第13話:錬金術師はサポートする
首都アリシまでの道は、二種類ある。
一つは、商人などが安全に通行できるように整備された一般的な道。
もう一つは、冒険者や勇者など腕に自信のある者が通る、多少危険な道。魔物が出現する代わりに、かなりの短縮ルートになる。
俺たち勇者一行は二つ目の道を歩いていた。山も谷もない平坦な道で、ここから見える位置に他の人間はいない。
暖かい日差しの下呑気にピクニック気分で歩いていた矢先に魔物は現れた。
「ウルフ……五匹か、全員戦闘態勢につけ!」
戦闘を歩いていたエルゼの指示で、ふわふわしていたメンバーの気持ちが引き締まる。
目の前にいる魔物はウルフなのだという。
見た目はRPGやアニメで見たそれとイメージは同じだった。
狼のように凶暴な牙を持ち、無駄のないスリムな身体つきの魔物だ。血走った眼でこちらを睨み、吠えている。
「昼間のウルフはそれほど脅威ではない! ……だが、絶対に気を抜くな!」
そう告げたエルゼが盾を突き出すような姿勢でエルフの群れに突っ込んでいく。
エルゼの盾はウルフの攻撃程度ではビクともしない。一度戦ったことがあるからわかるが、あの盾は衝撃をも吸収する。だから、ウルフにパワー負けしたとしても盾が壊れない限りエルゼの身に傷がつくことはない。
「エルゼ、すぐに片づけますから待っていてください!」
リーゼが剣を抜き、ウルフに斬りかかる。
五匹の場所は分散している。最も近いウルフ一体の処理が完了した。あと四匹。
「俺はサポートに回ります!」
俺が攻撃魔法で倒すことも一考した。でも、パーティに入ったら大事なのはチームワークだ。
チームワークを最大限に高めるにはまず仲間の実力を知らなければならない。
俺が知っているのは戦ったことのあるエルゼだけだ。
エレナは回復職だから省くとしても、リーゼがどのくらい戦えるのかは見ておきたい。
そして、慢心しないということも忘れない。俺は瞬間最大火力としては最高位にあると自覚している。でも、複数体の敵相手に常に全力が出せるかと言うと、絶対にできる自信がない。
魔物との戦闘は常に本番。命と隣り合わせだ。確証の無いことはしないほうがいい。
「リーゼ、今からウルフの視界を奪う。タイミングを合わせて攻撃してくれ!」
「わかりましたシュン、お願いします!」
「よし」
エルゼとの決闘で気づいたことがある。
サンドボールとウィンドボールの合わせ技の有効性だ。
ウルフは、いわば狼のようなものだと予想できる。視力と嗅覚に優れる狼だが、そこを逆手に利用してやればいい。
俺はサンドボールを一気にニ十個生成する。
ウィンドボールを使ってそれを飛ばし、ウルフの目と鼻にぶつける。ウィンドボールは【魔法錬金】を使って持続時間を延ばした。
ウルフが苦しそうに涙を流す。同時に動きが止まった。
俺の予想は大当たりだった。
疑似ホールド状態になったウルフを、リーゼが剣で次々と斬っていく。
ウルフの動きが止まっていることに気づいたエルゼは、剣を抜いてリーゼと一緒にエルフを斬っていく。
二人が倒し終わるまでの間、用意しておいたサンドボールとウィンドボールを次々と飛ばして動きを封じておく。
こうして、一瞬のうちに五匹のウルフを倒すことができた。
負傷者はゼロだ。
全てが終わると、リーゼは静かに剣を納めると、俺のもとに大急ぎで駆け寄ってきた。
「な、なんですかこれは……!?」
「え? ……何かまずいことしちゃったかな?」
「そ、そうじゃなくて……! 五匹のウルフに囲まれてあんなに速くて安全に……しかも簡単に倒せたことなんて一度もありませんでした! シュンの魔法で動きが止まって……嘘みたいです」
「うむ、私も同感だな。怪我の一つや二つは覚悟したものだが、まさかあんなにあっさりと終わるとは……」
前線で戦っていた二人は、無事に終わった安堵よりも驚きの方が大きかったらしい。
「シュンは凄いわ。回復魔法の準備をしていたのだけれど、まったく必要がなかったようね。……攻撃もできてサポートもできる人なんて今まで誰もいなかったから……」
後ろでパーティを見守っていたエレナからも褒められてしまう。
俺としてはなるべく二人が戦いやすいように工夫しただけなのだが、思いのほか役に立っていたらしい。
超火力で敵をなぎ倒さなくても、このパーティには居場所がある。そう思うと、少し嬉しくなってくる。
俺が求めていた錬金術師ってのはまさにこれだ。
基本的な魔法でも、使い方次第で有用なスキルになる。
もちろん、応用魔法をさらに応用することでさらなる高みを目指すこともできるだろう。
「ありがとう、褒めてくれて嬉しいよ。でも、二人がいるおかげで俺はサポートに回ることができた。エレナさんがいるから、安心してこの作戦を試すことができた。みんなのおかげもあってのことなんだよ。これから先も力を合わせて頑張っていこう」
ウルフがドロップした戦利品を回収して、移動を再開する。
まったく、こんな序盤からトラブルに見舞われるとはついてないぜ。




