第28話 ばれた秘密
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
今日はクラス替えの日。
私は教室で先生が来るのを待っていた。
五反野さんと牛田さんと垳さんと関屋さんもきっと楽しみにしているんだろう。
佐野先生と中川先生が教室に入ってきた。
佐野先生は1枚の紙を持っていた。
「みなさんおはようございます。今日はクラス替えの日ですね。…では発表します。入谷君と古千谷さんと新田さんの3人がF組に移動ですね。」
佐野先生が言うと、入谷君と古千谷さんと新田さんの3人は教室を出た。
「なーんだ、谷中はそのままか」
と五反野さんがつぶやいた。
「まぁまぁ、先生が決めることなんだからいいじゃない?」
と垳さん。
ふと前を見ると3人の生徒が入ってきた。
「F組からB組に移動した3人です。」
と佐野先生。
「川口ヒロシです」
「安行弥平です」
「鳩ヶ谷ミキです」
と水色髪の川口君と橙髪の安行君と緑髪の鳩ヶ谷さんの3人。
「では3人は空いている席に座ってもらおうか」
と佐野先生。
すると川口君は入谷君が座っていた席に、安行君は古千谷さんの席に、鳩ヶ谷さんは新田さんの席に座った。
「なんか見た目が感じ悪い3人組だね」
と私が小声で五反野さんに言った。
「人は見た目だけじゃ判断出来ないぜ」
と五反野さんも小声で言った。
1時限目が始まる前、私達5人は集まった。
「あの3人の事、どう思う?」
と私が言うと…
「なんか変な雰囲気だぜ」
と五反野さん。
「感じ悪い」
と牛田さんと関屋さん。
「不真面目っぽい」
と垳さん。
「やっぱり…」
と私。
ベルモント先生の英語の授業。
「…はいではこの英語の文章を日本語に訳すとどうなるかな?」
とベルモント先生が聞いた。
「先生、聞きたい事があるんですが」
と川口君。
「何かしら、川口君」
とベルモント先生。
「おっぱいは英語でなんて言うの?」
と川口君。
「え!?ちょっと何を言っているの!」
赤面顔でベルモント先生が言った。
「ちょっと先生、何で答えられないんですか?」
と川口君。
「コラ!先生を困らせちゃダメだろ!」
と五反野さん。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
と千住君が言った。
「川口君は不真面目か…」
と私。
数学の時間。
「オイオイ、安行見てみろ」
と五反野さんが言ってきた。
見ると安行君が居眠りをしていた。
「安行君も不真面目か…」
と私。
社会の時間。
「オイオイ、鳩ヶ谷見てみろ」
と五反野さんが言ってきた。
見ると鳩ヶ谷さんがノートに落書きしていた。
「鳩ヶ谷さんも不真面目か…」
と私。
休み時間。
川口君と安行君と鳩ヶ谷さんは3人で過ごしていた。
私達5人は気になったので3人に近づいた。
「3人はどういう仲なの?」
と私が聞いた。
「オレらは足立小台駅からバスで来てる仲だけど」
と川口君。
「君達5人も仲良さそうだね」
と安行君。
「実は私達はあなた達の弱みを握っているのよ」
と鳩ヶ谷さん。
「どういうことだ!」
と五反野さん。
「実は4月の終わり頃に、4人が牛田さんと仲良くなろうとしていた時の事なんだけどね。牛田さんの衝撃の告白を私、廊下で聞いちゃっていたの」
と鳩ヶ谷さんが言った。
「そ…そんな!」
と牛田さん。
私はあの時の事を思い出した。
(第4話より)
放課後、誰もいない備品室に私と五反野さんと垳さんと関屋さん四人が入っていくと、牛田さんが待っていた。
「ごめんね皆。この秘め事を知った人たちは皆アタイからはなれていってしまった過去があるから、なかなか話せなかったんだ。でも中川先生から皆のことを聞いて、大丈夫かな、と思ったんだ」
「つらい過去があったんだね」
と垳さん。
「オレたちちょっと無神経すぎたかもしれないな」
と五反野さん。
「アタシも過去嫌なことあったし、その気持ちはわかるよ」
と関屋さん。
「大丈夫、どんな秘め事でも受け入れるから」
と私。そうしたら牛田さんは…
「ありがとう皆、実はアタイは皆と違う感覚があるんだ。その感覚っていうのは恋愛の感覚なんだ」
「つまりどういうことだ?」
と五反野さんが言うと、牛田さんがこう言った。
「実はアタイは…レズなんです」
「えええーーー!!!」
三人が驚いていたが私は…
「レズって何?」
と聞いた。私が『レズ』の意味を知らなかったからだ。
「正式名称『レズビアン』とは、女子の同性愛のこと」
と垳さんが答えた。
「つまり男子でいう『ホモ』と一緒か」
と私が言うと、牛田さんは…
「皆レズと聞くと大体、ガチレズのイメージしかないから、それで敬遠しちゃう」
「つまりは軽いレズもあるってことか」
と五反野さん。
「大丈夫よどんな秘め事でも受け入れるって言ったじゃない」
と私が言うと、牛田さんが…
「ありがとう!レズを受け入れる人なんて今までいなかったからー」
と、私に飛びつき私たちは抱き合った。
「よほど今までレズを否定されていたんだね」
と関屋さん。
「熱烈すぎるハグだぜ」
と五反野さん。
「やっぱり、我慢は良くないね。今の牛田さんはイキイキしているから」
と垳さん。
「うーん…よく分からないけれど、案外こういうのも悪くないね」
と私。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう。もうアタイは皆の友達になれたかな?」
と牛田さんが聞くと、私は答えた。
「うんうん、なれたよ、私たちは友達だよ。五人の仲間だよ」
「そろそろ、家に帰ろうか」
と五反野さんが言うと、垳さんは…
「そうだね、長居するわけにはいかないからね」
「今日は話しながら帰ろうな」
と関屋さん。
「友達っていいものだね」
と牛田さん。
「何言っているんだ。まだ始まったばかりじゃないか」
と五反野さんが言うと、私が言った。
「そうだよ、まだ始まったばかりだよ。私たちの足立ライフは」
私たちはその後、学校を後にした。
…まさかあの時の会話を聞かれていたなんて。
私達は動揺を隠せないでいたのであった。




