第2話 足立未来高等学校
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、垳の三人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
私は西新井駅西口の階段を上っていき、急行で北千住駅まで乗っていった。今日は高校の最初の授業がある日だ。五反野さんと垳さんと同じ学校ともなると、また心がウキウキしちゃう。改札を出た後、後ろから五反野さんがやって来た。
「おはよう!栗原」
「おはよう、五反野さん」
その後つくばエクスプレスの改札口から、垳さんが出てきた。
「おはよう、栗原さん、五反野さん」
「おはよう」
私たち二人はそろえてあいさつをした。すると、東武鉄道の中央改札から私たちと同じ制服の女子が二人出てきた。一人は背の低い青髪のツインテール。もう一人は大柄で桃髪のロング。リボンが黄色だから1年だとわかった。ちなみに2年は水色、3年は赤。私たちは後ろから二人に声をかけた。
「おはよう」
「おはよう…」
二人ともあいさつを返してくれた。続けて五反野さんが…
「二人は何組?」
と質問すると。
「B組です」
と、桃髪の女子が答えた。すると垳さんが…
「じゃあ、私たちと同じクラスだね」
と言った。私たちは二人を後にして三人で学校へ向かっていった。そして昨日と同じ仮の席に座った。早速私たちは話し出した。
「校庭のクスノキ、大きかったですね」
と垳さん。
「足立未来先生が残してくれと、頼んだっけね」
と五反野さん。
「あれ?そうだったけ」
と昨日の話がちょっとぬけちゃった私が言った。すると五反野さんが…
「栗原、せめてこのくらいのことは覚えとかないと…」
「あれあれ、昨日校長先生の話の間、ずっと小声で『ツマンネ』『ドーデモイイ』と独り言を言っていたのはだれかな?」
と私が言うと、垳さんが…
「ウソ!五反野さん、そんなことを…」
「おいおい、お前らオレをはめる気か!?」
五反野さんが赤面しながらも、言った。
「ちょっと失礼」
と黒髪の男子が一人、垳さんの隣に座った。そういえば昨日も座っていたなと、垳さんが思い返しているときに、私が。
「えーと名前は?」
と聞くと…
「谷中加平です」
と答えてくれた。
「どこから通っているの?」
と垳さんが聞くと、谷中君が…
「北綾瀬駅から千代田線で通っています。住所は東京都足立区…」
「おっと、そこまでは聞いてないよ」
と、私がストップをかけた。続けて…
「大体あったばかりの女子に、自分の住所言っちゃダメでしょ!相手が悪女だったらどうするの?」
と言うと、谷中君が…
「あぁ、そこにいる赤髪の貧乳女子みたいなヤツのこと?」
「失礼な!てかドコ見てんだよ、この変態!」
と、五反野さんが顔を真っ赤にして言った。
「ごめんごめん、冗談だよ…」
谷中君があわてて謝る。すると五反野さんが…
「人が気にしていることなんだから!」
と机に顔をうつ伏せた。
「『オレ』とか『運動神経が良い』とか、ボーイッシュな部分もあるけれど、こういうの見ると五反野さんもカワイイなぁ」
と私が言うと、垳さんが…
「いくら男気出しても、素は年頃の女子だからねぇ」
「いやぁー、カワイイ。やっぱりどんな女子にもこういうのはあるんだねぇ」
と、谷中君が言うと、五反野さんが起き上がり…
「お前らさっきっから、オレで遊んでいないか?」
「そんなこと、無いよぅー」
と、私と垳さんが言った。谷中君はそれを見て。
「ていうか、君たちの名前を聞いてなかったね」
「あぁそうか、私は栗原シホ」
「オレは五反野アキ子」
「ウチは垳キミ子」
と、それぞれ自己紹介すると谷中君が…
「君たち、仲良しそうだけど?もしかして学校が一緒だとか?」
と聞かれたので私は…
「私と五反野さんは、幼稚園の時からずっと一緒の幼馴染なんだ」
その後垳さんが…
「ウチは小学校の時、二人と一緒で、その後も何度も会っているの。だからウチも二人のことをよく知っているの」
すると谷中君が…
「へぇ…なるほどねぇ。栗原さんと、ガケさんと、貧乳は昔からの仲なのかぁ」
「だから貧乳言うな!」
と、五反野さんがつっこむと、谷中君が…
「なんだ?デレとんのか?カワイイなぁ」
「カワイイって言うな!」
五反野さんがまた赤面した。
「栗原ー、なんとかしてくれぇー」
めずらしく五反野さんが、私に助けを求めてきたので…
「だ…大丈夫だよ。今はまだ仮の席だし、それに今どきの男子は大抵こういうカンジだし」
と言うと谷中君が…
「お前らさっきっから、僕で遊んでいないか?」
「遊んでないし…」
と、五反野さんがつぶやいた時に…
「三人とも、もう8時40分だよ、そろそろ先生がくると思うよ」
と垳さんが言った。
「そういえば、ガケってどう書くの?」
と谷中君が聞くので垳さんは。
「こう書くんだよ」
谷中君のメモ帳に『垳』と書いた。
「ありがとう、へぇ…難しいねぇ桁に似ているなぁ」
と谷中君が言うと、垳さんが…
「よく、八潮市の垳を知らない人から言われます」
「そんな地名、フリー百科事典にも載っていないよ」
と谷中君が言うと…
「載ってます。単独記事があります」
と、垳さんが反論すると…
「みなさん、おはようございます」
と、佐野先生が入ってきた。
「今日からわが高校の授業が始まります。わが高校は、登校完了時間の8時40分から、1時限目開始5分前までの間にホームルームを先生がやります。では、まず窓の外を見てもらいたい」
私たちは窓の外を見た。クスノキが見える。
「あれがわが高校名物のクスノキだよ。先生も初めて見た時は驚いたよ。そうだ、誰かに感想を聞こうか。…うーん、じゃあ桁さん」
呼ばれたのに、返事がない。私は不審に思った。
「ちょっと桁さん、呼んでいるんですよ」
まだ誰も返事しないので、私が…
「桁さんってどの席に座っているんですか?」
と質問すると佐野先生がこう言った。
「どこって、谷中君の隣に…」
「垳です!」
と垳さんが困惑した顔で言った。
「え?がけ?これけたって読むんじゃないの?」
「違います!」
佐野先生のありえない発言に、垳さんは困惑しながらも反論した。
「桁は木偏です。垳は土偏です」
「えぇ!?ちょっと待って、いまスマホで調べるから」
と、佐野先生は調べ始めた。そして1分後…
「あぁごめん、本当だ。ごめんね垳さん。…じゃあ気を取り直して谷中君に感想を聞こうか」
「何で僕になるんですか?」
と、谷中君が驚いた様子で質問した。佐野先生はこう言った。
「まあまあいいから、とにかく感想を頼むよ」
すると谷中君が…
「えー、都内の学校でこれほど立派な木があるのはここだけだと思いました」
その横で垳さんが…
「先生に間違えられたのは初めてだ」
とつぶやいた。
「都内って、奥多摩の方の学校の校庭の真ん中に、木があるかもしれないじゃん」
と、私がつぶやくと…
「それ以前に、この学校の近くの小学校にも校庭に大木があるそうだぞ」
と、五反野さんもつぶやいた。
「ではこれから紹介したい人がいます。どうぞ入って」
ドアが開き、入ってきたのは、身長140センチぐらいの小学生っぽい水色髪女子だった。
「え?この小学生がどうかしたんですか?」
と私が言うと…
「ちょっと!私はこのクラスの副担任の中川よ。ここに勤めてもう7年になるわ」
と言い出したのであった。
「つまりは、3年目の私にとっては先輩なわけなんですよ」
と、佐野先生が言った。
「たぶん栗原は、佐野先生より若く見えるっていうことが、言いたいんだと思います」
と、五反野さんがフォローしてくれた。
「まぁ、大体初めて会う人によく言われるから、先生もなれているんだけどね。これは体の病気で、これ以上成長出来ないのよ」
なるほどと、私は思った。その後1時限目開始5分前になったので、先生たちは教室を出た。
昼休みの時間に谷中君から…
「ねぇ、一緒にお昼食べよ」
と言われたが、五反野さんが…
「断る、貧乳呼ばわりするから」
「わたしも、垳をバカにされてるので」
垳さんも反論、そこで谷中君が…
「じゃあ、栗原」
「二人がそう言うんだから、私も断ります」
と、私も断った。
「あぁ、女子はやっぱりよくわからないなぁ」
と、つぶやく谷中君から離れて、三人で、食べ始めるのであった。




