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取り戻せたモノ

 どうも、くろくろです。

 かなり間が空きましたが、楽しんでもらえるといいな、と。

 それではどうぞ。

「…………、うぅん……ここ、は……」


 目が覚めると、どうやらベッドの上で寝ているようだった。

 しばらくぼんやりしていると、誰かが近づいてきたので、思わず身構えてしまった。


「目が覚めたのねルナちゃん!……どうしたの、そんな身構えて?」

「……何でもないです」


 入ってきたのは看護師っぽい人だった。

 けど、何かの気配が近づくとすぐ身構えちゃうのが癖になってるな。


「身体の調子はどう?気分が悪いとかはない?あ、お水とかいる?」


 喉、乾いたな……。


「じゃあ、水を下さい」

「はーい、ちょっと待っててね」


 そう言って部屋を出ていく看護師さん。


「…………なんで、まだ生きてるんだろ……」


 自分の両手を見つめながらも、そんな言葉が出てきた。

  

「はーい、お水おまたせ~」

「……ありがとうございます」


 コップと水差しを持ってきた看護師さんにお礼を言い1杯分の水を飲み干す。


「……ふぅ」

「……ルナちゃん、あなたに会いたい人が来てるんだけど、連れてきていいかしら?」

「わたしに?」

「そうよ」

「……分かりました」

「じゃあ、呼んでくるわね。偉い人だからくれぐれも失礼のないように」


 ……偉い人?誰だろう……。

 しばらくすると、3人ほど連れてきた看護師さんが戻ってきた。

 1人は護衛っぽい人、1人はわたしと歳が同じくらいの男の子、最後の1人は40過ぎたぐらいの男性……ん?

 最後の人はどっかで会ったことあるような……?


「覚えているかな?」

「…………???」


 いきなりそんなことを聞かれ、誰だったか思い出せずつい首をかしげる。


「……そういえば名乗っていなかったか?では改めて……クラムリッド王国78代国王アグナス・オーディアス・クラムリッドだ。そして……恩を仇で返す愚か者だ」


 おっと、最後に自虐をしてきたよ。


「僕はクラムリッド王国第3王子ラウテル・オーディアス・クラムリッドです。数ヶ月前になりますが……護衛達と共に危ない所を助けて頂いた者です」


 そういえばそんなこともあったな。


「それで、なぜこんな所に来たんですか?」

「簡単なことだ。謝罪と礼を言いに来たのだ……この6年間、悪魔に操られていたとはいえ」

「謝罪は!……要らないです」


 国王の言葉を強く遮り、謝罪されることを拒む。


「……なぜだ?」

「全て終わった事だからです。それに悪魔に操られていたのだから仕方が無かったとは理解してます……けど」

「…………」

「理解することと納得することは違います。わたしはきっと誰も許すことは出来ません」

「貴様!目の前の御方が誰だと」

「構わん!……続けてくれ」


 護衛の人が怒りだしたが、それを国王が黙らせる。


「…………そこの護衛さん、兵士や冒険者だけでなくただの平民達からあの手この手で殺されかけた経験がありますか?誰も彼もが殺意しか向けてこない時期がありましたか?」

「い、いや……」


 ぶつける先のなかった怒りを、護衛の人を八つ当たりの矛先として言葉をぶつける。


「誰も助けてなどくれないと分かりきった絶望が!自分以外の全ての存在が敵になった絶望が!いつ終わるかも分からない孤独な夜を過ごす絶望が!アンタに分かるのか!!」

「う……」


 溜まりに溜まった心の悲鳴が、爆発した。


「いいや!分かるはずがない!分かってたまるか!!」

「……」 

「だから、謝罪だけは受け入れない。その罪悪感をずっと背負って生きて下さい、それがわたしができる唯一の復讐です」


 心からの本音を全力でぶつけたおかげか、精神的にかなりスッキリした。

 静かに聞いていた国王が口を開く。


「……分かった。ならばせめて礼だけは言わせてくれ。この国を、この世界を、悪魔の侵略から護ってくれた事、一国の王として感謝する。それと……我が息子を救っていただいた事にも父親として礼を言う」


 国王と王子が頭を下げてお礼の言葉を述べてきた。

 ………………さっき感情的になって辛辣な言葉をぶつけたから、どういう感じで返したらいいんだろうか…………。

 いや、素直に思ったことを口に出すしかないんだけど。


「えっと、はい、お礼の言葉は受け取っておきます。ええっと、その……もうお互いにこの件については終わらせませんか?わたしとしてはやっと人並みの日常を取り戻せそうなので、これからは楽しく生きていきたいので……」


 言ってるうちに自分が何を言っているのか分からなくなりながらも必死に言葉を紡ぐ。

 すると、王様は驚いたような困惑したようなよく分からない表情でこちらを見てきた。


「そ、そうか?そなたがそれで良いというのであればこちらとしても助かるが……」

「そうしてくれると嬉しいです」

「分かった……。それはそうと……今宵、城に来れるか?ここでの事は非公式なものでな、正式にそなたに礼を言いたいのだ。その際に報酬を渡し、盛大に宴をするつもりだ」


 あー……、いくつもの国が悪魔に内側から侵食されてたからね。倒せばそりゃそうなるか。ちょっと面倒くさそうだけど行くのは別にいい。体の具合も悪くないし。

 ただ、問題が1つある。それは……


「行くのは行けますけど、服……無いんですよ」

「…………では今までの服はどこから?」

「…………盗賊達から、ちょっと……」


 なんとなく顔を背けながら答える。


「……ならばこちらで見繕わせて持ってこさせよう。それを着て城に来るといい」

「助かります……」

「それではまた夜に会おう」

「僕も、またお会いしたいです。それでは」


 微妙に締まらない形で王様達は帰っていった……。


「はーー、なんか実感が湧かないな……。これで、奪われたものは取り戻せたかな……?」


 とりあえず、使いの人が来るまでもう少し休もう。これまで1人で頑張ってきたんだ。

 ちょっとは自分を甘やかしてもいい筈だと、そんなことを思いながら。 

 どうでしたか?楽しく読んでいただけたでしょうか?

 次もきっと時間がかかるでしょうが、気長に待っていてください。

 短い後書きですが、それではまた。

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