ダンジョン
俺は現在荒野ゴーレムに乗っている。
行く当ても無く、荒野ゴーレムが歩き、その後を他の魔物やゴーレムが追ってくる。
「なぁサキュバス、俺らはどこに行けばいいんだ?」
俺は隣に座るサキュバスへと質問を飛ばす。
「ダンジョンへと入り、配下を増やすべきではないでしょうか」
せかぁ…まじか…
「じゃあそのダンジョンってどこなの?」
「あちらです」
そういい、サキュバスが指を指す。
俺は指された方向へと視線を移す。
そこに見えたのは大きな塔であった。
まぁ大きいと言っても細長いだけなんだが…
「ねぇ…あれがダンジョン?ていうかダンジョンってなんなの?あれ普通に雲に当たりそうなんだけど」
「はい、ダンジョンです
そしてダンジョンとは何かという質問ですが、ダンジョンとは魔物を匿う為、極稀に出現する洞窟です」
「え?洞窟なんだよね!?じゃああれは何!?塔だよ!?」
「あのダンジョンが塔型なのは管理者である魔物の知能が高いからではないでしょうか」
せか…
「おい、ゴーレム、あの塔行くぞ」
その命令と共にゴーレム達は塔へと進路を変える。
----塔内部----
そこは暗いはずなのに、明るく、辺りがよく見えた。
とても広い空間であり、壁は完全に岩である。
壁には白く光る苔が生えている。
「ゔぁああああ」
ガラガラとした声が反響して聞こえる。
人…?
そう思いながら辺りを見渡す。
奥の方に人影が見えた。が、その人影は左腕が無かった。
「サキュバス、あれってゾンビ?それとも焼死体か何か?」
俺は恐怖し、サキュバスに掴まりながら言う。
「前者です」
サキュバスは容赦無く言ってくる。
「荒野ゴーレム!ー」
恐怖の余りに大声が出、それに気付いたゾンビがこちらへと走り出す。
「助けてェェェェェェェエエエエエエエエエエエエ」
俺は先程までの冷静な口調等無かったかの様に、泣きながら助けを求める。
荒野ゴーレムは俺の頼みの様な命令を聞き、俺とサキュバスの前へと立ち塞がる。
ゾンビは荒野ゴーレムへと激突し、怯む。
荒野ゴーレムがゾンビを抱き締め始める。
やがてゾンビは破裂し、辺りには血が飛び散る。
「こ、荒野ゴーレム、死んだ?それ死んだ?もう動かないよね?」
俺はおどおどとした口振りで荒野ゴーレムへと質問を投げ掛け、それに反応し、荒野ゴーレムが頷く。
「あぁ〜…良かった良かったよぉ〜うわああああん」
俺はサキュバスを思い切り抱き締め、泣き噦る。
数十分程泣き噦り、落ち着いた所で目が痛くなる。
そして周りを見渡せば…
なんという事でしょう
先程まですっからかんだった辺りには剣や旗を構えた骨、大きなゾンビ、普通のゾンビ、角を生やした狼、その他諸々がいるではありませんか
俺は再度パニクり、涙を流しながら命令を出す。
「全員俺らを守れ!」
その命令と共に配下の魔物達が俺とサキュバスを取り囲む様に密集する。
「荒野ゴーレムは俺とサキュバスを乗せろ!逃げるぞ!」
その命令を受け、荒野ゴーレムが俺とサキュバスを掴み、背中まで腕を回し、背に乗せる。
そしてサキュバスを除いた全ての配下が出口へと向かい走り出す。
木ゴーレムが大きなゾンビへと斬りかかる。それは進行方向を塞ぐゾンビだ。
木ゴーレムが俺から1メートルか2メートル程離れた所で剣を振るい、大きなゾンビをブロック状にする。
荒野ゴーレムはそれを踏み潰す。
後ろで「ドチャッ!」とか「ガッ!」とかいう音が聞こえる。
暫く走り続け、階段が見えてくる。
と言っても凄い粗末で、どっちかと言うと獣道的なあれなのだが。
荒野ゴーレム達は階段を駆け上がる。
駆け上がるとゴブリンやオーク等が見え、それらがこちらへと武器を構える。
配下の狼と木ゴーレムがゴブリン・オークへと斬りかかる。
木ゴーレムはオークを一瞬で微塵切りの如く切り刻み、狼は角をゴブリンへと突き刺している。
荒野ゴーレムはその戦場を置き去りにし、走り続ける。
光が見える。
その光へと走り続け、洞窟を抜ける。
後ろを見ると、かなりの大きさの塔である。
「助かった…?」
俺は泣きながらゆっくりと、サキュバスへと顔を向ける。
「はい」
サキュバスはまるで感情等無いかの様なトーンで返してくる。
俺は静かに後ろを見る。
そこには数匹の狼と土ゴーレムが2体、所々から血を出したゴブリンが20体程、返り血を浴びているオークが3体。
そしてその後ろに洞窟の方から走ってくる影が数体見える。
影が洞窟を抜け、それが光を浴びる。
返り血まみれで腐臭漂う木ゴーレム、そして角や口元に重点的に血がこびりついている狼が数匹。
配下の魔物
荒野ゴーレム1体
土ゴーレム2体
甲冑を着た木ゴーレム1体
角の生えた狼16頭
オーク3体
ゴブリン25体
サキュバス1人