第22話 栗原さんの恐怖体験
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
夏休みも残りわずか。
あっという間に学校が始まりそうだ。
寝る準備も整ったところで私は近くのコンビニに行った。
明日の朝ごはん用のおにぎりを買うためにね。
夜なので人が少なかった。
ツナマヨ、エビマヨ、おかか、ネギミソ…
いろいろあったけれど、私はツナマヨといなり寿司を買った。
その帰り道…
「え?」
目の前に一つ目小僧がいたのだ。
「一つ目小僧だよー」
しかもしゃべりだした。
しかし私は…
「あら、よくできたマスクね。どういう構造になっているのかしら?」
「え?え?」
「とりあえず私のウチにおいでよ」
と私は一つ目小僧を家に入れた。
私は麦茶とコップを用意した。
「飲み物これくらいしかないけど、怒っちゃダメよ」
「え…えーっと…」
「それにしてもすごいマスクね。どうやってその一つ目動かしているの?」
私はこの一つ目小僧に興味しんしんだった。
すると玄関の扉を叩く音がした。
ドアモニターで確認すると、和服姿の女性が立っていた。
「あ、姉ちゃんだ」
と一つ目小僧が言った。
私は早速その人を家の中に入れた。
「小僧のお姉さん、このマスクはお姉さんがつくったのですか?」
と単刀直入に私は言った。すると…
「私の弟をバカにしないでくれる?」
とお姉さんは首を伸ばしてきた。すると私は…
「すごーいろくろ首みたい!手品ね!どうやっているの?」
「え?」
「でもあんまり人に見せるような手品じゃないと思うよ。元に戻して」
「…はい」
お姉さんは首を元に戻した。
「そのほうがカワイイよ。カワイイは正義!」
「そう」
お姉さんは照れていた。
「姉ちゃん、いいの?」
「あら、こんな人初めてよ」
「これじゃあ意味ないじゃん」
一つ目小僧とお姉さんが話し出した。
「まったく見てらんないわい」
と火の玉の化け物が庭に入ってきた。
「あ、火の玉大王だ」
一つ目小僧が言った。
「すごい着ぐるみ!遠慮しないで入って」
と私は窓を開けて言った。
火の玉大王は中に入って来た。
「どんな素材で出来ているのかな?触っただけじゃわかんないな」
「えーとそこの二人、どういうことか説明してくれ」
火の玉大王が言うが…
「いいじゃない、こういうのも」
とお姉さんが言った。
「この人おもしろいね」
と一つ目小僧も言った。
「えー、ワシはこういうのは苦手なんじゃが」
火の玉大王は困り顔だった。
「なんかすごい人達を家にいれたもんだね」
私は興奮が収まらない。
私は一つ目小僧とお姉さんに麦茶。火の玉大王にホットコーヒーを出した。
「このお茶、苦くないぞ!」
と一つ目小僧。
「冷たくておいしいわね」
とお姉さん。
「悪くない味じゃ」
と火の玉大王。
「良かった。みんな喜んでくれていて」
と私。
「喜ばすのって楽しいのか?」
と火の玉大王。
「あたりまえよ。相手も自分も楽しい気持ちになるじゃん」
と私。
「ワシらも少し考えておくか」
と火の玉大王は一つ目小僧とお姉さんに言った。
全員が飲み終わる頃…
「火の玉大王殿も一緒になって何やっとんだ」
と庭から大男が入って来た。
「あ!魔神だ」
と一つ目小僧。
「うわぁ!」
「しめしめようやく驚いてくれたか」
「すごい!手の込んだボディペイントね!手足もちゃんと顔と同じ緑色になっている!」
「………」
私はこの魔神の登場におもわず興奮しちゃった。
「魔神殿、この子も喜んでいるではないか。我々はもしかするとこちらの方が合うのでは?」
と火の玉大王。
「そうなのか?」
と魔神。
「なんか四人のすごい人達に囲まれて、私は幸せ者だわ」
と私。
「わーい魔神も物わかりだな」
と一つ目小僧。
「魔神を見て喜ぶって、この子はただ者じゃないわね」
とお姉さん。
私は魔神にも麦茶を出した。
どうやら魔神の口にも合うようだ。
その後はみんなで楽しく過ごした。
と、いつの間にか早朝4時を過ぎていた。
「我々はもう帰らなければならない」
と魔神。
「楽しい時間をありがとう」
と火の玉大王。
「また会おうね」
と一つ目小僧。
「ではこれで失礼。私達は妖怪界に帰ります」
とお姉さんは首を伸ばしながら言った。
「え?ちょっと何言っているの?」
その直後に四人は消えていった。
「…あのお姉さん、本物のろくろ首だったんだ。それどころかほかの人達も…本物…」
気が付くと布団の上で横になっていた。
時計は午前10時を指していた。
「夢だったのかな?」
でもテーブルの上にはコップが四つ。そのうち三つは麦茶。一つはコーヒーの跡が少し残っていた。
「夢じゃない。たしかに昨日、ここにあの四人がいたんだ」
私はこのことを五反野さん、牛田さん、垳さん、関屋さんに電話で話した。
しかし、五反野さんも垳さんも私の話は信じてもらえず、関屋さんは電話が通じない。残る牛田さんは…
「え?それ本当?アタイも会いたかったなぁ」
という反応だった。
よく考えると今日は夏休み最終日。
なので学校の準備をする。
…そして夜。
準備万端で四人の妖怪が来てくれるのを待った。
だけどいつまで経っても四人は来ない。
とうとうそのまま寝てしまい、朝になった。
あの妖怪達には二度と会えないだろうか?
そして今日から9月。
ふたたび私の学校生活が始まるのであった。




