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剣士マキナ 3



【冒険者ギルド・裏】冒険者訓練場



この街の冒険者ギルドの裏手には全天候型の広い訓練場があります。

冒険者ギルドコール支部には初級〜中級の冒険者さん達が多く、駆け出しと呼ばれるEランク〜Dランクの冒険者さん達がおよそ7割、一般とされるCランクの冒険者さん達が3割といった割合で所属していて、主に新人育成の場として登録する方が多いからか研修の様なものが行われるのですが、その際に利用される施設としてこの訓練場がよく用いられています。


私の実力を測るため、ヤマトさん達からこの訓練場に先に行っているように指示を受けた私は、久しぶりに訓練場に足を踏み入れます。

敷地面積に対しておよそ3割ほどの敷地を利用して冒険者になりたての方とその方達を指導している教官替わりの冒険者さんがそれぞれ分かれて訓練していたようですが、私が足を踏み入れるなり視線がこちらに集中しました。


「おい、あれって【剣の申し子】じゃないか…?」

「ホントだ…今更訓練なんて必要無いだろうに…」

「もしかして育成教官で他の奴を待ってるのかも?」

「「「「だとしたら羨ましい」」」


何かお話しているようですが、遠くて内容までは聞き取れませんが何故か皆さん首を縦に振って頷いています。

何でだろう?

よく分かりませんが、私は邪魔にならないように一度こちらを向いていた冒険者さん達にお辞儀をしてそそくさと端っこに移動します。


ぎこちない動きをしている訓練生の冒険者さん達を見ながら私もこうだったんだなぁと感慨に耽って訓練風景を眺めていると、こちらに向かって装備を整えてやってきたヤマトさん達がやって来ました。


「やぁマキナさん。待たせてしまって申し訳ない」


「いえ、そんな事ないですよ。…やっぱりSランク冒険者さんの装備は違いますね…」


「まぁ苦労して手に入れた物だからね」


ヤマトさんは装備を褒められたことが嬉しかったようではにかみながら肯定しました。

ヤマトさんだけでなく他のメンバーさん達も武装しての登場です。

パッと見ただけでもこの人達が歴戦の冒険者といったことが分かるほど洗練された装備を身に付けた姿は、ただでさえ隙が伺えなかった先ほどのラフな恰好に比べて、どう攻めたらいいのか見当もつかないといった様相になっており、私は思わず息を呑みます。


「俺が言うのもおかしいけど、そう警戒しなくても大丈夫だよ。もっとも全く警戒しないのも冒険者としてどうなんだって事もあるけどね」


私が萎縮しているのが分かったのか、ヤマトさんは気軽に声を掛けてくれました。


「すげぇ…」

「何だよあの装備…見たこと無いもんばっかりだけどなんかすごい装備ってのは分かるな…」

「あれはさっきこの街に来たSランクパーティだな…流石としか言えんな…」

「俺達もいずれはあぁなりたいもんだな…」


こちらを遠目にして見ている冒険者さん達が訓練を中止してこちらを見ていました。

それに気付いたヤマトさんが冒険者さん達に手を振って応えます。


「訓練を止めてしまってすまない!ただ、もしかするとこれからちょっと派手にやっちゃうかもしれないからもう少しだけ下がってくれるとありがたい!!」


「「「「!?!?!?」」」」


ヤマトさんの言葉に反応した冒険者さん達が一斉に何メートルか後ずさりました。

その言葉を聞いた私もポカンとしてしまいましたが、これから私の実力を測るんですよね?

え?ヤマトさんってそんなに派手になるような戦い方なんですか?


「さて、そろそろ始めようか?」


「ちょ、ちょっと待って下さい!」


何事も無かったかのように事を始めようとするヤマトさんに私はストップをかけますが、ヤマトさんはただ首を傾げるだけで何か問題でも?と言いたげな様子です。


「ヤマト、そういうところだぞ…」


体格の良いコウシロウさんが呆れたようにヤマトさんに注意しますが、ヤマトさん自身はよく分かって無いようで変わらず首を傾げたままです。


「ウチの馬鹿がすまん…いきなり始めようと言われても何を?って話だよな…」


私はコウシロウさんの言葉にコクコクと無言で頷くとコウシロウさんが改めて説明してくれました。


「さっきも受付で言ってはいたが、君の実力をこちらは全く知らない状態だ。なので君にはこの訓練場でヤマトと模擬戦を行なってもらい俺達に実力を見せてもらいたいんだ。もちろん全力でな」


「そういう事でしたか…」


訓練場でやることと言えばパーティでの連携訓練や立ち回り方の練習などがほとんどの為、私一人では出来ないことだったので何をするのか分からなかったのですが…


「試合しようって言ったじゃない」


ヤマトさんが何食わぬ顔で言ってきましたが、コウシロウさんがヤマトさんを制しました。


「ヤマトはちょっと黙ってろ…確かに試合をするとは言ったが条件も何も話してないだろう」


「そんなの俺と戦って行けると思ったらで良いじゃん?」


「そんな単純で良いわけ無いだろうが…そもそもお前は…」


何だかよく分からないのですがヤマトさん達の言い合いが始まってしまいました。

え〜っと…

私はどうしたら良いのでしょうか…?



今日も良い天気だなぁと思いながら空を眺めていること数十分。

話し合いが終わったのかヤマトさん、ではなく、ホノカさんが私に声を掛けてきました。


「お待たせしちゃってごめんなさい」


「いえいえ…お話はまとまったんですか?」


「えぇ、ようやくね…」


凄く疲れた様子のホノカさんの姿が居た堪れなくて、私は携帯食の甘味菓子を取り出しホノカさんにどうぞと言って渡すと、ホノカさんは苦笑交じりにありがとうと言ってお菓子を齧ると一瞬目を見開いた後とっても良い笑顔に早変わり。

美味しいですよねそれ。


「こほん…このお菓子が売ってる場所は後でお聞きするとして…」


気に入ったんですね?

良かった良かった。


ホノカさんの反応に私も嬉しくなり笑顔を返しますが、次のホノカさんの言葉で顔が引き攣ります。


「協議の結果、これからマキナさんと私とコウシロウ以外のあちらの3人とで実戦をしてもらうことになりました」


「実戦…ですか…」


「私は無茶だと言ったんですけどね…」


つまり1対3の真剣勝負

数はもちろん装備の面でも圧倒的に私が不利な状況…

正直勝つどころか10秒も保たないような気がします…

私の様子を見たホノカさんが補足します。


「ただし圧倒的にマキナさんが不利なのは違いありませんのでヤマトとジンはアーツの使用禁止、レイは初級魔法のみの使用という制限を掛けます。制限時間は30分です」


言い終えるとホノカさんは魔法で砂時計を目の前に出現させました。

改めて3人を見据えると向こうは準備万端といった様子…

装備しているものから察するに、ヤマトさんはアタッカー、ジンさんはスカウトのような軽装、レイさんは魔術師でしょう。

ハンデがあるとは言え中々厳しい状況だと思っていると、ホノカさんが付け加えます。


「マキナさんにはアーツの使用禁止制限はありません。使えるようでしたら魔法も使って大丈夫ですので全力で当たってくださいね」


なるほど…

これはこれで悔しいですね…


ホノカさんが言うアーツというのは簡単に言えば「技」のようなものです。

アーツを使った時と通常の攻撃では威力に大きな差が出ます。

例えるなら、通常攻撃で岩を斬ろうとしても僅かに削れるだけですが、アーツを使用して斬りつければ大きく削れるといった具合でしょうか?

アーツによって威力は異なりますが、つまりは私がアーツを放ってもヤマトさん達には大して脅威では無いということでしょう。


どれほどの実力差があるのかは未知数ですが、それはそれとしてやっぱり悔しいので攻めて一矢報いたいところですね…

私は内心怒りを覚えていましたが、何とか感情を押し殺して冷静に答えました。


「分かりました…じゃあ早速始めましょう」


少し距離を置いて私は3人と相対しました。

準備が整ったとホノカさんへ頷くと、それを受けたホノカさんが宣言します。


「では…戦闘開始!!」


絶対に一泡吹かせてやります!!



後でもう一本上げれそうなら上げます

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