第15話 綾瀬さんと八宝菜
この物語は、足立未来高等学校に通う、栗原、五反野、牛田、垳、関屋の五人が繰り広げる、ほのぼの日常系・学園モノ小説である。(栗原シホ)
私は今日もいつも通り教室に入っていくと、急に後ろから声をかけられた。
「栗原さんですよね?」
ふりむくと紫髪の少女が立っていた。
「えーとぉ…たしか綾瀬さんだったっけ?」
私は以前の記憶を思い出していく。そういえばあったことがあったなぁ。
たしか、初めて会った時は関屋さんと牛田さんと一緒に『足立クリーンマン』に会いに行く前の日だったなぁ…
「そうだよ、綾瀬だよ。栗原さんって、いつも五反野さんと牛田さんと垳さんと関屋さんと一緒にいることが多いね」
「うーん、まぁ五反野さんと垳さんは幼馴染だからね」
「そうですか。今日ヒマなら、私の家に遊びにおいでよ。見せたいものがあるから」
「いいよ、学校帰りで良い?」
「私について来れば大丈夫よ」
「じゃあ放課後ね」
「おはよー!五反野さん」
「おはよう栗原」
「綾瀬さんから家に遊びにきてと誘われたんだ」
「綾瀬か…地味で目立たないよな。そんな地味な奴の家に行って大丈夫か?」
「大丈夫よ。不安はない」
ひょんなことで、私は綾瀬さんと一緒に綾瀬さんの家に行くことになった。東武伊勢崎線の小菅駅を降りて、そこから歩いていった。
正直…不安なところがあるけれど、家は普通の一軒家だった。
「昨日つくったものだけど食べるか?」
突然、綾瀬さんが食べ物らしきものを出した。
「これは何?」
私が聞くと…
「八宝菜よ」
と答えた。
「なるほど、いただきます」
八宝菜は初めて食べるけれどおいしかった。
「それで見せたいものって?」
私が聞くと、綾瀬さんが一枚の紙を見せた。
「これって…もしかして私たち五人の似顔絵!」
「そうよ。栗原さん、五反野さん、牛田さん、垳さん、関屋さんの似顔絵よ」
「すごーい!」
「喜んでもらえてうれしい…」
「ん?このスケッチブックも見ていいかな?」
「え?あ!ダメ!!」
「ダメと言われると余計に見たくなるんだよね」
私はスケッチブックのページを開いた。
そこには男子二人が抱き合っているイラストがあった。
「これって…もしかして綾瀬さん」
「そうよ…私はBLを想像して絵に描き残しちゃう変態なの」
「うーむ、いわゆる腐女子ダイプですな」
「この事。他の人には秘密にして…」
「考えておく」
私はそう言って、綾瀬さんの家をあとにした。
翌日。
「牛田さん、ちょっといい?」
私は牛田さんを呼んだ。
「なに?」
「今日の学校終わった後、来てほしいところがあるんだ」
「いいよ」
そして…
「ここよ」
「栗原さん、ここは綾瀬さんの家だよね」
「そうだよ」
私はチャイムを押した。すると綾瀬さんが出てきた。
「はい。あれ?栗原さんと牛田さん!」
「今回だけだよ」
私が言った。
「えーと、何のことか…アタイにはさっぱり分かんない」
牛田さんは混乱していた。私はこう言った。
「八宝菜作ろうよ」
「え?」
牛田さんも綾瀬さんも驚いていた。
「綾瀬さんは料理得意そうだし、3人で作ろ!」
「それいいですね!」
綾瀬さんも賛同した。
すると牛田さんは言った。
「アタイもやるやる」
2人ともやる気になったので、早速八宝菜作りを始める。
早速私は白菜を取り出す。
「八宝菜に必要なものが揃っているかをまず確かめよう」
「チンゲン菜とキクラゲが無いから私買ってくる」
と綾瀬さんが言った。
「じゃあ、待っているね」
私と牛田さんは綾瀬さんを待つことにした。
20分位して…
「お待たせ、買えたよ」
綾瀬さんが帰ってきた。
「じゃあ早速やろう!」
私が言うと、突然綾瀬さんが…
「私、白菜切るから牛田さんはイカ切って。栗原さんは豚肉をお願い」
「了解!」
牛田さんが早速イカを切り始める。
私も豚肉を切るのだが、実は私は料理下手なのだ。
と言っても、包丁使うのが苦手なんだけどね。
だから、炒めたりすることは出来る。
慣れないような手つきで豚肉を切っていく私。その間に牛田さんはどんどん他の食材を切っていく。
そして綾瀬さんはもう炒める準備をしていた。
「さあ切った食材をどんどん入れて」
と綾瀬さんが言い、牛田さんはどんどん入れていく。
私もやっと切り終えた豚肉を入れていく。
結局、牛田さんと綾瀬さんがどんどん進めてしまうので、私はほとんど手伝えなかった。
無事に八宝菜が出来上がった。
「やった!出来た」
「アタイと綾瀬さんがほとんどやったけれど?」
と牛田さんが私にツッコミを入れた。
「まあまあ、いいじゃない。栗原さんが言いだしたことだし」
綾瀬さんが言った。
「そえじゃあ、いただきまーす!」
と私。
「いただきます」
と他の2人。
3人とも食べ終わったところで綾瀬さんが言った。
「今日はありがとう。二人とも、でも私はあなたたちの輪に入るつもりはないわよ」
「どゆこと?」
事情を知らない牛田さんは首をかしげる。
「別に、私たちの輪の中に入ってとは言っていないよ。ただ、綾瀬さんも友達つくったほうが良いと思うよ。これを機会に考えてみてね」
私が言った。
「わかった、考えてみる」
綾瀬さんは言った。
そのあと私たちは、綾瀬さんの家を後にした。
翌日…
「おはよー!」
いつも通り教室に入ると…
「おはよう栗原」
といつも通り五反野さんが挨拶を返してくれる。
「おはよう栗原さん」
「あ、おはよう栗原さん」
「おっはー!栗原さん」
と、牛田さん、垳さん、関屋さんが挨拶する。
そして、綾瀬さんは普段通り1人で過ごしていた。
まぁ、そのうち綾瀬さんもかけがえのない友達ができると良いなと思った。
「やぁ、君たち。もうすぐ夏休みだけど、ボクとどっか行かない?」
と、谷中君が突然話しかけてきた。
「断る!また貧乳呼ばわりしそうだし」
五反野さんが言った。
「オイオイまだソレ言うのか?」
谷中君は困り顔だった。
「向うに行きなさいよ!」
と関屋さんもキレだした。
「うーん、女子の扱いは難しいなぁ」
と谷中君は自分の席に戻った。
「もう、夏本番だね」
私はそうつぶやいたのであった。