第18話 関屋さんの恐怖体験
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
今月は恐怖体験シリーズだぜ!(五反野アキ子)
アタシは今、お母さんの実家に遊びに来ている。
結構長い間ここに居たけれど(第17話参照)、明日は家に帰る日。
ここで寝るのも今夜が最後ということになる。
晩御飯を済ませたアタシは借りている部屋でゆっくりしていた。
ていっても、動画見ているだけだけど。
ふと窓の外を見るともう人も車も全然通っていなかった。
時計を見れば夜の11時を回っていた。
「もうそろそろ寝なきゃ…」
アタシはそう思って昨日までのように布団を出そうとする。
しかし、いくら引っ張っても出てこない。と言うよりか、布団が動かない。
「おかしいな、昨日までは普通に出せたのに」
アタシはなおも引っ張る。すると…
(クククク)
「え?」
アタシは戸惑った。突然笑い声がしてきたから…
(ケケケケ)
(ヘハハハ)
「え?え?」
アタシは思わず布団から手を放し、後ずさりした。
しかし、その後は笑い声がしなくなった。
恐る恐る布団に手を当てる。そして引っ張る。すると…
布団は普通に出てきた。
「さっきのはなんだったんだろう?」
アタシは疑問に思いながら寝る準備をして、布団に入る。
明日帰るから荷物はちゃんとまとめておいた。
布団に入って少ししたら異変に気付いた。体の上に何かが乗っかっているようだった。恐る恐る体を起こしてみる。すると…
布団の上に人影みたいな物が乗っかていたのだ!
「うわぁ!」
アタシは思わず布団を飛び出し、電気をつける。
すると布団の上にはアタシの旅行バックやリュックサックが置かれていた。
「あれ?なんでアタシのカバンが布団の上に?アタシは置いた覚え無いし、突然重くなったし、何がどうなっているんだろう?」
アタシはだんだん不安になってきた。
ふと、あることに気付く。廊下から何かコゲ臭いにおいがする。
「今度は何なんだろう?」
廊下に出てみる。すると見えてきたのが…
「あれはもしかして…火!火災だ!」
廊下に火がついていて、煙も出ている。
下の階で寝てるみんなを起こさなきゃ!
アタシはそう思ったのだが、目の前に人影が見えた。
「え?誰かいるの?」
アタシはその人影をよく見た。
するとあちこちに火がついたまま歩いてくる知らない中年オジサンだった。
「オ…オジサンは…?」
「この家に恨みがある者だよ」
「え?」
「丁度いい。キミも火遊びしようか?」
オジサンは右手から火の玉を出現させた。
「いやぁ!!」
アタシは急いで階段を下りて1階の寝室へ向かった。
「お父さん!お母さん!助けて!!」
アタシは必死に起こそうとした。
するとお父さんたちから異臭がしてきた。
「!?」
アタシはお父さんたちの顔を確認した。
するとお父さんもお母さんものっぺらぼうになっていたのだ。
「ええ!!なんで」
アタシはお爺ちゃんたちの寝室に向かった。
しかしそこには骸骨が2体横たわっていたのだった。
「!!」
アタシがその場に立ちつくしていたら…
「やっと見つけましたよ。さぁ、家中火の海だ。楽しい火遊びしようよ」
さっきのオジサンが来た。
「やぁぁぁ!!」
アタシは裏口から外へ出た。
アタシは必死に走った。目の前に若い男の人が立っていた。
アタシは男の人に訳を話した。
「それは大変だ。じゃあ風の力で移動しよう」
「へ?」
「ボクは風の力を操ることが出来るんだ。あのオジサンに焼き殺されるなんて嫌だよね」
「はい!」
「だったらボクの風の力で空高く舞い上がり、地面に叩き付けないとね」
「え…」
「そうすればキミは即死だよ。苦しみながら死なずに済むよ」
「嫌だー!」
アタシは再び走り出した。
目の前に20代位の女の人が歩いていた。
…女の人だから大丈夫だよね。
アタシはそう思い、駆け寄った。
「助けてください!命を狙われているんです!」
「あらあら大変。こっち来て」
「はい」
アタシは言われるがまま近くの公園に来た。
「ここなら大丈夫ね」
「ありがとうございます」
「火あぶりも地面に叩き付けるのも嫌なのよね」
「ええ」
「でしたら痛みを伴わない死に方もあるのよ」
「へ?」
「私は氷の力を操れるの、だからあなたを凍死させます」
「絶対嫌!!」
アタシは一目散に公園を出た。
「?」
アタシは目を疑った。
もう一度見てみても…
「どうしてこんな時間にこんな所で…」
目の前に栗原さんが立っていた。
「栗原さん!どうしてここに…」
「じゃんけんしよう!」
「え?ちょっと今それどころじゃ…」
「いいからいくよ!最初はグー、じゃんけんぽん!」
アタシはあわててパーを出した。
栗原さんはチョキだった。
「関屋さんの負けだから、雷に撃たれる刑」
と言わんばかりに両手から雷を作り始めたのだ。
「こんなの栗原さんじゃない!」
と逃げるも十字路の目の前からさっきの風を操る男の人が迫ってくる。
左からは氷を操る女の人が、右からは火を操るオジサンが迫ってきた。
囲まれたアタシは成すすべがなかった。アタシははそのまま連れ去られた。
人気のない所に連れてこられて、アタシは氷を操る女の人と雷を操る栗原さん似の人に捕まれたままの状態だった。
するとこの四人とは別の人が来た。
「アタシ?」
やって来たのはアタシによく似た女の人だった。
「さぁ、猛毒がたっぷり入ったこの蜂蜜キャンディなめてハッピーな楽園生活を過ごしなさい」
「嫌!嫌!」
アタシは必死に抵抗する。
「あなたが死ねば、アタシが関屋ケイ子になるのよ」
「!!」
「そしてアタシがこれからの関屋ケイ子の人生をつくるのよ。ウルトラハッピーよね」
「…た…たすけ…」
「苦しいのは一瞬だから…ね。あーんして」
アタシの口の中にキャンディが入っていく…
…え?
「ここ、お母さんの実家?」
気が付くと布団の上に横たわっていた。
時計は朝の7時を指していた。
…良かった、夢だったんだ。
…良かった。
「ケイ子、朝食出来てるわよ」
「お母さん、今いく」
こうしてアタシは無事、足立区の自宅に帰ってこれたのです。
…でも、解決していない事がある。
布団が動かなくなったり、笑い声が聞こえてきたのは夢では説明が付かない。
…なぜなら、寝る前の出来事だからである。