おやすみなさい。
告白の続き。
おやすみなさい。
次話投稿ってのからやんなきゃいけないんだね。普通に投稿してしまったから
投稿し直してます。
「こんにちは。」
「こんにちわ。」
「ま、どうぞ。」
「失礼します。」
きれいな顔だな、少し浮世離れしているような印象を受ける。
なにか子供のようなあどけなさ、それを保ったような。
どこか不安な予感がした、表情などなかったが、それ故にかもしれない。
家人についていくと、リビングだろうか
「まあ、そこらに座って。」
大きなインテリアの長机に高そうなソファー。
座ってみるとひどくやわらかく、
体の方がみしみしと言いそうだ。
机の向かいにも同じようにソファーがある、
なんだか応接間のような、校長室みたいだ。
その後ろにはテレビが壁に埋まっている。
女性は何かお茶を淹れているようだ。
コップが3つ用意されている。
隣の同級生を見ると自分の家かのようにくつろいでいる。
落ち着かないな。
周りを見渡すと、ひどく広い。
入る前から見るからに豪邸だったが、この階はワンルームのようになっている。
奥にドアが開かれているが、洗面台が見える。
恐らく、風呂やトイレはあちらにあるのだろう。
もう一つドアがあり、そちらも開かれているが、何の部屋かまでは分からない。
二つとも引き戸式なのは家人の好みなのだろうか。
なんにしても広さからして、部屋数が少なすぎる。
「いくらなんでも落ち着きなよ。」
ぼそっと女の子は言う。
そう言われればそうかもしれないが、少し苛ついた。
誰のために来ているのだ。
言い返そうとすると、女性がこちらに向かって来たので黙る。
お茶を差し出される。
「どうぞ。」
「どうも。」
「で、君死にたいんだって?」
「驚いたが、大体察した。」
「ふーん、そうか知ってるんですね?」
「知ってるよ。君が思ってるずっと。」
こういうとき不愉快な顔をするのは得意だ。こんなに得意だっけな。
「なんでそう思うのかっていうのは理由があるわけだ。」
「そら、そうですね。」
「なんで?」
「理由?」
「言えるの?」
「言いたかないですけどねぇ。大した理由ではないですよ。」
「なのに?」
「客観的に見ればですよ。」
(ま、そんなことでっていう理由での自殺の方が多いかもね。)
「君にとっては深刻だと。」
「それは御大層な言い回しですねぇ。」
「自覚していても止める理由にはならないと。」
「どうですかね、現に僕は生きていますから。」
「そうだね、そうかもしれない。」
(それも一つの結果に過ぎないけど。)
「深刻というのなら、そのほうです。」
なんだか診察されているみたいだ
淡々とした先生。顔に表情がなく、あらかじめ決められている台本ただ読んでいるように、
抑揚がない。
「ま、理由はいいや。滔々と語られると気も変わりそうだし。
私の仕事に付き合ってもらえないかな。」
唐突で驚いたが、「なにをですか?」と反射的に言ってしまった
「うん、転送装置というものをつくったんだけどね。」
「転送。」
「ま、遠くに物を運ぶようなものだと言えば、分かりやすいかな。」
「そんなもの作れるんですか?」
「作れるよ、私だけだろうけどさ。」
「そんな馬鹿な。」
「私は君を知っていたように、君も私を知っているんじゃない?」
隣の女の子を見て、
「聞いていますけどね。
僕も名前くらいは聞いたことがありますけど。
有名な科学者、というのははっきり言ってよくわからないのと変わんないです。」
「そう。まあたいしたものだよ私は、相対性理論的に言えば。」
「・・・つまり、それの実験ということは僕を遠くに送るということですか?」
「うん、やってくれるね。」
「嫌ですよ。」
「なぜ。」
「そりゃそうでしょうよ、そんなわけのわからない物。」
「わけのわからない?」
首をかしげる女性、こちらが可笑しいような錯覚に陥りそうだ。
少なくとも僕の・・・と言いかけて止めた。
実際僕の生活の中でもわけのわからない物を数々当然のように
使っているのだ。
「・・・とにかくそんなことが、できたとしても実用していいんですか?」
「ん?私これ発表する気ないよ。
まあそんなことより、ご褒美もあるよ。」
少し笑っているように見えた。
「・・・なんですか、なんであろうともごめんですけど。」
「死なせてあげるよ。」
「絶対嫌です。」
「なーんで。」
「別に死なせてくれなんて頼んでないでしょう。」
「でも、死にたいんでしょう?
その勇気がないんでしょう?」
「どう死ぬかだって大切です、僕はまだ生きているんですから。」
「ま、もう遅いけどね」
「は?」
「この装置はさ、今のところ、物や動物では一応飛ばせているんだ。
だけど、問題もあってね。人で試してみたいんだ。」
「・・・でしょうね。」
「いやー秘密裏にやるとなかなかねー、不都合だらけでさ。」
・・・
「ま、多分飛ばすこと自体は成功するからさ
その場合は、君の思うように生きて、死ねばいいよ。」
・・・・・・・・・
「まだ、意識あるよね?
問題っていうのはさ、物や動物をきちんと回収できる時と、できない時があるんだ。
飛ばしてはいるんだけどね、こちらが意図していないところに飛んでいるのか・・・
もしかしたら死んでしまうかもしれない。
もし、こちらが回収しに行く場所に居なければ、探したりはしない。探しようがないからね。
君自身で帰ってきて報告してほしいんだ。」
ああ、もうだめだ。
もはや顔をきちんと認識することもできないが、隣の女の子が覗き込んでくる。
おやすみなさい。
くそ。ああ、やっぱかわいいね。
女性もおやすみなさい。と、続けた。
「大丈夫か、おい!おい!」
目を覚めさせられると、驚いた顔をした老人が必死に声をかけ、体をゆさぶってくる。
意識がはっきりしない、こんなところで~~~、何か言っているが、よく聞き取れない。
体を起こすと、アスファルトの上に寝ていたことが分かる。一応歩道だが、すぐ横は車道だ。
起きれるんだね。
と先程よりは落ち着いたおじいさんが言う。
朝焼けがまぶしい。頭痛がする。
ああ、転送されたのか、本当に。
「ここはどこです?」
「ここ?」
おじいさんは耳慣れない地名を言った。
いったい何があったの?
自分でここまで来たんじゃないの?
やつぎはやに言われるが、転送されたんですと言うわけにもいくまい。
信じてもらえないだろう。下手すれば病院送りかもしれない。
「・・・覚えていないんです。
なぜこんなところにいるのか。」
「・・・君の名前は?」
私は答えると、質問を重ねていった。
記憶喪失というわけでもない。
「痛いところはない?」
体の節々がかすかに痛いが、大丈夫ですと答えた。
「とにかく親御さんに連絡をしたらどうだろう、心配してるのではないかな?」
正直、親に電話などしたくなかったが、この親切なおじいさんのすすめを断るのもおかしい。
携帯を探すとああ、持っているな。
この携帯も一緒に転送されてきたのか?まあ裸一つで送られなかったのは幸いか。
ん、電源が入ってない、し入らない。
「すいません電話を貸していただけませんか?」
おじいさんは僕の様子を察していたようで
「そりゃいいけど。」
いまは朝早くだろうか、それとも夕方にこれから入ろうとする頃だろうか。
先を歩くおじいさんを見る、おじいさんと言うには若く、中年というには老いている。
60歳くらいだろうか。
何時かを聞こうかとも思ったが、やめた。
学校終わりにあの家に言ったわけだから、夕方だろうか。
日が長いせいでよくわからない。
おじいさんの家に上がらせてもらう。
広い家だがここらではこれくらいなのだろう。
途中、10メートルほど家と家が開いているような感じだったが、みなこれくらいのものだった。
恐ろしいほど広い空は少し怖いが日が上がってきて朝だと分かる。
県を一つまたいだことは電信柱に書いてあり知ったが、おそらく田舎の方なのだろう。
どの家も軒先が広く、縁側が見える家も多かった。
「ほれ電話。」
そういって電話機を渡される。
「今、朝早くありませんか、出ますかね?」
出ると思うけど、と言って。どこかに向かう。
ちょっと待って、そう言って何やら紙に書いている。
「出るにしろ、出ないにしろ。」紙を差し出された。
これ、うちの住所と電話番号あと最寄りの駅の名前だよ。
「あ、ありがとうございます」。
そうして電話をしてみる。何度かコール音が鳴って、母が出た。
「あ、おかあさん?」
「あんたいまどこにいんの!?」
大声で言う。
すこしうんざりとするが今の状況を話し、おじいさんにもらった紙の情報を伝える。
なぜそんなところにいるのかを詳しく聞いてくることはなかった。
それはただありがたかった。
母はとにかくそちらに向かうと言う。
電話を家主に代わるように言われ、おじいさんのを探すと、すぐそばでこちらの様子を見ていた。
おじいさんの方を見る、電話を耳から話してすいませんというと、おじいさんは察したのか電話を
受け取る仕草を見せる。
おじいさんの持ち手に持ちやすいように逆向きに電話を持ち、渡す。
おじいさんたちはなにやら話しているが、僕は遠くに離れた。
何やら話している、おじいさんが相槌を数回している。
ふと視線を外す、箪笥の上に置いてある小物。写真立て、チラシ、チープなチラシだ。
写真には男の人とおじいさん、おじいさんの奥さんらしき人、息子だろうかこの男の人。
視線を動かすと縁側が見える。床の木が若い太陽の光を反射している。
チラチラと目が白くなる。
ふと自分がいる廊下の先を見ると小さい女の子が僕を見ている。
目をそらさずにじっと見ていると、タタタと駆けて姿を消した。
おじいさんが、「はい、分かりました、お待ちしています。」と言うのが聞こえた。
それで電話が終わったことを知る。