第92話 仕込まれていた異常【ケイside】
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ルテラ砦に着いてから早数刻み経過したが、キャラバン全体の雰囲気はギスギスしたままではある。
だが一部の者達に至っては少しだけ余裕ができていた。
その主な理由はケイにあった。
「おい邪魔だ、さっさと除けろよ」
「なんだよ、別に狭くねぇから通れるだろう」
「うるせぇ、邪魔って言ったら邪魔なんだよ。
わかんねぇのか⁉」
「しつけぇぞテメェ! やんのかゴラ⁉」
廊下で休んでいた冒険者が他の冒険者に喧嘩を売られ、言い争いを始めた。
本来なら周囲にいる冒険者が止めに入るのだろうが皆余裕がなく、我間せずという様子だった。
仕方無しにルテラ砦に在中している兵士が数名止めに入るが、二人の冒険者は一向に言い争いを止めず、挙句の果て武器まで取り出し一触触発状態に陥ってしまった。
こうなれば武力行使もやむなしと考えた兵士達は二人の冒険者を取り押さえようと武器を構えるが、兵士達の間を通ってケイが割り込み、二人の冒険者の口に何かを放り込んだ。
「「かっ辛ぇ/すっ酸っぺぇ⁉」」
「一体何が起きた⁉」
突然口の中で片方は辛さを、もう片方は酸っぱさを感じ混乱する冒険者達。
何が起きたのか理解が追いつかず悶絶していると、それを見ていたケイが笑いながら答えを告げた。
「アハハッ! 秘密ラムネはどうだった?
適当に放り込んでみたけどどうやら唐辛子と梅干しにあったたみたいだね」
「おっお前、よくもやってくれたな⁉」
「ホイ、口直しにもう一粒」
「う、うげぇ〜っ!
今度は苦い〜っ!」
唐辛子ラムネを口に放り込まれた冒険者がケイに掴みかかろうとするが、ケイにもう一粒ラムネを放り込まれた直後、口元を抑えて再び悶絶し始めた。
子供相手に翻弄されている二人の冒険者を見ていた周囲はあっけにとられていた。
「おやおや? どうやら苦瓜に当たったみたいだね♪」
「なっなんでも良いから、水っ水をくれぇ!」
「それじゃあリクエストに答えて、∮ウォーター・ウォーター∮」
梅干しラムネを食べた冒険者が水を求めたので、ケイは手斧を構え先端を向けると∮ウォーター・ウォーター∮を発動した。
水は確かにに出たものの、結果としては辛味と苦みで悶絶している冒険者を巻き込む形でびしょ濡れになった。
びしょ濡れになった二人の冒険者達を見た周囲は、そうなるに至るまでのやり取りが面白かったのか、思わず笑いだしていた。
「……はぁ、なんだかアホらしくなってきた」
「俺もだよ、全く。さっきは悪かったな」
「いや、俺の方こそ悪かったよ……」
「これを気にもう喧嘩すんなよ〜」
「それはこちらのセリフでごじゃるぞ、ケイ」
背後から寒気がしたため、恐る恐る振り返るとそこには険しい表情をしたヒバリが経っていた。
これは流石のケイも想定外だったらしく、慌ててヒバリに弁明し始めた。
「ヒッヒバリ?! これにはれっきとした訳が……」
「言い訳無用でごじゃるこの戯けが!
人様に秘密ラムネを食わせるだけでは飽き足らず、法術でびしょ濡れにするとは何事じゃあ⁉」
「ちょっま、刀振り回すなーっ⁉」
「そうさせておるのはお主でごじゃろう!」
先程まで言い争っていた二人の冒険者の仲裁をした際、その方法を目の当たりにし問題があると判断したヒバリは、そのまま抜刀してケイを追い掛け回し始めた。
「俺は全体の空気が和むように良かれと思ってやってるのに!」
「だからといって人様に悪戯を仕掛けるでない!
よもや顔もお知らぬ相手に仕掛けるとはどういう事でごじゃるか⁉
周りが許してもせっしゃが許さぬぞ!」
「なっ何故〜っ!」
先程ヒバリに弁明したように、冒険者同士で諍いが起こる度にケイが駆けつけ、周囲に見えるよう悪戯を仕掛ける事で対象の気を紛らわせていた。
加えて周囲にいる者達に面白可笑しく見えるように仕掛ける事で、一種のコントのようにもなっている。
そのため周りも自然に笑いが起き、ピリピリとした空気を和らぐというケイなりの作戦だ。
とはいってもヒバリからしてみればやりすぎているようで、現在のように刀を振り回しながら追いかけているといういつもの展開になっていた。
「いい加減に止まらぬか!」
「イヤイヤイヤイヤッ!
止まったら止まったで圧倒的斬り捨て御免になるだろう!」
そんなやり取りをしながらヒバリが追いかけ、ケイが逃げるやり取りを続けていると、二人を探しに来たセレンが大声を上げた。
「何やってるの⁉
貴方達、止まりなさい!」
「セッセレン殿⁉ いつからそこに……?」
「ふいー助かった〜」
「助かったじゃないわよ。
ヒバリ君が刀を振り回しながらケイ君を追いかけてるってラファが血相変えて知らせに来たから探しに来たのよ。
それでなんでそんな事になった訳?」
同じ翡翠の渡り鳥であるラファから報告を聞いたセレンは、お目付け役として二人を探し、原因を訪ねに来たようだ。
それに対し二人はそれぞれ主張し始めた。
「いやぁ、ただちょ〜っとだけ軽い悪戯を仕掛けただけなんだよ」
「何が軽い悪戯でごじゃるか。
人様に秘密ラムネを食わせ水浸しにしたでごじゃろう」
「えーっと、もう少し詳しく説明してくれる?」
「ケイがあちこちで冒険者や商人に悪戯を仕掛け、迷惑をかけているでごじゃる。
先程二人の冒険者に秘密ラムネを食べさせ、水浸しにした所をようやく見つけ、追いかけていたでごじゃるよ」
「呆れた、それで刀を振り回す程のチェイスをやってたの?」
ケイとヒバリから経緯を聞かされたセレンは、悪戯で刀を振り回す程のチェイスが行われるとは思っても見なかったらしく呆れていた。
何よりここは防衛ラインを担う砦という場所、何かあってからでは遅いのだ。
「兎に角、ケイ君は誰彼構わず悪戯しない、ヒバリ君は追いかけるにしても刀を振り回さない。
わかったわね?」
「は~い」
「面目ないでごじゃる……」
ケイとヒバリに対し、何かあってからではいけないため厳しく注意をするセレン。
そこにシファを連れたラファが慌てた様子で駆けつけた。
「セレン、ケイ君は無事ですか?!
人手がいるんじゃないかと思ってシファも連れてきたんですけど……」
「えぇ無事よ。それで今お説教してた所」
「結局何が原因だったの〜?」
「ケイ君がやたらと悪戯して、それをヒバリ君が注意するために追い掛け回してたみたい」
セレンから事の経緯を聞かされたラファとしファは、ケイ自身の悪戯が原因で刀を振り回す程のチェイスが行われたのかと困惑した表情をしていた。
「えーっと、具体的には?」
「冒険者二人に秘密ラムネを食べさせて悶絶させた末、水浸しにしたそうよ」
「何それ見たかった!」
「シファ……」
ケイの悪戯内容を聞いたシファはその時の様子に興味が湧いたらしく、残念そうにしていた。
一方でラファはシファが興味を示す反応をしたため、ジト目でシファを見ていた。
そこに何やら頭を抱えたガントゥがやって来た。
「お前達、ここにいたのか」
「あれ? どうしたのリーダー?
何かあった感じ?」
「ちょいと薬草の坊主に用事があったんだ」
「俺?」
自分を探しに来たというガントゥに対し、ケイはキョトンとしていた。
それに対し長年同じパーティとして過ごして来たラファ達は、先程のガントゥの様子から何かしら面倒事に巻き込まれたという事を薄々感じていた。
「ケイ君を探しに来たって事は、ケイ君じゃないと解決できない事が起きたのね?」
「確かにそうなんだが、薬草の坊主でも解決できるか怪しいんだよな……」
「何やら難しい内容そうでごじゃるな、具体的な内容をお教えいただけぬでごじゃろうか?
せっしゃも力になれるやもしれぬ」
「ありがとな忍びの坊主。
だがこれっばっかりは薬草の坊主じゃねぇと無理そうなんだ。
ちょいと着いてきてくれ」
そう言うとガントゥはケイ達をとある場所に連れて行った。
着いた場所はバーナードキャラバンの荷馬車が置いてある広場だった。
「ここって荷馬車を止めさせてもらってる広場?
なんだってこんな所に?」
「バーナードさん、薬師ケイを連れてきたぜ」
ガントゥは広場の中央で数名の商人達と話し合っているミザールに声をかけた。
ガントゥの声に気付いたミザール達は、一斉にケイの方を向いた。
「おぉ、連れて着てくれたか」
「救世主の登場か」
「これで早期解決につながればよいが……」
「今は彼を信じましょう」
ケイの姿を見た途端、商人達は期待に満ちた眼差しを向けてきたため、これは予想以上に厄介な問題だと悟ったセレンはすぐガントゥに説明を求めた。
「リーダー、一体何があったの?
ミザールさん達のあの様子、本当に只事じゃなさそうよ」
「確かに、ケイ君を救世主と呼ぶくらいですから、通常ではありえないですね」
「もしかして、予想以上に深刻なの?」
これはもう只事ではないと悟ったラファ達は、どういう事なのかガントゥに説明を求めた。
一時的とはいえパーティ内で最年少メンバーとなっているケイに何かあってはいけないという考えの元、状況を把握して置く必要があるのだ。
「あぁ、俺も数刻前に聞かされたんだが、かなり厄介な内容だ。
こればかりは薬草の坊主に頼る他ねぇ」
「ケイに頼るという事は、どなたか体調を崩されたでごじゃるか?」
「頼みたいのはそういった方面じゃなく探し物の方だな」
「「「捜し物?」」」
「それケイだけじゃ足りなくない?」
頼みたいのは捜し物だというガントゥの話に、全員首を傾げるほど意味がわからなかった。
シファに至ってはケイ一人では負担が掛かると考え、その事を指摘した。
そんなシファに対し、ミザールは事情を説明し始めた。
「それに対しては私から説明させてもらう。
先程私の部下から報告があり、キャラバンの荷馬車に状態異常を維持する仙具が仕掛けられた可能性があるそうだ」
「仙具? 仙具ってなんだ?」
「理力を原動力とする道具のことでごじゃるよ。
しかしそれはまことでごじゃるか?」
「可能性としては高いそうだが、それらしいものが何一つ見つからないらしい」
「っということは、仕掛けられていないという事でしょうか?」
「いや、そういう訳ではなさそうだ。
薬師君、済まないが試しにこの荷馬車に怪しい物、もしくは怪しい場所がないか確認してみてくれ」
ミザールに指定された荷馬車を確認してくれと言われたケイは、とりあえず荷馬車に近づき確認し始めた。
一見何もないように見えるが、ケイは何か違和感を感じていた。
ケイは付与武器を探し出した時と同じように意識を集中させ、荷馬車を確認すると、御者席部分が光って見えた。
ケイはすぐに御者席に向かい、何があるのかを確認する。
そして御者席に着き更に意識を集中させると、座席部分の中央が光っていたため、鞄から薬草採取用のナイフを取り出し躊躇う事なく座席部分を切り裂いた。
「ケイ君何やってるの⁉」
「座席壊しちゃったよ……」
「即決断にもほどがあります……」
「せめて一言声をかけて許可を取るでごじゃるよ」
「あった! 皆ちょっと来て!」
ヒバリ達は突然ナイフで座席部分を切り裂いた事に驚いたものの、ケイが何かを見つけたためすぐに御者席部分に集まる。
「坊主、何を見つけたんだ?」
「ちょっと待って、これをこうして……良し、開いた。
これがさっき言ってた仙具じゃないかな?」
そう言うとケイは五㎝ほどの小箱に入った二㎝程の硝子玉をヒバリ達に見せた。
商人の一人が顔を近付け、硝子玉を確認するとミザールにある事を告げた。
「間違いありません、コレは平行線の瞳と呼ばれる状態異常を維持するための仙具です」
「それならば私も以前見た事があるな。
だが、平行線の瞳ならば見つけることは困難ではない筈だが……?」
「見つからなかった原因だけど、多分この硝子玉が入ってる箱のせいだと思う」
ミザールが平行線の瞳を見つけられなかった理由について困惑していると、ケイは全員が箱の方に注目するようにして証言した。
「どういう事でごじゃるかケイ?」
「この小箱、一見普通に見えるけど細工されてるんだ。
角の所、よく見るとうまい具合に継ぎ目が隠されてるだろう?
で、継ぎ目にナイフの先を差して、外せば、ほらっ!」
「あ、外れた、っと思ったら中に術式が仕込まれてる!」
ケイが小箱を解体した結果、内側の方に術式と思われる文字とよく目を凝らさないと認識できないほど透明度が高い宝石が顕になった。
「この宝石が昨日キールが言ってた消属性の精霊石で、周りの文字は基本的に精霊石の効果を増幅させたり、別の効果を発揮させる役割を担ってるんじゃないかな?」
「っという事はこの箱が報告にあったヘルシャフトが開発したという道具か」
「なんの話? なんでここでヘルシャフト?」
「オリゴーリョ経由で特殊な道具がヘルシャフト側で開発中という事をラズリーナ君が知らせてくれたんだが、この小箱は隠蔽効果に特化したもののようだ」
「この箱をヘルシャフトが?」
平行線の瞳が入れられていた小箱が、ヘルシャフトによって開発された物だと知ったケイ達は、かなり驚いていた。
頻繁に襲われるケイとヒバリから見たヘルシャフトのイメージは、かなり過激なものなため細かい作業をおこなっているとは想像もつかなかったのだろう。
「でも、原因は見つかったんだし、コレで解決するんじゃ……」
「残念でごじゃるが、コレで終わりではないと思うでごじゃる。
奴らがこれっぽっちしか仕掛けていないとは思えないでごじゃるよ」
「確かに、平行線の瞳の効果範囲はそれほど広くはなかった筈だ」
「それじゃあ御者席を全部調べれば……」
「いや、全部が全部同じ場所に仕掛けられてないんじゃないかな?」
平行線の瞳が入れられた小箱が御者席に仕掛けられていると分かったセレンは、全ての馬車の御者席を調べれば仕掛けられた平行線の瞳全てを回収できるのではないかと考えたが、ケイがすぐに否定した。
そしてその肝心なケイはいつの間にか別の荷馬車の方に移動しており、幌の上に登って何かを調べていた。
「いつの間に移動してたの?」
「ワザワザ潜入してまで状態異常を維持する仙具を仕掛けたんだ、そう簡単な事じゃない。
……やっぱりあった、誰かこっちに来てくれ」
幌の上で調べていたケイが何かを見つけたらしく、気になったヒバリとシファが幌の上に登り、系の元に駆け寄る。
「ケイ、今度はどうしたでごじゃる?」
「何か見つけた~?」
「あぁ。ここを見ててくれ」
ヒバリとシファの二人に中央の骨組み部分に見える縫い目を指定し、ケイはナイフで縫い目部分の糸を切り裂いた。
そして露わになった骨組み部分には、小さめの四角い切り込みの跡のような物があり、ケイはナイフを切り込みにナイフの角度を変え動かすと、ナイフの刃と共に四角い蓋状の物が飛び出し、小さなくぼみが露わになった。
「ウッソッ! 外れた⁉」
「この二本の棒を上手い事隙間に差し込んで、しっかり押さえて引き上げれば、やっぱり出てきた」
「それは、先程と同じ小箱⁉」
ヒバリが驚いた理由、それはケイが見つけ出したくぼみから御者席で見つけた小箱と全く同じ物が出てきたのだ。
そしてケイが小箱の鍵を解除し蓋を開けると、中身は案の定、平行線の瞳が入っていた。
「シファ、忍びの坊主、どうした⁉」
「リーダー、幌張る用の骨組みからさっきの小箱が出てきた!」
「はぁ? どういう事だ?」
「先程の荷馬車で見つけた物と同じ、平行線の瞳が入った小箱が骨組みの中から出てきたでごじゃるよ!」
「なんだって⁉」
骨組み部分の中から小箱が出てきたという報告を聞かされたガントゥは、驚きの声を上げた。
それはミザール達商人も同じで、何故自分達が所有する荷馬車の骨組みの中から小箱が出てきたのか分からなかった。
一方で骨組みの中から小箱を見つけたケイは、くぼみと蓋を食い入るように確認し、くぼみを隠していた幌の縫い目部分を触っていた。
「この切れ込みといいコッチのくぼみと、かなり新しい。
多分昨日一昨日辺りに出来た奴だよ」
「まさか、そんな短期間で⁈」
「手際良すぎじゃない?」
小箱を隠したくぼみが二刻という短期間で出来たものだと聞いたヒバリとシファは、小箱を仕掛けた犯人の手際の良さに驚きの表情を隠せなかった。
一先ず三人は小箱を持って幌から降り、下にいたガントゥ達の元に集まった。
「どうして? さっきは御者席の椅子にあったのに」
「そんなの簡単だよ、バラバラに隠して探させないようにするためだ」
「探させないため?」
「どういう事?」
ヒバリ達が困惑する中、ケイは核心を突いたように答えた。
ケイは小箱が別の場所から出て来た理由を、全員にわかりやすいように伝えた。
「犯人は俺達が疑心暗鬼になるようコイツを仕込んだ訳だろう?
全部が全部同じ、しかも御者席なんてわかりやすい場所にしたらすぐに回収された挙げ句処分されるのが落ちだ。
仕込んだ意味がなくなっちゃうよ。
手間は掛かるけど全部別々の場所に隠しておけば、仮に一つが見つかっても同じ場所にあるって早とちりして他の場所を放置させるつもりだったんだ」
「じゃあ、最初に見つけた小箱はミスリード用の囮⁉」
「正確には囮の役割を担った本物だね。
コイツを仕掛けた犯人はかなり質が悪い奴だよ」
ケイは恨めしそうな目で自分の手の中にある小箱を見つめた。
昨晩起こった吊し上げの原因となった物が、こんなに小さな物だとは思ってもいなかったのだ。
平行線の瞳のせいで理不尽な目に会う人々がいる、それだけでケイは憤りを感じていた。
「コレの存在を知った際、昨晩君が素早く付与武器を回収してくれた事を思い出してね。
なるべく秘密裏に回収するために呼んだんだ」
「坊主、見つけられそうか?」
ミザールとガントゥは真剣な様子でケイを見つめた。
ケイは悔しそうな表情で小箱を見つめながら答えた。
「四刻くらいあれば慎重に探して見つけられるとは思うけど、出発が明後日だから全部は無理だと思う。
派手に動いたら状況が悪化するかも」
「確かに、今の状態で閉鎖空間に長期滞在するのは危険ですからね。
それにケイ君が荷馬車を確認している様子を目撃された場合、荷馬車に何か細工をしているんじゃないかと勘違いされて危険に晒される可能性もあるかと思います」
ケイは自分の持つその時必要な物を探し出す、アクアシーフ特有の力をまだ使いこなす事が出来ずにいた。
かなり意識しないと上手く発動できず、発動し続けるとかなり目が疲れるため余裕を持って全て甲斐蝟集できる自信がなかった。
ラファは現在の状況でルテラ砦に長期間居続ければ疑心暗鬼が加速する事と、途中参加したケイが馬車に確認させ続ける事で精神異常に掛かった冒険者達に疑われた結果、危険に晒される事を危惧していた。
「ケイ君、ルテラ砦にいる間だけで良い。
可能な限り小箱を回収してくれ」
「分かった、やってみるよ」
「ケイ、あまり無理をしすぎてはならんぞ。
また急性霊力欠乏症を発症したら元も子もないでごじゃるよ」
あまりにも思い詰めた表情のケイを見たヒバリは、ケイが無理をし過ぎた結果、再び急性霊力欠乏症を発症し倒れてしまうのではないかと心配していた。
「私達も可能中限サポートしましょう、ケイ君みたいにはいかないだろうけど、負担は減る筈だし」
「そうですね。リーダー」
「バーナードさん、コレは我々翡翠の渡り鳥に対する“極秘の指名依頼”と言う事で良いですね?」
ガントゥはミザールに対し、ケイに対する頼みを自分達翡翠の渡り鳥に対する依頼としてとらえた。
依頼という形で受ける事で、ケイのサポートに回るつもりのようだ。
「あぁ、それで構わない。依頼報酬だが……」
「金銭類や物資類などは結構です。
代わりに、現在疑われている冒険者達のアフターケアをお願いします」
「あぁ、約束しよう」
ガントゥは依頼の報酬として金銭類や物資類ではなく、現在盗賊脱走事件によって疑われている冒険者達に対するアフターケアを指定した。
「一先ず一度、ここから離れずぞ。
冒険者である俺達が長時間居続ければ、俺達が疑われる事になるからな」
「分かったわ、ケイ君、ヒバリ君、行くわよ」
「わかったよ」
「承知」
こうしてケイとヒバリを含めた翡翠の渡り鳥は、平行線の瞳が入れられた小箱を見つけ出すという極秘依頼を受ける事となった。
だが、どれだけの数の小箱が仕掛けられているか分からない以上、全ての小箱を回収する事は到底不可能な事だった。
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