にかかった冒険者は、糸が切れたように大人しくなり、そのまま大人しく眠ってしまった。
「これでしばらくは大人しくしてる筈だよ。
でも悪影響になったら良くないから、霊力はそんなに込めてないから直ぐに目を覚ますかも」
「いや、それで十分だ。今の内に拘束するぞ!」
ケイの∮リーピス・リーピス∮が効いている内に専属護衛達は冒険者を縄で拘束、その後騒ぎを効いて駆けつけた兵士達に引き渡された。
これで本当の意味で一件落着となった。
「はぁ、やっと一段落付いた」
「本当よ、終始ラヴァーズの視界を遮って正解だったわ。
カトレアのあんな顔、とてもじゃないけど見せられないわ」
「けっきょく、ねえさんはどんな様子だったんですか?」
「あ〜、うん、ラヴァーズは知らなくて良い事だよ、きっと……」
「良かった、“妖精さん”のお陰で怪我はないみたいです」
ようやく収拾が着いた事でヨキ達が安心しきっているのか、その表情から緊張が消えた。
だが、キールとラピスの二人は違った。
「キール、先程の男の様子をどう見る?」
「同じパーティにいるチャリティア族の女の影響もあるんだろうが、十中八九平行線の瞳以外にも仙具が仕掛けられてる可能性があるな」
先程の冒険者の様子から、二人は平行線の瞳以外にも仙具が仕掛けられている可能性を見出していた。
平行線の瞳の効果はあくまで状態異常の維持、状態異常を悪化させる事はない。
そこで考えつくのは状態異常を悪化させる仙具があるという事だ。
どうやら運悪く平行線の瞳のみが入った小箱しか発見されず、今になるまで気付けなかったのだろう。
「これは厄介だ、オイラはミザールにこの事を報告してくる。
ラピスはさっきの奴みたいになってる連中がいないか探しておいてくれ」
「もうすでに探している」
そう言いながらラピスはキールに告げた。
だが目の当たりにした状況から、現状はかなり良くないという事を思い知らされる事となった。
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